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ID.5008
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2018/06/20(水) 00:09


それは悪魔の様に黒く 九話 二
顔にピンク色の液体を丁寧に刷り込みながら彼は鼻歌を歌っていた。

「上機嫌だな」

「それはもう。手段がこうであることや警戒されていることはとても歓迎できたことではないけども、デートだもの、わかるだろう?」

わかるよとスプラッシュモンは頷きながら返した。

潤理は、側から見てもわかるぐらいに浮かれていた。それこそスプラッシュモンが一言声をかけておこうと思うほどに。しかし同時に、それもまた仕方ないと思えてしまうのは潤理を知っているからだ。

「当日はどんな格好をしていったらいいだろう、胸を潰したら異性として意識しているというのが前面に出すぎてしまうかな?」

彼は親元から離れている。叔父と叔母と従兄弟との四人暮らし。両親と妹とは東京にいる。

「それは問題なかろうが、前に胸を潰した時は次第に苦しくなってまともに話せなくなってしまったんじゃなかったか?通販である程度しっかりした矯正用の下着を買うかした方がいいんじゃないか?」

理由は居づらくなったからだ。中学生の時、彼は親友だと思っていた幼馴染の女子に性別をカミングアウトした。

結果、彼は孤立した。

彼は学校自体が嫌いなわけではなかったがその学校に通うのはもう無理だったので転校させる事にした。

家から通える私立の学校も検討したが、従兄弟が同学年にいて万が一にも孤立させたクラスメイトと会わない私立の学校に行く事になった。最終的に差になったのはその私立の学校では女子の制服にズボンがあった事だった。

彼は女子として中学校を卒業した。女子に擬態したままで今も高校に通っている。

「……でも知ってるだろう、私。ちゃんとしたのはそこそこな値段がする」

潤理はカミングアウトはもうしないと決めた。この学校に入った時は本当にそのつもりだった。

「まぁその分で次の約束を取り付けるとでもいうなら私はその方がいいとは思うが……」

彼は高校に入ってから一人にだけカミングアウトした。

「それはいいね。何か耳寄りな情報でもあれば良いんだけども……神室 亜里沙の話は彼女を傷つけるかもしれないし、藤音さんの連れていたデジモンの話か藤音さんが居なくなった途端に何かしらやり始めた奴等のリストとかどうだろう?あの頃にはもう大体ドリッピンは設置済みだっただろう?」

黒木 藤音、彼女にだけは言っても大丈夫だろうと、もう一度だけ信じることができたし藤音はその期待を裏切らなかった。

「そうだな、おそらく全体は把握できてないがそれでも十数人なら名前とクラスはわかる。パソコンをハッキングさせて住所と電話番号、写真も入手してリストを作っておこう」

でもその藤音はもういない。藤音は死んでしまった。潤理の心が崩壊しない様張るだけ張って支えてくれた根は自然と枯れてなくなるのでなく乱暴に引き抜かれてむしろ潤理の心を砕いた。

そんな中で世莉を見つけた。

世莉が正義の口にする変わったきっかけの女子だというのはすぐわかった。その行動を目を離さずにじっと見てれば次第にわかる、自分の為と言い訳しながら実際それで得しているとは言い難い。

とはいってもトイレと更衣室に仕掛けたドリッピンはユノモンに排除されてしまったので目は離していた時間もあるにはあるのだが、世莉はきっと自分でも受け入れるのだろうと思うには充分な時間世莉を見続けた。その隣にいる人々に憧れ続けた。その隣に立つことを夢想し続けた。

元からそうだろうと思ってはいたものの今日の真田の女かという反応で潤理は確信した。きっと受け入れてくれると。世莉は味方の真田と害しようとしたかもしれない自分との間にすら優劣をつけていない。

潤理は正義の味方だが正義は潤理の味方ではない。

誰でもいいから自分の味方が欲しい。

子供のような動機だと潤理は自分でも思ったがその気持ちは無くしてしまうことができなかった。

スプラッシュモンではいけない、スプラッシュモンは鏡写しの自分自身だからいけない。

その気持ちは嘉田のそれに近いものだった。

潤理は受け入れて欲しい。違うようで同じもののようで少しだけ異なるもの、

潤理は人を信じられなかったが同時に良い人という存在を信じ続けることができた。

正義がそれを教えてくれていた。なんの得にもならないのに誰かの為に手を差し伸べられる誰かはいるのだと。正義自身は信じられないがその話は信じられた。信じられる状況で刷り込まれていたから信じ続けられた。

だから藤音が手を伸ばしてくれた時にその手を取れた。本当に藤音がそうなのか疑いながらではあったものの助けを求められた。

藤音は助けてくれる人だった。潤理の心の闇を受け止めてくれる人だった。

そして今は世莉がそうだと信じられる。

でも大っぴらに助けてと誰かの見てる前で声には出せない。傷口を露わにすればほとんどの人は嬉々としてナイフで抉りにくるのだとそう潤理とスプラッシュモンは思っている。

すでに経験しているからだ。

群れからはぐれたら襲われる。自分より弱い個体と見られたら襲われる。庇護者を失っても襲われる。誰かの弱点と見られても襲われる。

全部経験済みだ。クラスから孤立し傷つけられ、デジモンがいない女子だからと襲われ、正義は知る由もないが藤音がいなくなった時にまた襲われた。そして正義の弱点として襲われたのがつい数日前。

そのほとんどが女として襲われたのも余計に潤理を傷つけた。自分がありのままでいられないとどれだけ苦悩したかわからない、その傷口にナイフが突き立てられる。ぐりぐりとぐりぐりと傷口をほじくられる。

ただでさえそれは気持ちが悪く、悍ましく、とても赦されたものでないというのに。

スプラッシュモンはまだ知られていない能力があった。その一つが姿を変える能力。なりたい自分に変われると、信じられる様なそんな能力。そういう風に捉えればよかったのかもしれないが潤理とスプラッシュモンには捉えられなかった。

変わった姿は仮初めの姿だ。仮初めの姿が増えれば増えるほどそれはあくまで仮初めでお前自身の根本は何も変わっていないのだと思い知らされる様な気がした。

彼等は自分を受け入れられていない。

世莉なら受け入れてくれるだろうという身勝手な機体と同時に世莉さえも自分を受け入れてはくれないのではという怖さがある。

自分は確信できているがその自分を疑っているから確信しても確かと思えない。

だから傷つくにしても口外しない相手に。きっと世莉は自分の闇を他人に勝手にさらけ出しはしないだろうと。

そうして潤理とスプラッシュモンはその日を迎えた。

潤理は黒いズボンに黒のローファー、白いワイシャツの上にワインカラーのセーター、さらにその上からグレーのジャケットを羽織っていた。まだ三月も初め頃で少しそれは肌寒い格好だったが潤理は異性として意識されることを意識した。

自身の顔は女性的だ。正義でさえ中性的な顔をしている、そういう血筋だからそれは仕方ないのだが正義と違うのは体格も女性的である点だ。

ローファーの中にはドリッピンを仕込み、肩にもドリッピンを仕込み、なにかを締め付けたりはしなかったが代わりに全体のシルエットは男性的になる様とにかく意識した。

つい浮かれて待ち合わせ場所に二十分も早く着いてしまったと潤理はバス停のベンチに座った。

そうだ、忘れてはいけないと黒の革手袋を着ける。この為に買ったそれはつい数ヶ月前にもらったお年玉をごっそりと持っていったが目的を思えば安いものだと潤理は思った。そう思ってしまわないといけない点が痛い買い物だったと考えている証左でもあるのだが。

そわそわするのを抑えながら、自分のばくばくする心臓を押さえながら、世莉が来るのを待つ。

世莉はおそらく十分前に来る。蘭と竜美が待ち合わせには必ず世莉は十分前に来ると言っていたのをドリッピンが聞いていたからきっとそうだと潤理は思った。

十分で落ち着いておきたかった。こうも高鳴った心音はひょっとすると聞こえるかもしれない。喫茶店の時には気にされてなかった様だけども、喫茶店では音楽が常に流されている。

あの時は、酷い邪魔が入ったものだった。

ドリッピンは本当に害するつもりはなかった。ただ、もしも受け入れてもらえなかったら自分と会った記憶を消すつもりで用意していただけだったのに。

おそらく神室 亜里沙だろう。白河 聖は誰にも話さず何にも書きうつさずに置いた予定を把握する術がない。

対面すれば心を多少読めるがそれは反応から読み取るもの、水面に石を投げ波紋と音から深さや広さを見るような直接心を読むのとは程遠いものだ。

でも今日は大丈夫だとも潤理は思った。どこに行くかは正義には伝えてあるが誰ととは伝えていないから正義も手を出して来ることはないだろう。邪魔は入らない。神室 亜里沙が出て来る理由さえなければ邪魔されることはない。

「私、こっちを見るんだ私」

スプラッシュモンが潤理の顔の前に差し出した掌は鏡として潤理に自身の顔を見直させた。

「そんな顔をしていてはあらぬ疑いを持たせてしまう」

潤理はグニグニと自分の顔を揉んで表情を整えた。ただ、その時点で一つ誤算があるとしたらすでに世莉が遠くにはいたことだ。

竜美と蘭の話は間違ってはいない。間違ってはいないが、正確な話をその時二人はしていなかった。

世莉は人混みというものが苦手だ。公共交通機関は混む時間帯は避ける。

その点で潤理は正しい時間帯を指定した。土曜日の朝のラッシュと昼のラッシュの中間ぐらいにあたる時間。目立った観光地もないこのバス路線は混雑とは無縁だろうから世莉もバス停待ち合わせでも特別嫌ではなかった。

ただそれでも世莉は気分が悪くなってもいい様に余計に時間を取っている。余計に時間を取り、一息吐いて呼吸を落ち着けた上で十分前に来れるように二十五分前にその近辺にいる様にしている。

だから潤理の一挙一動を遠くから見ていた。実体を持ってないスプラッシュモンよりも感覚器に優れた世莉は、気づかれない距離から見ていた。特に警戒しているからとかそんなものではなく、待ち合わせする時の習慣の相手に待たせたかもと思わせない為の行動として。

「……何を企んでるんだろう」

世莉は微糖の缶コーヒーの空き缶をゴミ箱に放った。

「それとも何も企んでいないのかも。委員長の従兄弟なんでしょ?委員長が結構暴れていたって話もあったしストッパーとしてみたいな」

「私達で止められるわけじゃないだろうに」

葵の時にはたまたまだったと世莉もレディーデビモンも思うのだが、潤理がどう考えているかはわからないから気を引き締める。実際は見当はずれであることなどわかるはずもない。

「じゃあ性別のことを改めて口止めかな」

「かもしれない」

あまり待たせるのもよくないと世莉は潤理の方に向かった。

三月とはいえこの辺りではまだ桜の開花宣言もされていない。もう少しで咲くのだろうがまだまだ肌寒い。

世莉は黒い薄めのダウンジャケットに黒の手袋黒のスニーカー、ジーンズだけが黒ではなかったがそれも濃い青で夜道ではきっとそのぎょろっとした目だけが浮かび上がるのだろう姿だった。

「お待たせ」

「いや、今来たところだよ」

五分は待たせたのにと世莉は思ったが、潤理は潤理で思っていたよりも五分も来るのが早いと焦っていた。

「じゃあ行こうか、実は歩いて行ける場所なんだ」

潤理がそう言って先導する。

「そこはガラス工芸好きのおじいさんが個人でやっていてね。コレクターであり、歳が歳だけにコレクションをこのまま朽ちさせるのは惜しいと販売もしている。幾つかは手の届く金額だった筈だから、気に入ったら値段を聞いてみてもいいと思うよ」

あることを潤理は狙っていた。無理やりではいけないのは知っている。ただあわよくば異性として意識して欲しい、そして可能ならば手を握りたい。素手ではおそらく無理だろうし嫌がられるだろうが革手袋ならあるいはと思っていた。

「……それは美術館?」

「そこでは嘘は吐いていないよ。確か、あそこには匂いで他人をある程度判断出来る子がいただろう?正確には美術館を自称する個人商店の区分だけどね、邪魔を入れたくなかったんだ。酷いやり方だったとは思うけども、とにかく邪魔を入れずに話すことが目的だったんだ。情報自体は幾らでも提供するよ」

あぁそうだと潤理は鞄から封筒を一つ取り出した。

「もう卒業式は終わったけども……三年の名前と顔と住所電話番号と付いてるデジモンのリスト。一応不明の人も入れてリストアップしてある。付いているデジモンに関しては文字情報だけだけどもね。先に渡しておくよ」

潤理なりの誠実さの表れだった。情報屋としてしか接点がないから入り口がそうなるのは仕方ないとして、余計な駆け引きやら何かを入れたくはなかった。

そもそもそれは純粋な恋心かもわからないのに。

「ありがとう」

世莉がそう言って封筒を受け取ってトートバッグに入れる。流石にそれは学校指定のものであったりはしないがあまり綺麗とも言い難く使い古しの様に見えた。

明らかに自分の格好は世莉のそれとかけ離れているとわかっても潤理は落ち着いていた。その状態は想定内だ。意識させることが目的なのだから世莉にギャップが与えられるならとむしろ歓迎さえしていた。

「他に聞きたい事はあの後出た?」

「いや、出てない」

何か聞いておくべきだろうかなんて世莉が考えているうちにその店に着いた。一見民家に見えるその扉を開くと色鮮やかなガラス細工が所狭しと並べられていた。

その部屋自体には誰もいなかったが、カウンターが一つあり、その奥へと通じる扉が開いていてそこに誰かいるのだろうという事が察せた。

「……ところで、何か話があるんじゃなかったの?」

世莉にそう言われて潤理は戸惑った。確かに邪魔を入れずに話したいと言われれば何か話があるのだとそう思っても仕方がなかった。

「……そうだね。うん、確かに」

自分のミスに気づき、これを好機と取ろうと勇気を持って口を開いた。

「話を、聞いて欲しいんだ」

話出しは潤理自身も意外だった。

「私は犯されそうになったあの日からずっと辛かった。藤音さんには助けてもらったし話も聞いてもらえた、でもいなくなった。そうしたら傷口が大きく開かれた様だった」

ダメだろ、こんなことを話したら引かれるに決まっている。いきなり話し出すべき内容じゃない。

困惑する気持ちと裏腹に潤理の中から言葉は溢れてくる。こうして話すのは藤音が死んで以来だった。スプラッシュモン相手にはそもそも言葉にする必要がなかったから口にしていなかった。

世莉の目は揺れなかった。目つきの悪さはそのままでとても安心なんて感じさせる様なものではないのに、それでも潤理の堰を切った思いは止められなくなっていた。

「父と母には話せなかった。私が中学の時に気安くカミングアウトしたことで迷惑をかけていたし、今は一緒に住んでもいない。叔父と叔母にも話せなかった。もうすでに十分お世話になっているし、デジモンの事なんて話せなかった。正義がやっている事だって伝えたら卒倒するだろうと思った」

潤理は世莉の目を見てられなくて横を向き、ガラス細工を見てる風を装って少し腰を落とした。もしも見ていたらどこまでも言葉を止められなくなりそうで、この場で泣き崩れてしまう様な気がした。

「……未だ、時々夢に出るんだ。覆い被さってくる男の生温い息が、下卑た声と飢えた獣の様な目が、夢の中で私に向けられる。そんな夢を見た後は決まって藤音さんに相談したくなる、話したくなる、メッセージを送るでもいい。でももういないからできない。一言、たった一言でもいい、読んだよとか聞いたよという報告だけでもいい。私は、それで、私は……」

こんな言い方をしてなんで話を聞いてくれるだろう。いくらなんでも切り出し方は唐突で言い分は身勝手だ。

言葉に詰まった潤理の背中に世莉の手が置かれた。

「大丈夫、聞くから、落ち着いて」

世莉は自分の方に改めて向けられた泣きそうな顔を見てその手を取った。

「今度からは私に送ってきてくれればいいから」

互いに手袋をしている。潤理は皮のもの世莉のは毛糸だが厚い、熱が伝わるには厚すぎる壁だというのに潤理はその手に確かに暖かさを感じた。

潤理は涙が出そうになるのを我慢してありがとうと呟いた。

世莉と潤理はそれから二十分ほど見て、潤理は青紫色の花のブローチを買った。

それを潤理は世莉に渡そうとしたが世莉は一度断り、話を聞いてもらうことになるからと言われて仕方なく受け取って、同じものの色違いを買って潤理のジャケットに刺した。

「……お昼はどこか決めてあったの?」

世莉に言われて潤理は目を丸くした。潤理は世莉がこっそりとその鋭敏な感覚で辛そうにしていたことがあるのを亜里沙以外で唯一知っている。

チャイムがなり教室から出て行った世莉が顔を洗って気持ち悪さをどうにかしようとした水道にもドリッピンが潜んでいたからだ。

飲食店というのはきっとあまり好まないだろうと思っていた。あの喫茶店の様に人もまばらで人もまばらでメニューは少なく匂いはあまり混ざっておらず、いる席も個室の様になっているならばともかくとして通常の飲食店には向かないだろうと。

とはいえもちろん考えていなかったわけではなかった。お昼に誘い、一緒に昼食を取ってから帰宅するというのが潤理の計画。負担をかけない様に、嫌われない様にという臆病さが前面に出ていた。

「この時間帯だとどこも混んでしまうから、テイクアウトのものを公園ででも食べようかと思っているのだけど、どうかな?」

行く公園は潤理のよく通る場所だ。至る所にドリッピンが仕込んであるから、純粋な通行人や遊びに来た子供達から、草木の専門家か何かなのか変なところに分け入る人、ふとキスでもしたくなったのかわざわざ人目を避ける行動を取っている人まで公園内にいる人間のほとんどを把握できる。

「……あまり高くないとこなら」

世莉はさっき買ったブローチの値段と財布の中身を思いながらそう答えた。最近は喫茶店に入り浸っている事もあって財布事情が芳しくない。土日の喫茶店でのバイトの給料は翌月の二十日に口座に入れるという話で、三月初めからの世莉の手元に入るには間があった。

潤理は幾つか候補は考えていたが、全国チェーンのハンバーガーを選んで勧めてみた。親しみやすいのと、その店舗は店内に入らないでも持ち帰りできるカウンターがあら事からそれを選んだ。

一応他にもテイクアウトできる店や、やはりまだ寒い季節だから昼時でどこも混んでいるとはいえ比較的空いているだろうお店なんかも幾つか考えてはいたが、世莉が頷いたのでそうすることにした。

一番安い組み合わせでハンバーガーとコーヒーを買った世莉はベンチに座ろうとしてふと違和感を感じた。

なんだか妙にベンチの一部が綺麗だった。ベンチの端の方は見てわかるぐらいに砂埃が付いているのに二人座れるぐらいの幅が綺麗に拭き取られた様になっていて、その上、手を置いてみると野晒しにされてたはずなのに少し温かくすらあった。

ふむと耳をすますとすぐ近くに池があるわけでもないのに水音が少し聞こえた。

「ドリッピン使った?ありがとう」

世莉に言われて潤理も曖昧に微笑みながら座る。バレたら気持ち悪がられると思っていた。

潤理にとってスプラッシュモンは自分自身だから、その一部であるドリッピンは体液とそう変わらない。ドリッピンで温めておいたというのは殿の草履を懐で温めておきましたという豊臣秀吉もびっくりの唾液で温めておいたとかそういう感じのものである。ドリッピンは唾液と違ってそこに染み込むわけでもないが、それでも潤理の感覚的にはそうだった。

褒められた喜びと、実は気持ち悪がってるんじゃないかという疑心暗鬼の中でだから神室 亜里沙には止められたのかと理解する。

体液と考えている視点で見れば潤理は化粧水と偽って自分の体液を肌に刷り込ませようとした変態という事になる。

今後はやらない様にしようと心に決めた。


スレッド記事表示 No.5007 それは悪魔の様に黒く 九話 一ぱろっともん2018/06/20(水) 00:07
       No.5008 それは悪魔の様に黒く 九話 二ぱろっともん2018/06/20(水) 00:09
       No.5009 それは悪魔の様に黒く 九話 三ぱろっともん2018/06/20(水) 00:10
       No.5010 それは悪魔の様に黒く 九話 あとがきぱろっともん2018/06/20(水) 00:33
       No.5027 ウルトラマンより全力出せる時間短いんかザミエールモン!夏P(ナッピー)2018/07/09(月) 22:51