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ID.4726
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2017/05/15(月) 21:23


短編【私は人か?人だったのか?】3
次の日、聖奈さんは学校をサボっていた。

「如月って人流石になんか変な人の度合いが強い気がする。とんだ変態だよきっと」

という事らしく、私がもしレスターと二人になる事があれば自分もついて行くと強い口調で断言した。

あともしかしたらなにか似た感じからの被害があるかもと私の膝の上に座った状態でその名前を検索したりもし始めた。

そんなありきたりな名前でもないがネット全体の情報量が莫大だと見つかるものもまた膨大で、すでに三十分は探し続けていた。

「見つけた!流石に同姓同名同種なんてまずないから多分本人だよ蓮華ちゃん!」

何の為に探してたか忘れでもしたのか嬉しそうに聖奈さんは声をあげた。

その画面は、この時代より10年ほど前の私が入院していた病院のホームページを画像として残したもの。あの姿の上から白い、しかし巻き込まないようにか大分厚みのある白衣を着た写真に総合形成外科主任という仰々しい肩書きが付いていた。

慌てて貰った名刺を見る。聖奈さんは信用してないから見てなかったようだが確かにそこにも小さく医師と書いてあった。私の話を盗み聞きしてたのは自分の勤めてた病院の名前が出てたからと考えると耳についてもおかしくはないのかもしれない。

「……名刺通りみたいだね」

「いや、何かはおかしいよ。だってこれ10年前だもん、今のページでは名前もないし……」

医者な事も踏まえて聖奈さんが改めて検索をかけると一つのブログがヒットした。

「やっぱり、辞めさせられたんだよ。これ見て蓮華ちゃん」

そこに書かれていたのは裁判に出廷している人のブログ、そこにはレスターが手術した患者がその後アレルギーで死にかけた事について訴えられた話が書いてあった。それを見る限り、内容としてはこう。

レスターのところに今の種ではない体になりたいという患者が来た。そこで色々と検討してある種にする事に決めた。その種に変わる事で今まで食べられたものが食べられなくなったりする事、こんなものはまず食べられないなどの事をレスターは書面にまとめて患者に渡し、合意を求めた。患者はろくに読まずに合意、術後書いてあったまず食べられないものを食べアレルギーで死にかけたと。

結果は無罪。ただ、病院側は騒ぎになったからとクビにしたというなんとも報われない話。

「こんな簡単にクビにするんだ……」

「蓮華ちゃんの時代はどうかわからないけど今は首になっても生活ができなくなるとかまずないから、非がないなら再就職もできるだろうし、実際医師免許取られたりしてないみたいだし……」

なんかちょっと悔しいけどと聖奈さんは眉根を寄せる。

「……総合形成外科ってちょっと聞いたことある感じだとすごい有能じゃないとできないって話だし……むむぅ……」

総合なのに形成外科っておかしいなと思いながら出した画面を色々見てると獣型内科とかサイボーグ型外科って何かしら種が頭につくのが目についた。

総合って種別問わずということか。そう考えると有能じゃないとできないも納得行く気がする。

色々と見ている内に、聖奈さんはついにSNSのアカウントまで見つけたらしい。ハンドルネームはもちろん本名じゃなかったが、交流がある人との古典映画鑑賞会の写真に姿が写っていてそこから特定したらしい。聖奈さんの手際がいいのがちょっと怖い。

そして、見せられた写真の中には私が刺される数年前の映画のパッケージが映っていたのが少しショックだった。言葉も通じるからあまり思ってなかったけどこの時代から見れば私のいた時代の作品は古典扱い。二百年も経ってるから仕方ないとはいえ古典と思われてると思うと少しばかりモヤモヤした気になる。

「んむむ、むむ……こっちもこっちでやっぱりそんな悪い感じはなさそう……」

聖奈さんの発言に我に返ってざっとSNSの投稿を見てみれば私の情報も特に晒していたりはしない。ちょっと気になる事があって一時的にそれに関わりっきりになるからしばらく顔を出さないかもという発言がある程度だ。

周りがその内容に関していい情報源が?みたいな事を聞いてももしかしたらそうなるかもしれないしそうでないかもしれないみたいにぼかして答えている。

聖奈さんは探しても探してもやっぱり多少変なだけのいい人ではという結果になっていきついには諦めたらしい。

「……とりあえず、会わないようにとは言わないけど心配だから次は私も連れてってね」

「でも、前は待ち伏せされた訳だから黙って会いに行ったとかじゃ……」

「待ち伏せの話は聞いてないんだけど?待ち伏せされてたの?どこで?警察図書館で?ストーカーじゃない?」

聖奈さんが絶対二人っきりにはならないでねと言いながらどこからか三又の槍を取り出して先端を確認する。とても物騒だし、どこから出したんだろう。そういう種、なのか。

その後、聖奈さんにはこっちの時代の両親のSNSなんかも探してもらったが、どっちの種族もそれなりに数がいる種の様で写真などでは見つからない。なんとなくそれっぽいというのは幾つか見つかって、私の家の爆発が起きた前後から更新がないのも三つほどあったがどれも何の情報もなく、強いて言うなら子供は愛されてるなというぐらいだった。

子供の年齢も種もわからない様書いてないがとにかく三者三様に愛してるのはわかる。

小さい時にミントティーの味は好きでない様だが見た目が好きだと言っていたからそれから何年も飲み続けているなんて話とか、小さい時に似合ってるって言ってくれた髪型をずっと続けてたらたまには変えたらと鬣をアレンジしてくれたとか、小さい頃から綺麗な金色の毛並みをしてるから櫛を入れるのが楽しくて仕方ないとか。

チラッと鏡を見る。流石xxに見慣れた黄色い毛は確かに金色に見えなくもない、染めた訳でない自然な感じが色味として美しいとなるのはわからんでもない。

「この時代の両親にとって私はどんな存在だったんだろう」

もしこの中にその両親のどちらか又はどちらとものがあったら、私はきっとそれはそれは愛されてたんだろう。

ミントティーの透き通った黄緑色が好きだったかもしれないし、髪を弄るのもきっとそれなりに好きで、今でも親に櫛を通してもらうぐらいに仲も良かったのだ。

「私のこの体、もし前に持ち主がいたら……その人はどこに行ったんだろう」

私は、2017年の黒木 蓮華。2256年の黒木 蓮華がいたとしたらその人はどこに行ったのか。

もちろん、いなかったかもしれない。私がいる事を思えばいなかったと見た方が自然な気もする。でも、もしかしたらいたかもしれない。

それはオカルトでも何でもない。この時代には体から意識や記憶だけ出して機械に入れる技術もそこからまた別の体に入れる技術も存在する。2256年の黒木 蓮華の中に私の意識と記憶をというのはあり得ない可能性じゃない。

両親も存在していて、爆発事故にあって、それで、眠っているのかそれとももういないのか、それすらもわからない。

「蓮華ちゃんはこれからそれを確かめるんでしょ?両親がいてももしかしたら子供はいなかったかもしれないし、いた可能性と同じ様にいなかった可能性もあるんだから」

ね?と身を捩って、聖奈さんが私の頭の上に手を置く。撫でられるのは少し恥ずかしいが慰めてくれてるしと抵抗しない。

すると次第に手つきが毛と毛の間をすいたり揉んだり、片手だけだったのが両手になり頬のあたりをつまんでみたりとやりたい放題し始めた。

「ひゃひほひへひふほ?」

何をしてるのか聞きに行けば口のところもグニグニとされて変な感じになってしまう。

「毛並みフッワフワで肌モッチモチだなぁと思って」

そろそろ止めようと下に視線を向けると、ふと聖奈さんの頭のフードの視線と私の視線が交差した。私がそのフードの垂れた耳の様な場所を掴むとその動きが止まった。グニグニグニグニとこねくり回せば聖奈さんの手の動きも完全に止まる。

プニプニのグニグニでゴムの様な肉の様な弾力はあるんだけど吸い付く感じもあってなんとも言えない肌触りだ。つい楽しくなって触っていると聖奈さんの手が耳に伸びた。

そうこうしてる内にこね回し合いに発展し、ハッと我に返った時には床の上に私の毛が結構な量落ちていた。





この日は聖奈さんが学校でいなかった。いない時に外出すると不安がられるので家で私が覚えている事をひたすら打ち込んでいた。

文字は書くよりもキーで打つ方が早いけど、言葉だけじゃうまく表現できないものはペンを取って書く。あんまり絵心はないので自分でもちょっとどうかと思う様な感じだけども、まぁ伝わらなくはないだろう。

そうして入力したらカードに移す。小さすぎても困るし、常にネットに繋いでると簡単に侵入されるし、容量は進化してるけど外見的にはそれほど変わってない。

抜き出したそれを近くに置いた文庫本の表紙に差し込んでパラパラと開く。

この文庫本、テキストデータや画像データ、特定のソフトでまとめられたデータなんかをそのページに映し出して見れるという商品で、この時代においてはジョーク商品以上のものではない。

2017年はまだタブレットもない時代だと勘違いして買ってきてくれたもので、軽いし見やすいし落としても大丈夫だしなかなかいい。

改めて中身をパラパラ見直す。とりあえず今はまだ何も修正も追加もしなくて良さそうだ。

ふぅと一息吐いても近くには誰もいない。どうしたのという声は聞こえない。

この世界に来てから時々あるこの一人の時間、この時間に私はどうしようもなく怖くなる。

私は黒木 蓮華だ。そう、絶対に黒木 蓮華だ。

でも、私の言う黒木蓮華と周りから見た黒木蓮華とはやはり一致しない。私の肉体はこのレナモンというものではなく、ヒトという動物のものである筈だとそう思うのけどここにある体は私から見てもレナモンだ。戸籍もそうだし、客観的な証拠は私が私の言う黒木 蓮華であることを否定する。

確かに、聖奈さんは信じてくれるしレスターと作った証拠はそれなりだろう。でも戸籍だなんだというそれと比べたら信用されないようなものであるのも間違いない。

果たして私は本当に黒木 蓮華なのか。同じ名前の、この世界に戸籍も存在する見たままの存在ではないのか。いなくなったのではなく、私こそがそうだから存在している。それは当たり前なんじゃないのか。

そんな事を考えてると徐々に気は重くなっていく。元の時代なら自分は誰かなんて考えた事もなかった。考えなくても私は黒木 蓮華だった。

手元の本はさっきから捲ってもない。一度気分転換しようと私は鏡の前に立ち、自分の姿を変えた。

そこにあるのは私の知る黒木 蓮華。五十センチは身長が縮み、耳は顔の横につき、上唇は二つに分かれていない。全身を黄色い毛並みが覆わない。しかしこの中身は狐の姿の、レナモンという種の体のまま、変えられたのはこのレナモンという種のの体の特性。

足元には体が小さくなった事で脱げ落ちた服が重力に従い積み重なる。

そうしてじっと自分の体を見る。どう動こうとしたらどう動くのか、歩いたりしゃがんだり跳んでみたりする。そうしたら今度は喋りだす。喋る内容はなんでもいい。なんでもいいからとにかく色々と喋る。こうやって動かしてたんだとこういう声をしていたんだとわかるように。

そうしないと声も姿も忘れてしまいそうなそんな気がする。

小一時間ほどそうしていただろうか、毛がない状態だったこともあり適温でも少し肌寒く感じて、姿を戻す。そして足元の服を手に取る。

そうしている内に気づいた。私は裸でも特に恥じるでもなく周りを確認するでもなかった。前はそんなことなんてなかったのに、一人で家にいてもお風呂上りには誰が見てるわけでなくてもタオルを巻いていたし、裸で生活する習慣があったわけでもない。

服を着てなくてもいいと、この時代に来てこの時代の常識に私の感覚が侵されている。

自分を見失わないようにと思っていたのに、自分は2017年に生きていた人間だと確認したかったのに。

一瞬叫びたくなった。誰もいないからと、だけどやめた。だってそれをしてしまうわけにはいかない。

見た目は最早人間じゃない。だけど人間だ、私はそう思っている。でももし叫んでしまったらそれすら失ってしまいそうな気がする。それでは見た目通りの獣だ。

帰ってきた聖奈さんは服を着ていないままうずくまる私を見て何か察した様で、そっと服をかけてくれた。


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