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ID.4729
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2017/05/15(月) 21:31


短編【私は人か?人だったのか?】6
1年近く経って、聖奈のまとめたらしいテキストデータを見つけた。

それはどうやら日記に近いものらしく、あまり読んではいけないなと思って消そうとしたが、ふと目に止まったものがあった。

私の意識が戻る前から、いや、初めて覚醒する前の日付と一緒に蓮華ちゃんという文字があった。

すでに私の事を蓮華ちゃんと呼ぶと決めていたのか、それだけ距離を詰めて接してくれる気で最初からいたのか、そう思うと少し嬉しくて、微笑んだ。そういえば最初から蓮華ちゃんと呼ばれたっけと。

でも、とふと気づく。それって聖奈が私がどんな存在であるか会う前から知っていたということじゃないかと。

おそらくは桜庭家全員が知っていたということじゃないかと。そうじゃなければ私と話す前から私が女性であると知っている訳がない。知ってて、それでも多分言うわけにはいかなくてということだったんだろう。

でも私が真実に辿り着くまで一緒に探してくれたのは嬉しいし、今はもうわかったのだからこれはきっと触れないでおいた方がいい。

今度こそ私はそれを消した。

でも、なんとなく改めて自分の情報を見ていた。

最近あまりに触っていなくて多少誇りを被った本を開く。最後の記述は私が裁判に出廷した事、行方不明になった事。

行方不明になった事。あれ?と思って、すぐに図書館に向かった。改めてその行方不明に関して調べる。

行方不明からそのまま見つからず失踪宣告され、法律上の死が確定していた。

もし、見つかっていたならばそれはまだ理解できる。いや、やはり理解できない。

今もまだ生きているならば何故私は個人情報が含まれた事件の内容を閲覧できたのか。という事になる。尤もこれは法律上の死が確定したから今見れるのはおかしくない。

でも、今度は別の問題が発生する。なら何故あの私は閲覧できたのか。誤魔化したりとか犯罪的な手段を取ったのは間違いないだろうが、私が閲覧したからあの私の履歴がでたのではなく、まだ存在しない私の戸籍を使っていたとしたら。

いや、そもそも素直に考えるならば、私はおそらくそこで行方不明になった時に囚われてそのままずっと使われた。人体実験の話を出したくはないだろうから解放はされなかったのだろうと思われる。

そうなるとあの私は誰だ。解放されていない筈の人間が存在するのは矛盾している。いや、仮に解放されていたとしたら今度は私の存在がおかしくなる。だって、あの私に私を解放する動機があるのは二人が完全に同じじゃない時だ。

でも、今の理屈だと私もあの私もどちらも実験に使われた私になる。

確かに複数の私がいる可能性はある。だけど全く同じ記憶を持った人間が何人も何人も私がそうした様に自分は誰かを探し出せばまず出会う。

となると別人?例えば同じ様に実験に使われていたとか、そういう理由で助けてくれたと。でも、それじゃあ何故彼女は解放され私は解放されなかったのか。という話になる。

もちろん、誰かがやっている事を知ってという事もあり得なくはない。

だけど、あの男はとても有名で、どこに住んでるかも容易に調べられた筈だ。そうしてその時何をやってるか知ってるならばあのデータを見る必要はない。何のデータかはわからないけど所在は国家の秘密にはならないだろう、なるとしたらばその実験データとかになるわけだが、それを調べるのにまず警察図書館に行くだろうか?

というか解放を国にやらせるつもりならば調べる必要すらない。

理由も必要もなく存在してるかもわからないところに忍び込む。全くバレずにデータも残して、訳がわからない。

頭に電流が走る様な感覚が走った。あまりにバカバカしいが確かにそれならば必要かもしれないと言えなくもない理由。

私が自分自身を調べている事を知る為。

私が自分を調べようとすれば事件事故からまず存在した事を確かめる。確かめる方法としてはそれがこの時代では一般的。

だから、私がその戸籍を使って調べ物をしたらわかる様にしたと。やり方があまりにもおかしい。でも、私の事を調べるでなく私が調べ出した事を調べようとした時、それを察知するには有効かもしれない。

相手が私ならば、私が図書館にそうそう行かないなんて事も知ってる。行く事を思いつかないだろう事も、誰かに協力してもらうほど本気だともわかる。

ただ、そうするとまた矛盾する。私じゃなきゃわからないのに私だと話が通らない。

ならもう聞くしかない。誰に?連絡が取れるかもわからない私に?いや、今さっき一人いつでも聞ける知ってるだろう相手がわかったところだ。

私は聖奈が帰って来る前にとレスターに連絡を取った。レスターは暇を持て余していたところだと勇んでやってきて、私の話を聞いた。

「なるほど、君がそれを私に話していたならばまた変わっただろうに、私が隠してるとでも疑ってたのかな?」

少し呆れた様な感じでレスターは言った。そういえば私は私と話した事を話さなかった。それは誰が国に言われている人かを突き止める為だったが、もうその必要はない。

家に帰ってきた聖奈は、少し驚いたあとでレスターを呼ぶなら教えてくれればよかったのにと笑って私の横にピタリと座った。

「今日は何をしに?蓮華ちゃんの言ってた映画のデータが見つかったとか?」

あれからもレスターは友人として私達との交友は続いていた。主に彼の趣味の、私からしたら記憶の中の2000年の前後50年の世界のものに関してが多かった。

「あぁ、シャークネードだったね。あれに関しては偶然私の友人が持っていてね、素晴らしく馬鹿だから一度見る価値があると快く貸してくれる事になったよ」

でも違う、今日は別の理由で蓮華君に呼び出されたのだよとレスターは続けた。

「ねぇ、聖奈。私が女性って私と初めて話す前から知ってたよね?」

「……あ、えと、なんで?」

なんでそんな事を聞くのと聖奈は言いながら私の服の袖を縋る様に掴んだ。

「それは、それは……大丈夫だと思うから」

自分でもよくわからない言葉が出た。何が大丈夫なのか、何が大丈夫なのかわからないが大丈夫だと言わなきゃいけなかった。そして、多分それで私は大丈夫だった。

「本当に……?隠してたからって嫌いになったりしない?私の事、好きでいてくれる?」

家族でいてくれる?友達でいてくれる?親友でいてくれる?愛してくれる?愛されてくれる?名前で呼んでくれる?好きでいていいって言ってくれる?そばにいていいって言ってくれる?

涙と一緒に聖奈の口から怒涛の様に出る言葉に大丈夫だと言いながら私は聖奈を抱きしめた。やっぱり私は大丈夫だった。

「よかったぁ……私、蓮華ちゃんに嫌われたらどうしようかと」

「そんなに嫌われるの嫌?」

「うん、私は蓮華ちゃんの事愛してるし、私は蓮華ちゃんの家族で親友でもしかしたら恋人にもなる為にこの年齢になる様生まれてきたんだから」

グリグリと頭が押し付けられる。聖奈からも回された腕にはもう離す気がないんじゃないかと思うぐらいに力が入っている。

「私は蓮華ちゃんに会うまで16年待ってたんだよ、卵の時から、ずっとずっと。二人の結婚も本当はもう少し交際してからのつもりだったらしいし、私は、私達家族は蓮華ちゃんを家族にする為に家族になったの」

16年前から、私の家族として桜庭家は仕込まれていたと聖奈は笑顔で言った。

「でも、二人とも私に比べたら知らない。蓮華ちゃんが自覚なく今を生きる人類が感謝し償うべき人だってぐらいの抽象的な説明で終わってるから」

だから、と聖奈が一番私の事を知っている。それは多分私に一番近い存在になる為に生まれた部分があるから。

「だけど、私が知ってる範囲ではあんまり辿り着いた結論と違うところはないよ?43歳の蓮華ちゃんは旅行中に行方不明になり、正確には拉致されて売られ、実験台にされ続けたコピーされて処置されて、その経過や何かを記録しては処分され、繰り返し繰り返し……辛いかもしれないけど、そういう事をされて、最終的に本体のデータはずっと何故か保管されていて、それが17年前の事で明るみに出て、国は、他の国とも連携してそれを隠しながら、被験者達全員に対しての贖罪を始めた。蓮華ちゃんに対してのそれは幸せになれる環境を作る事、人生をもう一度やり直せる様にする事」

家族に、友人に、金銭的にも、およそ考えられるほぼ全ての事において不利がない様に恵まれる様に、聖奈の手がしゅるしゅると強い力のままより密着しようと絡みつく。

「それで戸籍を作り、受け入れる家族を用意し、両親の戸籍とかその他諸々準備を始めて、準備が整うまでの16年を待ったの。あとは今まで送ってきたのが全て」

聖奈は嘘を言っていない。一年ぐらいの付き合いだけども聖奈は私に対して隠しはしたけど誰より真摯に対応してくれたと思う。

だから、さらに追求しなきゃいけない。

「聖奈の知らない範囲まで知ってるのは誰?」

「……それは、わからない。私に明かされたのは手紙でだし、それもどこから来たかもわからないし、最後の手紙は成りすましが現れた時に、次に現れたら蓮華ちゃんの居場所を移す可能性があるという話が来ただけだから」

こっちからは辿れないと。そうなると私に残された手は最後の一つだけになる。

私は木暮 栗音の名刺を取り出して、あれがおそらく私である事を聖奈に説明した。

「これで果たして真相は明らかになるだろうか?前もぼかされたのだろう?ヒントは渡されたものの……」

レスターが少し不安そうに言った。でも、おそらくもうぼかされたりはしない。あの私は信じてもらえないからと言った。今の私はなんでも信じる用意がある、そしてそれを向こうもわかるだろう。

連絡を取ろうとしてすぐにレスターと聖奈が気絶した。私もレスターの鼻が机に当たるよりも早く意識を失った。





「久しぶり、私」

「どこまで知ったの?教えて私」

私が全部を話すと、その私はお面を取った。その顔は確かに私よりも歳をとっていたが私だった。

ふと、隣にいる聖奈やレスターを見るとこの二人はヒトの姿ではない。ふと触って見れば私も耳のあるべき位置にはレナモンの耳が付いている。慌てて鼻を触るとそこは人間のままだ。

「姿の変化は内面の変化の証、あなたが今の自分を受け入れ出した事」

まぁそんな事は一人で来なかった事からも明らかだけどもと私は微笑んで、キュッと口元を引き締めた。

「ここから先はより残酷な世界、最早あなたの中にはないけれど確かにあなたの身に起きた必要な犠牲だったなんて開き直る事もできない世界。それでも私はそれを知りたい?ここから先が本当のパンドラの箱、だけど希望は中にはないわ。すでに終わった事だから」

私はそう脅したが、すぐに表情は緩んだ。どうせ言っても聞かないんでしょ私だからと笑う。

「過去に帰ろうとかはしてみた?そうしてクロックモンの存在は知った?知っているならば話は早いんだけど」

レスターの言っていた事だ、特定の範囲内の時間の流れに対して干渉できる種、それがクロックモン。私はそれに頷いた。

「その能力で私は未来から来たの、私があの男を殺さずにあの男が痴情のもつれで恋人に殺された未来から、大体200年ぐらい未来からね。だから今ではその未来はこの世界とは多分パラレルな未来になってるんじゃないかな?まぁ、そこに未練はないけど」

「それは、なんで?」

私がこれから成長していく中で変わるのかもしれないが、実験台にされて怒り狂ってたとして、すでに殺された人間を過去に戻ってまで殺そうとするだろうか。

「殺したかったから殺したのと、私の人生を取り戻したかったのと」

一つ目、と言った私は思い出してか怒っていた。

「私達の実験台としての必要がなくなるとあの男は私達を別の目的に使い出した。実験台として必要なくなったことで私達を個人のものにできたからできたことだけど、最低最悪の悍ましい所業。あの男の持つ特殊な性癖を満たす為に使われた」

全身の毛が逆立ち、つい隣の聖奈の手を握った。

「人間の体には興奮できないが中身が人間でないと興奮できないという性癖、まぁそれ自体はまぁ別段問題じゃなくて、もう幾つか異常性癖持ちだったのよ。記憶操作とか嗜虐とか、度を越して犯罪に入る範囲で……詳しい事は話したくないし私も覚えてない。200年後で処分して来たから、知ってはいるけど主観の情報は全部消した」

髪の毛をしゅるしゅると指に巻きつけて、ポンと捨てるジェスチャーをしたが、本人が笑えてなかった。

「そうしたら、夫の顔も思い出せなくなったし親友の名前もわからないし、大事だった人達が軒並み大事じゃなくなった。私よりも200年少ない分私よりマシだけど、あんまり両親のこととか思い出さなかったでしょ?それはそういうとこまで弄ばれたから。もう200年後だと何もわかんなくなってる」

写真とかも見てもわからないからと無理して笑うが誰が見てもわかる強がりだ。

私もその気持ちはわかる。最早大切な存在ではなくなっている両親だが大切な存在だったはずだった記憶がある。まだ顔もわかるし、少しだけだけど思い出も思い出せる。

「で、私は私の人生を取り戻したかった。こっちはもう説明も要らないかもしれないけど。私は自分の記憶の大部分を消した。だから、適当な区切りを見つけてそこから先の記憶を全部消した。そうすれば十六歳からやり直せる。好きになるはずの人と会った記憶もないしね、産んだ子供の記憶も全くなければ惜しいと思う気持ちもそう湧かない」

「……それでも、蓮華ちゃ、さんは救われないんじゃ……」

聖奈がそう聞くと、私はニコリと笑った。

「そんな事はない。絶対にそんな事はない。今こうして私と一緒にいてくれる人に会えて私はすごく嬉しい、会いに行った時に一緒に探してくれるあなたに会えてすごく救われた。私は確かに私を救ったとそうわかっただけで私がどれだけ救われたか。ありがとう、聖奈ちゃん、如月さん。私の居場所になってくれて、ここまで会いに来てくれて、ありがとう」

なんだかすごく気恥ずかしく、しかし目の前の私はそれをわかってかわからずか放置する。

「これで私も私の人生を歩める」

「……君は、どうするつもりでいるんだい?話を聞けば君は被害者だ、国が贖罪をしようとしているならば君もまたその対象になるのではないか?」

「そうかもしれない、だけど私は200年後から来てるからこの時代で生きてちゃ本来いけない。200年で技術は大きく変わるから、私の持ってる程度の技術でも今の時代なら戸籍を弄ったりできるわけだし。だから200年後でまた会えたら会いましょう。この肉体なら100年200年は簡単に生きられるんだから、きっと会える」

また、時間も来たみたいだしと私が言うと私の意識は消えて生き、目覚めた時には三人で机に突っ伏していた。

そして、吸血鬼カーミラと書かれた本が置かれていた。

私は二人に言ってそれを自分のものにした。

それに意味はあるのだろうか、吸血鬼カーミラ以外にも何編か入ってる、パラパラとめくると一つのページに折り目がついていた。

そこをめくると一つのセリフが目に付いた。そこだけ滲んでいた。

「あなたはわたしのものよ。きっとわたしのものにしてよ。わたしとあなたは、いつまでもいつまでも一つのものよ」

なんとなく気になってその全部を読んでみると、カーミラというのは主人公の貴族の女性とカーミラという女性との出会いから別れまでの話だった。

さっきのセリフはカーミラが主人公に当てたもの。最後にはカーミラと主人公の女性は会う事はなくなった。カーミラは、どうも死んだらしい。

カーミラは吸血鬼だった、生きるには血を啜るしかない吸血鬼。吸血鬼に襲われたが為に自らも吸血鬼になった。

作中には血を吸う事を暗示して、死ぬ事でずっと一緒になれるという様な表現もある。それは吸血鬼になるという意味で言ってたのだろうと思えたが、それを私に当てればどういう事になるだろう。

記憶を汚され、大切な人の思い出も失い……いや、失ってなかったのかもしれない。悍ましい操作をされても尚そこに元いた筈の誰かを思っていたのかもしれない。その誰かを思って、私は人としてやってはいけない事をした。

吸血鬼になった人間は死ぬ事で救われる、そういう風潮があるらしい。

あの私は人だったのか、あの私は救われたのか。

私はその本をそっとしまい込んだ。

完。


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