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ID.4998
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2018/06/01(金) 21:18


それは悪魔の様に黒く 八話 下
そして週末になった。

真田は手当たり次第に調べることを余儀なくされていた。

酒田に聞いた藤音の倒れていたということ場所に行ってもマミーモンはその痕跡を見つけられず、しかしそれ以外に手がかりになりそうなこともないことからとにかく学校中を調べて回ることになった。校外に連れ出し殺してから踏切に投げ込まれた場合どうしようもないが校内ならまだしらみつぶしに探せる。

それはつまり、連日マミーモンが喫茶店を留守にすることで、世莉の横でレディーデビモンは少しソワソワしながらコーヒーを啜った。

うまく鎖や布だけ姿を消したレディーデビモンはマスターの用意した黒いコートの下に真っ赤なシャツと黒いジーパンを履いてサングラスとツバの大きな帽子を被って席の奥に座っていた。包帯はマスターがキャラ被りを気にしてやめさせた。

胸元を隠すか隠さないかで真田とマスターとエカキモンが議論している様は世莉や縁にはドン引きものだったが最終的に世莉に囁く時だけちらりと見えるようにするというところに落ち着いたのには嘉田が帰るかどうかと世莉に聞く程だった。

一瞬見る限りでは顔色が悪いだけにしか見えず、しかしよく見れば左手やサングラスから覗くルビーをはめ込んだような白目のない眼と人でない。まぁマミーモンだってなんで騒がれないのか不思議なぐらいには人でない事を隠せていないのだが、それでもつい気になってそわそわしてしまっていた。

結論から言えば問題はなかった。

午前中、確かに数人来たがそれほどでもなく、左手をチラチラと見ながら勝手に興奮していたし、エカキモンに言われて世莉は袖の下に包帯を巻いていったのだが、それも世莉から見る限りはよくわからなかったが好評のようだった。

共依存だとか百合だとか興奮気味に呟いていたのも聞こえたがどうやら悪い意味ではなかったらしいと世莉はホッとした。きっとなにかのミステリー作品の話でもしていたのだろう、百合の毒がヒ素に似るとかいう事を使ったトリックを世莉はどこかで聞いた気もした。

休憩らしい休憩はないが人が来なければ暇で賄いとしてお昼も出してくれる。少なくとも集客に貢献してる土日に関しては真田のそれもバイトとして扱われていた。

平日のそれはあくまで真田の勝手という事でバイト代は出ていないらしかったが。

暇になったからと世莉が宿題を広げ、そういえば蘭には話したものの竜美や亜里沙には話してない。連絡をしておくべきだったかななんて考えていると、すみませんとどこかで見た顔の女子が話しかけてきた。

「……先生に何か御用でしょうか?」

世莉がキャラを守ってそう聞くと、その女子は当然のように世莉の向かいに座り、その頭から出てきた人型のデジモンが姿こそ普通の人間にも見えるようにはしなかったが隣に座った。

白い全身タイツを纏ったようなデジモンで、その髪に当たるように見える部分は一定のリズムで波打つ液状の様で固体の様で例えるならばスライムのようだった。

「私はスプラッシュモン、こっちは私の分身の清水 潤理。御察しの通り、委員長の親戚さ」

いやー、同級生だよね黒木さんと潤理が話す横でスプラッシュモンは絶えずレディーデビモンに話しかける。

「今日はたまたまSNSを見ていたら正義から聞いた人が面白い格好をしていたのを見つけたもので会いに来たんだよ。あぁ、返事はしなくて結構。実体を持っていて話せば他の人にも聞こえてしまうからね」

スプラッシュモンはにこにこと笑いながら少し世間話でもしようかと話し出した。

「まずは私の能力について話そう、私の能力は主なものとしては種々様々な液体を作り出せる事だ。具体的に言うとお高い化粧水とかよりもよほど質のいい化粧水や汚れの性質に合わせた業務用かそれより効果的な洗剤、はたまた普段使いするにはハードルが高くて瓶で買ったりするのを躊躇する調味料……例えばナンプラーなんかも対応できる」

世莉達はあまりに友好的に思えるのに少しだけ疑ったが、すぐに思い直した。委員長の従姉妹だというのだから本当にただ最初から距離を詰めてくる人の可能性も十分にある。

顔は確かに面影があり、男性的な体格のスプラッシュモンの声はかなり委員長に近い。

「……ご依頼は?」

世莉がそう口に出したのは悪意があるかもと疑うことはやめたが悪意ではなく純粋に手伝いや助けを求めて来た可能性はまだあると思ったからだ。キャラを崩さない様にとも真田やマミーモン、マスターからも言われている。

「……ふむ、依頼は強いて言うならこれからも正義をよろしくねってところかな。あいつはすぐ無茶をする」

潤理がそうはにかんだ一方で、スプラッシュモンはそれともう一つと言った。

「私は情報屋でもある。この髪は振動という振動をよく拾うんだよ。盗み聞きしたくなくてもしてしまうというべきかな?そうして広げたアンテナに調査員を派遣して情報を集めて売り渡すのが私のやり方さ。白河 聖から貰った情報が信用し難かった時、私の事を思い出して欲しい。私は正義の味方だ、同じ様に正義の味方で君がいてくれる内は情報料も取る気はない。あくまで基本は、ではあるけどね」

まぁつまるところぜひご贔屓にってところかなと笑ってスプラッシュモンは潤理をちらっと見た。すると、お土産らしく化粧水らしいピンクの液体の入ったボトルをカバンから取り出した。

世莉とレディーデビモンとが確かにそれならひょっとすると聖よりは信用できるかもと思っているとふと、レディーデビモンと世莉はその声を捉えた。

「彼等を信用するのは私はオススメしないかな」

小さな声だったが誰の声かはすぐにわかった。

そうそこにいる誰にも聞こえないが世莉なら聞こえるだろうと呟いた聖はカウンターの席に座っていた様だったが、エンジェウーモンだけが堂々と歩み寄ってきた。

「スプラッシュモンの能力は種々様々な液体をつくる事、ではなくて種々様々な液体の特性を持った自分の使い魔を作り出す事」

エンジェウーモンが化粧水の瓶に手をかざし一瞬右手だけ実体化してなにかの光を放つと目を回したのかなんなのか、ピンク色の液体の中に黒い豆の様な目が現れ口らしい形も作った。

「実際に用途は様々だけども、情報屋としての主な用途は監視カメラ兼盗聴器。水道の中にでも潜める、水たまりや側溝、形状も自在だから屋根裏や家庭科室に常備された調味料、花瓶の水にもはいれるし、引き出しの裏の隙間に隠れているのもあるし、以前は女子更衣室やトイレにも、最近は特定の時間帯だけ避けているけど、やっぱりそうして潜んでいる」

「悪用はしてないよ。それにトイレというのは人の悪口の集まる場所でね、未然に正義に伝えた事で防げた被害も少なくはない」

「さらに驚くべきその使い魔の用途は他者の精神にも関与することができる点。そして、一回だけだけど彼等を強姦しようとした男が自殺しようと飛び降りている。たまたまいた酒田先生が機転を利かせて助かったものの結構な大怪我をしたんだよね」

「……それは私ではないね。私がそうした能力を持つことは事実だが、彼は罪の意識と正義に連れていたデジモンがやられたことで動転したんじゃないかな?」

「だったらよかったんだけどね。それにしてもそのその化粧水は使ってたらどうなったのかな」

「あぁ確かに恐ろしいまでの変化をもたらしたかもしれないね。肌はツルツルスベスベになりニキビもなくなって彼女がアイドルにスカウトされたかもしれない。長い眉毛や凛々しい瞳はきっとイケメン系のアイドルとして似合うよ」

「そうだね、突然に委員長に対して熱烈な恋心を抱いて委員長から見た黒木さんの特別さが失われるようにもなったかもしれないね」

スプラッシュモンがはははっと笑った。

「そんな恋愛沙汰みたいなものは私達と正義との間にはないさ」

「知ってる。だって恋愛対象は女性で性自認は男性だものね。恋なんて浮ついた要素がないからこそ不用意に近づく誰かを引き離していくだけだよね」

「……誰が言った?」

そう聞く声は低く、表情にはもう笑みは残ってはいなかった。

「誰からも聴いてないよ」

「誰からもということはない筈だ。私の性自認についてこちらで話している人数は片手で足りる。百歩譲って恋愛対象まではわかったとしよう、しかし私は他人から見たら中性的かどちらかといえば女性的に見える筈だ。言葉遣いはともかくそういう容姿をしている。性自認は男性で女性であることに違和を覚えてはいるがそれでもいわゆる女性らしさと呼ばれる諸々を毛嫌いしているわけでもない。だというのにバレている。それを漏らした奴がいるというならそれを止めなくてはいけない。もちろん、その対象には君達も含まれるのだが」

スプラッシュモンはそう早口に捲し立てて立ち上がった。全身タイツの下がボコボコと沸騰した湯のようになり、一回り良くなった体格でスプラッシュモンはエンジェウーモンに掴みかかろうとした。

それが止まったのは人には聞こえない吠え声が喫茶店の中に響いたからだ。

「黒木さん、竜美ちゃんにもちゃんと教えないとダメだよ?あんなに心配してくれてるのに」

エンジェウーモンがわざとらしく口に手を当てながら世莉にそう言う。

ローダーレオモンは一跳びで入口から世莉達の座っている席まで来ると机の上に立ちスプラッシュモンから庇うように立った。

「……ふぅ、全く心配はいらないよ。私の秘密を無遠慮にバラされたので多少動転したが彼女達がそういうことをしないだろう人であるのは知っている」

スプラッシュモンの台詞が終わらない内にカウンターで聖にどこにいるのか聞いた竜美がそこにやってきた。

潤理は静かに立ち上がるとまた学校で会ったら話しかけるねと言って立ち去り、聖もまた竜美がもう一度話を聞こうとした時にはすでにいなかった。

机の上には化粧水のフリをしたピンク色の使い魔入りの瓶が残されていた。





人気もなく風もない公園は一枚の絵のように動きがない。

彼はそんなおよそ何も警戒せずにいるべきではないだろう場所を歩いていた。

潤理は苛立ちを募らせながらもあくまで微笑んでいたが、ふいに目の前に現れた人影にはその笑顔も瞬間的に消え失せた。

「……同級生だっけ、何か?」

「大体お前が想像してるような事だろうと思うぜ」

三人ほど、現れたその生徒達はみなニヤニヤと笑いながらデジモン達を実体化させたりデジモンへと姿を変えた。

「……正義が邪魔だからかな?」

「その通り、とりあえずお前を拉致ろうって訳だ。大人しくしてくれるとありがたいな」

およそ人を捕らえる事に向いてなさそうな二足歩行の灰色の恐竜に姿を変えたその生徒に潤理は心から嫌悪を覚えた。

スプラッシュモンの集めた数日内のの音声データから彼の会話をピックアップすると大抵は金がない女がいないという話で、時々混じる話に対する返答もやっベーと死ねでほとんど済ますようなそんなタイプ、学校で拉致の計画を、しかも委員長の反応が来るまでは楽しんでしまおうなんて事も話してしまう様な迂闊なタイプだった。潤理の最も嫌いなタイプの人間だ。

「予め教えておいてくれればよかったのに、私」

「その事に関しては謝ろう。でも理由はわかるだろう?」

だからこそ教えておいてくれてよかったのにと潤理は再度呟いた。知っていたとしても潤理はここに来ただろう。

スプラッシュモンが指をパチンと鳴らすと三体のデジモン達の顔の周りを水が覆う。

呼吸をする為水を掴んで離そうと顔の周りで手をばたつかせるその姿を見ながらスプラッシュモンは指先からとろとろと液体を滴らせた。

実のところ、潤理とスプラッシュモンが出会った頃スプラッシュモンはあまり強いとは言い難かった。

スプラッシュモンは水を使い種々様々な使い魔で戦うデジモンである。しかしそれは自分の体を削って生み出す数ありきであり体積ありきエネルギーの総量ありきとも言える。

その性質が人間にエネルギー供給源を任せるという点とあまりにも相性が悪い。少しずつしか使えなければスプラッシュモンの強みはないも同然だった。

故に負けたのだ。襲われても耐えるしかなかった。その場で実体化する事ができるようになったにもただ苦痛を甘んじて受けるしかなかった。

ただその弱点を克服できるのもまたその性質によるものだった。

使い魔は基本自動で動く、本体にエネルギーを求めない。

毎日少しずつ、数体ずつ小さな使い魔を学校に配置する。学校のほぼ全体に配置したら今度は帰り道の公園の池や川や木のうろに、そうする事で全体の質量を増やした。

そうして一息で巨大な恐竜の頭全体を覆えるほどになった。

「今どんな気持ちだろうか?気になるな、とても気になる、がしかし、話を聞く気はない。私は拉致したあと委員長が反応するまでは楽しもうだなんて事を考える類の人間が何よりも嫌いなのでね。まぁ生かして欲しいならば人間の姿に戻るといい」

人間の姿に戻ったその生徒はうずくまり息を吸おうと激しく咳き込む。

「君達の理科系科目の成績は……あぁ!これはひどい!数学の成績もなかなかひどいな!?来年一年で巻き返せるか?それとも就職希望かな?勉強が捗るように面白い現象の一つ二つ教えてあげるよ」

その生徒が体を支える為に付いていた腕に地面から飛び上がった液体でできたボールがぶつかって弾いた。

支えを失った体は顔面から地面に倒れる。

「今のはダイラタンシー現象を利用している。もっと多量の水であればその質量だけでも十二分な威力を発揮するのだが……まぁ節約だね。粉末を含む事で素早い刺激には固体のような、ゆっくりの刺激には液体のような反応を示すというものだ。公園の砂を水流で細かく削っていけば片栗粉でなくともそうした性質は持たせられる。片栗粉を入れた時に起きる現象として有名だけど自然界でも見られるところでは見られる。確か普通なら砂にタイヤがとられるのに車で走れる砂浜、というふうに知られていたんだったかな?何県だったかは忘れたがドライブが好きならその内行って見ると良いだろう。きっと得難い経験になる」

話を聞いているかい?ぼーっとしているようだけどと顔面を打ち付けた生徒に潤理は優しく問いかけた。

「どうやら気絶してるようだよ私」

「それは悲しいね、授業中よく眠られてしまっている英語の鶴間先生や世界史の東郷先生、日本史の源先生もこんな気持ちなのだろうか、確かに叩いてでも起こしたくなるな」

起きろ、起きろとその生徒をもう二人の生徒が背中を叩いたりして起こすとスプラッシュモンはその二人腹に向けてボールをぶつけた。

「君達の友情を讃えたいところだけど私語はいけないよね」

「少しはスッとした?」

「もちろん、君がそうであるように。じゃあ救急車を呼んでくれ、最後の仕上げをしよう。日本史や世界史の成績も悪いからね、宮刑の話を少ししてあげようかと思うんだ」

「あぁ、それはいいね。私相手にそういうことも考えたわけだし、実践するところを見られるだなんてそうそうないことだよ」

きっと勉強になるねと潤理が笑みを深めるとスプラッシュモンも裂けんばかりに口角を上げた。

「宮刑というのは世界的に例が見られる刑罰の形でね?わかりやすくいうと外科的に去勢避妊手術をしてしまうということだ。日本だと、そうだね、確か後太平記にその記述があるんだったかな?やり方についてなんと書かれていたかは覚えているんだ。男はヘノコを裂く。ここでなんともう一つ勉強のチャンス。ウォータージェット加工、いわゆるウォーターカッターについても学べる機会だ」

でもこれは疲れるから対象は一人にしようというと、二人の生徒は一人、今さっきまでは庇っていた生徒を差し出した。

スプラッシュモンは嬉々としてその股間に指先を向け、男は悲鳴をあげることもできずに失神した。

「さて、ウォーターカッターについては学べないけども、君達は刃物を持っていたよね?」

楽しそうにスプラッシュモンが二人の荷物を漁るとナイフが一本ずつ出てきた。潤理は顔がにやけないようにしながらその内の一人の携帯で119番のボタンを押した。


スレッド記事表示 No.4997 それは悪魔の様に黒く 八話 上ぱろっともん2018/06/01(金) 21:00
       No.4998 それは悪魔の様に黒く 八話 下ぱろっともん2018/06/01(金) 21:18
       No.4999 それは悪魔の様に黒く 八話 あとがきぱろっともん2018/06/01(金) 22:08
       No.5002 エカキモンとは趣味が合いそうマダラマゼラン一号2018/06/03(日) 10:46
       No.5003 二つ〇を付けてちょっぴり大人さ夏P(ナッピー)2018/06/05(火) 22:39
       No.5005 換装変身ぱろっともん2018/06/10(日) 23:01