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ID.5023
 
■投稿者:組実  HOME
■投稿日:2018/07/07(土) 15:21


*The End of Prayers*  第17話 D


◆  ◆  ◆



 光の中から突如として現れた獅子に、驚愕したのは城のデジモン達だけではなかった。

『なんて……なんて事……! 嗚呼! そんな! まさか!』

 ウィッチモンは思わず応戦する手を止め、モニターに顔を寄せる。──その表情には、いくらか恍惚の色さえ見えた。

『信じられない!! こんな……これが……パートナーによる正当な進化……!!』

 使い魔を獅子の元へ走らせる。ブギーモン達もその後を追う。

「蒼太。腕輪を持って、俺の背中に乗って!」
「花那はこっちへ。しっかり掴まって、絶対に手を離さないでね」
「ま、待ってガルルモン! 二階に手鞠たちがいるの!」
「大丈夫、彼らも迎えに行くよ」
「ウィッチモン! 使い魔を引っ込めて! 先にチューモンとユキアグモンのフォローに行って!」
『……かしこまりまシタ! どうか健闘を!』

 使い魔は軌道を変え、ブギーモン達の視界を遮りながら消えていく。

 ファイラモンは蒼太を背に乗せ飛び上がる。ブギーモンの飛行よりも高く、高く。蒼太は振り落とされないように、たてがみを握り締めていた。
 ブギーモンはその高さに届かない。獅子は高みから火炎弾を落としていく。花那を乗せたガルルモンは、瓦礫を足場に後を続く。

「逃がさねえ! 絶対に殺す! 殺してやる! よくも燃やしやがったな!!」

 ブギーモンの一体が槍を構え、獅子を目がけて飛び上がる。
 獅子は敢えて高度を下げて、口から炎を吐いた。正面から浴びたブギーモンは叫びながら落ちていく。蒼太は、思わず目を背けた。

「……コロナモン」
「蒼太、しっかり掴まってて。これから下に降りるよ」

 ガルルモンが瓦礫を飛び越えた。テラスへ飛び出し壁を駆ける。その姿を見届け、獅子も降下する。
 突然の浮遊感に蒼太は叫んだ。獅子の急降下は、さながら安全装置の無いフリーフォールであった。

 二階のバルコニーを目指す。
 逃げ出すことさえできればこちらのもの。ブギーモン達は、そう簡単に城の結界を出られない。
 城の裏側のバルコニーに子供達の姿を見つける。まだ逃げていなかったことに、蒼太は驚いた。先に逃げると言っていたのに。
 ファイラモンが先にバルコニーへ降り立つ。その姿が自身の仲間と異なることに気付いたユキアグモンが、慌てて二人を逃がそうとしている。

「ユキアグモン! 俺だよ! 蒼太だ!」

 馴染みある声に動きが止まる。誠司が気付き、両手を降って自分達へ呼び掛けた。

「! そーちゃん! ここだよ! ……すげえ……あれがそーちゃんのパートナー!?」
「……ぎー。ゴロナモン……進化しだ……」
「おーい! ……ん? ユキアグモン、何て言ったの?」
「……ぎぃ」

 ファイラモンが降り立つ。蒼太は誠司と手鞠に駆け寄った。

「誠司、宮古! 先に逃げてって言ったのに!」
「オレたちだけで行けないよ! 村崎は!?」
「大丈夫、すぐ来るよ!」

 言葉通り、程なくしてガルルモンがバルコニーに到着した。
 
「花那ちゃん……!」
「手鞠! 誠司くんも無事でよかった!」
「待って花那、降りないで。──すぐ出発だ。ユキアグモン、パートナーと僕の背中に乗って。チューモンたちは彼の背中に」
「えっ、えっと、これ、村崎のパートナー?」
「そうだよ! 自己紹介は後でやるから早く!」

 突然現れた大型のデジモンに戸惑いながら、誠司と手鞠はガルルモンとファイラモンに乗る。

 バルコニーから飛び降りる。
 程なくして、図書館の扉が蹴破られる音がした。子供達を探す怒声が去り際に聞こえてきた。

「ね、ねえ、わたしたち、どこに行くの?」
「とにかく、城の外だ。この外壁の高さは、ガルルモンじゃ登れない」
「お城の外に出たら、わたしたち助かるの……?」
「城の結界を越えれば、ブギーモン達はそう簡単には追って来られないからね」
「結界なんてあったの? まあいいけど、どうして越えたら追って来ないなんて言えるのさ」
「結界の外は毒だらけだ。それに……フェレスモンが許可した以外のウィルス種は、結界を通ると死ぬらしい。城の中には許可が出てないデジモンもいるはずだ。だから奴等は、そう簡単には追って来ないよ」
『……いえ、待ッテくだサイ。そういえばチューモンは……』
「ちょっと待て! ふざけんじゃないよ!」

 チューモンが慌ててファイラモンの毛を引き抜こうとした。

「止まれって!」
「痛い! 痛いよ!」
『チューモンはウィルス種デス。結界を通れば死ぬ……!』
「ウチがフェレスモンの許可なんてもらってるわけないだろ!
 おいウィッチモン! まさか伝えてなかったの!?」
『も、申し訳ございまセン』
「危うく死ぬ所だった!」
「わかった、わかったよ。大丈夫だから手を離して。
 ……チューモンとパートナーは別の方法で戻ろう。蒼太の腕輪でリアルワールドに帰るんだ。パートナーと一緒なら、きっとあの道も抜けられる」

 ファイラモンは少し後ろを走るガルルモンを呼び止め、事情を伝えた。

「──だから、ガルルモン達は先に外に行ってて。俺たちは二人を送ってから行く」
「……わかった。城門を抜けたら真っ直ぐ進んで、領地の途中で待ってるよ。もっとも、外からのデジモンが襲ってこなければ……だけど」
「もし見当たらなければ、空から探すよ。大丈夫だ」
「任せたよ。なるべくそうならないことを願ってるけどね。……送るまで、蒼太たちを守ってあげてくれ」

 もちろんだ、とファイラモンは強く頷く。

「……手鞠……!」
「花那ちゃん……」
「また、学校で……! 私もすぐに帰るから……!」
「……うん!」

 ガルルモンは再び走り出す。花那は小さくなっていく手鞠の姿を、視認できなくなるまで見つめ続けた。



◆  ◆  ◆



「コロナモン、ブギーモンたちが……!」

 図書室の窓は壊され、バルコニーからブギーモン達が溢れてくる。
 ガルルモンが倒し損ねたミノタルモンは、再び見張り台に登り、ファイラモンを打ち落とさんと空へ照準を向けていた。

「……すぐにゲートを開くのは難しそうだ。城の壁を崩して足止めするか……。いや、ミノタルモンを先に倒して、城の上で開くか……。……いずれにせよ撒かなくちゃ……!
 二人とも、しっかり掴まってて。特にチューモンは振り落とされないように」
「! み、宮古! ジェットコースター平気!?」
「えっ!? あ、あんまり……」
「こ、これ、レバーとか付いてないから! コロナモンのたてがみ、絶対離さないで!」
「えっ……え! 待って……!」

 二人の叫び声をつれて、ファイラモンは高く飛び上がる。

 ミノタルモンの砲撃を避けながら、ブギーモンの届かない高さへと。そして、上空からひたすら城のデジモン達へ火炎弾を放つ。

「あまり時間もかけられない……けど数が多すぎる! ……やっぱり、ミノタルモンから先に……!!」

 自身の標的を、ミノタルモンただ一体へ。
 咆哮を上げる。ミノタルモンもまた獅子を見据え、雄叫びを上げながらアームの照準を定めた。

「ダークサイドクエイク!!」

 アームからの衝撃波が砲撃となってファイラモンを狙う。──本来は地面に衝撃を放ち、大地震を起こす技であるが──それを凝縮し空に放つことで、彼という存在はさながら大砲そのものとなった。

 砲撃は完全にかわさなくてはならない。かすめればその衝撃が、背に乗せた蒼太と手鞠たちを襲うからである。

「ファイラボム!!!」

 額に集中した炎の弾は、砲撃と相殺されて煙を巻き起こす。煙から逃れる為に距離を取った。
 
「……二人ともちゃんと掴まってる!? チューモンもいる!?」
「ウチは手鞠が落ちなきゃ大丈夫だ!」
「蒼太!」
「き、きもちわるい……! ……み、みやこ、宮古の顔がやばいよ! 倒れて飛んでいきそう!」
「……ッ蒼太とその子の位置を変えて! 蒼太は後ろに!」
「ここで!? 無理だよコロナモン!」
「一度あそこに降りるから!」

 煙はまだ上がっている。砲撃と火炎弾を何度も打ち合いながら、更に距離を取っていく。
 城壁が段差状になっている場所を見つけて降り立ち、体勢をかがめた。

「蒼太、今のうちに!」
「あ、足が震えて……」
「急がないと今度はブギーモンが来る!」

 蒼太はよろめきながら降りて、今にも気を失いそうな手鞠を、ファイラモンの後頭部にもたれかけさせた。そのすぐ後ろに蒼太を座らせ、手鞠を抱えるように自身のたてがみを掴ませる。

「これでその子が気を失っても大丈夫だ。蒼太、しっかり押さえつけててね」
「……コロナモン、次は安全ベルト付けたいよ……」
「次なんて無いのが一番だよ。
 それと、チューモン。ひとつ頼みたいことがあるんだけど……」
「……は?」

 ──煙が晴れていく。ミノタルモンの姿が鮮明になる。
 ファイラモンは再び臨戦態勢に戻った。

「蒼太、絶対に、頭をあげないで。伏せてるんだよ。頭を上げたら、死ぬかもしれない」

 ファイラモンは体勢を、低く、低く。四本の脚の筋肉を震わせる。
 牙を剥く。後肢が石にめり込む。力を込める。強く、強く。

 ────蹴り出す。

 蒼太は、ボンッ、という音を聞く。直後、猛スピードで自分達が飛んだことに気付く。
 直進していく。新幹線に乗っている時のような感覚。

 ミノタルモンは一直線にこちらへ向かってくる、ファイラモンが理解できなかった。正面衝突でもしてくるつもりなのか。しかしそれでは確実に、本体が生き残っても乗ってる人間が巻き込まれて死ぬ。

 理解できぬまま砲撃し続ける。ファイラモンも火炎弾を放ち、再び周囲に煙が舞った。

「くそ……照準が合わねえぞ! どこにいる!?」

 周囲に視線を回し警戒するが、それでも火炎弾は正面から撃ち続けられた。──この煙だ。軌道を変えても良い筈なのに、それでもまだ真っ直ぐ向かって来ているなんて。

「どういうこっだ……!? 本気で人間を死なせるつもりか!?」

 距離が縮んでいく。撃ち合いによる煙も広がっていく。それでも火炎弾は正面から来る。
 ──いや、これは罠だ。ミノタルモンは考える。ギリギリまで直進して、突然に軌道を変えて自分を狙ってくる。そうしなければ人間が死ぬ。

「だが下から来れば……人間が丸出しだ! …………上か!」

 下方向にも注意を払いながら、アームの照準をやや上に向けた。
 深くなる煙を凝視する。動きを狙う。

「……!」

 先程のファイラモンの位置よりもやや上の方に、新たな煙が立ち上がった。ミノタルモンはアームを上に向けたまま砲撃した。

「やっぱりだ!」

 煙は上方向で何度も巻き上がる。ミノタルモン自身の周りも煙で覆われ、もう視覚での照準は当てにならない。
 ミノタルモンは絶えず砲撃を続ける。もう軌道も変えることが出来ないくらいに。

「逃がさねえ! 行かせねえ! これで!! ダークサイド──」

 ──その時。
 自身の首から下の位置を、大きな何かが横切ることに気が付いた。

「…………は?」

 ──じゃあ、あそこで巻き上がってる煙は何だったんだ?

 すれ違い様に、耳元で声が聞こえた。

「良いだろ、“チーズ爆弾(ボム)”。そのデカい口で食ってみるかい」

 そして通り過ぎた影から投げられた小さな“チーズ”が、ミノタルモンの目の前で爆発した。

「──っっっっぎゃああぁぁぁあっ!!!」

 通り過ぎた影は背後で停止し、ミノタルモンに狙いを定める。──両手で目をおさえているミノタルモンは気付くことができなかった。

 ファイラモンの額に、牙に、前肢に、炎が集まる。
 空を蹴って、今度こそ一直線にミノタルモンへ向かう。

「……フレイムダイブ!!」

 突進する。
 ミノタルモンは見張り台から突き飛ばされ、その衝撃で背中を砕かれる。
 ファイラモンは追い討ちをかけるようにミノタルモンを前肢で掴んだ。首筋から爪を立てて──

「ファイラクロー……!!」

 深く深く、焼き切った。

 ミノタルモンは背部から大量の血液と内臓を撒きながら落ちていく。

「…………」

 落下の最中に力尽きたのか、ミノタルモンは光の粒子となり飛散した。
 ファイラモンはその姿を横目で見ながら、蒼太たちを降ろすことができる場所へと向かった。



◆  ◆  ◆



 先程の戦闘で、上に乗っていた蒼太達はひどく疲弊していた。

「二人とも大丈夫……!?」
「……も、もう、きついよコロナモン……」
「……ごめん。でも、置いて行くわけにも行かなかったんだ」
「それよりウチの、ウチのおかげだぞ! さっきの! さっきからウチばっか活躍してるんだけど! もっと待遇良くてもいいんじゃない!?」
「……ああ、君のおかげだチューモン。君のチーズ爆弾(ボム)がなかったら、ミノタルモンの注意を引けなかった」
「成熟期ならもっとこう、うまくやれって! もう疲れた!
 ちょっと手鞠しっかりしな! もう嫌だこんな場所! 帰るよ!」
「…………う、……うん……」
「宮古、大丈夫? 歩ける?」
「……た……たぶん……」
「だいぶキツそうだね。まあ、乗り心地は最悪だったから仕方ないけど」
「……ごめんね。本当に。でも、ここでゆっくりはできないんだ。だからリアライズゲートの中で休んで欲しい。チューモンも。
 リアルワールドに行けば、今までよりもたくさんご飯も食べられるし、何より……もう、命を脅かされることもいよ」
「……ありがたい話だね。前にも聞いたよ。でも手鞠は少し休ませてくれ。ゲートに入った途端に吐かれたら困るし。もうブギーモンは頑張ってアンタが追い払ってくれよ」
「そ、そんなこと言われても、俺にだって限度はあるし……」
「……あれ? ねえ、コロナモン」

 蒼太がまじまじと城の様子をうかがう。

「ブギーモンたち、こっち来ないよ」
「え?」
「バケツ持ってる……城が燃えちゃったから、皆で水かけてるんだ」
「じゃあ丁度いいじゃん。ちょっと休憩だ。手鞠も立てない歩けないってさ」
「……す、少しだけ……。……ごめんね……」

 手鞠は本当に腰を抜かしているようで、歩くどころか立つことも難しい様子だった。ひどく、青い顔をしている。

「……わかったよ。本当に少しだけだ。もし来たら……すぐゲートを開くんだよ。それまで俺がちゃんと見ておくから」

 ファイラモンの言葉に、手鞠とチューモンは気が抜けたようにその場で倒れこんだ。蒼太は少し離れた場所へと急ぎ、そして静かに嘔吐した。



◆  ◆  ◆


スレッド記事表示 No.5019 *The End of Prayers*  第17話 @組実2018/07/07(土) 15:08
       No.5020 *The End of Prayers*  第17話 A組実2018/07/07(土) 15:10
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       No.5025 *The End of Prayers*  第17話 あとがき組実2018/07/07(土) 15:54
       No.5032 恐怖で腰が砕けそうな僕ら夏P(ナッピー)2018/07/11(水) 00:30