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ID.4704
 
■投稿者:すすやん 
■投稿日:2017/04/02(日) 22:50


デジモンアドベンチャーtri. タケメイ二次小説 第6章「瀟洒」
「うーん、こっち? いや、やっぱりこっちかなぁ?」
「めぇ〜いぃぃ〜、まだぁ〜?」
「ごめん、メイちゃん。でも、ヘアスタイルが決まらんのぉー」

私は先日ミミさん達と選んだ服に着替えて準備万端の筈だったのに…。
うう、まさかヘアスタイルでこんなに悩むなんて…。
いっつもロングで特にかまった事なかったけん、こういうとき、どがにーすぅーだぁ?
「芽心ぉ〜? お弁当忘れてもいいけど、傘忘れたらいけんでぇ〜?」
「お母さん、大丈夫だけん! 両方ともバッグにいれとるけん!」
「そう。ならええけど…。あんた何しよるん?」
「ヘアスタイルが決まらんのぉ〜。もう時間ないのにぃ〜」

少々癇癪を起こし気味に言うと、お母さんは呆れた様に、

「芽心、ちょっとそこに座りなさい!」
「ええ! 時間ないのに!」
「ええけん、座るだがな!」

珍しくキツめに怒るお母さん。メイちゃんもびっくりしてる。

「何時に何処に行けばいいの?」
「……9時45分にお台場の展望広場で…」
「なに、まだ30分以上あるがな。鳥取とちがって、1時間に一本じゃないけん、急かさんでもええよ」

そう言って、お母さんは部屋を出る。私は大人しくベッドに腰を下ろす。メイちゃんは私の横にちょこんと座ると、頭を寄せてきた。

「お待たせ、芽心! なら、やろうか?」

お母さんの手にポーチを持って、私と対面する様に椅子に座った。

「日焼け止めは塗った?」
「うん、一応…」
「芽心は元がいいから、あんまり濃くせん方がいいけど、折角の初デートだから少しはオシャレせんとね」

そう言って、お母さんは私に軽くファンデーションを塗り、アイラインを整える。

「お母さんみたいな年になると、いろいろ隠さないといけないから濃くなるけど、芽心くらいの年なら少し整えるだけでええよ」

お母さんは眉毛を描きながら、話を続ける。

「芽心に彼氏ができるなんて、あんな山ばっかり駆け回っとった、芽心がな…」
「私だって、女の子だけん。お化粧くらい…」
「でも、メイクーモンが居ったから、あんま外に行けんかったでしょ?」
「…………」
「そうなん、芽心?」

メイちゃんが不安そうな顔を向けてくる。私は優しくメイちゃんの頭を撫でた。

「それでも、芽心の魅力に気付いてくれる男の子がおったんね。なら、芽心もその思いに返さんといけんよ?」

お母さんは筆で口紅を塗り終えると、今度は髪を梳き始めると、

「もう一度、惚れさすくらいおめかしせんとね。お母さんがお父さんを落とした時のヘアスタイルにしてあげるわぁ!」

それ何年前の話? とツッコみを入れようとしたが、鼻歌混じりで私の髪を梳くお母さんに私は何も言えなかった。

「いつぶりくらいだらぁかなぁ、芽心の髪をかまうのは…」
「うーん、小学生?」
「そんなにかぁ〜。芽心はいっつもメイクーモンと山ん中駆けずり回っとったけん、体中にくっつき虫つけとったなぁ〜」
「そうだっけ?」
「あんたは知らんと思うけど、あれ洗濯するの大変だっただで? いっつもくっつき虫取ってから、洗濯せんといけんけぇ、面倒だったわぁ」

確かにメイちゃんと山ん中駆け回っとたけど、そんなに大変だったとは知らんかった。私がメイちゃんを見ると、何か物欲しそうな顔でこっちを見ている。

「どうしたん、メイちゃん?」

私がそう言うと、両手上げて、

「メイもぉ〜、メイもぉ〜」

私が首を傾げると、

「メイクーモンもお洒落したいんでしょ? ほら、芽心。このブラシでメイクーモンも綺麗にしてあげない」

私はお母さんからヘアブラシを受け取ると、やさしく撫でる様にメイちゃんを梳いてあげる。ほんの数回梳いただけで、メイちゃんはうっとりした表情に。

「なら、髪をあげてくで」

そう言うと、お母さんは後ろ半分を束ねると、左側に寄せ、軽く捻る。そして捻じれが解けないようにお団子状に丸めると、ヘアピンで留めた。

「後はこのアクセサリーで…」

最後はヘアピンを隠すようにハマナスの花をあしらったヘアアクセサリーを留めた。

「ほれ、芽心! できたで!」

お母さんに言われて、私は鏡の前に移動する。
そこにはハーフアップをお団子状にまとめた黒髪の女の子。程好いメイクのお陰で鳥取の田舎娘が凛として、しかし儚げな印象を持っている。

「メイ、綺麗だがん!」

メイちゃんが嬉しそうに目元を細め、キャッキャッと笑っている。

「メイちゃん、だんだん。お母さん、ありがとう!」
「ありがとう、じゃないわ〜。芽心、もっと自分磨きせんといけんでぇ!」

呆れ顔でため息を吐くお母さん。

「うん! でも、意外。お母さんがメイク得意だったなんて…」
「これでも?西校の桜田淳子?って言われとっただで? おしゃれには気ぃつかっとったよ!」

さくらだ……? 確か昔のアイドル?
私が首を傾げていると、お母さんは私の両肩をポンッと叩き、

「ほれ、そろそろ時間だら? 高石くんを待たせたらいけんで!」

そう言われて、私は携帯を見ると9時30分に切り替わった瞬間だった。私はバッグの中を確認する。
おサイフ、ハンカチ、ウエットティッシュ。うん! 問題なし!
「芽心! 折りたたみ傘は? 傘もって行きない!」
「…………お母さん、鳥取じゃないけん、傘はいらんがぁ?」
「わからんでぇ? かさばるけど、持ってきない」

お母さんはそう言って、部屋を出ていく。私もメイちゃんとバッグを抱えて、部屋を出る。
リビングではお父さんが新聞を読んでいる。一瞬私をチラッと見たが、すぐに紙面に視線を戻してしまった。私が玄関に進むと、そこには立ち塞がるようにお母さんが立っている。手にはネギが。
えっ…ネギ?
「コレ! 貰いもんの折りたたみ傘! ネギみたいで面白いだら?」

よく見ると、取手側を緑、他は白のツートーンで色分けした傘だ。こんなの売ってたんだ…。うーん、外で差したくはないけどな。
私は折りたたみ傘を受け取ると、バッグの底に押し込むと、ストラップを肩に掛ける。そしてヒールを履いて、

「メイちゃん、おいで!」
「だがん!」

私が両手を広げると、メイちゃんは嬉しそうに飛び込んできた。

「なら、行ってくるね」
「うん。気をつけてね」

笑みを浮かべ、手を振るお母さん。お父さんは相変わらず、新聞を読んでいる。なんかひと言あってもいいのにな。
私がドアノブに手を掛けた時、

「芽心…、気をつけて行って来なさい」
小さく、はっきりした声で声を駆けてくれた。私は自然と口角が上がるのを感じた。

「…いってきます!」

私は振り返る事なく、家を出たのだった。


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