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ID.4996
 
■投稿者:tonakai 
■投稿日:2018/05/30(水) 21:57


転生したおっさんは元飼い猫とデジモンやっています1−3
「ただいま……」

「お帰りにゃ! ごはんにする? お風呂にする? それとも……
に・く・きゅ・う?」

現在、嫁モードの元飼い猫。
あのグローブの下にそんな魅力的な部位があるのだろうか?
それにしてもツッコむ元気がない。

「寝るわ」

ふらふらの足取りで、倒れこむようにベッドにダイブする。

「ちゃんとトイレに行ってから寝るにゃー」

ごめんブチ、処理は任せた。
頭がまともな寝たきりの老人はこんな心境なのだろうか。
意識が暗闇の中に沈んだ。



「やぁ、こんばんは」

夢か。
白い魔法使い、ソーサリモンが今夜も俺に語りかけてきた。
こんなときでも交信できるんだな?
そういえば、異常なエネルギーを感知したとかなんとか言ったことを思い出した。
あれから何か進展あったのだろうか?

「いいや、まだ進展がない。こちらも歯がゆいわけだが、やはりそちらに直接出向く必要があるらしい」

それはそれは、急いで迎え入れる準備をしないと。
歓迎パーティだ。
肉しかないけど……

「ははは、それは魅力的だね。こっちはお肉が貴重品なんだ。本当に残念なんだけど、私はいけないんだ。調査員をそちらに送り込むから仲良くしてやってほしい。この前言っていた可愛い娘だ。口説くのは自由だけど、仕事の邪魔だけはしないでね。それじゃあ今日の講義だけど……」

魔法の講義を受けて目が覚めた。





「にゃにゃ、どちら様ですかにゃ? 悪質な勧誘はお断りするように主人に言われておりますにゃ」

ベッドから天井をぼーっと眺めていたことを自覚した頃に、玄関でブチが何やら騒いでいた。
お客のようだ。重たい体に鞭打って起き上がると、

「ウィッチェルニーにから来ました。ツカサさんという方がいらっしゃるとお聞きしまして……」

ん?ウィッチルニー?
何だっけそれ? 最近どこかで……

「聞いたことないですにゃ。どこかと間違えて」

ブチは追い返そうとしているようだが、訪問者と目があった。
ウィザーモンと似たようなとんがり帽子猫のエンブレム付き、露出を抑えた足元まである赤いワンピース、黒い短めのローブというかマント、いかにも魔女ですという格好だ。

「あ、ウィザーモンのツカサさんですね! 私、ウィッチモンって言います! 調査員としてこちらにはせ参じました」

名前もまんまだった。デジモンって皆そうなのかな?
ウィッチモンと名乗った訪問者は、鋭利な爪が素敵な巨大な手を差し出してくる。
握手のつもりだろう。
昨日の出来事がフラッシュバックする。
『命は一つしかねぇんだ、大事にするんだな!』

「お、おおおおおおぅ……い、命ばかりはぁぁぁぁぁぁ」

全力で後退したが、狭い家だ。すぐに壁に激突して、肩を打った。
もだえるしかない。

「保険なら間に合ってますにゃ! お引取りくださいにゃ!!」

ブチはとにかくこの調査員を追い出したいようだ。
そういえば、飼い猫時代にお客が家にくると、誰にでも威嚇してたっけか?
とにかく他人を家にあげたくないようだ。
まぁ放置だよね、俺もダメージから回復していないしな。





仕切りなおし。

「えーっと、君がソーサリモンの言ってた調査員で可愛い娘なんだ?」

「はい、調査員です。……可愛い娘って何のことです?」

ブチみたいな大きな目でまばたきしている。
現在、家に2人と1匹でちゃぶ台を囲んでいる。
とりあえず、警戒の表情を崩さないブチは無視しよう。

「あ、いや、そこは気にしなくていいよ。それで、調査ってどんなことするの?」

「はい、お二人の行動を監視させていただきます。あ、監視といっても行動を制限するとか、怪しいところを見つけて何かしようって気はありません」

「もしそうなら、僕はあんたをムッ殺す!!」

コラコラ、そんな物騒なこと言わない言わない。

「わかった。別に何がってわけじゃないけどよろしくね」

「はい、ではしばらくご厄介に」

ん? ご厄介?

「はい、しばらくこちらに家にご厄介にと」

あ、今なにかが弾ける音がしたような……ってブチ、お前、瞳のハイライト消えてるから!
遠隔兵器でえぐい攻撃しそうになってるから!

「もう我慢ならんにゃ! ウィッチモンとやら、勝負にゃ! 表出ろにゃ! ガルルル」

メンドーなことになったぞ。
あとブチ、それ、別のデジモンになってるから。





「あのー、どうしてこんなことに?」

ウィッチモンはわけのわからないまま、家の前でブチと対峙している。
ブチは手首足首をまわして準備運動しながらウィッチモンをにらめつけた。

「この家はツカサと僕の“愛の巣”なんだにゃ! 邪魔する奴は馬に代わって折檻だにゃ!」

おーい、それなんか色々混ざってるから。
それと、愛の巣とか誤解招くから止めてね、ハニー!

「あはは、なんかすごいことになってますね……仕方ありません、お相手しましょう!」

ウィッチモンもブチの戯れに付き合ってくれるようだ。
いい娘じゃないか。
右手を上げると、どこからともなく身の丈以上の長さをホウキが現れる。
おぉ、ますます魔女っぽい!と頭の足りない考えを浮かべていると、またがって宙に浮いた。高さにして2mほどか。

「にゃにゃ、浮くのはずるいにゃ! 地上で戦うにゃ!」

「と言われましても、そもそも接近戦メインのあなたに対して、魔法使いの私が不利なのは明確じゃないですか」

ブチはすばしっこいし、あんななりで力も強い。
ウィッチモンの言い分はわかる。
しかし、空中戦、中遠距離攻撃ができないブチでは……

「勝負にならないにゃ!」

「はぁ……では、この高さまでならどうです? これ以上の高さになれば私の負けということで」

ホウキに腰かけて、足がギリギリつくかくらいの高さに調整した。
これなら接近攻撃は届く。
地面との摩擦は0のままだから、ブチがやや不利かもしれないが、口出しすることじゃない。
あいつが始めた喧嘩なのだ。

「仕方ない、やってやるにゃ!」

ブチは飛び掛る。
ウィッチモンは後退する。
ブチはあきらめずに必殺技を放つ。

「ネコパーンチ!」

ちなみにブラックテイルモンの正式な技名である。
ブチは決してふざけてはいない。
こぶしを突き出し、ウィッチモンに飛び掛る。
しかし、後退して回避される。
ホウキでホバー状態の相手に予想できたことだ。
このままブチの体力が0になるまで逃げ切れば終わり。
お互い傷つくことなく勝負が終わる。

「ぐぬぬ、なかなかの策士だにゃ。しかーし、僕には奥の手があるにゃ!」

言うと、ブチは左手を腰の辺りに、右手を肩の辺りで握って唸り始めた。
あ、なんか周囲の空気がゆらぎ始めたぞ。
戦闘力の計器があれば、数値がカンストして破裂するやつだ。
って、おいおい、なんだかシャレにならない雰囲気になってきたぞ?

「あはは、なんかガチな感じになってきましたねー……」

「笑っていられるのも今のうちにゃ! 僕は兄弟よりあと1つ多く変身できるにゃ!」

「ご兄弟がいらっしゃるんですね?」

俺も初耳だぞそれ。
ガセネタ乙。元ネタは某劇場版アニメだな。
でもまとったオーラは本物だ。

「そんじゃいくにゃ、変し……うにゃ!?」

突如、ブチが素っ頓狂な声を上げて、宙に浮いた。
長い尻尾をつかまれて逆さの状態だ。

「何をしているのだ?」

「にゃにゃ、なんであんたがここにいるにゃ! はーなーすーにゃ!!」

じたばた暴れるが、尻尾切れたりしないのだろうか?
ブチの尻尾をつかんで宙に浮いているのは、黒い靄。
あれ? めっちゃデジャヴなんですけど。

「お前は目を離せばすぐこれだ。こちらも忙しいのだ、手間をかけさせるな!」

靄から現れたのは赤黒いローブを着たデジモン。
ウィッチモンもただ事ではないことを悟り、俺の側まで来ると、ホウキから降りた。

「あの方は?」

「いや、俺も詳しくは知らないんだけど……」

ブチを宙吊りにしているのはデーモン。
そういや、昨日会ったばかりだ。
思い出したら足が震えてきた。

「エリア管理者がこのど田舎まで、どんだけフットワークが軽いにゃ! 理想の上司にランクインしたいのかにゃ! 投票しておいてやるから、とにかく離すにゃ!! このいけず! 鬼! 悪魔!」

ネコキックでデーモンの顔面を蹴っているが、蹴られている側は意にも介さない。

「無用な争いをするなと言ったはずだ。“お前の力はそんなもののために与えたのではない”のだぞ!」

ブチは急に苦虫をつぶしたような顔をしておとなしくなった。
威嚇するようにすごい目にはなっているが。

「こっちにも事情があるにゃ。エリア破壊とかデジモンをデリートするまではしてないにゃ!」

犯罪じゃなければ何をしてもいいんだという子供の理論だそれ。
デーモンは鼻で笑いながら、ブチを放り投げる。
綺麗な放物線を描いて俺の胸元に落ちてきた。
ナイスパス。

「ウィッチェルニーの客人、調査は自由にして構わんよ。何かあれば力を貸そう。そこの阿呆ネコにでも言ってくれ」

「あ、はい! ありがとうございます!!」

目を丸くしつつも元気に返事をするウィッチモン。
そういえばこの娘の表情、猫っぽいなぁ。
我が家に猫が1匹増えたということか。
デーモンは、俺に目線を移す。
わぉ、油断してたぜ。変な汗が出てきた。

「君には手間をかけるな。昨日のことは私にも責任がある。今度使いを出すから、諸々の事情含めて話をしよう」

あ、意外と優しいかも。
昨日のことって、アスタモンのことかな?
PTSD(心的外傷ストレス症候群)になりかかっているんだ。
アフターケアを所望する。
デーモンは、悪魔の風貌という圧とローブのせいで表情を読み取ることはできなかったが、普段は常識人で温厚なのかもしれない。
だが、さっきみたいに怒らせると怖いタイプ。
デーモンは不気味なワームホールを開いて帰っていった。
そして、デーモン公認で我が家の滞在が許可されたウィッチモンであった。

「よかったです。これで仕事ができます!」

ガッツポーズするウィッチモン。
うん、かわいい。

「ふん、僕は認めたわけじゃないにゃ」

ふて腐れる黒猫。
さて、この2人の仲をとりもつことと、ブチの事情を探る問題が出てきたな。
どうしたものか。





「おぉ、これうまい!! うまいうまい!!」

「おかわりもありますよ」

絶賛、食事中。
ちゃぶ台に並べられた料理に俺は感動していた。
肉と野菜の炒め物、野菜スープ、ご飯……実家だ。おかんの味だ。
炒め物は味噌味っぽくて、回鍋肉に近い。
野菜スープは具沢山でコンソメ味だ。
そして何よりもご飯! 白いぜ、もちもちしてるぜ、暖かいぜ。
ぜひ嫁にほしいな。と口が滑りそうになった。
口に出して言えば、うちの猫の機嫌がさらに悪化するだろう。

「まぁまぁだにゃ」

と言いつつも、口に運ぶ度に耳がピクピクしている。
あれは美味いものを食べているときの癖だ。
本人は気づいていないのだろう。
素直じゃないな。

「お肉が潤沢でびっくりです。ウィッチェルニーは野菜と米は手に入るのですが、お肉は高級過ぎて手が届かないんですよ」

こちらとは逆の世界のようだ。
だったら、ずっとこちらにいてもいいんだよ?とか田舎のばあちゃんのようで、若い娘に鼻の下を伸ばしたスケベなおっさんの台詞が出そうになった。
あぶないあぶない。
俺はおっさんだが、スケベではない。紳士なのだ。

「鼻の下が伸びてるにゃ」

ブチの鋭いツッコミ。
ナイスフォローだ、我が忠義の猫よ。

「ところでお二人は、昼間はいつもどうされているんですか?」

おっと、なかなか痛いところを突いてくる。
ニートよりのフリーターであることがバレてしまう。
この猫にヒモと言われても文句は言えまい。

「ギルドに通っているんだ。森で採集した薬草とかキノコを買い取ってもらって生計を立てている」

嘘は言っていない。
リサイクルできる物を拾って換金している人みたいに聞こえるけど、歴史的に、野原にまじりて竹を取りつつよろずのことに使いけりってあったよな。
……あれはフィクションか。
いやいや、その時代背景に沿った設定のはずだから非現実的ではないはず。
俺は一体、何を必死になっているんだ?

「ツカサ、明日はムシャモンとこの前の森に行ってほしいにゃ」

話題を変えるかのように、ブチがいきなりとんでもないことを言ってきた。

「ばっ、お前、何を言ってるんだ!?」

「もうペタルドラモンはいないにゃ。」

あ、名前間違えずに言えた。
やっぱりあれはボケてたのか。

「どうしていないってわかるんだよ?」

「あの後、ムシャモンとエリアの警備団で調査をしたんだにゃ。データの残滓を確認したら、あのデジモン、カブキモンが変質したものだったにゃ」

カブキモン。
討伐依頼になっていた盗賊団のリーダー。
そんなデジモンが、本来ありえないデジモンに変化したという。
なるほど、ソーサリモンの観測したと言っていた異常なデータがイレギュラーな現象を発生させたのか。

「ちょっと待てよ、そもそもペタルドラモンはどうしていなくなったんだよ?」

「それは明日にでも“助っ人”に聞いてほしいにゃ。僕は別の用事があるから、ギルドでその助っ人とムシャモンと合流して行ってほしいにゃ」

まさかブチから別行動を申し出るとは。
明日は槍でも降ってくるのか?

「わかったけど、ブチは?」

「……不本意ながら、腐れ外道のデーモンのとこに行ってくるにゃ」

「呼び出し?」

「そんなとこにゃ。あいつとのことは近々に話すから、もう少し待ってほしいにゃ」

話す気があるならいい。
これ以上は問うまい。

「……魔女っ娘はツカサに着いていくにゃ。きっとウィッチェルニーにとって有益なものが見られるかもしれないにゃ」

「わかりました。明日はよろしくお願いしますね、ツカサさん!」

お、おぅ、笑った顔も可愛いじゃないか。
ところで、“魔女っ娘”という呼び方はスルーなのね?
この娘、ボケ殺しかもしれない……





翌日。

「息災だったか!」

「えぇ、そちらもお変わりないようで」

ギルドの入り口でムシャモンと再会した。
しかし、なんとも時代劇じみた挨拶だ。
前はこんな人だったか?

「猫の御仁に連絡をもらったときは、なにごとかと思ったが」

「すみません、うちの愚猫が無理を言いまして」

なんだか申し訳なくなった。
しかし、今回のムシャモンの日当はどうなるのか?
まぁそれはどうにでもなるか。
問題は……

「猫の御仁によると、ギルド前で助っ人と待ち合わせて行ってほしいとのことだが」

「よぉー、揃ってるなぁ!」

どうやら助っ人が来たようだ。
一体誰だろう。

「また会ったなぁ、魔法使いのガキィ!!」

「ひっ、あ、あああああああああ」

頭から足先まで一気に体温が奪われ、脱力する。
立っていられず尻餅をついて、痛がる感覚さえ消失してしまう。

「ったく、この前のは冗談だっつの。もう銃口向けたりしねぇから」

「ほ、ほほほほほほんとうですか!?」

落ち着きたくても落ち着けない俺。
向こうから手を差し出してきた。

「ほら、仲直りの握手だ。あー……握りつぶしたりしねぇよ」

ためらいはあったが、その手を握り返した。
しなかったら殺されるかもしれない。
ついでに尻餅をついていた体制から起こされると、ウィッチモンの様子が何か変だった。
眉間に皺をよせて、アスタモンを見ている。

「えーと、初めまして?」

なぜ疑問系なんだ。

「あぁ初めましてだ、魔法使いの嬢ちゃん」

2人が握手を交わすと、アスタモンは口元に人差し指を立てて、しーっのポーズをとる。
ウィッチモンは一瞬きょとんとしたようだが、すぐにうなずいて、薄く笑みを浮かべる。
あやしい……

「どうしたの?」

俺はウィッチモンの肘をつついて聞いてみた。

「いえいえ、今日は退屈しそうにないなってだけです」

営業スマイル的な顔で誤魔化された。
疑惑は深まるばかりだ。
とにかく出発することにした。
ムシャモンはこの前よりもテンションが高くなっていた。

「まさかまさか、ダークエリアの貴公子殿と肩を並べる日がこようとは!」

「大げさ。俺はただの不良だ。好き放題暴れていいときに暴れている内に変な通り名が付いちまったんだ」

謙遜しているアスタモン。
俺が初めて会ったときと雰囲気が異なる。
暇さえあれば、ブラックジョークでからかって来たり、不良番長的に人をアゴで使ってきたりしそうなタイプだ。
ムシャモンとまともな会話をしているのが信じられない。
まさか別人なんて……いや、俺のことは覚えていたし、それはないな。

「大丈夫ですか? 顔色があまり良くないようですが」

「大丈夫だよ。ところで、ホウキは使わないの?」

ウィッチモンが気にかけてくれるのは嬉しいが、彼女はこれが仕事なのだ。
それを考えると心境複雑なので話題を変えることにした。

「あれは急いでいるときか戦闘時のみ使っているんです。魔力消費が大きいんですよねぇ

そういえば、ソーサリモン師匠から魔力量を上げる努力をするよう言われてたっけ?
今日寝る前にはやっておこう。
その前に、魔法使えるようにしなきゃだった。





森に着いた。
もちろん、ノンストップで進んでいく。

「今回で3回目になるが、経験上、やはり不気味なものだな。」

ムシャモンが少し震えている。
この場合、武者ぶるいというよりは、寒気が勝っているように見える。
俺だってそうだ。
トラウマの場所に、トラウマを植えつけてきたデジモンと一緒に来ているわけだから、下手すりゃ精神崩壊起こす案件だぞ。
森は今日の天気が曇りということもあって薄暗い。

「あ、そういや言ってなかったなぁ、あの木の十闘士、俺がぶっ倒したんだ」

「なんと!?」

「あぁ〜……なんとなくそんな気がしてた」

アスタモンの告白に、ムシャモンと俺とで違うリアクションをした。

「さすが、貴公子殿は腕が立ちますな。是非、軽く手合わせいただきたい!」

ムシャモンさん、それは怖いもの知らずにも程があるよ。
いや、ここまで来て、何の関係もないはずのアスタモンが一緒に来るわけないじゃん。
強そうだし、全然嘘ついている感じもないし……信じなかったら殺されるかもしれないし。
俺ヘタレ。
そろそろ例の巨木のある開けた場所に出た。

「っと、ツカサぁ、お前は巨木の近くにいろ! ムシャモンはそのまま動くんじゃねぇぞ!!」

「え? あ、はい!!」

「一体何事……なっ!?」

ムシャモンが驚愕の表情を浮かべる。
そりゃそうだ、アスタモンが銃口を向けているからだ。

「一体、どういう」

「死にたくなきゃ動くな……よっと!」

アスタモンが持つ重火器はマシンガンタイプだ。
一度、トリガーを引けばオートで何十発と弾丸が飛び出す。
しかし今回はマニュアルで撃ったのか2、3発をムシャモンの背後へ飛び出したようだ。
同時に、茂みから2体の黒い小柄な何かが飛び出してきた。
この流れでデジモンなのは明確だが……
アスタモンはマシンガンを構えたまま、そのデジモンと間合いをとる。

「へっ、暴れられるなら歓迎するぜぇ」

俺は指示どおり巨木の近くまで来る。
ウィッチモンも付いてきた。

「いきなり戦闘なんですね」

「どんだけ物騒なんだ」

足が震えている。
こいつはどうにもならん。
茂みから現れたのは黒いアグモンとガブモンだった。
どちらも成長期。
アグモンはを恐竜をデフォルメしたような見た目で、ガブモンはアグモンに毛皮をかぶせたような1本角のデジモンだ。
見るのは初めてだが俺でもわかる。
あれは普通じゃない。
だって、目が真っ赤に光っているのだ。
あれは大体何かに操られているか、幽鬼的な存在と相場が決まっている。
もちろん、2次元設定の話だ。
……そういや今回、ブチがいないから、その手のボケが飛び出さない。
つまり、セルフボケツッコミになるんだな。

「貴公子殿、これはなんと言えばよいやら」

「何も考えずに戦え、死にたくなけりゃなぁ」

アスタモンは相手が成長期だからと油断することなく、マシンガンで弾丸をばら撒いた。
しかし、読まれていたのか、2体の黒いデジモンたちはすばやく回避し、木の上を跳び回り、火炎をはいてきた。
銃身や刀剣で跳ね返すアスタモンとムシャモン。

「むぅ……どちらも成長期のはずだが、なんたる威力!」

「ちっ、面倒くせぇ。思いっきりやらせてもらうぜぇ」

アスタモンは地面を蹴って、アグモンたちのいる木に着地した。
マシンガンを捨てて、かく乱するように周囲の木に飛び移る。
2体の黒いデジモンはそれに釣られて、動きながら攻撃を再開する。

「今だっ、ちえすとぉおおおおおおお!!!!」

アグモンが1本の枝に着地した瞬間、ムシャモンが勢いよく飛び出し、両断する。
1本の枝のみに狙いを定めて待っていたのだ。

「むっ、これは……」

アグモンは消滅したが、ムシャモンは釈然としない様子で、愛刀の刀身をにらめつけた。
アスタモンは残るガブモンと対峙した。

「なんだよ、言いたいことがあるなら遠慮なく言ってみろよ。故人いわく、口に出さざるは石のごとしってな!」

違ったか?とアゴに手をあて、ガブモンに背中を見せる形で視線をそらした。

「ウガァアアアア」

その隙を逃さなかったのか、ガブモンが飛び掛ってきた。

「まっ、どうでもいい……かっと!」

振り向きざまにハイキックを放ち、ガブモンに直撃、背後の木に強く叩きつけられ消滅した。

「天の……おっと、これ以上喋るとボロが出らぁな」

鼻で笑いながら、巨木の根元に視線を移した。
視線の先は……俺? なにか?
そういや、今の攻撃は格好よかったが、う〜ん、どこかで見たような技だなぁ。
俺のツッコミ魂がワナワナしている。
アスタモンとムシャモンがこちらにやって来た。

「ったく、妙なやつらだと思ったが、大したことなかったな。どうしたムシャモン?」

神妙な顔をしたムシャモン。

「刀に違和感がありましてな。斬った感覚がなかったもので」

アスタモンも気持ちの悪さを感じたのか、頭をかいた。

「そういや、ガブモンの方も木に激突する時の振動っつーのか?あれ無かったな」

となれば、やはりあれは幽鬼の類になるのかな?
でもデジモンの幽霊っているのか?
ゴースト型のデジモンがいるのは噂で聞いたことがあったけど……
まぁ考えていても仕方ない。

「ところで、今日はどういう調査を?」

目的も手段もはっきりと聞いていなかった。
一度、調査団が確認しているなら、何を確認するというのか。

「あぁそれな、俺たちがここに来たらどうなるかって調査だ。ビンゴってやつな」

アスタモンは俺とウィッチモンが身を寄せていた巨木にミドルキックを放った。
折れはしなかったが、鳩時計の時報のような音が鳴って、巨木の内側から開いた扉から何かが飛び出した。

「うわわっと……いきなりなんなのさ! って、アスタモンかよぉ」

子供のような声と共に、木製のカラクリ人形みたいなデジモンが出てきた。

「ふん、てめぇあれだけ騒がしくしてやったのに、顔のぞかせるくらいしろよ」

「うるさいな、僕は今忙しいんだ。こいつを今日中に完成させるんだ!」

手に持っていたのは、手の平サイズの立方体で1面1面が違う色になっている物体だった。
うん、間違うことなきルービックキューブだ。
デジタルワールドにもあるんだなぁ。

「ピノッキモン、お前まだ完成させてなかったのかよ!? どんだけ時間かけてんだよ。そら貸してみな」

ピノッキモンと呼ばれたデジモンからキューブを奪い取ったアスタモンは、手早くキューブを数回回転させて、投げて返す。

「ほらよ」

「あああああ、なんでやっちゃうんだよ!? あと少しだったのに」

アスタモンは名人のように速攻で完成させてしまったようだ。
このデジモン、一体何者なんだ!?

「うるせぇ、あと少しってレベルじゃねぇよあんなの! それよりどうだった?」

「ううう……あぁ、こっちで観測できなかった、これで満足?」

恨めしい目線をアスタモンに送るピノッキモン。
俺とウィッチモンはきっと置いてけぼり。
ムシャモンは未ださっきのアグモンの件が気がかりらしく、一人でぶつぶつとぼやいている。怖い。

「やっぱ“ゴースト”かぁ、うっし、手間は省けた。一度戻る……」

アスタモンの声が途切れる。
見ると、森の奥をにらめつけている。

「やはり終わってはおらぬようだな」

ムシャモンは刀を構えて、並び立った。
俺はすぐに巨木にしがみついた。

「し、知らないからな。僕は何も知らないからな!!」

ピノッキモンは木の中に帰っていった。
取っ手もない扉なので、外から開けることかなわず。
まぁ中が安全とは限らないんだけどね。

「風の流れが変わりましたね……」

ウィッチモンが周囲を見回しながら言う。
何のことかわかるはずもない。
気配とか殺気とか第6感的なものはないし、攻撃を防ぐ魔法も使えない。
せめて大きめの板でも持ってくればまだマシだったかもしれない。
いやいや、ムシャモンみたいな腕ならそれも無意味なんだろう。
奥の薮からまた2体のデジモンが出てきた。
やはり先ほどの黒いアグモンとガブモンだ。



つづく


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       No.4995 転生したおっさんは元飼い猫とデジモンやっています1−2tonakai2018/05/29(火) 21:31
       No.4996 転生したおっさんは元飼い猫とデジモンやっています1−3tonakai2018/05/30(水) 21:57
       No.5000 転生したおっさんは元飼い猫とデジモンやっています1−4tonakai2018/06/02(土) 19:04
       No.5001 キャラ紹介と今作についてtonakai2018/06/02(土) 19:18
       No.5004 頭空っぽの方がネタ詰め込める夏P(ナッピー)2018/06/10(日) 17:03