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ID.4883
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2018/02/15(木) 13:38


それは悪魔の様に黒く 三話 後
着いた先は公園のトイレで、竜美が振り返るともう、国民的なアニメに出てたようなピンクの扉は宙に溶けて消えて行くところだった。

「はぁ……なんとか、残った訳ですが……やっぱりイマジネーションが単なる模写だと足りてませんで……」

エカキモンが疲れた疲れたと言って蘭の頭の中に戻っていく。

「えっと、今のは……?」

「エカキモンの能力で、なんか……絵に描いたものを実際に出す?みたいな。ちょっと焦ってたから見ながら描いたんだけど……」

ヘへへへと笑い慣れてないせいかあまり気持ち良くは見られない笑みを蘭は浮かべた。

でも、竜美とローダーレオモンは笑えなかった。

もしかして、そんな事ができるという事がどういう事なのか気づいていないのかとか思ったが、聖の方も気になり、少し迷った挙句、まずは世莉達がどうしたかを聞いた。

「あぁ、うん……ちょっとまさか葵さんが、葵さんじゃなくて葵くんだと思ってなくて、わりと早目に解散しちゃって……今どうしてるかはよくわかんない」

わからないのは困る。竜美はひとまず蘭の手を引いて歩きながら考える。

向こうはデジモンを使ってハッキングする事に抵抗がない。成績だって個人情報だし、住所も把握してておかしくない。ステータスが整理できると言う言葉の真意も確かではないが、得た情報を処理する能力が高いとも取れる。例えば監視カメラの映像は?衛生カメラの映像は?そうしたものをハッキングしてその中から見つけ出すのも早いかもしれない。

「とりあえず、連絡取ろう。世莉さんの事を悪魔だって敵視してたから……下手すると直接狙いに行ったかもしれない」

説明を受けてないためぽかんとしている蘭の携帯の画面でローダーレオモンが説明しながら、竜美は簡潔に世莉と亜里沙にメッセージを送る。

世莉を直接狙う可能性はもちろん高いが同時に自分を狙った様に亜里沙を狙う可能性も竜美は考えていた。

少しして帰ってきたのは意外な返事だった。

とりあえず亜里沙さんと葵くんと一緒にいるよと。

「え?私だけはぶられた?」

「多分だけど、家が近い亜里沙さんが世莉さんについて行って、葵くん?が忘れ物してたとかじゃない?」

でもなんにしても少し安心できると竜美が一息吐くと、携帯に見知らぬ番号から電話がかかってきた。

怖いし番号のメモだけとってとりあえず出ずに終わらせると、見知らぬメールアドレスからメールが届いた。

聖だよ、みーつけた。

携帯の電話番号はおそらく一年の最初に連絡先を色んな人に聞いて回っていた様な人から得て、アドレスもその人から、そして、繋げる為に使われた基地局か携帯のGPSから位置を割り出した。

それに気づいて竜美はすぐに携帯の電源を落とす。

「蘭さんも早く携帯の落として。このままだとどこにいるか筒抜けになる」

「え?うん……」

これでいい?と電源を落とした蘭に、竜美は早く移動しないとと急かすが、いや、駄目だと思い直す。

まだざっくりしか世莉達には伝わっていない。誰がどんな事を喋ってどんな風にどう襲ってきたかなんかが伝わってない。さらに、もう一つ気づいてしまった。

「……蘭さん。えっと、ごめんね?やっぱり、私戦わなきゃいけないかも」

「……逃げるんじゃなくて?」

「このままだと世莉さん達のとこ行くかもしれないし……それに、みんなで固まってれば安全だと思うけど、それだと多分一人になったらまた襲われる。こ、殺すなんてできないしね?」

だから蘭さんとエカキモンは逃げて、一人で相手しなきゃいけないからと竜美が続けようとしたところで蘭は竜美の手を掴み、自分の携帯の電源を入れた。

「……これは現実だってわかってるけど」

蘭が口元に笑みを浮かべながら竜美の目を見た。

「……やっぱり、こう……熱い展開だよね!ここは私に任せて先に行けー的な!そういうやつ!私も一緒にいる!というか何かできる事ない?私が描けるものならエカキモンはなんでも出せるし、こういうとこで一人にすると死亡フラグ失踪フラグ感あるけど残ると意外と大丈夫だったりするし!!」

なんか伝説の剣とか?刀とか?変身ベルトとかでもいいよ!と興奮気味に続ける蘭に竜美は少し呆気に取られたが、そのあとすぐにぎゅうと抱きしめた。

さっき見せられたそれと違う。それが安心した。

一度緊張の糸が切れてしまった事で涙が出そうになったが、堪えて頭を働かせる。

「えっと、じゃあ……中が見えなくなる様な……バリアー?とかってできる?できれば周りに人を寄せ付けないみたいなのもなんだけど……」
「え、おぅ……うん、まぁなんとか頑張ってみる!」

透明なのとか書くのは私の画力じゃ難しいから発生させる機械とか描くかななんて言いながらメモ帳とシャーペンを取り出して蘭は紙の上を走らせ始める。

先日の雪も溶けかけて、泥混じりの水溜りが散見して見える公園に人はほとんどいない、既に日もほとんど落ちて子供の姿もない。

「……ところで今更なんだけどローダーレオモン」

「勝算はある。というよりも向こうの勝算があまりない。心配なのはむしろ、やり過ぎないかだ」

ローダーレオモンの鬣は削岩機になっていて、尻尾はトゲ付き鉄球で、およそ手加減のできるものがローダーレオモンの手にはなかった。強いて言うなら前足で殴るとかそんな程度。その前足すらも重く硬い金属の塊だ。

「まぁ、なんかうまくやろう」

その言葉に竜美は電源を入れ、聖に返信する。

待ってる、そうするしかないなら戦うつもりもある。

それに対しての返信は来なかったが、聖は普通に歩いて現れた。

エカキモンの芯が虹色に光り、そこに少しスチームパンクの様な趣のある大きな機械が現れる。

「じゃあ、起動するからね!」

蘭がレバーを引き、ボタンを押し、ダイヤルを調節しということをすると白い湯気の様なものが噴き出して足元に広がり、それに触れた人達がなんの気もなしに夢遊病患者のように公園から出て行く。但し、聖と竜美、蘭は例外。

誰もいないのを確認して蘭が機械の脇に付けられたハンドルを捻り、引き出すと別のパイプからもう一度白い湯気が噴出し、今度は公園を取り囲む様に渦を描いて広がった。

「……蘭ちゃんも参加するの?」

聖がにっこりと笑いかける。同性異性問わずそれは魅力的に映るだろう笑顔で。

「蘭さんはやらない」

竜美は少し震える足で立ちはだかる様にして立つ。ローダーレオモンが姿を現わすとエンジェウーモンもまた姿を現し、何も言わずに弓を一度放った。

ローダーレオモンが首をほんの少し捻ると矢は回転する鬣に当たって火花が散った。ローダーレオモンの首は衝撃に傾くことさえしない。
竜美はあらゆるものの比率が測れる。

学校指定の鞄との比も、聖の身長との比も、エンジェウーモンのサイズを測るには十分過ぎたし、エンジェウーモンのサイズが分かればローダーレオモンとの距離も正確に測るのは容易い。

そして、比が分かるという事は角度を導くこともできるということ、放たれる矢の軌道すらも予測できる。

もちろんそれは、竜美の脳だけで全部することは不可能。

ローダーレオモンは寄生先とのへその緒のようなパイプが繋がっているのを知っている。リアルタイムで竜美の見ている情報を受け取り、計算を行う。一度撃たせて見たことで、その矢がどういう軌道を通るのかをより正確に把握もした。

矢は通じない。いや、今の迂闊な行動で完全に通じなくなった。

しかし、聖の側もまた情報を整理するのに長けている。その能力は最早読心の域に達し様とすらしている。

だからそれが伝わる。

そして聖は一度退く事にした。

「……うん、わかった。とりあえず出直す事にする。でも気持ちが変わったらすぐ教えてね。あと、学校にいるデジモンのことで質問とかあったら気軽に聞いていいから」

エンジェウーモンにはまだ手がないわけではなかった。でもそれはあまり見せたい手ではなかったし使っても相性が良くはない。
近接戦では勝ち目が薄く見え、また、竜美と聖の体格差も大きかった。

デジモンは寄生している。

つまりエネルギー源は人になる。聖は小さいとは言わないが大きいとも言えない。一方の竜美は中学校のあだ名がゴーレムだったこともある。誰が見てもわかる長身で幅もそれなり。太っているかといえば太っては見えないが聖には体重と身長のデータもある、筋肉の量も脂肪の量もある程度なら予想はつく。

得手不得手の差を埋めるのに消耗を激しくするという手もないわけではないが、それすらも向こうの得意分野。いざとなれば横槍を入れる事ができる味方も向こうだけにある。

そもそも、聖の勝ちとは屈服ではあるが支配ではない。話を聞いてもらえないからまず認めてもらうところから始めよう。その手っ取り早い方法が暴力だっただけだ。

竜美にも蘭にも当然あずかり知らぬところで、聖には急ぐ理由があった。

世莉に宿っていた成熟期が完全体になり、フリーで動きを見せていなかったが強力だろうと目されていたローダーレオモンが繋がり、さらにまた一体強力に見える巨体の悪魔と繋がりを持った。

それが聖の見ていた校内の勢力図に大きな波紋を起こすのは間違いなかった。あまり強くないだろうデジモン達の繋がりはわりと無視できる。目的がしっかりしていて別の目的があれば見過ごせる。

目的のない単なる人の頃からの繋がりほど不安要素になる。それは、聖だけの考え方ではない。

さらに、世莉のグループにはより大きな危険要素がある。

聖は自分の特性が多くの情報を得ていればいるほど活きるものだとわかっている。万全を期すならばエカキモンも蘭も世莉もレディーデビモンも調べてから取り組むべきだった。いずれ取り込まなければ調べていたのは竜美だけだった。

「え、と……じゃあ、そういう誘いとかはもうしないでくれる?」

「それは無理かな。まぁでもね?無理に絶縁しろとかはちょっと置いとく事にする。竜美ちゃんが騙されてる可能性は否めないから言葉を信用するのは無理だけど、先にいろいろ調べてからにする」

聖の言葉に竜美はまぁ落とし所としてはいいのかなと頷きかけ、止まる。

「……気軽に聞いてもいいんだよね?」

「うん、いいよ?何が聞きたいの?」

聖はぱぁと輝くような笑みを浮かべた。

「今日声をかけて来たのは……委員長が関係してる、よね。詳しく教えてもらっても、いいかな」

それに罪悪感を覚えそうになりながら竜美はカマをかけた。半分本気で、半分予想。

何故声をかけたのが昨日でなかったのか、あの日の竜美も世莉と一緒にはいなかった。なのに何故今日になったか。それは昨日に理由があるのではと竜美は考えた。

だとすれば理由は世莉の委員長との接触か、葵との接触か二つに一つ。より知られてしまったのは堂々と昼休みに教室まで呼びに来た前者。

でもこの考えには当然穴もある。昨日は竜美は図書室の当番ではない、人気のない校舎で一対一で話せないから延期した可能性もある。葵くんの方の可能性もある。比較すると知られ難いだけで決して知られないようにしたわけでもない。

少なくともそこに迷いがあることは聖にも見て取れたし、聖は昨日の放課後のことは知っていた。

聖もそれに対してデジモンを使って対処するか人として対処するか迷っていたところだった。世莉が出るのが一分遅ければ世莉ではなく、聖が注意して見ていてと言付けをしておいた放課後居残りしてる生徒が間に入っていた筈だった。

だから、ほぼ正確に竜美の思考をトレースできていた。

「うん、そうだよ」

本気で竜美も蘭も幸せにしたいと考えている。伝えた方が幸せになるだろうと、不幸にならずに済むだろうと動くのは聖としては当然の対応だった。

「委員長は現状、この学校におそらく二体しかいない究極体なの。そして、委員長の存在が学校内でデジモンが欲のままトラブルをなかなか起こさない理由になってる」

こう言えば委員長は確かに平和な統治者の様だが実態が違うのを聖は知っていた。現在、三年生に寄生しているデジモンはいない。だが、聖がエンジェウーモンを返り討ちにし、デジモンを認識した時にはまだ少なくとも三人いた。

三年生の中で、その能力を使って好きにしながらも隠蔽していた彼等の内二人は委員長とそこに寄生するジャスティモンによってデジモンを殺されている。しかしあえて言わなかった。

委員長から離れる事はある危険から離れることにもなるが、同時に委員長を敵に回すかもしれないというより大きな危険に繋がる。

委員長に対抗し得る存在は今のところ聖しか正体を知らない。いや、聖が検証しても尚確信には至らない。その行動の理由や目的や何を考えてるかは聖にもわからない。

だから、現状委員長に対抗するのは無理。動かせるとすれば一人だけだ。

だからこそ世莉は驚異となり得るし焦点となり得る。もちろん、グループを意図せずして作りそうな事も理由にはあるのだが。

「なるほど……」

世莉を委員長はわざわざ呼び出した。呼びかけに応じて助けに来た。それは聖の知る限り一匹狼だったはずの委員長としては異常だった。
実際のところ、委員長がおそらく助けを求められればそれが正義に準じる限りは応じるのは聖もわかっていたが、それを踏まえても明らかに好意的に見えた。

つまり、世莉は委員長という現状最強の存在を手に入れる鍵。

そして、聖はそれに関して最も危険な存在を知っている。

「キツネ顔のネズミに気をつけて。出会ったら張り倒してでも逃げて、竜美ちゃんのデジモンならそうするのは難しくないだろうから。蘭ちゃんの方は……可能なら竜美ちゃんと一緒にいるといいと思うの。私でもいいけど……警戒してるだろうし。これは世莉ちゃんにも伝えてね、世莉ちゃんが引っかかると最悪の場合人が死ぬかも」

蘭は、え、なんで急にそんな話を?とかそれがなんで理由になるのとか思っていたがスルーされた。聖は竜美が説明すると確信していた。

「うん。あと、教えて欲しいんだけど……他にも、聖さんとかみたいにグループ作ってる人はいるの?」

「いるけど私ぐらい大きく作ってるのは他には一人かな。それがキツネ顔。あとはそれこそ一人でいるのとか、あとは……体調面の問題から山登りするクラブみたいになってるのとか、そんな感じの特に誰かに干渉しようみたいなことはしないのが多い感じ」

「じゃあ委員長は、特に何か好き勝手しない限りは敵対しない?」

「多分ね。でも、なんでか知らないけど私のやり方は一回注意されちゃってるから基準は測りにくいよ」

なんでかはわかるのではと竜美は言いたかったが、言葉を飲み込んだ。蘭は話を理解するのを諦めてエンジェウーモンの服もレディーデビモンに負けず劣らず痴女じみてるななんて事を考えながら模写してた。

「蘭ちゃんも、気をつけてね?それとも誰かに守ってあげてって言っておく?蘭ちゃんのデジモンも……辺りに言いふらして良さそうな能力じゃないしね」

蘭の手に持ったシャーペンとメモ帳に視線を向けながら聖はにこりと笑う。

竜美が苦い顔をすると大丈夫言わないからと聖はニコニコ笑って言った。

じゃあねと聖が言うとエンジェウーモンの姿は竜美と蘭から見えなくなり、ローダーレオモンもそれに合わせて緊張を解いて姿を消した。

エカキモンもはーと大きく息を吐きながら力を抜いて座り込みながら姿を消すと霧が晴れ、霧を噴出していた機械も宙に溶けて消える。

聖がその場を離れると、疲れたと竜美は冷たいベンチに腰掛けた。その横に蘭も座る。

「疲れてるところで申し訳ないんだけど……さっきの説明を……」

竜美はそういえばこれ待たせてる世莉達にも伝えないといけないなと思いながら蘭に向き直って説明を始める。

「えと、聞いててどこまでわかった?」

「いや、もうほぼ全部わかんなかった」

もう一人の究極体についても聞いておくべきだったかなと思いながら竜美は蘭に向けて説明を始めた。


スレッド記事表示 No.4882 それは悪魔の様に黒く 三話 前ぱろっともん2018/02/15(木) 13:36
       No.4883 それは悪魔の様に黒く 三話 後ぱろっともん2018/02/15(木) 13:38
       No.4886 な、なんて能力だってばよ……!夏P(ナッピー)2018/02/16(金) 23:46
       No.4891 この学校…ヤバイッ…!マダラマゼラン一号2018/02/17(土) 22:21
       No.4901 感想ありがとうございます。ぱろっともん2018/02/20(火) 21:55
       No.4911 それは悪魔の様に黒く 四話 前ぱろっともん2018/02/27(火) 23:15
       No.4912 それは悪魔の様に黒く 四話 後ぱろっともん2018/02/27(火) 23:20
       No.4915 真の主役登場夏P(ナッピー)2018/02/28(水) 21:02
       No.4927 感想ありがとうございます。ぱろっともん2018/03/13(火) 23:33