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ID.4964
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2018/04/18(水) 22:31


それは悪魔の様に黒く 六話 四
亜里沙は夢を見た。

襲ってきた緑色の小柄なデジモンの放った矢が世莉の太ももに刺さる。なおも攻撃は続けられ、委員長が来るタイミングでそのデジモンは姿を消し、取り逃がしてしまう。

聖を呼んで治療こそしてもらうもののその傷跡は残る。

跳ね起きた亜里沙はまずその場にいない自分を呪った。襲われていたのは世莉と真田と縁だった。

時間は放課後、場所は体育館。そこを使っている部活は一つでそれもそこまで活発な部活ではないから、放課後に誰もいなくてもおかしくはない。鍵は去年付け替えたばかりの電子錠で、世莉達はおそらくデジモンの誰かの手でハッキングして入ったのだろうことが予想がついた。

その場に、人の姿はなかったから遠くからデジモンだけ差し向けたのだろう。

そこにはいない。でも、その時の居所自体は想像できないわけではない。

亜里沙はぐっしょりとかいた汗も拭かずに平岡にメッセージを送る。ある程度絞れている犯人の情報も添えて。

あとは平岡が何とかするまでそこで耐える為の仕込みをしなければいけないが、既に夜は明けている。ユノモンの為の仕込みをするには時間が足りない。

ふと、呼び出されたメンバーを思い出して亜里沙はもう一度平岡にメッセージを送った。犯人の目星は付いた。あくまで目星だけでしかないし、亜里沙は疑わしきは罰せずでなければならないが。

ふらりと立ち上がって亜里沙はユノモンの出すタオルも取らずに洗面所に行って荒々しく顔に水をぶつけた。

もし、確たる証拠があったら殺していたかもしれないと思って亜里沙は自分を責めた。赦せないのは確かだ、でもまだそれは確かではない。推測に過ぎない。世莉に対して行われたのもまだ行われてないことだ。

それにそもそも、殺してやりたくても、殺してはいけない。それは獣にも劣る考えだ。





昼休みに五浦に手紙という形で警告する世莉を見て見ぬふりをして、五時間目の授業を受けた縁の机にいつの間にか一通の手紙が入っていた。

放課後体育館に来い。お前が依頼をしたのは知っている。探偵と黒木も連れて来い。

縁はそれを見て震えた。

「何それ?」

「あ、えと……こ、この前の相談の関係だから……」

ゆうちゃんは巻き込めない。縁は咄嗟にその手紙を隠した。

「……そっか、今日の放課後もまた?」

「う、うん。また」

できるならば一緒に帰りたかった、でも決着を付けないといけない気がした。

それに、縁は勝ち目もあると思った。昨日は難しいというような事を言っていたが、スパーダモンがいる。本人達も正直武器になるとどうなるのかはよくわかっていない。わかってはいないが、世莉といるレディーデビモンも真田といるマミーモンも武器を持って戦うには向いていそうなデジモンに見えた。

ふと思いついてメモに走り書きをした。犯人に呼び出されたので行ってきます。もしも、明日あなたの後ろの席の人間が休んだらあなたも危ないかもしれないのですぐに白河 聖さんを頼って下さい。最後に今日の日付を書いて、五浦の机の中に入れた。

それから世莉と真田が帰る前に訪ねて、世莉と真田と、世莉と一緒にいた亜里沙を連れて体育館に向かった。

体育館に入ると、ステージの上に小さな人影があった。

世莉の見た姿を出力したものと同じ、緑色の狩人はニタニタと笑っていた。

「……いやだなぁ、まるでこれから戦うみたいな面構えじゃないか。私は見ての通りの小柄でプリティーでか弱いデジモンなのだから呼び出して戦うなんてことはしないさ」

勝ち目がないからねとそのデジモンはケラケラ笑った。

「じゃあどうすると?」

世莉の背後からスッと現れたレディーデビモンが肥大した左手の指をこきりと鳴らしながらそう聞いた。

「私の目的は白河 聖だ。そこまでは調べただろう?白河 聖のお使いだものねぇ、でも逆に言えば私の狙いはそういうものだけだ。白河 聖や委員長のようなもの、周りに影響を与えるタイプの良い人達が私の狙い。せっかく力があるのだからもっと愉快にやりたいだろう?賛同してくれるならば何も手なんて出さないさ」

だから、とそのデジモンは少し考えるように顎の辺りに四本ある手の一本を当てた。

「これは、つまるところスカウト、ということになるのかな?私の速さを見切れるデジモンはそう多くなかろうと自負しているのでね。一緒にもっと自由な学校にしようじゃないか」

それに一番最初に首を横に振ったのは縁だった。

縁は見ていた。目の前で何度も何度も繰り返される陰湿なそれを。何度も何度も執拗に繰り返されわけもわからないままにどんどんどんどん暗くなっていくその背中を。

特に仲が良かった訳でもない、自分の能力を使っても相性がいいようには感じない。

世莉達に言った理由は建前だ。

本当は怖かった。もしもあれが自分だったらと思うと怖かった。世界から向けられる理不尽が存在するのが怖かった。それを誰も助けてくれないのが怖かった。

誰か助けてくれる人がいると信じたかった。そんな事を言うことも縁にはできなかった。どう見たって既に弱いのに、わかっているのに、せめてもの虚勢を張りたくて、実は強かなのかもなんて思われる方が良いと思ってそう言った。

今の縁は別のものが怖い。

助けてくれる誰かはいた。目つきが悪かったり意味わからないぐらい前髪が長かったり理解できないロマンを持っていたりはするけれど。

今怖いのは、自分が理不尽の側に回ることだ。助けてくれない誰かより助けてくれる誰かになりたいと、そう思った。

「……彼とは特に仲がいい訳でもないだろう?私は知ってるよ、君を知っている。友達の少ない可哀想な子だ。私は君の友達になることもできる」

でも友達になれないならばと言うそのデジモンに体をびくりと跳ねさせた縁の手を亜里沙が握った。

「それは……嘘、だと思う」

姿を現したアイギオテュースモンは一つウインクをした。平岡にメッセージを送り終えたという合図。平岡が本体を見つけて押さえられるかどうかという戦いになる。

亜里沙の見立てでは勝ち自体は決まっている。あとはどれだけ払うコストを減らせるかの戦いだ。

「だってあなたは既に縁さんの友達だから」

何を言っているのかという顔をする世莉達に亜里沙は今わかったんだけどという嘘を吐いた。

それはより確信に近くなったが、わかったのは夢で見てからだ。

「……はー、となると皆殺しか味方にするかしかないか……でもこのままだと仲間になってくれなさそうだしなぁ……」

どうしようかなぁという態度から予備動作なく放たれた矢をアイギオテュースモンの腕の鞭が打ち落す。

亜里沙は縁をしゃがませるとその上に覆いかぶさる様にし、すぐにそれに世莉が続く。そして最後に少し躊躇いがちに真田が体を覆い被せた。

「絶対に、身を起こすんじゃねぇぞ……」

マミーモンがそう言って機関銃をどこからか出現させて握る。

スパーダモンは戸惑いながらレディーデジモンの元に向かうと、その姿をレディーデビモンの体程のサイズの馬上槍に変えた。

その槍を手にとってレディーデビモンは眉を顰めた。あまりに軽すぎる、これは果たして武器として機能するのかという軽さだ。

軽さに眉を顰めた。その時にそのデジモンは動いた。

世莉の目でも来るとわかっている場所に来た姿しか捉えられないそれは、デジモン達の目でも追うのがやっとのスピードだった。

人間を狙って飛び回りながら撃たれる矢はありとあらゆる方向から放たれている様にすら感じて、レディーデビモンやマミーモンが叩き落とすのも追いつかず、一本二本がマミーモンの腕に刺さっていた。

このままだとジリ貧なのではないか、そう考えて仕方ない状況だった。

矢の処理できる数は限られている。それを敵の攻撃して来る数は超えてくる。しかし、当たりどころが悪ければ人間の身では死んでしまうから避けることもできない。

レディーデビモンが持つ槍は軽かったし、それに反して矢を弾く時にはまるで風船でも弾いたかの様に負担はない、どういう仕組みかわからずともとにかく使えるものなのはわかったが、いかんせんレディーデビモン自体の速さが足りなかった。

だからその内に世莉は矢を受ける筈だった。足が狙われたのは逃さない為であり、レディーデビモンやマミーモンの防ぎにくい高さだと学習するからだ。

でもその夢と違うのは亜里沙とアイギオテュースモンがいることだ。

唐突にバシッという音と共に、一度だけアイギオテュースモンが振った鞭の先端がそのデジモンを捉えて弾き飛ばした。

そのデジモンは一瞬訳がわからなかったが体育館の壁を蹴ってもう一度同じ様にしようとし、そしてまた同じ音と共に鞭に殴られた。

亜里沙は眠っている時に夢を見る。基本的に夜に寝る場合はユノモンはその思考に繋がってはいない。亜里沙が怒りを抑えられそうにない時に諌められなくなるからだ。

でも今は違った。

亜里沙が縁をしゃがみ込ませて覆い被さった理由の一つは、眠るまではいかなくとも、余計なことに脳を使わない状態が作れるからだ。

亜里沙が眠りながら予知夢を見るのはその負担が大きく、立っていることもままならず、視界も二重になったりしてしまうからだ。

矛盾した様にも思えるが、亜里沙は起きたまま予知夢を見ることができた。

数秒後に訪れる危機の未来が見えたからといってマミーモンやレディーデビモンは速さが足りない。それはアイギオテュースモンもそう変わらない。自身の動きという点ではとても及ばない。

しかし、鞭がある。

鞭、というのは武器としてはあまり優れたものではない。大きな音を出し、かなりの痛みを伴うが、肉体へのダメージは見かけほどではない。拷問具として分類した方が良いものである。

ただ、おそらく火薬を使わずに人が扱う最速の武器でもある。その先端は人の力でも音速を超える。それを振るうのがデジモンであればどうなるかなどは言うまでもない。

正確に予知で見た場所に持っていければその先端はその瞬間、音速を遥かに超え周囲に衝撃波を撒き散らす。ほんの少し逃げたってほんの少ししか逃げられなければ当然その衝撃波に巻き込まれる。

速いだけならば何とかなるというアイギオテュースモンの根拠はこの鞭だった。

ただ一つ、ただ一つだけ問題があったとすればそのデジモンが単なる速いだけのデジモンではなかった事だ。

戻ろうとする度にアイギオテュースモンの鞭に殴られてそのデジモン、ザミエールモンは憤慨していた。

ザミエールモンは究極体ではない。自分の性質のせいで安易に宿主を食ってしまう事もできなかったし、そもそも通常の進化の枠から外れてもいた。

でも、エカキモンやスパーダモンと異なる点は特化したのが戦闘に向いた部分だった事だ。

ピタリと、鞭の届かない距離まで下がってザミエールモンは一つため息を吐いた。

ある程度ならば、デジモン達は大きさを変えられる。大きくなればなるほど使うエネルギーは当然大きくなる。そして、小さくなればなるほど使うエネルギーは小さくなる。

ザミエールモンはサイズの調整が非常に得意なデジモンであったから、それだけ体を小さくしていた。

ザミエールモンは、特別な能力などなかった。身体中に仕込まれた武器はある。でもそれも全て物理的なもの。エンジェウーモンの癒す能力や、光の矢の様な人間の知識でわけのわからない様なものは扱えなかった。

特化したのはその肉体の強さ。

バネの様に飛び出すことを可能とする強靭な筋肉、脚力からもたらされる高速の世界に対応する思考力をもたらす優秀な脳、その速度に耐えうる頑健な肉体。

それは究極体にも遜色ないもので、しかし同時に欠点を一つ抱えていた。

それが燃費の悪さ。強力だがその分のエネルギーを常に使う。だから姿を出さない、だから自分が出なくてもそのまま移動したりできる様に寄生先の人間を食わない。

だから温存していたのに使わざるを得なかった。イラつきながらザミエールモンはむくりむくりとマミーモン達よりは一回り小さく、人間よりは一回り大きくなるまで体を巨大化させた。

マミーモンは一瞬何が起きたかわからないまま天井を見上げた。

レディーデビモンは隣にいたマミーモンが殴り飛ばされるまで反応すらできなかった。

アイギオテュースモンの鞭はそのほほを確かに殴りつけていたがザミエールモンはほんの少し首を傾けただけでまともなダメージはなかった。

「実際ここまで追い込まれるとは考えてなかった。実に素晴らしい、実に素晴らしいからそろそろ素直に言う事を聞いて欲しい」

レディーデビモンが馬上槍で殴ろうとしても、無数の黒い蝙蝠をまき散らしてもザミエールモンは余裕だった。馬上槍は軽く避け、蝙蝠はそもそも意に介さない。

アイギオテュースモンはその今出せる手札で対応できない状況に、覚悟した。


スレッド記事表示 No.4961 それは悪魔の様に黒く 六話 一ぱろっともん2018/04/18(水) 22:22
       No.4962 それは悪魔の様に黒く 六話 二ぱろっともん2018/04/18(水) 22:27
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       No.4966 それは悪魔の様に黒く 六話 あとがきぱろっともん2018/04/18(水) 23:12
       No.4970 た、探偵だと……!?夏P(ナッピー)2018/04/22(日) 23:18
       No.4972 かんそうマダラマゼラン一号2018/04/24(火) 01:18
       No.4988 感想偏心ぱろっともん2018/05/02(水) 21:22