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ID.4824
 
■投稿者:ヤギ  HOME
■投稿日:2018/01/27(土) 09:36


CODE:Z'd FILE No.01A



 (ノイズ交じりの映像。切羽詰まった表情で、しかしどこか諦観した様相の血まみれの男が映っている)

 ……ダニーか。唐突で悪いんだが、時間が無い。手短に話すぞ。
 ああ、これ見てる間に連合機関に連絡取れるように準備しとけ、今すぐだ。
 これは間違いなくレベル5だ。すぐに対応しないと幾つかの国が丸々滅びるかもしれねえ。

 (提供者に向けたメッセージのようだ。直後、爆音と共に部屋が震える)

 例の兵器がコントロールを喪失して暴れ出した。あのジジイ、俺達をハメやがったんだ。
 防御機能がまるで役に立たねえ、それどころか共鳴反応を起こして暴走した奴らが山程いる。俺達は多分もう駄目だ。
 暴走……いや、あれはそうじゃない……何か、強烈な意思を持って暴れて……兎も角、気を付けろ。あいつはギズモンM6を一撃でスクラップにする化物だ。
 連合から“エージェント”を呼び出すよう伝えとけ、凄腕を出来る限り多く取り寄せるようにな。
 
 (爆音、激震。恐らくはカメラに併設されているのであろう機器が火花を吹く)

 どの程度アテになるかはサッパリだが、オーレンのレポートと集めていた資料をまとめてアップロードしておいた。
 ああ、いつもの場所で、いつものコードだ。こんなこともあろうかと、ってヤツじゃねえがな。
 全部転送しちまったが、必要なのは一部分だけのハズだ。解析屋にそのまま渡せ。

 (男がジェスチャーをしている、恐らくは提供者にのみ解せる何らかのサインだろう。
  またしても爆音。部屋が大きく揺れ、男が転倒しかける。音の発生源が近付いてきている)

 クソッ、変に時間が余ったな……ああ、ついでだから伝言頼んでいいか?
 メアリーには『パパはいつでもお前のことを愛しているよ』、ジェーンには『浮気相手とお幸せに』、だ。
 もしトボけて聞き返されたらこう答えてやれ、『最初から知っていたぞ』ってな。
 ……筒抜けなんだよ、クソッタレが――

 (爆音、爆炎、爆風と共に後方から訪れた無数の瓦礫が男の身体に直撃する

 (男の身体がぐしゃりと音を立てて砕け散る瞬間、破片の一つがカメラを直撃して映像が途切れる)

 (その間際に爆発の向こう側から聞こえた遠吠えのようなものは――)






FILE No.01:[ 狂騒 -Birth of a Wish- ]







 大戦以前、水の一滴すら存在しない死の砂漠と恐れられた旧タクラマカン砂漠地帯。その中心部より広域を刳り貫くようにして建造された大戦時の大型軍事施設を再利用する形で作られたのがイスガレア兵器蒐集施設なのだという。
 嘗ては多くの航空機を飛ばしていたのであろう広大な滑走路の南東エリアが、俺達第7装甲部隊[ザウルス]に与えられた戦場――いや、地獄だった。

「クソッタレが! 救援はまだなのか!?」
「あの砲台をどうにかしねえと! アサルト部隊からの連絡は無ぇのかよォ!?」
「さっきの救援要請が来てからパッタリです……隊長ザウルス1、もしかして、俺達も……!」
「日和ってる暇があるんなら一発でも多く撃て、リックザウルス6! こんなのが街に入ったら終わりだ、俺達で止めるしかないんだぞ!」
「とは言うけどなあ!? この数だぞォ!?」
「! 避けろアッシュザウルス4!」

 火薬と怒号と悲鳴が飛び交う中、アッシュの背後から鉤爪を振り上げていた陸戦タイプのギズモンに銃弾の雨を浴びせ、蹴り飛ばすと共に肩部のリニアキャノンで追い討ちをかける。
 弾幕で削られた後に砲弾に穿たれたことでボディ中央が大きく拉げ、火花を撒き散らしながら爆散し、赤い霧となって消滅するギズモン。確実に撃破したことを見届けながら、残数の心許ない予備の弾倉を躊躇うことなく装填した。

「わ、悪りい! 助かったぜトニーザウルス2!」
「気にすんな。でも……、ッ!?」

 ヘルメット内部から網膜投影されて視界に直接表示される拡張ディスプレイの内、敵性検知用のレーダー・サークルが赤く染まる――被弾予測方向に対して咄嗟に左腕の積層型複合シールドを緊急展開。
 間髪入れずに長距離から放たれたのであろう砲弾が直撃し、耳を劈く甲高い金属音と共に体がばらばらに引き裂かれそうなほどの衝撃に襲われる。
 俺達が纏っているのは頭から爪先まで人工筋肉の被膜で覆われ強化カーボンの分厚い装甲に護られた重戦機殻パンツァー・アーマーだ。人体の数倍の馬力と強度を持つそのコンバットスーツの恩恵によって生身では木端微塵になりかねない今の砲撃もどうにか防ぎ切れたが……

「大丈夫かよトニー!」
「……今のでシールドがイカれたな。持ってあと2発ってとこだろう」
「聞いてねえぞ……重砲撃型まで居やがるなんてよォ!?」

 ……遠方から長砲身を覗かせる旧式の多脚戦車、そして今の一撃で基部が大きく歪んだシールドの双方を睨め付けながら、最も古い戦友でもあるジョニーザウルス3が叫ぶ。
 あれは対戦闘車両用として嘗ての戦争で使われた自立型の陸戦兵器だ。重戦機殻を纏っているとはいえ、決して人間相手に使われる様な代物ではない。
 あの類を最初に無力化出来る対地戦力が用意できれば良かったのだが――施設中央、要所を護るかのように配置された巨大な超長距離プラズマ砲から放たれる一撃を睨みながら心の中で毒づく。
 俺達が到達する直前、頼みの綱であったガンシップはあれの餌食となって爆散してしまっていた。

「AIサマにはお構いなしなんだろうよ! 何て任務だよ、クソッタレが」

 部隊一の荒くれ者のザッツザウルス5でもこの物量にはお手上げらしい。
 全くだ、と相槌を打ちながら各部のスラスターを展開。長砲身の捕捉されないように気を付けながら、腕部ユニットに内蔵されたブレードを展開しながら無人機の群れに突っ込んでいく。
 そう、無人機。こいつらは全部が全部、無人兵器なのだ。
 嘗ての大戦で使われた兵器の数々の収集・管理を行うイスガレア兵器蒐集施設、その施設内で暴走した無人機群の無力化及び近隣首都の防衛……それが、連合軍スワナダ支部の俺達が請けた緊急での任務だった。
 上からは近隣も含めて回せるだけの戦力を全てかき集めたとの説明があり、実際に俺達のような重戦機殻を纏う装甲兵の他にも様々な戦力がこの戦地に向かわされたことは出撃前に確認済みだった。

 完全に予想外だったのが、この数だ。どうやら出撃時に観測できたという数十機は、ほんの一部に過ぎなかったようだ。
 数十、数百どころの話ではない。小型機も併せれば数千、数万もの無人機達が格納庫を突き破って地上で一斉に暴れ回るなど、一体誰に予測が出来ただろうか?
 地上迎撃ユニットやオートマトンならまだしも、その大半以上が対デジモン用の殺戮兵器であるギズモンで構成されている――数体ならまだどうにかなったものの、その圧倒的物量を前に同僚のデジモン達は須く引っ込めるしかなかった。俺達が苦戦している理由の一つが、それだ。

 更に想定外だったのがその“暴れ方”だ。
 現代に於けるAIの行動にはある種の、それこそ機械的とも云える規則性が存在する。それは例え何らかの要因によってAIに支障を来したとしてもだ。
 多少のエラーが発生してもAIそのもので自己対処が可能であり、それが不可能なほどの重大なエラーによって予想外の暴走を引き起こしたとしてもその行動パターンを解析することで不良箇所を割り出し、外部からでも適切な対処が出来るように彼らのアルゴリズムは複雑でありながら極めてシンプルに構成されている。
 今回のような場合、他の部隊と連携を密にしながら行動パターンの解析と予測を行いながらフォーメーションを組み、戦術的優位に立ち回りながら数を減らして追い詰めていく、というのがセオリーなのだが……。

(こいつら……)

 群れを成すわけでもなく、何の規則性法則性も無しに、ただ人間を確認次第、猛然と火薬を剥き出しにしながら突っ込んでくる――まるで、仇敵を討つと云わんばかりに。
 パターンの読めない機械が数万もの群れを成して襲ってくる……未曽有の事態を前に、俺達を含めた全ての部隊がパニック状態に陥っていた。

(怒っている……? 何に? 人間に?)

 敵対識別アカイロに輝くセンサー・アイ。無数の赤色が、俺達を取り囲んで真っ直ぐに貫いてくる。
 細かな点滅を繰り返すその様相が、赤熱する溶岩……いや、強烈な憎しみの感情を錯覚させて――

「っ、来てるぞトニー!」
「……っ!?」

 アッシュの甲高い怒声に思わず我に返り――その瞬間、飛び込んできたギズモンの一体に押し倒された。
 馬乗りのポジションを取られ、間髪入れずに対の鉤爪が首を切り落とそうと振り下ろされる。咄嗟に腕部のブレードでどうにか防ぐが、体勢が悪かったこともあり、人工筋肉の怪力を以てしても少しずつ力負けをしていく。

「クソッタレ、邪魔だどけッ!」

 ザッツを筆頭に皆が救援に入ろうとするが、周りに集まってきたギズモン達の掃討に追われて期待は出来そうにない。
 間近からギズモンが此方を見つめてくる。ヘルメット越しからでも分かる――こいつの中で煮え滾っている、怒りの感情を。
 ギズモン本来のスペックではあり得ないであろうこの出力も感情に影響されてのことなのだろうか……?

「ぐっ……」

 ついに、押し負ける。
 怒りのままに装甲の隙間に鉤爪を滑らせ、断裂しようと――

≪先に謝っとくぞ≫ 
「! ッ、うわっ!?」

 突然のことだった。
 女性の声の通信が入り、遠方で何かが爆ぜる音がしたかと思うと、凄まじい爆風と衝撃波が襲い掛かってくる。
 その影響で眼前のギズモンも引き剥がされ――すぐに我に返り、その胴体にリニアキャノンを打ち込んで粉砕する。
 助かった、のか……。

「大丈夫かトニー!」
「あ、ああ……一体、何が……」

 ザッツ達に起こされながら思わず口にしてしまったが、その疑問に答えるかのように上空を低速でジェット機らしきものが通過していく……否、ジェット機ではない。
 首があり、翼があって……両足……鳥、いやドラゴン型の、デジモンか……? あれの援護射撃だったのだろうか。
 しかしデジモンだとは言えこの領域で航空機が無事でいられるわけがない。それを証明するかのように程無くしてプラズマキャノンの一撃が飛来――あっさりと躱したことに驚いていると、またも通信が入ってきた。

≪中央連合政府特殊機関“エージェント”所属、プレデター1だ。助太刀する≫
「スワナダ支部の第7装甲部隊[ザウルス]だ、援護に感謝する!」
 
 ハスキーがかって低音気味だが……その声色は間違いなく、少女のものだった。
 上空のデジモンの操り手なのだろうか……?

≪どこもかしこも通信どころじゃなかったみたいなんでな、会話出来る部隊が残ってて助かったよ≫
「おい、対空用の大型プラズマキャノンがあるぞ! 大丈夫なのかよォ!?」
≪ああ、それなら――≫

 またしてもプラズマキャノンの一撃を航空機ではあり得ない独特のマニューバで難なく躱すと、今度は背面から凄まじい轟音と共に火を噴く。
 放たれたのは数発の砲弾のようだ。緩やかな放物線を描きながら、いずれの砲弾も寸分の狂いもなくプラズマキャノンに吸い込まれていき――

≪たった今黙らせた≫
「ヒューッ、出来るじゃないかプレデター!」
(嘘だろ……)

 少女の言う通り、砲口に砲弾をぶち込まれたプラズマキャノンが爆炎を吹き出しながら沈黙する。
 だが、プラズマキャノンが無力化されたとはいえ上空だって安全ではない。撃破を確認するなり、すぐに高速で離脱するドラゴン型――その背後を、飛行型の無数のギズモン達が崩壊弾を乱発しながら追尾している。あいつらは確かギズモンATだったか。
 一撃でも致命傷となる崩壊弾の数々をひらひらと避けながらも全身の火器で確実に迎撃していくドラゴン型。通常の航空機とはまるで違うが、その動きは紛れもなくエースパイロットのそれだった。
 余程の自信があるのか、単純に勇猛果敢なのか、そのどちらもか――或いは、物狂いの馬鹿なのか。

≪お生憎様、こっちもちょいと野暮用を抱えてな。それが終わったらそっちの支援に回るよ≫
「感謝するぞ! 終わったら一杯奢らせてくれ、美味い店があるんだ!」
≪期待しとくよ――んじゃ、こっちもたっぷりサービスしねえとな!≫

 通信を切りながら、ドラゴン型が上昇。何をするのかと覗き見してみれば、その全身の装甲が次々と展開していく。
 程無くして、まるで機体そのものが爆発するかのような勢いで凄まじい数の拡散ミサイルが一斉に放たれた。
 地上にミサイルの雨が次々と突き刺さり、多数の無人機が一気に無力化される。
 まだまだ敵の数は一向に減らないが、それでも何とかなりそうな気すらしてきた。

「おい、見惚れてる場合じゃねえぞトニー!」
「理解ってる……!」

 気が付けば、先の砲撃で周りの敵が一掃された此方にも再び無人機達が集い始めている。
 同じ醜態を二度晒すつもりはない。ライフルを構えながら、アッシュと背中合わせに迎撃を開始する。

「……ああ、そうか。思い出したぞ」
「何ですか、隊長?」

 先まで少女と通信を交わしていた隊長が、スパイクハンマーを振り下ろして手近なオートマトンを粉砕しながら答える。

「上のは確か、フォールスモンスター……擬似デジモンってヤツだ」
「擬似? 普通とは違うんですか?」
「ああ、機械とデジモンのハイブリッドだ。体の殆どがこっちの世界の機械で出来てるからギズモンの攻撃にも耐えられる」
「すごいな……例の新兵器ってのが、それなのか?」
「かも知れないな。で、そいつを飼い慣らしているテイマーこそが――現役の“選ばれし子供”ってワケだ」
「じゃあ、あれが……」

 選ばれし子供。幾度となく世界の危機を救ってきたという、如何なる戦士達よりも勇敢で強大な現実の英雄達。
 “大戦”で多くが姿を消して、今では嘗ての選ばれし子供達が政府に対してテロリズムを起こしているとも聞いていたが……未だに現役が存在して、こうして戦っているのか。
 正義も悪もない、ただ命を削りあうだけの地獄と化した戦場で――あんなにも、力強く。あんなにも、心強く……。
 拳に力が入る。子供が前線に飛び込んで英雄らしく務めているというのに、大人の俺達がただのお荷物となるわけにはいかない。
 まだまだやれる――戦わねば……!

「よおしお前ら! 英雄サマがお戻りになるまで誰もくたばるんじゃねえぞ! 俺達は無敵の第7装甲部隊ザウルスだ、一匹でも多く雑魚を引き付けて蹴散らして“盾”としての務めを果たせ!」
「了解ィ!」
「了解だぜ隊長!」
「……、了解ッ!」
 
 オートマトンの銃撃を防ぎ、近づいてくるギズモン達を的確に切り裂きながら、まだまだ続くであろう戦いに俺達装甲部隊もまた決意を新たにする。
 各地に散らばっている同胞達の――そして空舞う小さな英雄の無事を、強く祈りながら……。




 ASML FR-V*48 L1 B37 - E47:DESTOROYED 79.8%
 ASML FR-V*48 L2 D67 - G87:DESTOROYED 100.0%
 ASML FR-V*48 R1 H76 - K90:DESTOROYED 52.3%
 ASML FR-V*48 R2 J29 - M67:DESTOROYED 87.2%


「ふむ、ジャスト8割か」
「良い数字なのですか?」
「挨拶代わりの一撃としちゃあ上等だけどな」

 先の爆撃を凌いだ地上の無人機どものデータを睨みながら、即座に次の武装をスタンバイさせる。
 相棒――ニクスモンの武装を片っ端からブチ撒けながら飛行し、先の砲台も含めて千機以上は撃破している筈なのだが、それでも地上の敵数はまだまだ陰りが見えそうにない。空襲爆撃型のモードV完全体の火力を以ってこの調子となれば、どう足掻いても長期戦は避けられないだろう。
 とりあえず対地拡散ミサイルの爆撃から翼部の4連ガトリングキャノンと各部の機関銃による分厚い弾幕に切り替え、全方位に対する対地攻撃を続行する。弾幕に触れた敵が風穴だらけになりながらあっという間に鉄屑と化していく様はいつ見てもそれなりに爽快だが、その残骸を踏み越えるように次から次へと際限なく無人機どもが湧いて出てくる状況には辟易する他ない。
 えらい時間かかりそう。暇つぶしにオールドロックの音源やらポップコーンやら三流エロ雑誌やら持ってくりゃ良かったかな……。

≪プレデター1、聞こえるか?≫
「こちらプレデター1、適度に爆撃しつつ目標エリア到達……、っと!」

 相棒の固有機能である空間歪曲を発動――幾何学的にあり得ないであろう真横への瞬間的ダッシュをキメながら、後方より良い感じの角度で迫って来ていた崩壊弾の数々を無理やり回避。同時に旋回させておいた機銃で後方から崩壊弾を吐き出しながら無数迫っているギズモンATの数機を蜂の巣にして撃墜しておく。
 しかし、作戦領域内に侵入するなり只管後ろから追い回してくる無数のギズモンATの追撃に加えて、先の爆撃と現在進行形の弾幕でそれなりに注意を引いたのか、地上の無人機の何割かもこちらをターゲットと定めたらしく相棒に負けじと中々ハードな弾幕が形成され始めている。放っておけば流石の相棒でもそれなりに厳しくなるだろう。
 それを見越しているのであろう、上官から続けざまに通信が入る。

≪北東に一際高い塔が確認出来るか。あれがこの施設全域を賄う管制塔だ、目標であるコントロールルームもあの地下に存在している≫

 デジヴァイスを通じて視覚に直接表示されたデータに確認すると同時、コックピット内部のHUDに表示されたミニマップの方に動きがあった。
 近隣施設を示す赤いポインタが管制塔へと向かっていき、その管制塔からEMPっぽい電波のようなものが発せられている。
 死角に回り込んで肉薄してきたギズモンAT二機のうち一機を脚部の鉤爪で真っ二つに引き裂きもう一匹を尻尾に内蔵されたプラズマキャノンのゼロ距離射撃で爆砕しつつ、通信内容に集中する。

≪システム全体がイカれている以上、管制塔から広域アンテナを使ってEMPを作動し、まとめて強制シャットダウンさせるしかないわけだが……進攻ルートは、こうだ≫
「第3地下ターミナルから侵入させればいいんだな? で、俺達の仕事は? ポイントまで運送して降ろしてやるだけ?」
≪ターミナルの入り口が分厚い隔壁で塞がれている。ニクスモンの徹甲槍弾バスターランスでこじ開けて“プレデター2”の進攻ルートを確保してほしい≫
「地上の建物ごとランスでぶち抜けばもう少しショートカット出来るんじゃないか?」
≪難しいな。地下ターミナル上部はバンカーバスターでも貫通不可能な強化地盤で護られている。それに地上のは旧時代に建てられた古い施設をそのまま使っているんだ、下手にぶっ放しでもすれば余波で何が起こるかも分からん≫
「了解……んで、内部についてはどうなってるのかまるで分からないんだろ? 本気で独りで行かせて平気なのか?」
≪残念ながら火急の事態故、現状では他に回せる戦力が無い。増援を待っていれば地上部隊は壊滅する……それに、‟彼女”の戦力ならば単独でも問題なく遂行可能なハズだ≫
「……わーったよ、投下したら俺達は暫く上空支援カマせばいいんだよな?」
≪ああ、状況については引き続きこちらでモニターするから、それに従って行動してくれ≫
「オーケー、財布でも握りしめて待ってろ」

 通信をオフ。ついでに休憩がてら、暫く操縦を全て相棒任せにしながら背後を振り向く。いきなりのことで相棒がぴぎぃだのぎえぴーだのとやかましく吠えるが、まあいつものことだ。

「……と、いうわけなんだが、大丈夫か?」

 バイク型の狭いコックピットの中で、俺の後ろにぴったりと抱き付いているプレデター2――キョウカ=アマミヤが、背中の刀に片手を添えながら平然と答える。
 刃のように鋭い双眸は氷のようで、温もりというものがまるで感じられない。

「この程度ならば、慣れっこです」
「……」

 その発言に、逆にこちらが心配になってしまう。
 いや、単独で問題ない、という点については事実なのだろう。これまでの経緯で彼女の強さについては十分理解している。
 余計な心配だということは、分かっているのだが……それでも“バディ”として新しいパートナーを気にかけてしまうのが、人情だろう。

「……ケガするなよ新米。おねーさんはこれでも心配性なんでね」
「貴女こそ、そろそろ運転に戻らないと怪我をしてしまいます――主にニクスモンが」
「あ、やべっ」

 操縦を変わろうとした矢先、避けきれなかったのであろう崩壊弾が直撃した。
 通常デジモンの擬似タンパク化した表層データに容赦なく浸透し、流動体化している内部データに致命的なダメージを与える崩壊弾だが、現実世界の無機物をメインに形成されている擬似デジモンならばその脅威も無力化する。
 だがそれでも着弾時の衝撃は防ぎようがなく――崩壊弾の一撃が相棒の動きを一瞬だけ縫い止め、間髪入れずに襲い掛かってきた地上からの砲撃の数発が相棒の片翼を木端微塵に粉砕した。
 片翼で飛べるほど相棒は器用ではない。よって墜ちる。力尽きた鳥の如く落下する。しかし無人機どもが攻撃の手を緩めることは無く、空中と地上からの攻撃が次々と着弾して相棒の装甲が一気にスクラップへ変わり始めていた。
 おいどうするんだやべえぞと言わんばかりに相棒も墜ちながらガアガア怒鳴っている――確かに拙い、これでは怪我どころの話ではない。

「だああ、悪かったって! ぎゃーすか喚くな!」

 慌てて操縦をこちらに戻し、相方のコンディションチェックと対処を同時に開始する。

 SELF AUTOPILOT   LIFTING.
 DAMAGE CHECKING...
    HD : 95.6%
    LW : 12.6%-U36/80 LOST.
    RW : 55.6%-U120/123 BREAK.
    BU : 31.5%-U60/98 BREAK,A13/57 LOST,TC5 DOWN.
    BD : 46.4%-U100/124 BREAK,A70/90 LOST.
    LL : 90.2%
    RL : 93.4%
    TL : 80.0%


 状況、中破。
 そして何より問題なのが――

「やっべ……バックユニットがおシャカしちまった!?」
「つまり……?」
「……バスターランス暫く使えなくなっちゃった☆」
「えっ……!?」
(;・ω<)テヘペロッミ☆」
「笑顔でごまかしている場合ですか!?」

 無論そんな場合ではない。茶化してみたがキョウカも流石に焦りを見せる。
 だがここで急がず慌てずクールにフォローするのがプロというものである。
 “接続領域”を拡大してナノマシン・システムをフル稼働させて自己修復……する時間も暇も無さそうなのでバスターランスの貫通力を咄嗟に算出、その威力を他の武装で引き出すための計算式を即座に導き出し現状生き残った武装と更に不足の武装を他形態より取得――



 DAME-CON SYSTEM START UP? >N
 MODE-EMERGENCY,ALL-W/A FULLFIRE/PRUGE:ON
 NEXT COMMAND STAND BY,CAST-OFF,DEGENERATION-READY.


「勝利の法則は決まったな」
「どうするつもりですか!」
「そこはまあ――見てのお楽しみってトコロだ!」

 尚も続く攻撃で激しく揺れるコクピット内。此方を信じてくれているのか、声を荒げつつもどこか冷静なキョウカに対して降りる準備をするよう合図を送りながら叫ぶ。
 その間にも相棒の操縦は欠かさない。機関銃による周りの有象無象への迎撃を相棒側に押し付け、此方は生きているスラスターを吹かして全出力で失速ストールからの落下を凌ぎつつ、HUDとマップを重ね合わせてポイント――侵攻ルートの開始地点となるターミナルの入り口を塞ぐ隔壁にミサイルのロックオン・マーカーを全てかき集める。
 もう少しスマート且つ丁寧に任務を遂行したかった所存だが、予定変更だ。

「まずは全弾発射からのアーマーパージッ!」

 相棒の全装甲が展開――同時に空間歪曲を発動し、弾幕の集中点より前方50m地点まで瞬時に逃れる。射線に敵の攻撃が混ざり込まないことを瞬時に判断し、間髪入れずに生きているミサイルポッドからミサイルを全弾発射――同時に緊急用のハンドルを展開して思い切り引き出し、全身の装甲をパージさせる。
 ミサイルの数々が寸分違わずに隔壁へと向かっていくのを確認すると同時に次のコマンドを執行――

「続いて強制退化からのモードIVッ!!」

 全身の装甲が小爆発と共に全て吹き飛び、フレームとコックピットのみとなる相棒。そのあちらこちらに配置された量子変換デバイストラップ・コンバーターから無数の部品――データ化し、圧縮した上で格納されていた部品の数々が破損した装甲と入れ替わるように瞬時に展開する。
 それらが瞬時に組み合わさり、軽量な装甲を構築し、新たな翼を形成し、更には翼部と背面に対の銃火器が装備され、満身創痍だった相棒は一回り小型な、それでも傷一つない新たな姿となって復活した。
 ニクスモン・モードIV成熟期。防御性能と瞬間火力を犠牲に機動力と運動性能が極限まで引き上げられたマルチロール・ファイター型だ。
 本来ならタイマンで真価を発揮する形態なのだが、やらかしてしまった手前、贅沢も言っていられない。やりようが無いわけでもないので今回はこれで通すとしよう。
 さて、残された時間は凡そ数秒程度。先の放ったミサイルの数々が、隔壁の目前に迫り切っている――着弾するまでの間が、勝負となる。

「〆は代替品コイツを――」

 各部スラスターを最大出力で吹かし、コックピット内の対G装置も最大限に稼働させつつ相棒の空間歪曲を発動――否、連発し、急カーブを滑り込むような出鱈目な機動でミサイルのシャワーを追い抜き、隔壁へと真っ先に到達し――

「ぶち込むッ!!!」

 脚部のロックを外した脚部のパイルバンカー2発を、隔壁のド真ん中とその上部に位置するターミナルの外壁へとそれぞれ炸裂させる。
 ロックの外れたまま放たれた超重量の鉄杭は脚部のレールを摺り抜け、凄まじい衝撃を伴ってそれぞれの狙った箇所に寸分違わず突き刺さった。
 更に空間歪曲を発動しながら離脱――入れ替わるようにしてミサイルの数々が、穴の開いた隔壁へと次々と着弾する。
 強固な隔壁と言えど一度ぶち抜いてしまえばその守りも瓦解する。そこに面での破壊力をぶつけてやれば……

「ま、こんなもんだろ」
「……相変わらず、無茶苦茶ですね」
「今更」

 大気が震えそうなほどの大爆発の後、派手に風穴の開いた隔壁を見下ろしながら一息吐く。
 キョウカの呆れ顔に苦笑して返してやりながら、一旦相棒との接続をシャットアウト。フル活用した脳味噌がパンクしないよう少し休ませる。
 自分でも中々のぶっ飛び具合だったが、これで一先ずの準備は完了だ。相棒の速度を緩めながら上昇し、コックピットを開く。
 足場・・は作ってやったのだ。彼女なら難なく降りられるだろう。

「さて、俺の仕事はとりあえず終わりだ。後はお前のターンだな」
「諒解」
「……行けそうか?」
「心配御無用です」

 安全装置を外しながら、コックピットの縁へと身を乗り出す。見かけによらず、随分と大胆だ。
 その表情には相変わらず感情らしいものが何も籠っていないが、その視線にだけは力強さの様なものが籠っている。
 ……あまり心配ばかりしていても、始まらないか。

「……行ってこい、十分に気をつけてな」
「諒解。プレデター2、任務を開始します」

 鉄杭目掛けて勢いよく飛び降りるバディの姿を見届けながら、コックピットを閉じて再び相棒との接続を開始する。
 戦況を改めて把握した後、ギズモンAT達の限界を易々と上回る高度で反転。ついでに何機かを重機関砲とキャノン砲の餌食にしてやりながら、地上部隊に通信を送る。

「こちらプレデター1。ザウルス、それに他の地上部隊も待たせて悪かったな。当機はこれより諸君らへの上空支援を開始する」
≪無事だったかエースさんよォ! ったく、冷や冷やさせるんじゃねえ!≫
「悪い悪い、詫びに一個だけお願い聞いてやるよ――援護のリクエストはあるか?」
≪了解だ! 早速で悪いがまずは長砲身を片付けてくれ、これ以上の砲撃は俺達装甲部隊でも持たない!≫
「オーライだ、掃除してくるから持ち堪えろ!」

 激戦を繰り広げているのは俺達だけではない。
 俺達のような特別な力も持っておらず、デジモンの力にも頼れない状況で、それでも地上部隊が命がけで戦っている。
 彼等の命がけを無駄にしないためにも、此方もそれなりのタマを張ってやらねばなるまい――

「まだまだやれるな、相棒!」
「キャアウッ!!」
「オーケー、仕切り直しの本番と行こうか!」

 未だに力強く奮戦し続けている地上部隊、そしてたった一人で施設の中へ突入した新米の無事を心の片隅で切に祈りながら。
 プレデター1俺達――エリザ=クレメント並びにパートナーであるニクスモンもまた、火薬の中へ身を投じるのであった。





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