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ID.4723
 
■投稿者:すすやん  MAIL
■投稿日:2017/05/14(日) 23:38


デジモンアドベンチャーtri.タケメイ二次小説 第11章「懐抱」
「それでですね、その子の演技が面白くて! 最優秀演技賞まで取っちゃったんですよ!」
「アレはホンに可笑しかったな!」
「ヘェー、ソーナンダー……」

芽心さんとメイクーモンのローカルトーク(中学生編)を聞かされている。でも、俺はその話を聞いていて、腹の奥に燻る何かがあった。
確かに芽心さんのカコバナを聞きたいと言ったのは俺だよ? でも、まさか中学校の話でその時の面白かった男の話を聞くことになるなんて…。しかも、文化祭の劇で女装して、大爆笑とって、賞を貰うなんて…。確かにぃー。確かにぃー。どんな人なのか気にならないといえば嘘になるよぉ〜。でも、そんなことよりそれを嬉々として語る芽心さん。彼女に他の男の話をされるのは、彼氏としては悋気を隠せない。

「あっ…すみません。私ばかりお話してしまって…」
「えっ? そんなことないよ! 芽心さんの話聞けて、俺楽しいよ?」
「………そうですか…」

少し俯く芽心さん。ヤバい、心配かけちゃったかな? なんか気まずい空気になってしまった。
俺は話題を探すため、周りを見渡す。

「タケリュ! 見て、お相撲さん!」

パタモンの声に俺たちはその方向に顔を向けた。そこには両国の国技館が見える。

「国技館だね! 前にエレキモンと相撲っぽく、綱引きしたことあったっけ!」
「そうそう。僕たちがベビーたちをイジめたって勘違いしてたんだよね!」
「へぇー、そんなことがあったんですか?」
「うん! そこで僕とエレキモンが喧嘩しそうになったら、タケリュが綱引きで決着つけるように言ったんだよね」
「うん、そうだね……」

あの時は2人に喧嘩してほしくなかった。どうしても、喧嘩が絶えなかった父さんと母さんを思い出してしまったから。だから、とても仲良くなったエレキモンたちとベビーたちの世話をしたのは、懐かしくあり、かけがえのない思い出。
でも、その後忘れたくても忘れられない記憶が……、

「タケルくん!」

俺は芽心さんの声で我に返った。
芽心さんだけでなく、心配そうに俺を見つめるメイクーモンとパタモン。パタモンは小さく「ゴメンね……」と呟いた。

「あっ……ゴメン!」

俺が笑いかけると、芽心さんは表情を変えずに俺の右頬に手を添え、親指で目元を拭う。そして、その手で俺の頭を撫でた。
芽心さんは何も言わず、ただ俺の頭を撫でる。でも、どこか憂いを帯びた笑みを浮かべていた。

「ツラい事は誰でもあります。だから、一人で抱え込まないで下さい。タケルくんだって、私にそうしてくれたじゃないですか?」

そう言われた瞬間、俺の中でいろいろな記憶が溢れだしてきた。

――深夜、口論する両親。
――あの日、僕の元から去っていく父さんと兄さん。
――女手一つで僕を育ててくれた母さん。
――初めてデジモンワールドへ行った日、シードラモンから僕を助けてくれた兄さん。
――デビモンを倒すため、すべての力を使い果たしデジタマへと還るエンジェモン。
――ファイル島から旅立つとき、再び僕の元へ帰ってきたポヨモン。
――守られてばかりの僕にとって、初めて特別な存在になったヒカリちゃん。
――そして、たった一度だけ……。

…………。

芽心さんは俺の心の中に何かを感じたのか、すっと俺の頭を自分の胸で抱きしめた。本当ならば、人目のある中恥ずかしい状況。
でも、今はこうしていたいと心からそう思った。

「ありがとう、芽心さん。もう少し……こういさせて」
「泣いていいんですよ?」

彼女の言葉に俺はフフッと小さく笑った。そうそう、彼女に格好悪いところは見せられないよ。
芽心さんは俺を抱えたまま、背中に回した手をまるで子供をあやす様にぽんぽんと叩いた。それはリズムを持って……。とても心地よいリズムをもって……。

ひとしきり顔を埋めていた俺はゆっくりと体を起こす。

「もう大丈夫ですか?」

本当はもう少し彼女の温もりを、香りを嗅いでいたかった。
でも、人目もあるし、メイクーモンから無言の視線を感じたし……。あれ? 少し目が据わってる?
「だがんっ!」

俺が離れるのを確認すると、メイクーモンは勢いよく芽心さんの膝元へ飛び込んだ。その衝撃で横にあったバッグが甲板に落下し、中身が飛び出してしまった。

「あっ! メイちゃん!」
「メイィ〜、メイ! メイ! メイィ〜! メイはメイのぉ〜!」

どうやら芽心さんを獲られるかと思って、嫉妬したみたいだ。メイクーモンには悪いことをしちゃったな。

「いいよ、俺がとるから。ゴメンね、メイクーモン」
「すみません、タケルくん。こら、メイちゃん!」

芽心さんはメイクーモンを叱るが、メイクーモンはキッと睨み付け、さらに服をキュッと強く握りしめた。

「メイクーモン、ごめんね〜。でも、タケリュもメイクーモンに負けないくらい芽心の事大好きだから、メイクーモンもタケリュをもっと好きになってあげてね?」

パタモンの言葉にシュンとするメイクーモン。どうやら、先輩からの言葉が結構響いているようだ。
メイクーモンは大きな耳を折り下げ、

「タケル……ゴメンだがん……」
「気にしないでいいよ、メイクーモン」

そう言って、俺は散らかったバッグの中身を回収する。

「んっ!?」

そこで俺は見慣れないぬいぐるみを見つけた。それはもんざえモンによく似たパンダモンのぬいぐるみ。

「芽心さん、これは?」
「ああ、それは……」

何故が頬を赤く染める芽心さん。えっ、なに!? すっごく気になる!
「ミミさんが……デートがうまくいくようにって……渡してくれたんです」

えへへ、とだらしなく笑う芽心さん。なんでそんなに嬉しそうなの? 嫉妬の炎が炎上しながらも、俺はぬいぐるみに視線を戻す。
そこには目が据わって、首には赤いスカーフが巻いてある。背中にはもんざえモンと同じようにジッパーがついている。たぶん、パンダモンにはジッパーはなかったはずだけど……。
俺はパンダモンも数回軽く握った。どうしても、第6感が警鐘を鳴らしているのだ。あのミミさんがわざわざぬいぐるみを? すると、握りしめる手の中にジッパーとは異なる異物感を感じた。
俺は芽心さんにばれない様にこっそりとジッパーを開ける。
中には白綿が敷き詰められていたが、黒いコードが綿から飛び出していた。

「タケリュ?」

俺の行動に異変を感じたのか、パタモンが俺の頭に乗ってきた。そんなパタモンに俺は唇に人とさし指を当てて、静かにするように指示すると、そのコードを引っ張った。その先には黒い直径2センチ程の機械。その表面には赤ランプが点滅している。

あの年中常夏天真爛漫娘めっ!
俺は心の中で悪態をつき、その機械を投げ捨ててやろうと思った。

「どうしました、タケルくん?」

芽心さんも俺の行動を不審に思ったのか、声を掛けてきた。俺は慌てて、パンダモンのジッパーを閉めて、謎の機械をポケットに隠した。
「なんでもないよ! はい、これ!」

そう言って、バッグを渡す。

「ありがとうございます。ほれ、メイちゃんも!」
「だんだん!」

俺は何とか笑顔を取り繕った。そして、ポケットに隠した機械を見る。
恐らく、この機械の正体は盗聴器か発信機。集音するための穴がないので、発信機だろう。わざわざ追跡するために、ここまで用意するのか? 俺はここまでして執拗に追跡するミミさん、そしてそのお願いに協力してしまう光子郎さんに愕然としてしまった。
だが、今更どうする事もできない。なぜなら……。

「終点『浅草』です。危険ですので、船が停止してから席をお立ち下さるよう……」

無情にも到着を告げるアナウンスが船上に響いた。
既にミミさんたちには俺たちが浅草に着いた事がばれている。では、ここからどうすれば……。

「やっぱり何かあったんですか?」

心配そうに俺を見つめる芽心さん。ここで芽心さんに心配をかける訳にはいかない。

「ううん。なんでもないよ。さっ、早く列に並ぼう!」

俺は眉を顰める芽心さんの肩を押して、下船する乗客の列に並ぶ。通路が意外に狭く、その列は混雑していた。だから、多少の接触でもみんな気にしない。なので、見も知らぬ他人のバッグに忍び込ませる事など、中学生の俺でも簡単だった。
無事にミッションを完遂した俺は晴れ晴れとした顔になっていたと思う。

「なんか、さっきからタケルくん、表情コロコロ変わってません?」

じと目で俺を睨む芽心さん。なかなか見れない表情で、ゾクッと感じるものがある。

「なんでもないよ! さあ、行こう!」

俺は何かから逃げるように芽心さんの手を取り、駅へと歩き出した。


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