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ID.4716
 
■投稿者:ENNE  HOME
■投稿日:2017/05/10(水) 20:04


アシッド・ルースト・オール!≪06≫−3
 
 
 
 長旅の疲れを癒やす為、一旦解散という形を取った。中庭へ残るモノ、城内を探索しようと出かけるモノがいる中、城の主・デュークモンは青年を伴い自室付近へ戻っていた。
 自室と言っても、何があるでもない。彼らが休める寝台と簡素なテーブルがあるくらいだが、特に不便を感じる事もなかった。

 人気(ひとけ)がない事を確認し、青年が口を開く。
「お前、何を隠してるんだ、デュークモン」
「俺はキミに隠し事なんてしないよ、ジュン」
 少々棘の篭もった言葉に苦笑し、それでもデュークモンは穏やかに答えた。翡翠色の目が捉えるのは、彼自身のテイマー、大橋 潤という青年。彼もまた、恭華や涙、蒼子達と同じデジメンタルの一端――『勇気』を冠する精神体である。
「じゃあ、言い方を変える。お前は何を知ってるんだ」
 何を知っている、何を言っている。

 つい今し方、中庭で行われた会話の内容だ。
『……まぁ、送り先がリアルワールドなら、ゲートを通るからな。でも、それなら』
 ――何故、ゲートの管理者であるアヌビモンは、メールが送られた時点で気が付かなかったのか。
 質問の内容自体は、直後にデュークモンが説明をした通りである。しかし、それならば潤の質問を途中で遮る必要などなかった筈だ。
 他の連中は気付かなかったらしいが、デュークモンの意味ありげな苦笑を受け、潤はそれが意図的に行われたのだと直感し、言葉を引っ込めた。
 恐らくだが、デュークモンは説明自体を早めに切り上げたかったのだ。そして、更に質問を派生させない為に、尤もらしい説明で完結させた。嘘はないだろうが――そこは、彼の性格を良く知るからこそ断言出来る――違和感を拭いきれなかったからこそ、潤は改めて問うたのである。

 彼の強い視線を受け、気後れをするでもなくデュークモンは溜め息を零した。そこには、流石、自分のテイマーだという感嘆も含まれている。
「メディーバルデュークモンの事は知らないよ。会った事も聞いた事もない。ただ、メディーバルという言葉が持つ意味は知っていた。これは調べれば簡単に解る事だからね」
 じゃあ、と語気を荒げる潤。
「じゃあ、やっぱり涙もメディーバルデュークモンを把握しているんだな。調べて解る事なら尚更だ」
「それを言うなら、エンシェントワイズモンもだろう。昔から継承し続けて来た記憶の中に、言葉の意味くらいはあった筈だよ」
 それでも、エリアという当事者と顔を合わせておきながら説明のひとつもしないまま放り出した。狙われる原因である紋章を付けたD−sを持たせ、当時は進化さえ出来ずにいたガオガモンと共に。
 今度、潤は苛立ちを隠そうともせず目を瞑る。
「……涙のヤツ、今は思考を閉じてやがるな」
 デジメンタルの精神体は、同じデジメンタル同士での意識の共有が出来る。特殊な地域でもない限り何人でも会話へ加わる事も可能だが、意図すれば外部のシャットアウトが叶った。
 潤は涙の気配を探ってみたものの、引っかかったのは全く別の連中ばかり。尤も、普段から多忙な彼女を探し当てられた事など殆どない気がする。大抵の事件は、向こうからの接触が第一報になるし、こちらが先に捉えたと思った異変も、既に把握されている事が専らだった。
 情報の早さと行動力の広さにはいつも度肝を抜かされる。それでも、それこそが知識のデジメンタルを名乗る彼女が頼られる理由なのだと理解している。

 デュークモンは、窓から空を見上げた。
「ナミダの考えている事なんて俺には解らない。でも、口を開かないのは、言うべきは今じゃないって事だと思う。若しくは」
 ウラを取っている最中か。
「……アイツ、また無茶をする気じゃねぇだろうな」
 また、と言ったのも前科があるからだ。そして、彼女はそれを無茶と思っていないところも腹が立つ。
 デュークモンは、眉間の皺を深めた潤を振り返り、「どうかな」と苦笑する。
「まぁ、今はインペリアルドラモンも万全な状態だし、安全な所にいると思う」
「問題にすべきは、やっぱりメディーバルデュークモンって事か……」
 潤は後頭部を掻き、本日何度目かになる溜め息を吐いた。
 今の所、情報があるのはメディーバルデュークモンがエリアという少女を襲撃している事実のみ。リアルワールドにいた彼女の元へ届いたメールと謎の紋章との関係も気になるが、附言の騎士がエリア達の前へ現れたタイミングを鑑みて、全くの無関係とは言い切れないというだけである。
 だからこそ、涙はアヌビモンに対し、メールの送信元を調べるように頼んだのだろう。と言うよりは、発信源の判明を伝えるタイミングをずらすように、アヌビモンと共謀していた。
 アヌビモンのテイマーもまたデジメンタルの一角で、涙と懇意にしている存在だ。彼女が頼めば断らない。訝しんだとて疑念はすぐに晴れる。最もらしい理由を考える事など、涙にとっては造作もないからだ。 

 そして、とデュークモンは続けた。
「エリア達をイティアへ来させたのも、俺がメディーバルデュークモンの情報を持っていると解っていたんだろう。キミを通して聞く事も出来たんだろうけど、メールの出所、他にも色々調べる時間が欲しかったんだと思う」
 不安材料はひとつだけではないからね。
 デュークモンの言葉に、潤は腕を組む。
「手がかりは突き止めたんだ、行けば解る。デジモンが人間を狙うなんて、どうせろくでもない理由が絡んでいるんだろうが、な。……でも、この状況はまるで」
 言いかけた所で、デュークモンは肩を竦めた。
「……俺がデジメンタルをセイジに預けた時みたいで、他人事とは思えないね」
 あの時は切羽詰まった状態だったとは言え、断腸の思いだった。部下のひとりを苛烈な運命に巻き込んでしまう事、そのテイマーを死地へ歩かせてしまう事。今まで何度も繰り返して来た筈なのに、全く慣れる事のない作業である。
 ともすれば、人間として生きる道を奪う事になった。潤はそれを心底憂いていたのに、今度現れた何者かは自ら呼んだ人間を殺そうとしている。
「全くだ! 不愉快な真似しやがって!」
 絶対に許さないからな!
 珍しく潤が吠えた瞬間、私室の入り口付近に騎士デジモンが姿を見せた。
「失礼、……取り込み中ですか、デュークモン」
 いつも長と共にいるモノの激昂振りに言葉を顰めた彼に、デュークモンは「なんでもない」と告げ、向き直る。
「先ほどの戦闘による被害報告が何件かあります。それと、以前から要望のある西地区の修繕と、新たな店舗申請ですが……」
「解った、すぐに行く」
 デュークモンの言葉を受け、騎士デジモンは敬礼をして姿を消した。
 一呼吸置き、赤い騎士も彼の後を追おうと足を進める。しかし、潤の横を通り抜けようとした瞬間、彼は腕を振り上げ、腿の辺りをガンと叩いて来た。
 鎧を纏っている所為もあり、大した衝撃はない。が、デュークモンは驚いてテイマーを見下ろした。
「ジュン?」
 すると、彼は憮然とした表情で叩いた腕を自らの腰に当てた。人間としては背の高い部類に入る彼も、デジモンの前では矮小に等しい。
 それでも、潤というテイマーの存在は、デュークモンにとって存在自体が恢々なものだった。
「いいか、デュークモン。誓士にデジメンタルを送った事は俺も関わってるんだから、間違うなよ!」
「……」
 こういう事を言ってしまうから。


 いつか、潤は自分達の事を「運命共同体」だと言った。デジメンタルと、そのパートナーデジモン。デジメンタルを狙う存在と戦いながら、死ぬ事も叶わず永遠を生きる。そして、嘗ての誓士をそうしたように、倒す事の出来ない『闇』を封じる為の選ばれし子供を決める。
 彼は、無事に封印を成し遂げた人間だが、失敗すれば人間としての生をも失ってしまう。『闇』が復活してしまった後ならば、死は確実なものになる。
 そうした運命を背負わせる役目を負っているのが、勇気のデジメンタルたる潤の宿命だった。
 その宿運に巻き込まれた――と言えば、潤はまた怒るだろうが――事を、デュークモンは今まで一度として恨んだ事はない。他から馬鹿にされるのは例外だが、潤から責められるのならば甘受できる。
 しかし、潤はこれまで1度として、デュークモンを詰った事はない。寧ろ、共にいてくれてありがとうと笑うのだ。
 だからこそ、彼は今し方、デュークモンが口にした言葉に腹を立てたのだろう、
『……俺がデジメンタルをセイジに預けた時みたいで、他人事とは思えないね』
 ――まるで、お前ひとりの責任みたいじゃないか、と。


「……ああ、そうだね」
 ここで謝っても機嫌を損ねてしまうので、デュークモンは納得するだけに留めた。すると、潤は満足したように頷いて踵を返す。
「お前が元々持っている仕事も多いんだから、さっさと片付けないと出発出来なくなる」
「解った」
 促されるまま、デュークモンは自室を出る。
 キメラモンによって倒壊した城は、ここ2年の間に元通りになった。勿論、当時と造りが違う箇所もあるが、街を守る拠点としては十二分に機能している。城下の活気も以前以上に戻り、当時の傷跡は殆ど残っていない。恐らく、更に数年を重ねれば、滅んだ経緯や事実は忘れられて行くのだろう。
 それでいいのかも知れない。

 ふと、デュークモンは反芻する。過去は彼にとって大事だが、今は「現在」を見る時だ。
「……メディーバルデュークモン、か」
 自分と似た名を持つ、別世界のデジモン。エリアという人間の少女をテイマーと偽って、殺そうとした附言の騎士。
 アヌビモンの与り知らぬ違法ゲート、メール。そして、エンシェントワイズモンが作った物ではない紋章。
「(例え別の場所から来たとは言っても、秘密裏に事を進めたいにしては、ここのデジモンと関わりすぎている。……ニンゲンを殺そうとしている事もそうだ、目立つ事くらい想像に難くない筈)」


 やがて、デュークモンは報告をする為に集まった騎士達の前へ出た。
 先に姿を見せたデジモンのように礼儀正しいモノもいれば、上官相手でもフランクな性格のモノもいる。この辺りは規律を持って統一する、という必要性を感じないので好きにさせていた。国を守り、街を守る。それだけがイティアという国の騎士に求められるものだからだ。
「まずは被害状況から聞こう。その他に不審者などの情報もあれば併せて知らせてくれ」
「あ、じゃあオレから報告させて貰うっス」
 幸い、自国の騎士は皆勤勉で、熱心なモノが揃っている。時々、好戦的な部分が出てしまうのは玉に瑕だが、トラブルになる事は多くない。
 そんな彼らと接しているからか、デュークモンは想像せずにいられなかった。
「(ニンゲンを殺した果てに、何を望むのか)」
 別の、という名を冠するデュークモン。彼の本意がどこにあるのかを。



【続く】





お疲れ様でございます、ENNEです。
大分時間を要しましたが、アシッド・ルースト・オール! 6話目でした。

今回は、EggからパラレルAをお読み戴いている方には懐かしい面々が出て参りました。イティアという国の長、デュークモンとテイマーの潤。そして、覚えている方はいらっしゃるでしょうか、というスナイモン。初期も初期、誓士と洋貴がデジタルワールドで最初に出会ったデジモンです。
割と気に入っているキャラなので、再び出せて良かった。しかし、スナイモンと言えばデジモンの中でメジャーな方だと思うのですが、如何せん進化先が( )パイルドラモンも好きなデジモンなので満足ではありますが!
活躍させられるといいな!
そして、なるべく時間を空けずに7話も更新したいと思います。よろしくお願い致します。

前回感想をくださった夏Pさん、いつもありがとうございます。お世話になっております。
半球その他につきましては、流石にNEXTという健全なサイトでは無理なので、ご想像にお任せします的なアレでご了承戴ければと思います。後、私すけべじゃないから。
カオスデュークモンの万能さにもお気付き戴けてなによりでございました。
イティア編は如何だったでしょうか? 楽しんで戴けていれば幸いです。はい。

※スナイモンも出てくるシリーズ最初の「Egg and I」を本として纏めました。これに時間がかかっていたのでこちらの方は全然手が付けられなかった…。
興味のある方はTwitterやpixivの方から検索をお願い致します。


【Egg and I】
http://someya08.sunnyday.jp/cool/index.htm
【pixiv ID】38079
【Twitter ID】 @ennemon 
 
 


スレッド記事表示 No.4714 アシッド・ルースト・オール!≪06≫−1ENNE2017/05/10(水) 19:59
       No.4715 アシッド・ルースト・オール!≪06≫−2ENNE2017/05/10(水) 20:01
       No.4716 アシッド・ルースト・オール!≪06≫−3ENNE2017/05/10(水) 20:04
       No.4722 勇気リンリン 元気ハツラツ夏P(ナッピー)2017/05/12(金) 00:16