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ID.4706
 
■投稿者:中村角煮 
■投稿日:2017/04/08(土) 01:21


幾千のアポカリプス U.R.L/10(中)
     ●

 想像以上にカオスモンの攻撃は苛烈だった。その巨躯からは考えられないほどの速度を伴って、カオスモンの左腕からの斬撃が繰り返される。
 斬撃。
 いま、左腕のメタルガルルモンの口からは、サバイバルナイフのように歪んだ形をした短刀が生えてきている。その斬撃には青白い光が伴い、軌跡を追うように氷の柱がいくつも乱立する。時には、すでに生まれた氷柱を砕きながら振るわれる刃。いまや、戦場となったアダムスハンズ・ヴァストの頂は氷が支配する凍土と化している。
 そして初人は、断続的に飛行することでカオスモンの攻撃を回避していた。マントの扱いにもだいぶ慣れてきた。おかげで、「急浮上」という感覚のベクトルをあらゆる方向へと振り分けることで不規則な動きを実現している。
 だが、それだけだ。回避に専念するあまり、反撃の糸口がまったく見いだせない。
 時折、思い出したようにベビーフレイムを放つが、まったくといっていいほど効いている様子がない。着弾したところで鎧に焦げ跡一つ残せず、文字通り痛くも痒くもなさそうだ。
 そもそも敵は感情の読めない物言わぬ巨人だ。仮にダメージを与えたところで手応えがあるだろうか? まるで蜃気楼に向かって攻撃をしているかのような虚無感すらわき上がる。
 ……ダメだ……!
 もっと大きな攻撃を。しかし現状、初人が使える最大の技であるグラヴィティ・フォースは、隙が大きすぎてカオスモンの的になるだけだ。周囲から力を集める行程が長すぎる。
 通信先の親方は、こちらの集中力を削ぐまいと気を遣っているのだろう。口うるさく指示が飛んでくることもない。黙って顛末を見守られているような視線だけを感じている。
 だからこそ、初人は先に言われたことを忠実に守ろうと努める。
 ……まともに、やりあおうとするな!
 狙うのは胸部中央の核、その一点のみ。だからこそ初人はまず回避することだけを考えた。
 そのおかげか、今ではパターンのようなものが見えてきていた。
 なるべく敵の視界から逃れる形で、下から生える氷柱の隙間を縫うように飛行する。するとカオスモンは自分を探すために、茂みをかき分けるかのごとく氷柱を砕きながら新たな斬撃を繰り返し、軌跡から生まれる氷柱によって死角が増えていく。
 いま、敵の注意は確実に初人に向けられている。無差別に暴れられるよりずっとマシだ。本来相手にする必要の無い自分を、標的として認識しているのだから。こちらとしてもやりようがある――次の一手を冷静に考えられる。
 どうすればいい。
 その言葉が全身を駆けずり回っている。ベビーフレイムは効かない。グラヴィティ・フォースは発動までに時間がかかる。敵の攻撃を誘導して核を砕くか? 敵もそこまで愚鈍ではないはずだ。ならば自分が出来る攻撃とは。手段とは。勝ち筋とは。
 蟻が象を斃すために、何をする必要がある。
 脳内シミュレートを展開しながら、初人はひたすら飛ぶ。
 そして少しでも考える時間を稼ごうと、死角である背後にまわった……その時だった。
「……なぁっ!?」
 敵が大きく跳んだ。軽やかな背面跳びだった。その衝撃で凍土が一発で砕け、幾重もの氷柱が倒壊する。確かに、もしも自分がカオスモンだとして、敵が死角に逃げ込むなら上空から戦場と捉えれば手っ取り早いとは考えていた。
 だが。
 まさか。
 あの巨体が跳躍するとは予測できなかった――いや、予測しなかった。
 地面を一蹴りしたカオスモンはいまや上空からこちらを見下ろしている。
 互いの視線がぶつかり合うのがわかった。その瞬間、初人は「しまった」と焦りを口にする。行動を読むことは可能だったはずだ。繰り出される斬撃の鋭さを見れば一目瞭然だったのに、跳ぶはずがないと勝手に決めつけていたのは完全に初人の油断だ。
 巨体ゆえに、ノロマだと。
 ……油断する余裕がどこにあったっていうんだよ……ッ!
 自分の愚かさを恥じる。相手は究極体が進化したデジタル・モンスターで、対する自分はたかだか成長期だ。巨体の近くを飛び回れば、たしかに瞬発力という点では初人に軍配があがるかもしれない。
 しかし相対的な速度という視点でとらえれば、あの巨体の方が遙かに初人の挙動を上回る。
 所詮、蟻と象。いくら蟻が駆けたところで、それは象の歩みにすら劣るということに、ようやく気付かされた。
 それを初人が呪う時には、すでにカオスモンの攻撃は開始されていた。
 ……速い!
 敵は初人の四方を囲むように、メタルガルルモンの腕を振るった。初人の視界は氷柱によって正方形に切り取られる。カオスモンの姿は見えない。氷柱は四角錐をかたどるように絡み合っていた。直後にくる結果は容易に理解出来る。だから、咄嗟の判断で初人は自分を囲う空間の四隅……その一つに転がるように移動して衝撃に備えた。
 然して追撃は来た。
 四角錐の頂点を真上からぶん殴ってきたのだ。初人の何倍も体積のあるウォーグレイモンの頭部が、目の前に勢いよく落ちてくる。まるで隕石だった。
 衝撃は瞬く間に初人を襲う。
「――――ッ!!」
 着弾点を中心としてドーム状に氷の波が広がり、巻き込まれる。声にならない叫びは全身の痛みから来る悲鳴だ。直撃を避けたというのに、攻撃の余波だけでここまでのダメージを与えられるとは思わなかった。
 馬鹿げてる。なにもかもスケールが違う。そんな考えが脳裏を過ぎる。だが、初人は決して「為す術がない」とは思わなかった。
 ……俺は、強い……!
 先にガンクゥモンに言われた言葉が、初人の心を支えているからだ。
 究極体――それも、聖騎士の称号を冠するデジタル・モンスターが「強い」と言って自分を送り出したのだ。それは、ガンクゥモンの頭の中ではこの戦いが決して負け戦ではないことを明確に示している。
 信頼、されている。
 だからその信頼に答えるために、初人は痛みを思考の外に追いやった。邪魔をするなと痛みに言い聞かせて、いま自分に何が出来るかだけを考える。
 吹き飛ばされながら、まわりを散らばる氷の破片を見た。
 ……そうだ。
 そしてひとつの閃きが来た。それを実行に移す――その前に、初人は冷静に「敵」を観察する。油断は、もうしない。着地したカオスモンは既に身体を捻って次の攻撃モーションへと移っていた。完全に自分を捉えている動きだ。左腕を引くように構えているところを見ると、次に来るのは「突き」だとわかった。
 あの巨大な腕だ。いくら初人の身体が小さかろうと、刃を避けたところで後ろに控えているメタルガルルモンの頭部にぶん殴られるのは目に見えている。
「だった――」
 だから初人は行った。マントの力で正面へと飛翔する。
 見れば、カオスモンは左腕を思い切り突き出していた。刃から出る青白い光もある。
 読み通りだ。
「――らぁああああああああッ!」
 ならば、と。初人は刃の上面をすれすれで飛ぶ。目の前からメタルガルルモンの上顎が迫ってきた。ギリギリまで引きつけて、跳躍するために、刃を足で蹴る。結果として、飛行中にのその行動は初人の軌道を容易に変えた。
 メタルガルルモンの頭部を飛び越えたのだ。
 同時に初人の頭上には、ある一つの結果が生まれていた。
 青白い光の弾が、初人を追従する。
 ――フォース。それは初人が「隙がデカすぎる」といって使おうとしなかった、ウォーグレイモンからコピーした能力。周囲の重力や熱などのエネルギーを塊にする力だ。
 本来のエネルギー充填にかかる時間は長大だ。それを短縮するために、初人はカオスモンの放つ刃から生まれた「冷気」をすれ違い様にかき集めた。
 エネルギーを集めるのに時間がかかるなら、エネルギーの方に突っ込んでいけば良い。隙を消すために咄嗟に思いついた方法だったが、成功したことを実感する。そのまま初人は、ありったけの力を込めてその冷気の塊をカオスモンの核に向かって撃ち放った。
 放たれた瞬間、それは冷気の塊から刹那にして姿を変える。刺々しい氷柱が全面に並ぶ、巨大な氷の弾へと変換されたのだ。奇しくも、その光景は蒼二才が得意としていた技――コキュートス・メテオに酷似していた。
「行け……!」
 カオスモンの二の腕辺りで、初人は氷塊の行方を見守る。ここまで思い通りの展開になったことが、ここまで戦闘中に気を緩めることに繋がるとは思ってもいなかった。結果として初人が失敗していることに気付いたのは、カオスモンの次の準備行動が完全に終わった後だ。
「は」やい。言い終える前に、氷塊はカオスモンの右腕に噛み砕かれていた。直後、初人に向けられたウォーグレイモンの口が大きく開かれた。
 そのまま、口内に溜められた橙色のエネルギーの奔流が巨大なビームとなって咆吼と共に来る。カオスモンは自分の左腕を巻き込むことをまるで厭わずに、初人へと避けようのない必殺の一撃をぶち込んだ。

     ○

 ――……。
 男は目の前で展開されたその光景がとても見ていられなかった。カオスモンに立ち向かうハックモンの姿があまりにも滑稽だったからだ。
 ベビーフレイムに、そしてフォース――この場合はアブソリュート・フォースとでも言ったところか。そのどちらも、言うなれば自分が奴に与えた技だ。あのデジタル・モンスターにオリジナルは無い。他人の褌で土俵に立つハックモンが返り討ちに遭う光景は、どこまでも笑いぐさだ。
「でも、アナタは笑わないのね」
 ――笑えるものか。強者は誰もが弱者を嬲ることに喜びを見いだすとは思わないことだ。
 シスタモン・ノワールの愚問に呆れながら、男は攻撃をもろに受けたハックモンの行方を見届ける。煙を纏いながら墜ちていくハックモンの軌跡には、データが分解しかけているのか橙色のパーティクルが尾を引いていていた。
「……初人くん」
 ――存外、取り乱さないものだな。
 ノワールの表情は心配そうにしているものの、態度は冷静そのものだ。彼女は眉根をひそめてハックモンに視線を注ぐ。だが、そこには確かに強い意志が宿っていた。
 彼女は諦めていない。目を見れば分かる。ノワールはまだ、この状況においてハックモンが一矢報いるのだと信じている。
「わからない、って表情ね。アナタは」
 ――諦めたくない気持ちは理解出来るが、納得はしかねる。
 ハックモンごとビームに巻き込んだ自分たち(カオスモン)の左腕に目を向けると、傷一つついていないことがわかる。あれほどの攻撃を受けても、カオスモンは健在だ。これがこの場においてどれだけ彼女やハックモンを絶望させるに足るかは想像に難くない。
 ――素直になれ。いくら貴様が冷静を装うとも結果は覆らない。
 ――私の計画はもう止められない。
 ――貴様らの負けを、受け入れたらどうだ。
「それは、私に悔しそうにしろって言っているのかしら」
 ノワールは不敵に笑う。どうしてこの状況でそんな顔が出来るのか、男には分からない。それどころか、彼女は短く笑ってまるで理解不能なことを言い出した。
「でも、悔しそうにしてるのはアナタの方よね」と。
 ――……どういう、ことだ。
「私に聞かれても困るわ。むしろ聞きたいのは私の方なんだから。さっきから勝利宣言をしたいのかなんなのか知らないけどね。まだ負けてないのは本当だし、負けてないなら諦めることもないでしょう。どう、違う?」
 ――それは貴様が敗北の現実から逃避しているだけだろう。奴はもう、虫の息だ。
「ならどうして、初人くんが窮地に陥る度にぴくりとも笑わないの。苦痛に顔を歪めるの。目を逸らすの。そのことに自覚がないのは仕方ないけれど、アナタの気分の理由を他者に求めないで頂戴」
 ――……私は。
「初人くんが虫の息? アナタにとっては結構なことじゃない。もっと笑いなさいよ」
 ――私は、なにも悔しくない。
「そうでしょうね。だから笑えと私は言っているのよ」
「だってこれはアナタが望んだ光景なんだから」
「失敗を重ねてなお、待ち焦がれた状況なんでしょう」
「でもアナタは笑わない」
「笑えない」
「アナタ、自分で考えてるほど悪に徹し切れてないんじゃないの?」
「初人くんに勝って欲しいと、心のどこかで自分の行いを悔いているんじゃないの?」
 ――あまり調子に乗って戯れ言を並べ立てるな。見てみろ。あの成長期が勝つところを想像できるか。
「アナタこそよく見てみなさい――彼はもう、立ち上がっているわよ」
 ノワールに言われて、下にいるハックモンを改めてみる。
 彼女の言うとおり、彼は確かに立ち上がっていた。どうして。敵うはずもないのに、何故立ち上がれるのか。それどころか、
 ――無傷、だと。
 彼は確かに無傷でこちらを睨んでいる。先ほど見た橙色のパーティクルは、いま彼の全身を包み込んでいた。
 ――……ガイア・フォース……ッ!
 思わず、その名を口にしていた。間違いない。先ほどカオスモンが右腕から放った熱エネルギーを、ハックモンは瞬時にガイア・フォースとして集束させたのだ。
 肌が粟立つのが分かった。
 なんというセンスだ。彼は、自分が初めて戦ったあの時と何一つ変わっていない。記憶の中の天才が、いままさに目の前に再臨している。
「私は、初人くんが羨ましい。私と違って、真っ直ぐ自分が出来ることだけを見据えてる」
 なんということだ、と彼は笑わずにはいられない。
「私も、アナタも。可能性を恐れるあまりに目を背けて、間違い続けてきた」
 興奮が隠せない。
「でも初人くんは違う。自分の可能性を疑わない。誰かに裏切られても、絶望しない」
 そのことに、男は途惑うことすらしない。
「自ら可能性を閉じた私達と同じ道を辿りながら、まるで別の景色を見ている」
 自然に、目の前の光景にのめり込んでいる自分に、気が付かない。
「ねぇ。アナタは、そんな初人くんが羨ましくならないの?」
 ――嗚呼。確かに、私は。
 ぴしり、と。その瞬間、自分達が見ている光景に一筋の線が入った。

     ●

 ……不思議だ。
 妙に落ち着いていた。たったいま死にかけたというのに、初人は心地よい冷静さに身を任せている。穏やかだ。
 咄嗟のガイア・フォースは功を奏した。直前に冷気を集めていたことで、慌てることなくカオスモンの追撃に対処出来たのだと分かる。
 ……もう、大丈夫。
 先程までの、巨大な敵に翻弄されていた自分がウソみたいに、自信に満ちあふれている。根拠はない。むしろ、どうして急にこんな風に気持ちが変わったのか懐疑的にもなる。
 だが、その自信の背中を押す現象が確かに起こっていた。
 ガイア・フォースで集めた熱エネルギーが、自分の身体に定着している。お湯の中へ潜っているような、柔らかな暖かさが全身を包み込んでいた。同時に、胸のクリスタルが黄金色の輝きを強く放っているのがわかる。
「親方……?」
 初人はガンクゥモンの言葉を思い出す。このクリスタルには、今までの彼の戦闘データが蓄積されているのだと。それを扱うことが出来れば――と彼は続けていた。
 もしかしたらこの落ち着いた気分は、親方が長年にわたって蓄積したデータが、敵の攻撃を機に自分に流れてきたからかも知れない。そんな風に、初人は考える。
「――なんて、心強い」
 そして、初人はその想いを力に換える。ガイア・フォースも。クリスタルのデータも。アダムスハンズ・ヴァストでさえも。
 すべてひっくるめて吸収して、ある一つの形を作り出そうとイメージする。
 それは、久文初人が――ハックモンが、カオスモンに勝つというイメージ。
 ただ、それだけを。

      ●

 ガンクゥモンはバイザー越しに聞こえたその声に、思わず頬が緩んだ。
「莫迦者」
 初人の身体に、何度目かの異変が起きているのは送られてくるバイタル情報で確認済みだ。
 いままさに、彼は成長しているのだと実感する。だから、それはお前が自分で掴み取ったものだと、教えてやりたい。いま彼の身に起きている現象は、ガンクゥモンの経験がどうだとか、そんなものは関係のない力なのだと。
 彼はどうやら自分が初人になにかをしてやったように捉えているみたいが、それは違う。自分が与えたのはあくまで気分が落ち着くキッカケだけで、実際に力を掴み取ったのは初人自身なのだと伝えたい。
 だが、今は下手に通信を寄越して集中力を途切れさせるのは避けたかった。
 ……窮地を乗り切った経験こそが、お前の力を呼び起しているんだ。
 先の戦闘の様子を見ていればわかる。咄嗟の判断であの規模の攻撃を吸収するなんて芸当、成長期離れしているにも程がある。だからこそ、初人が「ハックモン」と呼ばれるデジタル・モンスターであり、そしてその名の通り膨大な量のデータの扱いに長けている存在なのだと納得した。そしてそれ故に、自分がクリスタルに蓄積してきた戦闘データをも力に換えることが出来るのだと。
 こいつは頼りになると期待して彼を「上」へと送り出したのは事実だ。ウォーグレイモンが初人に対して「障害だ」と判断していた――それがわかっていたからこそ、ガンクゥモンは成長期に世界の命運を任せるという、暴挙とも言える判断を下したのだ。
「まったく、期待以上だよ」
 だがまさか、あのクリスタルがこんなところで役に立つとは予想だにしなかった。正直、クリスタルに蓄積したデータ云々はお守り程度の価値しかないと踏んでいたのだから。
 本当に、期待以上だった。自分が支えていたアダムスハンズ・ヴァストの質量が、どんどん軽くなるのがわかる。これも初人にもたらされた結果だと、直感で理解する。
「よし」
 迷うことはない。
 もうお前はきっと、この世界にいる誰よりも強い。それは単純な力というわけではない。
 誰よりも真っ直ぐなその心がお前を強く在らせる。恐れを知りながら立ち向かうその勇気こそが、お前の最強の武器だ。だから、頑張れ。
 そんなことを伝えるのはこっぱずかしいから。
 ガンクゥモンは色んな想いを全部のっけて、一言だけ叫んだ。
「行け、初人――ッ!」

     ●

 誰もが、その光景を見ていた。
 ガンクゥモンも。シスタモン・ノワールも。ウォーグレイモンも。世界中で戦う多くのゲンナイ達も。ホメオスタシスも。意思を持たないはずの、デジルフやアダムスハンズでさえ。
 誰もが、アダムスハンズ・ヴァストの消えた青空を見ていた。
 誰もが、もうずっとこの空を忘れていた。
 そして誰もが、その空のある一点を見つめている。
 そこには、二つの存在があった。
 一方はカオスモンだ。そして、そのカオスモンがちっぽけに見えるほどの大きさの黄金色の「火」が対峙している。まるで、この世界をまるごと包み込むような、巨大な火だ。
 火は角を持っていた。
 火は腕を持っていた。
 火は、竜のような姿をしていた。
 そしてその竜をみて、誰かが言った。
「……火之神(ヒヌカムイ)」
 そう。その誰かの言うとおりだ。
 黄金に輝くその火の竜は、まさしく世界を照らす神そのものだった。


スレッド記事表示 No.4705 幾千のアポカリプス U.R.L/10(上)中村角煮2017/04/08(土) 01:20
       No.4706 幾千のアポカリプス U.R.L/10(中)中村角煮2017/04/08(土) 01:21
       No.4707 幾千のアポカリプス U.R.L/10(下)中村角煮2017/04/08(土) 01:22
       No.4708 幾千のアポカリプス U.R.L/エピローグ「これからのキミへ」中村角煮2017/04/08(土) 01:23
       No.4709 さいごがき。中村角煮2017/04/08(土) 01:34
       No.4717 だからいい と だけどいい狐火2017/05/10(水) 20:49
       No.4721 未来へのステップは続いてく夏P(ナッピー)2017/05/11(木) 22:56