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ID.4749
 
■投稿者:パラレル 
■投稿日:2017/07/16(日) 14:07


What is the cage? 3-3
 3.




「私を置いて作戦を開始するとはどういう了見だああああ!」
「やっと三馬鹿が追いついたみたいだな」
「なんで大声を上げて潜入してるのあの人たち」
 遥か後方から聞こえる怒号に頭を痛めながら、カジワラ・ザクロ――チャットでDingoと名乗っていた男はハルサキ・アンジュとともに侵入者一団の先頭を全力で走っていた。ひとまずの目的地はエレベーターホール。しかしロビーは馬鹿みたいに広く、そこに辿り着くにはかなりの距離がある。
 それでも距離の半分を稼ぐことができたのは、集団にはギルドの選抜隊50人だけでなく恐慌に駆られた一般市民も大量に混ざっていたため。雪崩れ込むその集団に対しては、アースガルズ社の平社員に打てる手は存在しない。武器の所持を許された警備員も一般市民が大量に紛れ込んでいては、この混乱が何らかのテロ集団の仕業だと理解していてもその武器をみだりに使うことはできない。この場で打てる手を持つ者は良心の欠片も一切持たずに効率のみを求める者のみ。
「……何か聞こえる」
 1番最初に違和感に気づいたのはリオンだった。銀仮面越しに微かに知覚したその情報を逃すことなく追跡を開始。1秒と立たずに、その原因が既に遥か後方にあるビルの入り口にあることを理解した。
 直後、ビルの入り口に重厚なシャッターが落とされる。煽動された一般市民も自ら潜入したギルドの面々も問わず、ビルの中に侵入してきた部外者の一切を閉じ込めた。
「警備員は退去せよ。――ここからは私設軍の領域である」
 スピーカー越しに響いた指示通り、警備員は波が引くように一斉に後退。彼らと交代するように、特殊繊維の軍服を纏った小隊が侵入者の進路を阻む。その手で構えられた機関銃は1列に並び、引き金に掛かる指は1つも震えてはいなかった。
「やはり、そう来るか」
 冷静であれば、集団のどの位置にいようと状況の変化を感じることはできる。その結果訪れる2秒後の未来を読んだケイジは先に心中で謝罪と黙祷を捧げた。
「――撃て」
 小隊長の命令と同時に一斉に放たれる大量の弾丸。標的は正面に居る人間すべて。目的や経緯を確認することなく身体に無数の穴を穿っていく。シャッターを閉じたのはこの凄惨な現場を外部に漏らさないため。目撃者は1人たりとも逃さない、一方的な殺人ゲームの始まりだ。
「派手にやってくれちゃって。……ホント、笑えない」
「ああ、まったくだ」
 しかし、一方的なのは一般市民が標的になった場合のみ。私設軍にとって本当の敵であるギルドの面々への被害は圧倒的に少ない。寧ろ、反撃の機会すら存在している。
「こじ開けるわよ」
「へいへい」

 call Kaizserleomon

 call Garummon

 ghost_flip

 先頭を走るアンジュとザクロは同時にコマンドを打ち込み、自身の身体の制御を使い魔サーヴァントに受け渡す。
 アンジュに宿るのは黒曜オブシダンの鎧を纏った黒い獅子。ザクロに宿るのは金色のブレードを背中に備えた白銀の狼。2人の身体に宿った獣は刻まれた習性に従い、両手を地面に着けて顔だけ標的に向ける。その所作こそが機構ギミックを起動させるスイッチ。2人の全機械義体フルボーグが獣として最適な形態へと変形する。
 アンジュの両肩から細い銀色の筒が突出。両足の脹脛ふくらはぎの裏側が展開し、踵からスラスターが伸びる。背中の一部が剥がれ、前面へと垂れて顔を覆う黒獅子の仮面となる。
 ザクロの両手両足の付け根から滑走用の車輪が落ちる。同時に身体の各部から金色の刃が展開。特に背中に左右に広がる一対のウィングブレードは優れた切れ味を持つ業物だ。また、黒獅子と同じく背中の一部が前面に垂れて、銀狼の仮面となる。
 黒獅子と銀狼はそれぞれ内燃機関を激しく燃やし、身体の隅々にエネルギーを行き渡らせる。私設軍が慌てて機関銃の標的を2匹の獣に向けるが、その外殻には傷一つつかず、ただ無駄に弾丸と時間を消費するだけ。その事実を小隊長が理解する頃には、獣たちの狩りの準備は整っていた。

 use-skill "Schwarz Koenig"

 use-skill "Speed Star"

 黒と銀の風が吹き抜ける。既に2匹の獣は小隊の中心へと到達。黒獅子が通った轍にはあらゆる物が砕かれ、銀狼が駆け抜けた跡には一切の物が両断されていた。間一髪被害を免れた者は瞬きの間に味方が殉職したという事実を受け入れられずに固まる。
『その程度の練度で止まる訳ないじゃない』
『今思い知ったところで仕方ないけどな』
 獣の力で小隊の中心に切りこむ事には成功。そこから小隊を内側から破壊するのは、人の技こそが相応しい。そのための命令コマンド機構ギミックも2人は持ち合わせていた。
『もう少し頑張ってね、ダーリン』
『頼むぞ、相棒』

 Slide Evolve Human

 ビーストからヒューマンへの進化。獣として展開していた機構ギミックはすべて閉じ、上体と両手は起き上がって2本の足だけで身体を支える。ここからが人として戦うための変化。その本番。
 アンジュの右手人差し指に嵌められた指輪の台座から小さな円盤が飛び出す。ボタンほどの大きさのそれは、空中で円柱へと変形を開始。ニ三度宙を舞った後にアンジュが掴む頃、それは黒い柄と銀の穂先を持つ「断罪の槍」となる。同時に左手薬指の指輪の台座が膨張を開始。そのまま黒獅子の頭部を模した盾へと変形して左手全体を覆った。
 一方、ザクロの両手首からは薬莢に似た銀色の筒が射出。彼の両手がそれらを掴んだ瞬間、先端から青白い光が飛び出して一定の長さで滞留。両手が握るそれは2本の光剣リヒト・シュベーアトとなる。
 今2人が持つのは使い魔サーヴァント専用に作られた武器。いつの時代も武器を持って戦うのは人の姿をした者の特権だ。

 use-skill "Ewig Schlaf"

 use-skill "Licht Sieger"

 黒の戦士が巧に槍を振るい、銀の騎士が2本の光剣で敵を切り裂く。動きの1つ1つが洗練され、技を振るう様は絵の題材だと言われても一切違和感を覚えない。だが、個々の技よりも注目すべきはその連携コンビネーションだ。互いに邪魔しない程度に遠慮のない立ち回りは、まるで長年連れ添った兄弟ブラザーかと錯覚させる程。
 事態は既に私設軍の一方的な展開では無くなっていた。
「『今のうちに抜けろ』と、ザクロは言っております」
「ご丁寧にどうも」
 宣言通り、進路をこじ開けることには成功。最低限の責務は果たしたところで、ザクロの使い魔サーヴァントが後方に向けて声を上げる。それを合図に後ろで防御に重きを置いていたギルドの面々は一気に駆けだした。
「『半分くらいは残ってよね』とハニーが」
「じゃ、遅れた奴で適当に」
 アンジュのメッセージとケイジの返答が全員の尻に火を付ける。このまま置いていかれて、一般市民という不確定要素が存在する場所に長居するなど御免だ。先ほどの2人のビースト形態もかくやという速度で数十人が全力疾走。2人相手にほぼ半壊状態の小隊を追い越して、第1目的地であるエレベーターホールを目指す。
「1抜……え」
 そうして小さな名誉欲しさに1番を取ったのは、チャットで1番最後に作戦への参加を了承した男。彼を待ち受けていたのは、4機の駆動甲冑ムーバブルアーマーに内蔵された銃火器の掃射だった。1発1発が致命傷になる弾を数に任せて撃たれては、不用意に飛び出した彼の身体は木端微塵になるのが道理。モブには窮地を切り抜ける切り札など持ち合わせてはいない。
「もぎゅ」
「何してるんですか、モブの癖に」
 しかし、モブだからといって必ず無意味に死ぬとは限らない。思わず目を閉じた彼の顔は巨大なバッグに押し潰されてはいたが、その身体には傷一つついてはいなかった。
「ぜ、はー……って、ゼオンさん」
「ども。このままだと僕のベイビーが活躍できる機会が無さそうだったので」
 迫っていた弾丸の悉くはあの巨大なバッグによって――厳密にはバッグから飛び出した4本のロボットアームがそれぞれ持つ分厚い盾によって防がれていた。電脳経由でロボットアームを動かしながらも、ザイゼン・ゼオンは冷や汗一つ書いておらず、寧ろ軽い調子で返事を返すだけの余裕はある。それはつまり、反撃に転じるだけの余裕があることに他ならない。

 Evolve level_Y

「実地実験ができるなんて、危険な綱渡りもするのも案外いいかもしれませんね〜」
 ピクニックを楽しむような場違いな口調。それが本人にとって場違いではないのは、今この現状がピクニックと大差ないということだ。電脳からコマンドを叩き込んだ先はバッグの中に仕組まれた機器すべての制御を担う彼の使い魔サーヴァント。直後、バッグは独りでに開き内蔵していた武器コンテナが解放され、その中核をなすボビンのような歯車が2枚露わになった。歯車は無数の武器が装填された回転式弾倉シリンダー。手裏剣のような物もあれば攻城兵器バリスタ用の巨大な鏃まで、大小や形状を問わない多様さバラエティ。総弾数も4機の駆動甲冑ムーバブルアーマーが内蔵する弾の総数の合計を上回るかもしれない。バッグの下から伸びる杭を支柱にして武器コンテナを構える様は、1人の人間というよりも1つの兵器と言った方が適切だろう。
「おい、侵入者。……お前何をしようとしている?」
「まさか、その数の武器を一気に放つなんて馬鹿な真似はしないだろうな」
 その異様な変形機構には、相対する駆動甲冑ムーバブルアーマー搭乗者パイロットも息を呑む。駆動甲冑ムーバブルアーマーを正面から戦えば文字通り一ひねりできるはず。だが、先手を打つよりも先に思わずスピーカーを通して問いかける程に、ゼオンのパフォーマンスは目を引いていた。
 常人の立ち回りで考えれば、ゼオンが背負う武器の内で使えるのはせいぜいその数パーセントほど。戦いの中で切り替えて立ち回ったとしても最大で20%程しか使えないだろう。だが、一気にすべての武器を使う馬鹿げた方法がある。それは誰でも1度は想像がつく類の物。しかし、あまりに馬鹿げた真似であるため、誰も実戦で用いようとはしない。

 use-skill "Sonic Slash Rain"

「ご名答。いやはや、上層社会トップの皆様は賢くて尊敬しますよ」
 その馬鹿げた真似に浪漫を感じて全力を注ぐことが、ゼオンがギルドのテイマーである最大の理由だ。
 搭乗者パイロットの予想通りにコンテナ上の歯車から一斉に射出される、剣、槍、斧、槌、鉄塊、エトセトラ。爆発的な初速を持って放たれたそれらは――1/3程天井に激突しながら――綺麗な放物線を描き、物騒な豪雨となって駆動甲冑ムーバブルアーマーへと降り注ぐ。
 武器の豪雨は浪漫全振りの攻撃に見えて、理にかなった結果をもたらしてくれる。不規則な軌道で落下する武器は避けることは困難で、重力加速度の乗った衝撃には駆動甲冑ムーバブルアーマーの頑丈な装甲と言えど無傷とはいかない。何より、浪漫全振りの大技だからこそそのインパクトで注意を引きやすく、より明確な隙を作ることへと繋がる。
「満足しました。――じゃあ、後はみんなの好きにしちゃってください」
 既にエレベーターホールまで到達している侵入者は1番乗りのモブとゼオンだけではなくなっていた。50ものギルドの精鋭が集結して現実と電脳から攻撃を仕掛けている。その光景はゼオンの大技で怯み切った駆動甲冑ムーバブルアーマー搭乗者パイロットにはどう映っただろうか。彼らの胸に最期に去来した感情は何だっただろうか。
 少なくともはっきりしていることは、このエレベーターホールの防衛が長く持たないということくらいだろう。



 
「今さらだけど止められてるんじゃないのか、これ」
 エレベーターホールでの戦闘が一段落着いた直後、誰かが第1目標のドアを叩いてそう言った。テロじみた行為がどこを発端にしているかは流石に相手も分かっているはず。だとすれば、これ以上の侵入を防ぐための手段としてエレベーターを停止させるという手を打っていてもおかしくはない。現に壁面に埋められたボタンを推しても点滅すらしておらず、カゴが降りてくる気配も感じられない。
「ちょっとー、ここまで来てどん詰まりとか止めてよね」
 身体を張って物騒な騒ぎを起こしてきたのだ。遅れて集団に追いついたアンジュの言う通り、ここまで来て袋の鼠になるなんてことは流石に笑えない。特に彼女はザクロとほぼ2人で一個小隊を壊滅させる戦果を挙げたのだ。こんなことで手柄をパーにされては堪ったものではない。
「心配しなくていい。既に手は打ってある」
 杞憂だとアーミテジが宣言した直後、それを証明するかのように壁面のボタンが点灯し、雷雲に似た音とともに3つの円柱状のカゴが1階に降下。気の抜ける音ともにドアが開いて自分達を待ち受ける。
「ジョウジに2日前から潜入してもらってたんだ」
「伝手があったから洗の……説得して仲介してもらったの」
 ミヤモト・ジョウジ。チャットではJMと名乗っていた彼は警備員としてビルの監視室へと侵入し、こちらのサポートに励んでくれていた。ちなみにリオンが仲介に利用した伝手コマは、前回の潜入で真っ先に使い魔サーヴァントの虜にされたイバ・マスミ氏である。彼の使い魔サーヴァントは現在もリオンの支配下にあったのでありがたく利用されてもらった。上司の突然の殉職の原因を作り、今度は自社を標的とした企業テロの片棒を担がされるとは、彼もなかなかに災難な男である。
「じゃあ、後は流れで」
「オッケー、好きにやらせてもらう」
 今さら計画を確認する必要はない。エレベーターでそれぞれ目的の階に到達した後は、各自の判断でそれぞれの責務を果たすのみ。
 結果さえ残してくれるのなら、その過程や行動は一切口出ししない。それが今回の作戦に参加する全員に対する譲歩。ただ、首輪を外して本性を解き放つことは作戦にとっても意味がある。全力で好き放題やってくれることこそが、彼らの行動に求める1番の条件なのだ。
「者どもぉお、掛かれぇえええええい!!」
「密室で叫ばないでください」




 


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