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ID.4711
 
■投稿者:すすやん  MAIL
■投稿日:2017/04/17(月) 00:20


デジモンアドベンチャーtri. タケメイ二次小説 第8章「期待」
「タケル! もう時間がないよっ!」
「わかってるから! てか、パタモン重い!」

頭の上で喚くパタモンを、一喝入れる余裕もなくオレは走っていた。
兄貴たちを撒く為に東京テレポート駅に行ったのはいいけど、地下から歩道橋へ駆け足で上がるのは、やっぱりしんどい……。
でも、足を止める訳にはいかない。だって、

「待ち合わせまで、あよ3分!」

オレは歩道橋の直線を一気に駆け走る。歩道橋を渡りきり、マンションの広場を駆け下りると、海浜公園は目の前だ。階段を降りた所で一瞬立ち止まったけど、左右を確認し、ガードレールを飛び越え道渡る。そのまま、垣根沿いを走ると切れ目が見えた。
そこに来てオレは足を止め、時計を見る。
9時45分……から1分経過……。
ああ…、初デートで遅刻だなんてサイテーだよ。サイアクだよ……。
オレは荒くなった呼吸を落ち着かせる為、深呼吸を繰り返す。
ヒッヒッフー。ヒッヒッフー。よし!
ひと通り呼吸は落ち着いた。が、心臓の鼓動がドクドクッと早鐘を鳴らしている。これは全力疾走の後遺症ではない。
オレは左胸を押さえて、今度は心臓が落ち着くのを待った。

「タケリュ、いよいよだね!」

オレの緊張を感じ取ってか、パタモンも緊張した面持ちで声を掛けてきた。
小さく頷き返すと、待ち合わせ場所の展望広場に向かって歩き出した。
カモメに餌を与える親子連れ、レインボーブリッジを背景に写真を撮る観光客、腕を組みながら砂浜を歩くカップル、サングラスを掛け日光浴に勤しむおじさん、サーフボードで地球と語らうお兄さん達。みんな、それぞれのやり方で休日を楽しんでいる。
オレは砂浜沿いの木陰を早歩きで移動する。9月になったとは言え、残暑が厳しいと連日ニュースになっているので、自然とオレの額にも汗が滲む。こんな環境に芽心さんを置いておく訳にはいかない。
そう思っていると、急に視界が開けた場所に出た。待ち合わせの展望広場に着いたのだ。オレは1番目立つ建物ーマリーンハウスへ駆け寄った。暑いので中で涼んでいて、と事前に伝えていたのだが、彼女はマリーンハウスに併設されているカフェの前で佇んでたい。
夏の澄み切った空の様な水色に白のフリルがよく映えるワンピース。そしていつもは下ろしている黒のロングを今日はハーフアップにしている。そこから見えるうなじが! うなじが何ともエロい!

ボカッ!

「タケリュッ! 何してるの⁉︎」

咄嗟に右手で自分の右頬を殴ったオレに驚いたパタモンが焦りの声をあげる。これは戒めだ! 初デートでいつもと違う彼女にトキメキ、ヤラシィ〜妄想をしてしまった自分への!
だって、しょうがないじゃ無いか!
恐らく芽心さんもデートと言う事で気合を入れてくれたのだ! 『いつもと違う私を見て!』って感じで! そしたらそれがオレの好みにクリティカルヒット!
しかも慣れていないのと、周囲からの視線に少し照れ気味に頬を染める初々しさ!
ヤバい! 護ってあげたい指数MAXデス!

「…………タケリュ、さっきから変だよ?」

呆れ顔のパタモンの視線が痛い……。
さあ、このまま見惚れている訳にはいかない! 何故なら遅刻しているのだ。
オレは小走りで芽心さんに駆け寄る。その足音に気付いたのか、芽心さんがこちらに振り返った。

「おはよ、芽心さん! ゴメン、オレから誘っておいて、遅刻するなんて……」
「あっ、タケルくん! おはようございます。私もさっき来たばかりですよ?」
「だがん!」

さすが芽心さん。オレが気にしない様に気づかってくれている。でも、その優しさが逆にツラい!
そもそも男の方がデートに遅れる事が問題だし、その時点でスマーティじゃない!

「それでも、ホントごめん……。暑い中、待たせちゃったし……」
「メイクーモン、暑くなかった?」
「ン〜、まあちょっこし暑いがぁ〜……」
「でも、海風が気持ち良くてそんなに不快じゃ無いですよ? ここ日陰ですし?」

ううぅ…、その気づかいがオレの良心にじわじわとダメージを与えてくる。
スタートは失敗……。でも、ここから盛り返す!

「そう言ってくれて、少しホッとしたよ……。じゃあ、時間もないし行こうか?」
「はい!」
「だがん!」
「レッツゴー!」

こうして僕たちは砂浜の遊歩道を歩き出した。

「大丈夫?暑くない?」
「平気です。鳥取でも暑い日はざらにありましたし、こうして砂浜を歩いていると、なんか懐かしくて…」
「鳥取砂丘歩いてる感じ?」

オレが冗談っぽく言うと、芽心さんは困った表情をして、

「正直、鳥取と言えば鳥取砂丘! って皆さん思われてますけど、私は西部地方に住んでいたので、砂丘はそんなに行ったことないですね」
「へー、そうなんだ? ちなみに何回行ったの?」

すると、芽心さんは顎に手をあて考え込むと、

「小学校入る前に、2回位でしょうか?」
「オレも島根のお婆ちゃん家に行った時に1回位行ったかな? 兄貴が中学入る前だったから、小学3年かな?」
「なら、おもちゃの王国に行ったことあります? よくCMでやってたので、前から興味あったんですけど!」
「うーん、さすがに小3では遊ばなかったかなー」
「ああ、そうですか……」

と少し残念そうな芽心さん。
実際日帰りでそんなに遊ぶ時間なかったし、何より兄貴が鳥取砂丘でハイテンションになって、1番高い所から海に転がり落ちて、メチャクチャ怒られていたのを記憶している。

「私としては、この風景は皆生海岸や弓ヶ浜に近いですね。まあ、漂着物も多いですが……」
「トドもおーがね」
「トド?」

えっ、トドって北の海にいるオットセイのでっかいの?

「よく叔母達がサーファーの事をそう言うんです。頭の黒いトドって」

芽心さんは懐かしそうに話してくれた。
いつも鳥取はお婆ちゃん家への経由地か観光地に行くくらいだったけど、今度ゆっくり観光したいな。

「いつか2人で行きたいね、鳥取」
「へっ⁉︎」

突然の告白で耳まで真っ赤になる芽心さん。

「ずるいぃ〜! 僕も行きたいぃ〜!」
「メイも! メイもぉ〜!」

案の定、パタモンとメイクーモンが不満の声を挙げた。

「うん! みんなで行こうね?」

オレがそう言うと、2人は納得したように微笑んだ。
そうこうしている内に次の目的地、海上バス乗り場に着いた。
出航の10分前、丁度いい時間だ。

「じゃあ、チケット買ってくるから…」
「いえ、一緒に行きましょ?」

そう言って芽心さんはスタスタとチケット売り場に向かう。
うーん、うまくリードできないな〜。
オレたちはチケットを購入すると、乗船可能になった遊覧船へと乗り込む。
船と言っても、その形は楕円形、船体上部は透明なガラス張りと一見宇宙船を連想させる。
中は椅子とテーブルが設置してあり、座ると目線が水面と同じになる構造だ。オレたちは1組の席に着き、船が出航するのを待った。

「メイィ〜! 水面が目の前にあーが!」
「タケリュ……、船沈まない?」

目の前の光景にメイクーモンは興奮し、パタモンは少しビビっている。パタモンちょっとビビりすぎ!

「大丈夫よ、パタモン! もし沈んでもパタモンが進化して助けてくれるでしょ?」
「そっか〜! そうだよねぇ〜! 僕がエンジェモンに進化すれば大丈夫だねぇ〜」

芽心さんの答えにオレは思わずズッコケ、パタモンの返しにテーブルに頭をぶつけた。

「タケルくん、大丈夫ですか?」

オレの行動に驚いた芽心さんが心配そうに声を掛けてくれた。
今日、オレ変な行動が多いな……。

「大丈夫…大丈夫だから」

オレたちがそんなに会話をしていると、船内に出航を報せるアナウンスが流れる。

「やっと出航だね」
「ハイ! 今日は1日よろしくお願いしますね、タケルくん」
「だがん!」
「出発しんこー!」

こうしてオレたちの初デートはスタートしたのだった。


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