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ID.4725
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2017/05/15(月) 21:21


短編【私は人か?人だったのか?】2
翌日、聖奈さんが学校に行っている事もあり、一人で私が警察署の図書館に行くと、昨日と同じコートを着たアンドロモンがいた。間違いなく如月 青三だろう。近づいて行ってみると気安くひらひらと手を振ってきた。

「どうやら求めていたものだったようで嬉しいよ」

「……ちなみにここに来るというのはどうしてわかったんですか?」

「それは簡単だね、2017年なんて200年……ほぼ250年前の事を調べようと思ったら人はなるべく大きなところを選ぶもの。国内で一番規模が大きいのがここだったというだけの事さホームズがそうした様に人に誇る程の推理でもないよ」

確かにそういう事で選んだのでぐうの音も出ない。そうしてそれだけこの人がまじめに私の話に対し取り組んでたんだろうということもわかる。

真剣な分不審者としての度合いも上がった気もするが。

「君が自分を納得させると共に誰かを納得させる事もしたいのならば私がその証人の一人になろう。そう、先ほどホームズが出たのだから私はそれを手記に記録するワトソンといったところか。いや、ワトスンはかの白く愛らしい人の方が君としてはいいのかな?ではレストレード警部とでもしておこうか!さて、もちろんこのレストレードがいずとも閲覧履歴が確認できれば君が話していた聖奈くんという子からも証言は取れるだろうし、それなりに信じてもらえる様になるのではないかな」

でも、いた方がいいのではというニュアンスを匂わせる言葉に私は少し迷って頷いた。レストレード警部だと正直頼りないけれども。

「よろしくお願いします、如月さん」

「任せたまえ、ただし一つだけ条件があるけどね」

「……なんですか?」

「ブルースさん、できればそう呼んで欲しい。私の青三という名前はブルーとスリーでブルース・リーを暗示してるのだよ。日本で生まれてなかったらブルースとつけるつもりだったと両親によく言われていたし、もしたらもう気づいているかもしれないが私は君が生きたという時期にすでにレトロだと言われた様なそんな世代の物にとても魅力を感じる質なのだよ」

「ブルースさんよりレストレードさんの方が似合いそうな格好に見えますけどね」

ブルースならコートよりももっとアクションスターらしく動けそうな格好であるべきだろう。

「それも悪くないんだが、残念ながらレストレードは苗字でね名前は一切言われる事がないんだよ。そうなると、ほら私と君の間に壁がある様じゃないか」

未来の人に負けるのはなんとなく嫌なところだが、実際レストレードについて私はよく知らない。ホームズだって全部読んだ訳でもないし

「苗字で充分じゃないですか?レストレードさん、飛んだり跳ねたりされても困りますし……言いにくいけど」

「ブルースならば言いやすいと思うよ?」

「……じゃあレスターで」

「レスターになるとまた作品が変わってしまうね」

「ポアロ?」

「非常に惜しいがちょっと違う。確かに作者はアガサクリスティーであるのだが口髭の紳士の話ではなく詮索好きの老婦人のお話の方に登場する警部だよ」

「ミスマープルの方か……ポアロはジャップ?」

その通り、じゃあ行こうかとレスターはコートから閲覧許可と書かれたカードを三枚まとめて取り出し、一枚しまった。

ほら君の分だと渡されたそれに名前や何かの文字はない。どうやらこれから記入するらしい。

一度修学旅行で東京に行った時に見たロダンの地獄の門みたいな、巨大な門の脇に設置された機械にカードを通し、表示されるままにぽちぽちと自分の戸籍の番号を打ち込むと、何かしらの光が頭の方からパッと浴びせられ、数十秒。機械から出て来たカードにはちょっと驚いた様子の顔の今の私の顔が写されていて、名前も記入されていた。

これなら確かに私が来たかどうかはわかりそうだ。

「……にしても厳重な気がするけど」

「あぁ、そう思うのも当然だとも。私達に許可が出たのは第一層、通常の蔵書と、期限切れで個人情報の保護も終わった事件についての領域だ。実際そこだけならばとてもこれ程の警備はいらないとも。でもそうじゃないまだ生きている人の個人情報や遺族が情報開示をしていない領域もある。あとは模倣犯が出てしまい兼ねないから詳しい手口を明かせないとか……噂ではそれこそパンドラの箱の様な明るみに出せない類の情報もあるらしい。私達がそうしたところも見てしまわない様警告する意味も込めてのこの厳重さなのさ」

なるほど、何となく納得できなくはない。個人情報は大切だというのは二百年では変わらないんだろう。噂に関しては考えなくていいだろうし。

「さぁ、まずは過去に来たかどうかから確認しておこう。入り口横の端末にカードを入れれば過去の閲覧記録が確認できる。善は急げという諺はこの時代にも残っている。そこに何もない事を見届けることで君が君である証明とする第一歩目を踏み出せるのだから」

長いこと一緒にいると疲れそうだなとか思いながらカードを差し込む。なんでこんなに大げさなのかと。

しかし私こそ軽視していたのだと思わせるような結果が出ていた。

「……過去、一度君は訪れたことがある。という事になっているようだね」

これは面白いと好奇心が隠しきれていない声を出したレスターを私は一度睨みつけ、改めてそこに写ったものをよくよく見ることにした。

「私が入院してたよりも前の日付……どころか」

目を覚ましたのは2256年の3月だがそこに書いてあったのは2239年5月の日付。17年前、戸籍上16歳の人間が17年前に訪れた記録。

「ふむ、これはなかなか面白いことに……もとい複雑怪奇になってきたものだ。しかし今はとりあえず中身を確認するのがいいだろうね」

そうだ、まだ私がここに来たというだけで普通の蔵書を見に来たとかならば何も問題ない、事はないけど今回の目的は一応果たせる。その私が私について調べてないのならばまだ私が黒木 蓮華を知り得ないのに知っているから私こそが黒木 蓮華である、少なくとも過去から来たのであるというのは覆らない。という事になる。

そうして閲覧履歴を見ればそこには新しい困惑が待っているだけだった。

「蔵書じゃない……?というかなにこれ」

閲覧禁止資料の文字がずらずらと並んでいて、その資料のおいてある場所だけしか見てわかる情報がない。最早蔵書かそれとも何らかの捜査資料なのかもわからないそれを見てレスターがごくりとつばを飲み込んだのが聞こえた。

「……さっき私達に許可が出たのは第一層と言ったのは覚えているね?実際はそういう名称ではないのだが……そこは割愛しよう。この図書館の内部の資料は物として保管されているものと電子データで保管されているものの二つがあるが、後者の方は保管しているサーバーもいくつか分けられている。そのサーバーはセキュリティごとに分けられていて同じだけの手続きや条件を必要とするものは物として保管されているものも合わせて一つの場所に置かれている。その区切りは階を分けることで行われ、一階毎に内容が変わりながら厳重になっていくその様を私達は層と呼んでいたわけだ」

「それで、一体何がわかるんですか?」

レスターは画面に表示された地下5階という文字を指さした。表示された資料全ての置かれた場所がこの地下5階だ。

「この建物はとても広い。一つ階を降りるにはそれ相応の理由や許可が必要になる。ここ一階は身元が明らかならば特に条件なし、地下一階は個人情報も関わるため基本的には捜査関係者なんかぐらいまでで、地下二階になれば取扱いにそれはそれは困る様なとても大っぴらにはできないもの……例えば違法薬物の密輸ルートの詳細なんか大っぴらにしてしまってはいけないだろう?そうした内容が主になってくる。故に地下二階からはすでに関係者の他はまずもって入る事などあり得ない。さらに下がっていけばその危険度も増していく」

「……それで、地下五階には何が……?」

「それは存在しないのだよ」

「は?」

「あぁ、私が君を謀ろうとしているだとか思わないでくれ、決してそういうわけではない。そこは存在しない筈の場所だ。とても世の明るみに出せない情報、それがこの図書館にはあるという噂はある。ただ地下四階は警察図書館の事務だなんだという設備がある筈で、そこがこの建物の底である筈だったんだ。そう、その下は存在していない、少なくとも公的には。先ほど私は後悔してはいけない情報をパンドラの箱と表現したが、今ここに示された地下五階その内側にある情報を災厄とするならば今ここに見えたのはパンドラの箱そのものだ。我々はその蓋にそれと知れず触れてしまった」

存在していないといわれるものが確かにここに表示されている。存在すらあやふやなものにアクセスしていたというこの時代の私は一体何をしていたのか。私はそれについて何か言えることはないか聞こうとしたがその大きな機械の手で私の言葉を遮った。

「……興奮してしまったが一度それは置いておこう」

「え、あんなに急に喋りだしたのに」

「確かにそれも気になる。生まれてない筈の人間が存在しない筈の階で閲覧禁止の資料を見ていたというのだから。でも今は確かめる方法もないのだし目的を見失ってもいけない。目的は君が過去より来たのだという事を証明する事、その目的が目の前にあるのだからいくら気になったところで後にしてしまっていいのさ。パンドラの箱は開けてはいけないが蓋に触れたぐらいならば引き返す事もできるだろう。もし今後私達の前にもう一度対峙する機会があったらばその時はどうするかわからないけども」

あ、今後も関わるつもりなんだとは思ったもののとりあえず飲み込む。そして一旦図書館の外に出た。

今が何月何日何曜日かわかる時計が外観にあったのでそれや空とかも画面に入れながら私が知る限りの事件のあらましについて説明する姿を動画に撮った。時代に容疑者被害者、詳細な場所やその日の天気とかも振り返った。容姿の説明の時にはこの体の能力を使って外観を記憶にあるものに変化させて説明した。

ただ、映像なんて偽装は容易でもあるからないよりはまし程度でしかないが、一度確認してもう一度中に入る。

さっきの端末で今度は私の事件の資料がどこにあるのかの検索をする。2017年11月、高校の名前まで入れたら一件しか検索にヒットするものはなかった。

胸の内で心臓に当たるものがドクンドクンと音を立てているのが伝わってくる。

くどくどした説明を聞き流しながらそのサーバーを閲覧する為の端末にカードを差し込み、項目を選ぶとずらりと事件の詳細が書かれた資料が出てきた。

2017年11月12日に起きた刺傷事件。加害者の少年の名前は上村 和也で被害者の名前は黒木 蓮華。場所はすでに検索条件に入れた通り。天気は晴れ。時間は119に電話が入った時間から朝の8時32分とされている。凶器は出刃包丁。刺された箇所は背中、追撃はなく逃走もせず、目撃者の証言によると恨み言を投げかけていた。動機はその時の発言や被害者の親友等の証言から、被害者が自分の恋愛の邪魔押していると思い込み、いなければ成就すると考えたとみられている。

それが裁判でどうなったとかも見ることはできたが、そこまで見なかった、興奮してそれだけ確認するのがやっとだった。

私の覚えている様子そのまま、何も変わらない。少なくとも私の記憶は確かだった。さっきまでと変わらず胸の中では激しく音が立てられているがさっきまでの緊迫感と違い今のそれは歓喜してるように感じる。

「おめでとう、これで君は一つ自分を自分たらしめる物証を手に入れたことになるね」

「ありがとうございます」

レスターが握手しようと手を出してきたので私もそれに合わせて手を出したら手のひらを見てレスターは手を引いた。

「あぁ、すまない。私の関節部は、細かいものを巻き込みやすくてね」

どうやら私の不満は表情に出ていたらしく、レスターは大げさに肩をすくめながらそう笑った。確かにその手は機械だし私の手は体に比べれば短いものの毛に覆われている。

「なんだかごめんなさい」

「逆の立場ならきっと私が怪訝な表情をしていたと思うよ。ん、あったあった。厚手の皮手袋はむしろ巻き込む方が難しいからね」

厚手の革手袋で大きな手を覆ってしっかりと握手をする。体に不釣り合いなぐらい大きな手だなと思ったがそれと握手する私の手もそう変わらない大きさだ。

そういえばじっくり顔を見た事があったかと顔を見てみる。レスターの口元は笑っているが目元は笑ってない、というか瞼とかがないのか今にも目玉はこぼれ落ちそうなぐらい見開かれていて表情を表せる部位でないのだろう。

そういえば私の表情はどう見えるのだろう。少なくとも伝わってるのは確かだが。

「ところで、この後はどうするんだい?君が過去から来たのは一応証明されたと言えるだろうが……」

それで何かが解決したわけでもない。そうなんだ、そうだった。私はむしろそれから目をそらしていたのかもとすら思う。考えたくないことを考えないように何かをしたくてそうしていたような気がする。

だって、もしも本当に過去から来たという事ならば両親も親友もすでに死んでいる。多分、大事な人はみんな過去にいる。

私の戸籍があったりする謎も未解決、こっちの両親の事も、私の体の事も未解決だ。

「……過去に戻れると思う?」

「その質問に対しての私の回答はきっと残酷なものになるよ。君は満足できず、されど絶望さえも奪い去ってしまう、残酷な希望の残滓さ」

その言葉を理解し返答するのに私は数秒必要だった。

「心当たりがないわけじゃないってこと?」

「そういう事になるね。ただ、それは可能性と呼んでいいかもわからないものだ。過去にそういった能力を持った体を得たものがあるという、文献を読んだ事があるというだけなのだから」

「それはこの体が姿を変えたりできる様に時間を遡るという事?」

「その通り、その体はクロックモンと呼ばれる種でね、特定の年月間を自在に行き来したという。二百年一度に遡れはしないだろうが、クロックモンを見つけ限りなく戻り、その時代で別のクロックモンを見つけとしていればその内に君は辿り着ける……のかもしれない」

「かもしれないというのは?」

「……ふむ、少し長くなるがいいかな」

レスターはそう言うと一つの蔵書の名前を打ち込んだ。それはどうやら写真集の様だった。

「220年程前、温暖化の影響か永久凍土の中で活動を停止していたあるウィルスが世界中に蔓延した。改悪し広げたのは悪意あるテロリストによるものであり、当時の計算によればとてもそれを防ぐ事はできず、人口の九割五分が死亡する事でウィルスのキャリアがいなくなり始めて安全な地域が生まれる事になるだろうとされた様だ。それはノアの大洪水の様に抗い難いものに見え、感染してしまったものの中にはコールドスリープについたものも相当数いたという」

220年前、大体2050年頃、つまり私があのままま生きてて巻き込まれたかもしれない話。それは歴史上の出来事という様にはとても考えられなかった。

写真集に写った皮膚が鱗か何かの様に固まった指で遺書を書く男性も血が出るまでその皮膚を掻き毟る子供の泣き顔もあまりに悲惨だった。

「だが人類にとって幸運な事に世界に一人の天才率いるチームが存在していた。彼等は一つの技術を開発した。それが人間の意識を完全に電子データに写し取る技術と別の脳等に移す技術。つまり、人の肉体は死んでも精神は死なないですむ箱舟へと乗せる技術だ。それが発表されてから世界各国の富豪達が社会貢献に使う金は全てそこに回ったと言ってもいい。まずはそうした富豪達から機械の体や元から耐性を持つ様に手を加えた肉体を手に入れた。その技術は必要に駆られたから急激にあり得ないほどに早く広まり、キャリアがみな身体を棄てた事で死者は世界人口の一割に留められた。一割も死んだとも言えるがね」

サイボーグのような姿で笑う私も知ってるセレブ俳優を老けさせた様なおじいちゃんと、それと握手する男の人、どことなく作り笑いがぎこちない。ちらっと注釈を見ると65歳というあり得ない年齢が見える。きっと自分も若い体に替えたという事なんだろう。

私が驚いているのを見て面白そうについ20年ほど前までは彼は生きていたとレスターは付け足した。

「さて、その技術には多くの伸び代があった。記憶を人格をデータに、そしてそれを移し替える。その技術にかけられたお金の事もあったからか、少しすると我々は電子データと互換性のある物体を作り出す事に成功した。それにより人は禁断の果実を手に入れた。生命の創生が可能になったのだ。意識も身体もどちらも電子データで作って出力できる。逆もまた然り。そういう世界が誕生し、その状態は奇しくももう一度洪水を引き起こした」

そこからの写真は徐々にこの世界で見慣れた人間の姿になっていった。その肉体に反対するまだ普通のヒトの人達のデモ風景。掲げられたプラカードには人間をやめる行為だと、お前達は怪物だと結構ひどい事も書いてある。

「そうして造られた身体に入った事で変性した細菌やウィルスの猛威、又、現実に出るはずのなかったコンピュータウィルスが現実に出現したり、とても従来のヒトの肉体の生きていける環境ではなくなっていった。そうして私達人間はヒトを完全に棄てた。それが大体100年は前だ」

それから今の様になったのは色々やってみたかったからとしか言いようがないんだろう。特に理由は見当たらない。ただ、変わりゆく様だけが写っている。レスターと同じ種が並んでいる写真も百年は前。

「作った肉体である事もあって自然交配はできないことがほとんどで、子供は親のデータから受精卵を造られたりするという事が増えた。サイボーグ型だったりしてもそこもまた肉体の一部であるしね。今でも物好きはわざわざ交尾できる様にするらしいが」

さて、前置きはここまでにしようとレスターは写真集のウィンドウを閉じた。

「かなり脱線したが、この時期になって始めて特殊な能力をも有した個体が現実になってきたんだ。それまでは確かに怪物なんて言われもしたが時間を遡れる程の話はないだろう。精々火を吹く程度。つまり、この時期から100年近く遡れる個体がいるかどうかによって戻れるかどうかは決まる」

250年一息にはまず無理だとレスターは言った。という事はきっと文献にはどの程度遡れたかも書いてあったのだろう。

「……どれくらい遡れるものなの?」

「10年強とされているが私の読んだ文献で確認されていたのは三体、50年程の区間を自由に動けたという人と、10年しか移動できなかった二人との話しかないんだ。難しいとは思うが可能性がゼロとは言い切れない」

それはほぼ絶望的なのではないか、その考えは表情からか正確に伝わったらしい。その目はすっと下の方を向いた。

「そう、だから残酷だと言った。もしかしたらいるかもしれない。それに……君が戻っても待ち受けるのは人類の10%が死滅する未曾有の災害……テロという形で起こった事もあり死者は早期に感染した先進国と当時呼ばれていた国々を中心としている。島国であり検疫し易い日本も例外じゃない。なんせ日本でも撒かれたのだからね」

私は咄嗟にレスターの閉じたウィンドウをまた開いた。あの時は症状に気を取られていたが確かにそこにいたのは日本人で、窓からは日本語だけの看板が見える。

「死者が最も多かったのはインド、次はアメリカ、中国に続いて四番目が日本。一つの国で見なければ欧州でも夥しい人が死んだ。過去に戻るのを私は止める事はしないだろう、しかし、その為に君はこの時に死ぬかもしれない。君の身近な人だけが誰も死なないという事もないだろう、感染者はより多い……君が戻れてもその渦中かもしれない」

レスターは残酷だ、とても残酷だと繰り返した。

「君がこの方法でまず戻れるだろうと私が言えるのは100年。そこは君の時代から150年経った時代だ。当然今の様になぜか戸籍があり身寄りがありという事はないだろう。正しく天涯孤独になる」

それはそうだろうと思う。私の戸籍がある方がおかしい、優しい人達が家族の様に扱ってくれてという事もまずないだろう。

しかし、他に何も方法がなかったら私が帰ろうとした時に選べる方法はこれの他にはない。

あぁ、だから残酷なのか。できるかどうかわからないではなく十中八九できないのにそれを選べてしまう。

「……他の方法を考えた方が良さそうかな」

「問題はどう帰るかであって、そこにクロックモンを頼らなければならないなんてルールはないのだからそれは間違っていないとも」

とはいえどうすればいいのか。考えてみると少し引っかかるものがあった。

「私は過去から来たらしいと実証されたよね?」

うむとレスターは頷く。

「もし、過去から連れて来られたんだとしたらその連れて来た何かは過去に行ったって事じゃない?」

「確かにその可能性はないわけじゃない。となると君がどう来たかの経緯から探ってみる感じかな?」

「うん。どこかで私はこの時代に現れたはず。どんな形かはわからないけど、戸籍が作られたり両親が存在したりそうしたところが作られたものならばそういうとこから探れる……のかな?」

「その方針は間違ってないだろうね。データに実体を持たせる技術は同時に実体がデータに容易に干渉できる様にもした。戸籍を偽造したり、改竄したりされたりの可能性はあるし、それを踏まえてセキュリティは存在している訳で、偽造改竄できる人というだけでも関わった可能性がある人物を大分絞り込んだりする事ができるだろう……が、それを踏まえても茨の道、しかも犯罪行為に関わるのだから、踏み込み過ぎればそれは大いなる危険をも伴う。この時代の感覚のない蓮華君は一人では動かない様にするんだ。いいね?」

「うん、あとさりげなく名前呼びまで距離詰めるのは少し軽々しい感じある。レスター」

「距離が近づいたようで嬉しいのだけどブルースとは……?」

「呼ばない」

それは残念と言ったレスターと別れて私は家に帰った。家に帰ると聖奈さんには怒られ、聖奈さんの両親にもとても心配されてしまった。


スレッド記事表示 No.4724 短編【私は人か?人だったのか?】ぱろっともん2017/05/15(月) 21:16
       No.4725 短編【私は人か?人だったのか?】2ぱろっともん2017/05/15(月) 21:21
       No.4726 短編【私は人か?人だったのか?】3ぱろっともん2017/05/15(月) 21:23
       No.4727 短編【私は人か?人だったのか?】4ぱろっともん2017/05/15(月) 21:27
       No.4728 短編【私は人か?人だったのか?】5ぱろっともん2017/05/15(月) 21:30
       No.4729 短編【私は人か?人だったのか?】6ぱろっともん2017/05/15(月) 21:31
       No.4730 これはあとがきか?あとがきなのか?ぱろっともん2017/05/15(月) 21:59