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ID.4963
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2018/04/18(水) 22:28


それは悪魔の様に黒く 六話 三
「……君は狙われている」

「……?」

五浦は突然すれ違いざま囁いたその男子生徒に足を止めて振り返った。

それを感じてかその男子生徒もくるりと振り返ると真っ直ぐにその目を見た。

「君は不幸ではなく、君の不運は仕組まれている。事実は小説より奇なりとはこういう事を言うのかもしれない」

最近確かに嫌なことが続く。それに腹を立てて人に憎しみをぶつける自分も嫌で、可能な限り気がすむまで体を動かしたり、こうして人気のない普段通らない道を散歩をしたりしながら帰っている。

「……なんなんだよ」

その言葉に馬鹿馬鹿しいと五浦が言えなかったのは答えを求めていたからだ。自分は何故こんな間に合わなければならないのか、昨日は助けてくれた人もいたが毎日誰かが助けてくれるわけではない。

それが仕組まれたものと信じたわけではないが、理不尽の答えを聞きたかった。

「そう睨まないでくれ。でもその反応はいいと思う。さっきの言葉はバイロンという詩人のものだが彼はこうも言っている。推考しないものは偏屈者、推考できない者は愚か者、推考する勇気を持たぬ者は奴隷である。さっきの一見馬鹿馬鹿しい言葉をも考えようとする君は……少なくとも偏屈者でも愚か者でも奴隷でもない」

そしてこうした存在が、君を不幸に見せかけたものだとその生徒が言うと共にその後ろに明らかに人ではないミイラ男が現れる。

その爪は長く、歯は尖り、黄色く縦に瞳孔の入った人から程遠いその目は宝石の様にその存在を高らかに主張していた。

「……えと、男の子って、その、こういうのが好きなんです……かね?」

歯の浮く様な恥ずかしい台詞達に縁が少し引いた様な顔で二人を見る。さぁと答える世莉と亜里沙と共に物陰からその姿を覗いていた。

「……ただ、私の知ってる女子でもこういうのが好きそうなのはいるから結構いっぱいいるのかも」

蘭の顔を思い浮かべながら世莉はそう答える。男子にどううまく話せばいいのか、その問題はなかなか異性間どころか同性間でも浮き気味の世莉達には厳しい問題だ。信じて貰う必要もあるし、場合によっては近くにいてもらって嫌がらせを防いでも欲しくある。

それが女子だと難しい。悲しいことに男女が側にいるだけで恋愛関係だと考える頭の中の世界の色が乏しい人間は数多くいるし、不思議なことになぜか声が大きい。嫌がらせから救っても別の苦悩を抱かせる可能性があり、それは当然その相手である自身にも向かう。

それに、と世莉は私にはわからないという目を向ける縁をちらりと見る。探偵を使うことは報復を避ける意味もある。

探偵達にはこっそりと世莉から一つお願いをした。何かあって報復を受けた時、誰からの依頼でそうしたかと聞かれたら縁の名前を出さないこと。出すのは黒木 世莉の名前だけにする事。亜里沙にも聞こえない様に世莉はそう言った。

だって、縁に危害が及んだら白河さんに何言われるかわからないし、亜里沙に危害が加えられたら自分が困る。そう世莉とレディーデビモンは話し合った。

「頑張ってよ、真田くん……」

探偵達こと真田とマミーモンは説明にうってつけの能力を持っていた。真田の能力は眠気や反射といった生理的に行動が強制されるのを抑制できるというものだったが、ネクロマンサーであるマミーモンには常人に見えないものを常人にも見せる事を可能にする力もあった。

それは長く保つ能力ではなかったが、その力で五浦は自分に寄生するデジモンを見る。

「もしかしてこいつが……?」

「それは違う。そいつは今は君に寄生しているだけの存在。知ってもらいたかったのは意外とそうした存在が身近にいる事、そうしてそうした存在を使って人を傷つけるやつが君を襲う不幸の正体。ちょっと風変わりな嫌がらせさ」

「それをしているやつっていうのは……」

その言葉に快調に舌を回していた真田の言葉が詰まる。

「……それは、まだ調査中だけども。依頼人の方針なんだ、君が追い詰められてしまわない様に明かして欲しいとね。捕まえることより君の安全を、理屈より感情をと考えればバイロンと同様のロマン主義に近いのかもしれない」

ふふふっ、と誤魔化しながら気取ったように笑う姿に物陰から見ていた縁はついに目を背けた。

「ちなみに彼はギリシャ独立戦争に参加した事でも知られているね。ギリシャ独立の為にイギリス人でありながら立ち上がり、そして亡くなった。彼の献身にギリシャの人々は応えるべきか応えないべきか、君はどう思う?」

怪しい展開になったと世莉と亜里沙は聞き耳を立てる。戦えなんて方に持っていかれたら安全とはという話になってしまう。

「……それは、応えるべきだと思う」

レディーデビモンにマミーモン通じて止めさせようかと世莉が考え始めると、ふっふっふと真田はもう一度笑った。

「なんてね、その意気込みは買うが今の君にできることはないよ」

なんなら自分にもないという言葉を真田は呑み込んだ。既に時間は放課後、今日の内に世莉は廊下ですれ違うようにし、五浦を襲う不幸の正体を見た。そして既にその姿はデータとして携帯に移され、聖に送られている。

「目的も何も調査中だからね、君は早まった行動に出なければそれでいい」

真田が踵を返して歩き去ろうとする。世莉達もいつでも単に通りがかっただけに見える様鞄を持ち上げる。

「……そう、か。ところで……」

「これ以上聞きたいことがあるならこちらへ、尤も、守秘義務があるから期待に応えられるかはわからないけどね」

そう真田は名刺らしき紙を無造作に放り投げた。

「……流石に恥ずかしくなってきたな」

マミーモンの呟きにやめないかと真田も小声で返す。角を曲がって世莉達の前に来た時にはその耳は真っ赤になっていた。

「……ナイスファイト」

言葉に困った世莉のその言葉に真田は掌で顔を覆った。

とりあえず喫茶店に引き上げようかと亜里沙が助け舟を出すと真田は早足で喫茶店に向かった。

世莉達はあくまで一緒に帰っているフリをして、その横を濡れた名刺を持った五浦が早足で通り過ぎていく。路面が濡れていたらしい。

「僕が見たことがあるデジモンだった」

喫茶店に世莉達が入ると、平岡が真田の前に座っていた。

机の上には一枚の現像された写真。緑色の帽子に複数本の矢と弓を背負ったデジモン。靴や体を覆う鎧の様なものがあらかた歯の様な装飾が付いているのがどこか不気味な印象を与えた。

「誰についてるかはわからない。だけど強いデジモンなのは間違いない」

ブラックのコーヒーを一口飲んで平岡は苦い顔をした。

「……危険なやつだよそいつは。誰かわかったらすぐに教えて欲しいぐらいに危ない。キツネは少なくとも殺しはしなかったけど、そいつは聖の命を狙ったことがある」

命を、と言われて縁は咄嗟に亜里沙の袖を掴んだ。

「……詳しく。場合によっては真田くんもかなり危ない事になるし」

世莉がそう言うと、平岡はコーヒーに砂糖を一個落とした。ピチャッと飛沫が机の上に飛んだ。

「半年くらい前かな?聖といる時に聖の頭をそいつは狙った。セイバーハックモンが叩き落とすとそいつは直接狙いに来たけど、セイバーハックモンとエンジェウーモンとを同時に相手取るのはキツかったみたいで諦めて逃げていった」

本当にそれぐらいしか見てないと平岡はコーヒーを一口飲んでざらざらっと何個か砂糖を入れた。

「誰に付いてるか調べる為に追ったりしなかったの?」

「追ったけど追えなかったんだ。腕や尾で対応するのはできたが速過ぎて追いつくことも難しく、深追いしてたら聖の守りがいなくなるから追えなかった」

顔だけ出してセイバーハックモンがそう忌々しそうに言った。平岡はまた一口飲んで今度はミルクを入れた。

とにかく守りを固める様に、一人で出歩かない様にと釘を刺して平岡は残りはあげると飲みかけのコーヒーを世莉に突き出して早足で立ち去った。

「……レディーデビモン、率直に答えて欲しいんだけど」

「そうね、これは私が勝てない敵。セイバーハックモンは今のところ委員長除いたら私が見た中では一番強いかもしれないぐらいだし……」

でも逃げることも難しいだろうなと世莉は平岡の飲んだコーヒーに口をつけて一気に飲んだ。口の中にジャリジャリとした感覚が残る。それが不快で世莉は眉を顰めた。

「あれで勝てないなら俺に勝てる敵でもなさそうだな……」

マミーモンも帽子の位置を直しながらそう言う。

それを見ながら亜里沙はアイギオテュースモンに聞く。ユノモンにならずに倒せるかどうか。

倒せなくはない。速いだけなら倒せる。でもだけじゃなかったら、難しいと思う。

アイギオテュースモンの返答に亜里沙は少し覚悟した。世莉の前にユノモンを晒して世莉から離れる事になるかもしれない覚悟。

亜里沙は強すぎてはいけない。お人好しで優しくて甘くて不器用で、ケーキの上に乗っている砂糖細工の人形のような存在でなくてはいけない。それだけであってはいけない。

世莉に手を引かせるという選択肢は亜里沙にはなかった。

「可能な限り素早く、見つかる前に見つけるしかないか……」

でもどう調べるか。聖も見つけられていないということは常に潜伏しているか、寄生先の人間とは大抵離れて飛び回っている可能性が高い。見つけることも難しく、見つけても人間部分が誰か突き止めないと行動を制限することは不可能に近い。

「……そもそもどういう人物なんだろう」

真田がそう言ってメモ帳を二枚破いて見せる。

五浦に嫌がらせ。白河殺害未遂。それぞれ左上の方にタイトルが書かれていて少しだけ説明が書かれている。

「やってることの規模が全然違う。というか違いすぎると思う。しかも半年前は大胆で今回は姿をほぼ見せてすらない……これは……」

これは、に続く言葉を全員が期待していると、真田はどういうことなんだろうと続けた。

「えと、そういえばなんだけど、嫌がらせに気づいたのはいつから?」

「あ、え、九月に席替えした時にはもう、よく転んだりしてたし、人とぶつかって謝ってるのもよく見たし、その頃からだと思う……デジモン関係って、そう、わ、かったのはスパーダモンにあってからだから、その、最近だけど……」

もうすでに季節は二月の半ばだった。とすれば少なくとも四ヶ月半は経っている事になる。

「ちょっと、気になることがあるから、その、白河さんに聞きたいんだけど……」

世莉の携帯から亜里沙がそう言ってメッセージを送る。

質問は、五浦にはいつからデジモンが付いているか。回答は少なくとも夏休み中からというもの。今度の返事はすぐに来た。

「……半年前も夏休み中だよな。この時期に何かあったのか……?」

真田に今度こそかと世莉や縁が期待した目を向けたが、いやわからないけどと真田は頭を掻いた。

「……えと、これは私の想像なんだけど……」

コートの襟を立てて自分も思いついてないことを隠すマミーモンには視線を向けず、机の上の一点を見ながら亜里沙が話し始めた。

「もしわかっていたなら、委員長がいるって、わかっていたなら、そんな大胆な、白河さんを殺そうとするなんてことしないと思う……あと、平岡さんの事も知らなかったと 、そういうことだと思う」

「……確かに、でも夏休みの時点で白河と平岡とはわりと知られてはいた。探偵やろうとしたのは六月ぐらいからだけども、その時点で委員長一強で次いで白河、一歩二歩遅れて稲荷の構図はできていたから……」

知らないというのもおかしい気がするんだよなぁと真田が言うと。

「多分だけど、その時期に、その夏休みに、そのデジモンは初めて外に、頭から、出て姿を持った。ということなんだと思う。白河さんを狙った理由は、デジモンなのかそれとも白河さんという人に関わっているのかわからないけど……その時期に急速に頭の中でデジモンが成長したんだと、思う」

「きゅ、急速な成長って……その、何が……?」

縁がそう言って自分の後ろをちょいと見ると、その横に姿を現したスパーダモンは首を横に振った。

世莉がレディーデビモンはと斜め後ろを見るとそこに現れたレディーデビモンはそうねと頬に手を当てた。

「……私達は、宿主の脳内で成長する。成長するのには脳に刺激があることが必要、だと思う」

「逆に言えば急速に成長したならば、そこには何かその宿主の人間にとって大きな刺激となる出来事があった、のかもしれないな」

マミーモンがレディーデビモンの言葉を引き取って繋ぐ。

「……その、それが、どう、殺そうとしたり、嫌がらせに繋がるの?」

「……それは、わからない。わからないけど、あまりにも陰湿、だと思う。今回のことは、白河さんを襲ったのと時期が同じ、だとすると。だから、そこに理由があって、それは多分、白河さんを襲った事に起因するんだと思う」

それで、ここからは本当に推測の推測でしかないんだけどと亜里沙は自信なさげに続ける。

「白河さんを襲って懲りた、訳ではないと思う。白河さんを襲って、できなくて、今回のことを仕組んだんだと思う。次は成功させる為に」

「で、でもそれがなんで……」

「えと、多分だけど、自分が何か苦しさや何かでデジモンを成長させたから、だと思う。そうやって苦しめて強いデジモンに育てて、助けて味方にする。マッチポンプ、みたいな感じ……」

辻褄は合う。辻褄は合うがまだ疑問は残っている。

「とすると、なんで五浦に目をつけたか、がわかれば特定に繋がるかもしれないか……」

真田の言葉に亜里沙は首を横に振る。

「えと、デジモンは本人の本質を表す、みたいなことを白河さんは言ってたけど、多分、それって、デジモン達から出てくるものだと思うから、普遍的に。だから、蛹?みたいな姿に、伸び代を感じた、のかも」

亜里沙の説明に少し周りがぽかんとした中で世莉とレディーデビモンだけが頷いていた。

「……私達の外見や能力の違いはおそらく宿主の違い。成長するものとか、これから変わる存在、みたいな感じで蛹の姿をしてるなら、何かしら優秀なデジモンになると当たりを付けてもおかしくない、か……」

「確かに、基本的には見たって何もわからないんだから、その程度でも伸び代が見えたらとりあえずその人にってのは充分あり得そう」

レディーデビモンと世莉の言葉に亜里沙も頷いた上でもしかしたらと付け加える。

「もしかしたら、その人はそういう、人を見る目、みたいなのを待ってるのかも……白河さんとか縁さんみたいな、感覚的にわかる何か」

亜里沙は危機感を覚えていた。もしそういう能力ならば自分達が追っていることに気づくかもしれない。世莉の無事は確保できる。でも、世莉の精神的な無事までは確保できない。

今できるのは気をつけるよう促すぐらい。

ただ、この考えもそもそ推測だらけで確定したものではない。どちらも愉快犯だったり、片方は怨恨からで片方は愉快犯的で行動に差が出てるなんて事も大いに考えられる。

わかっていて亜里沙は言う。この犯人はとんでもなく凶悪なのだと。そう言わないと世莉が深入りしすぎてしまう、縁や亜里沙、真田の安全の為にも後は委員長や平岡に任せようと言える方が世莉は安全。

「……じゃあその事も伝えなきゃ。五浦くんにも伝えておかないと、私達はマッチポンプできる形をすでに崩してるし、そうなった事を五浦くんも知らないと助けを求める事もできない」

でもこの反応だ。亜里沙は知っていた、世莉はそういうことを言う。

「じゃあ俺が……」

「真田くんは既に接触してるし、可能な限り姿を潜めた方がいいと思う。私は、亜里沙さんとかといつも一緒にいるし委員長と知り合いだって事もある程度バレてるみたいだし、比較的襲われにくいと思う」

委員長に言って代わりに言ってもらうことを世莉は選ばない。それも亜里沙にはわかっていた事だ。委員長に言って、実際に動くのはおそらく葵だ。わかってしまわない方がいいに越したことはないから、委員長に比べて地味な葵が話しかける事になる。だから世莉は自分で行く。

ユノモンには犯人を見つけられる力はない。おそらくは、そういう効果を期待して当時行われた何かを再現すればユノモンはそれに応える能力を発現する。

ただ亜里沙はそれを知らない。だから使えない。

だから見ているしかない。聖に頼るという手もある。でもそれをするのは亜里沙らしくない。聖が普通に連絡先を持っていなければまず間違いなくハッキングする。

亜里沙はそれを良しとしてはいけないし、気づかない程亜里沙は馬鹿だと思われていない。

「……その時には、縁さんは世莉さんのこと知らないフリしててね」

亜里沙にできるのは世莉の意思に沿うようにそうやって世莉だけが狙われるようにするだけだった。


スレッド記事表示 No.4961 それは悪魔の様に黒く 六話 一ぱろっともん2018/04/18(水) 22:22
       No.4962 それは悪魔の様に黒く 六話 二ぱろっともん2018/04/18(水) 22:27
       No.4963 それは悪魔の様に黒く 六話 三ぱろっともん2018/04/18(水) 22:28
       No.4964 それは悪魔の様に黒く 六話 四ぱろっともん2018/04/18(水) 22:31
       No.4965 それは悪魔の様に黒く 六話 五ぱろっともん2018/04/18(水) 22:37
       No.4966 それは悪魔の様に黒く 六話 あとがきぱろっともん2018/04/18(水) 23:12
       No.4970 た、探偵だと……!?夏P(ナッピー)2018/04/22(日) 23:18
       No.4972 かんそうマダラマゼラン一号2018/04/24(火) 01:18
       No.4988 感想偏心ぱろっともん2018/05/02(水) 21:22