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ID.4693
 
■投稿者:すすやん 
■投稿日:2017/02/26(日) 23:20
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デジモンアドベンチャーtri. タケメイ二次小説 第1章「玉砕」
         
「望月さん、俺と付き合って下さい!」
「すっ…すみません」

いきなり玉砕した。
いや、可能性は考えたよ? でも、まさか即答とは思わなかった。
こう見えて、僕は結構女の子にモテる。
やっぱりルックスやバスケをやってたぶん、女子受けがいいんだろう。

でも、僕より格好イイ人はいる。もちろん、いろんな意味でね。
ルックスなんかじゃアニキの方が遥かに上だし、スポーツなら太一さん、ちょっとファッションセンスはどうかと思うけど、パソコンに向かう光子郎さんも知的なところが魅力だ。丈さんはいつもは頼りないけど、ここぞってところで助けてくれる。今でもメガシードラモンに襲われたときに身を呈して助けてくれたのが忘れられない。
そんな人達を見ると、僕は薄っぺらい人間に思えてしまう。
だから、女の子に優しく接してみんなにないところをアピールしている。まあ、それもお爺ちゃんのマネなんだけど…。お爺ちゃんはそういう意味で言うと、裏表なく女性に接している。

曰く、
L’amour est un ouragan n’importe quand.

うーん、さっぱりわからない…。なんか恋は情熱だぁー!と騒いでてお婆ちゃんに叱られてた気がする。

とりあえず、女の子には優しく、って感じに捉えて実践はしている。だから、アニキのライブなんかにもいろんな女の子に声を掛けてる。

でも、告白になると話は別だ。

正直、軽い気持ちで女の子と付き合うことはできない。
理由は両親のこと。
自覚はないけど、深いトラウマになっているんだと思う。

それに小さな頃から忙しく働く母さんを見ているせいか、理想の女性が母さん似た雰囲気をもつ人な気がする。
あっ、マザコンじゃないよ。

だから、彼女を好きになった自分を自分が一番驚いている。

望月芽心。
僕らと同じ選ばれし子供達の仲間。

感染デジモンの一件から色々あったけど、僕たちの仲間になった。

初めは鳥取から来たと言うことで、都会そのものに驚く様子が年上なのに妙に不安にさせて、ミミさんに振り回されながらも楽しそうな顔に癒されて、たまに見せる影のある表情に惹かれて、そして一緒に冒険をして、戦って行くうちに、彼女が好きになっている自分がいた。

あの冒険からひと月、僕は告白していた。

「すっ…すみません」

玉砕した。
うっ、影から見守るパタモンとメイクーモンの視線が痛い…。
恥ずかしくて、顔を上げられない。
やばい、泣きそうだ!
あああああ、パタモン、ホーリーエンジェモンに進化してヘブンズゲートを開けてくれ! その中に飛び込みたい!

「タケルくん、ごめんなさい! 顔を上げて下さい!」

ううぅ、この状況で顔を上げてなんて、鬼畜すぎるよ!

「あのなんて言ったらいいのか…、私も告白されたの初めてで…」

そうですよね、いきなり変なこと言ってゴメンナサイ。

「だからなんて返したらいいか、分からないんですけど…」

僕もなんて言って顔を上げたらいいか、わかりません!

「私もタケルのこと、好きです」

えっ?

僕は顔を上げる。
ヤバい、泣き顔を見せてしまった、恥ずかしい!
しかし、芽心さんは頬を赤らめて、もじもじと体を動かしている。

可愛うぃい!

「でもまだ出会ってそんなに経ってないですし、年齢も4つも違うじゃないですか…。それにタケルくんまだ中学生ですし…」

そういう芽心さんの瞳は見る見る内に潤んできた。

「だから、付き合っても他の子に乗り換えられちゃうと思うと、私…怖くて…怖くて」

遂にその目から涙が溢れてくる。
突然のことで驚いたけど、僕はすかさずポケットからハンカチを取り出し、彼女の頬にあてる。

「ありがとうございます」

鼻を啜りながら、芽心さんは涙を拭っていく。

「タケルくんは悪くないです。私が…私が…私に自信がないだけで…」

泣きながら答える彼女を僕は黙って抱き寄せる。
本当なら、なにか声をかけるべきだけど、かける言葉が思い浮かばなかった。

僕の肩でしばらく泣いていた芽心さんは落ち着いたのか、僕から離れて改めて向き合った。

「すみません、お見苦しいところをお見せしました…」
「そんなことないよ。俺…その嬉しいんだ。望月さんがこんなにも真剣に考えてくれて、だから…」

俺はそこまで言うと、両手で自分の涙を拭うと、そのまま自分の頬を強く叩いた。
驚いた表情の芽心さんをじっと見つめると、

「改めて言います。望月芽心さん、俺と付き合って下さい! 俺望月さん…、いや芽心さんを絶対に幸せにするし、一緒に幸せになりたい!」

今の俺の気持ちに偽りはない。
もし芽心さんが俺のことを嫌いになっても、俺は絶対に彼女を愛し続ける。

俺の新たな告白に芽心さんは、キョトンとしていたが、にっこりと笑みを浮かべると、

「よろしくお願いします」

腰を90度曲げて、返してくれた。

「おしっ!!」

僕は声を挙げて喜びを表現する。芽心さんも嬉しそうに見つめている。やばい、そんなに見つめられると恥ずかしいw

「なぁ〜、 なんでメイもタケルも泣いとるだぁ?」

足下を見ると、メイクーモンが困った顔でこちらを見ている。

「タケリュ〜、ゴメン! タケリュが芽心を泣かせたと思ってメイクーモン、飛び出しちゃった!」

慌てたパタモンんが必死に耳をはためかせて飛んできた。

要約すると、急に泣き出した芽心さんを見て、僕が泣かせたと思ったメイクーモンが飛び出したものの、到着してみれば2人とも泣きながら笑っている。
一体どう言ういことか、メイクーモンではよく分からなかったようだ。

「メイちゃん、大丈夫だで。私もタケルくんもとーっても仲良しだけん。心配せんでもええよ」

芽心さんはメイクーモンを抱き上げながら答えると、メイクーモンは嬉しそうに「だがん!」と答える。

その光景を微笑ましく見ていると、パタモンが僕の頭に乗ってきて、

「よかったねぇ〜、タケリュ〜」

嬉しそうに呟いた。
僕はその頬を優しく撫でる。

ああ、人を好きになるのって、こんなにうれしい事なんだな…!

ID.4694
 
■投稿者:すすやん 
■投稿日:2017/03/04(土) 16:44


デジモンアドベンチャーtri. タケメイ二次小説 第2章「決断」
「なるほど。取り敢えずタケル、おめでとう!」

喫茶店で丈さんと僕は向かい合って座っている。
それぞれのパートナーであるゴマモンとパタモンは横でスイーツを食べている。ああ、おいしそう。

「で、今度の土曜日にデートに行くんだけど、どこがいいのか迷ってて…」
「えっ! もうデートの約束をしたのかい⁈」

丈さんは驚いた声を挙げるけど、このくらい普通じゃない?
は〜っ、っと抜けた声を出しながら、「気を取り直して」と前置きを入れ、

「そこで彼女がいる僕に相談しにきたわけだね。ふっふっふ、まさかタケルにデートの相談をされる日が来るとは…」

感慨深そうに頷く丈さん。

「なっ! やっぱみんなジョーを頼りにしてるんだよ! まあ、いつもどこか抜けてる感はあるけどな〜」

モンブランをフォークで器用に食べていたゴマモンが横から茶々を入れる。

「一言余計だ、ゴマモン! でも、女の子とのデートはタケル結構やってるんじゃないのか? 」
「たけりゅ、モテモテたもんねぇ〜🎵」

パタモンは顔をチョコだらけにしながら、なぜか一番嬉しそうに答えた。
確かに、同級生とのデートは何回かある。でも、相手は年上。僕だって男だ、見栄がある。

「高校生と中学生じゃあ、結構感覚違うでしょ? それに望月さん、こっちに来たばかりでしょ。台場周辺じゃなくて、少し離れたところに行きたいんだ」

近場でもいいが、お台場はミミさんたちと回っているはず。都心の方に出て、デートをリードしたいのだ。

「なるほどなっ!。ジョー、タケルはデートをリードして、大人ぶりたいみたいだぜ?」
「大人ぶりたいって…、まだタケルは中学生だよ? そこまでしなくても…」

ハハハッ、と軽い笑いを飛ばしてくる丈さんから僕は反射的に顔を逸らした。
その動きに丈さんが固まる。

「えっ…、タケル。君本当に…」
「うっ、…否定できない」

こちらの思惑を言い当てたゴマモンは満足げに口元を綻ばせている。

「なら、ヤマトや空くんに相談した方がいいんじゃないか? ヤマトたちの方がいろいろ知ってるだろ?」
「いきなり空さんに相談は安直かなって思ったんだけど………。アニキは………、その………、こだわりが強いでしょ? 多分、完璧なデートプランは作れても、イコール相手も楽しいデートとは限らないじゃない?」

そう言われた丈さんとゴマモンは暫く見つめ合い、うーんと考え込むと、

「オイラもタケルの考えにサンセー」
「ヤマトには悪いけど、否定できないな…。この前のバーベキューも『肉と野菜のハーモニー』や『自然との闘い』とか、よくわからないこと言ってたし…」

「言ってた言ってた」と相づちを返すゴマモン。

「なら僕が彼女………、勿論実在するよ! 彼女とのデートプランを教えればいいんだろ?」

丈さんは自身で納得したように頷き、答えを返した。

「そう! できれば、よかったとこや問題点も教えて欲しいんだけど…」
「よし、わかった! じゃあ、先ずは初デートのプランなんだけど………」


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


そんな丈さんとの会話が2時間前。

「で? 丈先輩のアドバイス…、どうだったの?」

ところ変わって、大手ハンバーガーショップ。僕の目の前には、我らがビックマザー………もとい空さん。その横のピヨモンはイチゴ味のシェイクとチキンナゲットを食べている。
僕の横にはパタモン。先程の喫茶店でもスイーツを食べていたのに、ここではアイスクリームを食べている。

僕は丈さんのアドバイスを貰った後、急ぎ空さんと連絡をとった。だって、丈さんのデートプランが………。

「大学受験合格の神社仏閣巡りとか………」

受験とはここまで人の感性を狂わせるのか………。来年が恐い…。

「丈先輩らしいわね。あの夏の冒険の時も、頭が良くなるありがたいお経とか知ってたし………」

ため息混じりに、空さんが呟いた。

「でも、あのお経のお陰でバケモンたちは倒せたわ。ヴァンデモンの時もそうだったじゃない?」

空さんの様子を不思議に思ったのか、ピヨモンが返す。
それを聞いた空さんは「それもそうね」とピヨモンを撫でながら答えた。

「それで私のところに駆け込んできたわけね? ふーん、それにしてもタケルくんと芽心ちゃんがねぇ〜」

空さんにしては珍しくニヤニヤして、おもちゃを見つけたように笑っている。ヤバイ、絶対後々弄られる系だ!

「たけりゅ、最初芽心から『すみません』って、言われて泣いてたよ」
「パッ…パタモン!」

慌ててパタモンの口を塞いだけど、時既に遅し。空さんだけでなく、ピヨモンさえも意地悪な顔になっている。

「そっ…空さん。この事はできればご内密………」
「そらぁ〜、アタシ限定のスイートポテト食べたい!」
「私も期間限定お月さまバーガー食べたいな〜」

くっ………! 中学生に集る高校生とか、洒落にならない! ここはお小遣いの前借りしかないか………。

意気消沈した僕がレジに行こうと立ち上がると、空さんは慌てて僕を止めた。

「冗談だってぇ! ちょっと意地悪したくなっただけだから!」

僕が座るのを確認すると、空さんはコホンと咳払いをして、

「で? 理想のデートプランを企画したいわけよね?」
「はい、できれば望月さんを驚かせたいんです!」

なるほど、と空さんは小さく微笑むと、

「なら、芽心ちゃんにどこに行きたいか聞いてみなさい!」

その答えは意外だった。

「えっ………? でも、俺望月さんを驚かせたくて………」
「タケルくん!」

僕が言い終わるのを待たずに、空さんは遮ると、

「あなたたち、出会ってどのくらい?」
「えっ?あの…その………」

僕が言い淀むと、更に空さんは続けた。

「いい、タケルくん? 私だって、まだ芽心ちゃんの知らないこといーっぱいあるのよ! それなのに、芽心ちゃんがどこに行ったら凄く喜ぶかなんて、わかりっこないじゃない!」
「アタシも空にサンセッ🎵 アタシは空と一緒ならどこでもいいわ🎵 でも、それはアタシと空がパートナーで長い時間一緒に居たから」

ピヨモンはそう言うと、空さんに顔を擦り付けながら甘える仕草を見せる。空さんも嬉しそうにピヨモンの頭を撫でた。その様子を見ていたパタモンが物欲しそうに僕に視線を向けてくる。

駄目だ、さっき簡単に口を滑らせたじゃないか! ここで甘やかせたら、また何を口滑らすか…。

やめてくれ! そんな瞳で僕を見つめないでくれ!
ああ、瞳を潤ませて、口もあわわと動かして…、この…可愛いヤツめ❤️

そう思った瞬間、僕はパタモンを抱き上げ、頬擦りをする。

「タケリュ、くすぐったいよぉ〜」
「ハイハイ! いちゃいちゃしてないで、本題に戻るわよ」

呆れた様に僕とパタモンを見る空さん。でも最初に脱線したのは、そっちなのに…。

「だから私が言いたいのは、芽心ちゃんと一緒に決めたらいいんじゃないかな? そんなに背伸びしなしなくてもいいんじゃないかしら?」

うーん、確かにそうかも。まだ出会ってそんなに日数もないし、少し背伸びをしていたかもしれない。そう言えば、大江戸温泉の時も望月さんの希望を聞かないといけないと思ったじゃないか!
まあ、あのときはアキニと太一さんの仲直りが主な目的だったわけだけど…。

「そうですね。望月さんと釣り合う様に少し背伸びしてました。デートの場所は2人で相談して決めます! やっぱ、空さんに相談して正解だった」

僕がにこやかに答えると、空さんも頷き、

「そうそう。多分芽心ちゃんもその方が喜ぶと思うよ」

嬉しそうにシェイクに口を付けた。
その様子を見ていたパタモンは僕の膝の上に移動すると、

「おんなじこと、ジョーも言ってたね?」

えっ?
僕は2時間前に記憶を戻す。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


「よし、わかった! じゃあ、先ずは初デートプランなんだけど、やっぱ受験生だしね、湯島天神、亀戸天神、谷保天神巡りの合格祈願ツアーでさぁ〜」
「…んっ?」

えっと…、これは…。

「その後も図書館で勉強デートとか、まあいろいろと…」
「ジョー…」
「んぁ? どうした、ゴマモン?」
「タケル、頭抱えてるぞ?」

かなり衝撃的なデートプランに心底驚いた…。

「…受験生って、みんなそんなデートしてるの?」

僕の素朴な疑問に丈さんは一瞬はてなマークを浮かべながら、

「まあ、人それぞれだと思うよ。2人とも受験生で勉強もしなきゃだけど、一緒の時間も欲しいからね! 僕らはそれも確保するために、2人で一緒にどこ行くか決めたんだ。自分たちで自分たちががいま取れる時間を大切にするためにね」
「おう、さっすがジョー! たまにはいいこと言うじゃんかぁ〜」
「たまにはが余計だぞ!」


あー、言ってる。言ってたなー。

口端を引攣らせる僕をなんとも言えない笑顔で見つめる空さんだったけど、

「まあ、何かあったら相談して! 私も応援するから」

両手を握り、ガッツポーズを見せた。
うん、やっぱ空さんに相談して正解だった。
もちろん、丈さんも。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


『行きたいところですか?』

早速空さん(と丈さん)のアドバイス通り、望月さんにデートの目的地を聞いてみる。

『えっ…、何処でもいいですけど…』

うん。予想通りの回答だ。
そもそも望月さんは東京に越してから日が浅い。どこに何があるのか、さっぱりなのだ。なので、今回はそこに的を絞る。

「今まで行った事のない場所とかないかな? 東京観光も兼ねて、俺が案内するよ!」

《芽心ちゃんが行った事のない場所なんてどうかしら? この前、ゆりかもめを見てた時も、『鳥取は電車もないんで、無人で動く乗り物なんて驚きです』何て言ってたし》

これも空さん情報。
ホント、いろいろ気付く人だ。

『そうですねぇ…、うーん…。あっ、メイちゃん、お菓子こぼしとるよ…』

電話の向こうでメイクーモンが何やら騒いでる。どうやらテレビを見ている様だ。

『もうメイちゃん、今電話しとるけ、テレビの音小さく……、あっ!』

突然、電話口で大きな声を上げる望月さん。何事かと耳をすますと、

『タケルくん、今テレビ見れます? ここ行きたいです!』

少し興奮しながら、喋る望月さん。僕は部屋を出て、リビングに向かう。リビングでは母さんとパタモンが一緒に刑事ドラマを見ていた。

「どうしたの、タケル?」
「母さん、一瞬チャンネル変えるね」

携帯を片手に、リビングのリモコンを取ると、望月さんのいうチャンネルにかえる。
紅茶を片手に不敵に笑う主人公のアップの顔から、その場所をレポートする女子アナへと画面が変わった。

なるほど、ここか!

「OK! じゃあ、待ち合わせ場所と時間を後で連絡するね。それじゃあ、おやすみ」

電話を終えた僕を母さんが呆然とした顔で見ている。パタモンは僕からリモコンを奪い取ると、チャンネルを元に戻した。

「やけに嬉しそうねぇ」
「えっ! そうかな?」

母さんは目線を僕からテレビに戻すと、

「やっぱり、親子ね…」
「? どういう意味?」

僕が尋ねると、横目で僕を見ながら、

「今のタケル、あの人と同じ顔してる」

その時の母さんの表情は憎らしさ、嬉しさ、懐かしさが入り混じった複雑なモノだった。

そっか、父さんとはそんなに長い間一緒に過ごしたことないけど、やっぱり血は繋がっているんだ。
そう思うと、胸の奥から何か湧き上がる熱い何かがあって、自然と口元が緩んでいた。

ID.4695
 
■投稿者:すすやん 
■投稿日:2017/03/12(日) 23:15


デジモンアドベンチャーtri. タケメイ二次小説 第3章「思惑」
「メイメイ!」

急に呼び止められて、一瞬私はビクッと反応した。声の正体はわかっていたが、正直どんな顔をしているのか不安だった。
私は深呼吸をすると、恐る恐る振り返る。そこにはいつもの可愛い笑顔浮かべた1つ年下の女の子。

「ミミさん……」

多分その時の私はバツの悪そうな顔をしていたと思う。
タケルくんから告白を受けてから、なんとなくミミさんとは顔を合わせずらかった。理由は私自身わからないけど、タケルくんとの事をミミさんに知られると不味い気がしたのだ。

「タケル君に告白されたんだって?」
バレてる!
ミミさんは目を細めて、少し笑ったような顔をしている。笑ったような顔をしているが、その内心には何がうごめいているのだろうか…。私にはわからなかった。

「いえ、そのぅ…」
「んで、OKしたんだって?」
「えーっと、それは…」
私がわたわたしていると、ミミさんはズカズカと一気に迫ってくる。そして、私の手を握り、

「おめでとっ! メイメイ!」
「へっ⁉」
私は予想外の反応に間抜けな声をあげてしまった。改めて、ミミさんを見る。
そこにはいつものミミさん。
満面の笑みで私の腕を上下に揺らす。

「ミミさん、その…怒ってないんですか?」
私が恐る恐る尋ねると、ミミさんはキョトンとし、

「どーして? アタシ、メイメイが幸せそうで、ものすごくうれしいよ?」
私の問いに困った顔を浮かべながら、ミミさんは答えた。どうやら、私の思い違いだったようだ。

「いえ、すみません。へんな事を聞いてしまって…」
「もう、メイメイ! アタシがそんなことで起こると思ったの? 失礼しちゃう」
ムスッとむくれるミミさん。きっと空さんのマネをしているのだろう。さっきからコロコロと表情が変わって、可愛い人だ。

「すみません。いつかは言わないといけないと思ってたんですけど、タイミングがなくて…」
「ううん、大丈夫!ミミ的にはチョーヨユー! ぜーんぜん、気にしてないから! だから…」
ミミさんは、そこで一旦一息付けると、

「空さんや京ちゃん、ヒカリちゃん誘ってデートの服探しに行こっ!」
「えっ! いや、デートってほどじゃ…」
「違うの?」
「いえ、違わないというか、まぁデートではありますね…」
「今度の土曜日でしょ? 放課後で大丈夫だよね?」
「えっ? あっ…ハイ…」
あれ? ミミさん今なんて言った?
「ミミさん、どうして日付をご存知で?」
「? パルモンがパタモンとメイクーモンから聞いたって」
メイちゃん!
ということは、もうすでに皆さんご存じなのか…。
別に隠す程の事でもないし、きっとメイちゃんも楽しみだけんしかたないか…。

「アタシがメイメイをコーディネートしてあげるね🎵 覚悟しておいてね〜🎵」
うう…、ミミさんには逆らえそうにないなー。

「わかりました。よろしくお願いします」
「オッケー! このミミ様にまっかせなさーい🎵」
こうして翌日の放課後、私たちは服を探しにお店にやって来たのでした。



「メイメイ、これ! ゼーッタイ似合うって!」

ミミさんが得意げに持ってきたのは、真っ赤なキャミソールとかなり短めのホットパンツ。確かにインナーとしてキャミソール、上からジャケットを羽織れば、かなりカッコいいかも…。でも、ホットパンツは合わないし、そもそもそんなカッコいいの私には似合わないなぁ…。

「ミミさん、ちょっと私には似合わないんじゃないでしょうか?」
「ノープロブレム! メイメイならセクシーな感じの服も似合うって!」
「さすがに少し派手すぎません?」
「えーっ、そう?」
「そーれならー! こんなのはどうでしょう?」

何故かセクシー系を推すミミさんに対して、ひかは私の意見に賛同してくれた。ムスッと不満気なミミさんを横に今度は京さんが服を持って来てくれた。

「ここは芽心さんのイメージ通り、ワンピースなど如何でしょう? ここはボディラインがハッキリするタイプがいいでしょう。ちなみ裾は長めがいいですか? 私のオススメは膝上くらいの短めなんですけど、長めにしてカーディガンを羽織れば、大人っぽくなって更に芽心さんおイメージに合うと思います。ああ、でも少しイメージを変えるなら、上はノースリーブ、下はスキニーパンツって言うにもありですね。案外パーカーを羽織るのもアリですねェ〜。あと…」

早い! ほぼ何を言ってるのか、わからなかった…。
次々に持ってくる服をポロモンが必死になって抱えている。その様子空さん達が若干引き気味で、

「京ちゃん、なんかスゴい…」
「なんか店員さんみたいに推してきますね…」
「いゃ〜、私姉妹で1番下なんで、服って基本姉さん達のお下がりが多いし、でもファッションは姉さん達と結構話すので、なんかこう言うの楽しくなっちゃってぇ〜」
「光子郎さんとは雲泥の差…ですね」
「えーッ? 光子郎くんも結構頑張ってると思うけどぉー」
「あぁ、そこは褒めるのね」

私達がそんな会話をしていると、「メイ〜」と私を呼ぶ声が。
声のする方を見ると、メイちゃんが服を来て、こちらにやってくる。

「メイちゃん!」
「メイ、メイィ。チェンパイ達が選んでごしただでぇ〜」
「メイちゃん達だけで⁉︎ お店の人にバレんかった⁉︎」
「安心しろ、芽心。私がしっかりと目を光らせていた!」

クールに答えるテイルモン。その後、ヒカリさんに熱い視線を向けている。ヒカリさんもその視線に気づいたのか、テイルモンを抱えると頭をなでなでしている。テイルモンはとっても嬉しそうだ。あっ、喉を鳴らしてる。

「メイクーモンの服を選ぶの、私達も手伝ったのよ」
「アタシ達もコーディネートしてみたの。どうミミ? イケてるでしょッ?」

ピヨモンとパルモンが自慢気に紹介したメイちゃんのコーディネートは子供用のGパンと黄色いネズミのキャラクターがプリントされたTシャツを着ている。そう、ほっぺに電気袋があるあのネズミだ。

「メイちゃん、可愛いでぇ〜」
「だぁがん!」
「ピヨモン、いい感じだよ」
「むむぅ〜、悔しいぃ〜、パルモンセンスあるぅ〜」

皆さんが褒めちぎる中で、京さんが声をあげた。

「ええっ! 芽心さん、メイクーモンたちを連れていくんですか?」
びっくりした、丈さんがいるかと思った。
当の京さんも本当にびっくりしたのか、丸眼鏡がズレている。

「京しゃん、声が大きいでしゅ…。他のお客に迷惑でしゅよ」
京さんに抱えられたポロモンが慌てて答えた。

「ポロモン、ダメよ!  私達もぬいぐるみのふりしないといけないんだから!」
「ミミぃ〜、いつまでぬいぐるみのふりしてたらいいの?」
「メイ、メイー! お腹空いただがん。なんか食べしゃしてごしない!」
「こら、あんた達! あまり我が儘を言って、ヒカリたちを困らせるな!」

ポロモンの一言を切欠に一斉に喋り出す始末。私達は騒ぎが大きくなる前に買い物を済ませ、場所を移動すことに…。ちなみに、京さんのワンピースをチョイス!
場所は以前メイちゃんを探した時寄ったアイスクリーム屋さん。

「じゃあ、私がトッピングを選んできますね」
「あっ、ヒカリちゃん。運ぶの手伝うね」

そう言うとヒカリさんとと京さんはテイルモンとポロモンをシートに座らせ、ショーケースへと向かう。

「やっぱ、セクシー系にしない?胸がバーンと出てて、タケルくんがメロメロになっちゃう服」
「えっ! 無理です、そんな服、着れません! と言うかそんなにバーンと魅せられるほど大きくは…」
「アタシみたいに究極体になれば、いいんじゃない?」
「ちょっとミミちゃん、冗談が過ぎるわよ…。アレ、ピヨモン、なんで泣いてるの」
「アタシ、進化してもムキムキ…。空ぁ、やっぱり空もバーンの方がいいの?」
「いや、私は筋肉の方が好きかな? シックスパックに割れてるところとか、上腕二頭筋が…」
「お前たち、いい加減にしろ! 空もそこは止めるところだろ…」

再びトークがヒートアップするのを止めたのはテイルモン。やっぱりこう言う時、成熟期デジモンであるテイルモンはしっかりしている。
えっ、メイちゃん? あははははは…。
あと空さん…、筋肉好きなんだ…。

「そもそもバーンではなく、ボインが正しいと私は思う。そう言う点では、究極体にならずとも完全体でボインな私の方が上だな」
「スミマしぇん、シルフィーモンは私要素が強過ぎるようでしゅ」

あっ、まだこの話続けるんだ…。

「少し涼しくなってきたけど、ある程露出してタケルくんの気を引かないとー」
「そこまでしなくていいんじゃない? 芽心ちゃんらしい格好がいいと思うな、私は」
「えー、それじゃあ私が少しエッチなメイメイが見れない!」
「………ミミちゃん、何がしたいの?」

むすーっとむくれるミミさんに対し、若干引き気味の空さん。でも、空さんの言い通り、ミミさん何がしたいのですか? ていうか、今日のミミさんはムスーっとむくれっぱなし。

「メイ、セクシーにボインすっだかぁ?」
「メイちゃんまで!  私がしたってよー似合わんけぇ、それによーせんわぁ」
「そんなことないよ!  メイメイみたいに長い黒髪なら、似合うよ!」
「ホント、ミミちゃん。何がしたいの?」
「ミミお姉様、なんの話ですか?」

アイスを配りつつ京さんも会話に参加していた。

「メイメイがエッチな服でタケルくんをメロメロにする話」
「ほほう、詳しく教えてください!」

メガネを輝かせて、京さんは興味深々に身を乗り出してくる。

「まあまあ、先ずはアイスをどうぞ!」

残りのアイスを持って来たヒカリさんが苦笑しながら、アイスを配る。

「空、空ぁ! 見て、これアタシ!」

目の前に置かれたアイスを見て、ピヨモンが声を挙げた。配られた目の前アイスを見ると、デジモンたちをイメージした色合いとデコレートがされている。

「メイィ、メイィ! これ、メイだがん!」

メイちゃんと私のアイスは、バニラとキャラメルのマーブル模様のアイスに4つに割ったビスケットを耳に見立て飾られている。他のみなさんのアイスを見ると、空さんとピヨモンはイチゴアイスに赤や青のハート型のチョコが散りばめられ、ミミさんとパルモンは抹茶アイスに色取り取りのグミ。京さんとポロモンはイチゴとベリーのマーブルアイスに羽に見立てたアーモンドチップ。そしてヒカリさんとテイルモンはバニラアイスにマシュマロとホーリーリングに見立てたビスケット。

「何コレ⁉︎。ちょーイケてる!」
「トッピングが出来るので、デジモン達に合わせてデコレートしてみました」
「空ぁ、食べるのが勿体無いよぉ〜」
「まあ、まずは写メらなきゃ」

ミミさんを筆頭に4人と4匹は各々が思う構図で写メを開始。外から見れば十分怪しい団体なのですが、そんな事は気にせず写メ、写メ。

「それじゃあ、いっただっきまーす!」
「ああ、ミミ、ズルい! アタシも〜」

やっと静かに、アイスを口に運ぶことが出来るようになりました。
うーん、程よい甘さと少し塩味が効いた飽きの来ない味。後味のキャラメルの風味が再びスプーンをアイスに誘う。

「メイ、メイ〜。これぅまいがなぁ〜」
「ほんだな、メイちゃん。ヒカリさん、ありがとうございます。本当に美味しいです!」
「そんなに大したことないですよ。私はトッピングをお店の人にお願いしただけですし…」
「いやいや、ヒカリちゃん。ご謙遜を。お台場のスイーツを食べ尽くした人が何をおっしゃるやら!」
「ちょっと、京さん!」
「んっ? なんの話?」

ミミさんの疑問に答えるのは京さん。何故かヒカリさんの事なのに、自分の事の言う様に熱く語り出した。

「何しろ、このヒカリちゃんはお台場中のコンビニスイーツ、月島の老舗和菓子、はたまた新規オープンのカフェスイーツを全て食べ尽くしたんですから!」
「そんな全てじゃないですよ、7割くらいです…」
「いや、十分凄いし…」
「いいなぁ、私なんか体重計と相談しながらよ?」
「アレ? ミミいつも『この体重計壊れてる!』って言ってないっけ?」
「パルモン、シャラップ!」
「でも、ヒカリちゃん、特に部活やってないでしょ? なのにそんなにスイーツ食べて細いなんて羨ましい」
「そんなバクバク食べてません!」
「でも2日に一回はウチのスイーツお買い上げ頂いてますがぁ〜」
「もう! 京さんまで!」

意地悪な顔で京さんが弄ると、ヒカリさんは照れた様にアイスを口に含む。
えへへ、と笑いを浮かべていた京さんは思い出した様に、

「ところで芽心さん、タケルくんとのデートにメイクーモン達を連れて行くって本当ですか?」

急に冒頭の会話に戻され思わず私は咳き込んでしまった。

「京さん、いきなり…」
「メイもパタモンも一緒に行くだがん!  楽しみだわぁー」
「だが芽心、そもそもデートとは2人っきりで行くものではないのか?  私達にはよくわからないが、人間とそうやって愛を育むのだろう?」

テイルモンが核心突く質問をしてくる。”愛を育む”とか、ボキャブラリーが大人だ。メイちゃんと同じ成熟期とは本当に思えない。
テイルモンの言葉を受け、七対の視線が私に集まる。

「えーっと、1つはメイちゃんと一緒に東京を観たかったって言うのがあります」

はっきり言って、鳥取と東京は同じ日本とは思えないほど違いがある。
道路が二車線以上は当たり前。鳥取で二車線と言えば、メインストリートである国道9号のBSS周辺かジャスコ前の産業道路。鉄道は未だに汽車しかなくて、しかも1時間に1本が当たり前。それでも自然が豊かと言えば聞こえはいいかもしれないが、でもいろんな世界を観てみたい。
デジタルワールドの冒険も困難もあったが楽しい事もいっぱいあった。そうしたお陰でメイちゃんも私も少し成長出来た気がするのだ。
だから、タケルくんの告白にも答えれた訳で…。
ええっとその…。

私の告白に顔をニヤニヤさせながら聞き入る4人。
やっぱり、そんな反応をする!
「でぇ? もう1つは?」

テーブルに顔を載せて、スプーンを加えながらミミさんが聞いてきた。パルモンも真似をしている。お行儀が悪い…。

「あとはその…」

私が伏し目がち、もじもじしていると、

「ズバリ、タケルも男の子と言う事ですね!」

京さんがダーンとテーブルに片足を載せて、高らかに答えた。

「京さん、お行儀が悪いでしゅ…」

申し訳なさそうにポロモンが呟いた。

「タケルくんはスマーティですからね…」

うんうん、頷くヒカリさん。

「やはりあれは暗黒進化なのか?」
「間違った進化はないから、なんとも言えないけど、どちらかと言えばテイルモンが知識のデジメンタルでアーマー進化した方に近いかも」

ヒカリさんの指摘に驚愕の表情を浮かべるテイルモン。「思い出したくない過去を思い出してしまった」と小さく呟いた。

「やっぱり兄弟だからですかね? ヤマトさんのカッコいい感じがこー、遺伝子的にー」
「ヤマトは太一と比較されてクールなイメージがあるけど、太一以上に熱い男よ」
「それなら1番クールなのはガブモンね!」
「いえいえ、1番クールなのはこのワタクシ…」
「えっ?」
「いえ、なんでもないでしゅ…」

京さんの真顔の返事にシュンとして項垂れるポロモン。

「つまり、メイメイはタケルくんがガルルモンに進化するのが怖いと…」
「えっ、ミミ! タケルって進化出来るのぉ!」
「パルモン、ミミちゃんはあくまで例えているの。タケルくんが本性出しちゃうって事」

驚くパルモンに空さんが解説を入れる。

「タケルの本性?」
「空ぁ、それってどう言う意味?」
「えーっと、それは…」
「ピヨモン、恐らくそれは人間でないとわからない。私達デジモンが聞いたところで理解できない…」

テイルモンがピヨモンの疑問に回答に困った空さんに助け舟を出した。確かにデジモン達にとっては理解できない事かもかもしれない。小さな子供に赤ちゃんが出来る仕組みを教える様なものだろう。

「つまり、タケルが芽心を襲うって事だら?」

まさかのメイちゃんが核心を突いてきた!
「えーッ、タケルが悪いデジモンに!」
「感染しちゃったのぉ!!」
「うーん、まあ太一もヤマトも大輔、丈先輩や光子郎くん、伊織くんもなっちゃうかなぁ〜」
「えー、光子郎くんはなくない?」

ミミさんの言葉にその場にいた全員が光子郎さんを憐れに思い、無言で視線を合わせた。

「まあ、タケルくんも中学生だし、いつまでも小学2年生じゃないってことね」
「空さん、その言葉はオバさんっぽいです!」
「ああ! 京ちゃんヒドい!」

失礼しちゃう、と頬を膨らます空さんをピヨモンがなだめる。なんだか微笑ましい光景だ。

「気を取り直して、ここは芽心ちゃんがちゃんとリードしないといけないと私は思う訳です!」

こほんと咳払いをすると、空さんはバックから小さなラバーケースをテーブルに置いた。

「これ、私からの餞別!  多分、必要ないと思うけど、まあ念のために、ネッ!」

私はそれを手に取り、おもむろに中身を取り出す。その瞬間、空さんが小さく「あっ!」と声を出したけど、時すでに遅し。
それは3センチの正方形で銀色のパッケージさされ、5ミリの厚さがある。それが5個ほど連なっており、中には輪っか状のモノが梱包されている。
しかし、もしやコレは…。

「そっ…空さん!」
「初デートだし、そんな事ないと思うけど、まあ高校生の嗜みとして」

恐らく耳まで真っ赤にして反応する私と、虚空を見つめ気不味い表情を浮かべる空さん。
私の手にあるそれを興味深そうに見つめるメイちゃん達。

「なんなん? コレ?」
「お菓子にしては、小さいわねェ〜」
「見たことないな、ヒカリ! コレはなんだ?」
「ええっ! えー、それは…」

テイルモンに問われて、困った顔になるヒカリさん。
京さんは気にせず、アイスを口に運び、ポロモンは伏せ気味に目を逸らしている。

「えっ、そんな……。メイメイの…メイメイの初めては私が貰う計画なのに…」
「ミミ! 何!? 何がどーなってるのッ!?」

ミミさんの謎発言はさておき、私は改めて現実に戻る。
やっぱり、タケルくんと付き合うという事は、そんな事になる可能性もある訳で、えーでも、そんな…、うぅぅ…。

この微妙な空気をぶった切ったのは、ヒカリさん。

「でも、それサイズ大丈夫なんですかね?」

そのひと言に先ず反応したのはミミさん。呆然とする体勢から素早くヒカリさんに詰め寄ると、

「ほほぅ、ヒカリちゃん。今の発言はどう言う意味でございましょうか?」
「えっ!  いや、ただ思った事を言った訳で……」
「ふーん。前から気になってたけど、ヒカリちゃんとタケルくんって付き合ってたの?」

その言葉にハッとする私。そして話の中心になっている横のヒカリさんに視線を向ける。
そうだ、私とタケルくんが出会って数ヶ月。確かにヒカリさんは過ごした時間も長いし、同級生なのだ。そして、6年前から共に戦ってきた選ばれし子供たちの仲間。2人が付き合っていてもおかしくないのだ。

「メッ…メイ?」

メイちゃんが苦し気に声を挙げた。気がつくと、メイちゃんをキツく抱き締めていたようだ。私は無言でメイちゃんの頭を撫でる。

「なんにもないですよ!  ただ仲のいい友達、まあどちらと言えば兄妹……。いや姉弟かなぁ?」

ヒカリさんは少し困った顔をしながらも、ミミさんの質問に答えた。

「ふーん、そーなんだぁ?  じゃあ、今度は私の番!」

不完全燃焼気味ながらもこれ以上の追求は諦めた様子。「ヒカリちゃんはあとがこわいからね」と小さくつぶやきがら、自分のバッグを探っている。

「あっ、あった、あった!」

ミミさんがバッグから取り出したのは、小さなパンダのぬいぐるみ。

「はい、コレ! 私からの恋愛御守り!」

それはミミさんのケータイのストラップになっているもんざえモンによく似ているパンダモンのぬいぐるみ。特徴として、ハートを抱きしめている。
ミミさんはそれを差し出すと、憂いた表情になると、

「私、メイメイにはハッピーになって欲しいから…」

ミミさん、そこまで私の事を?
「ミミさん…!」

私はサッと立ち上がると、ストラップを両手でしっかりと受け取り、

「私、嬉しいです! 今回の事、ミミさんに喜ばれていないと思ってて…、だからここまでして貰えるなんて……、だんだん!」

深々と私は頭を下げた。その時、隣のヒカリさんが引き攣った顔をしていた。その視線は私ではなく、ミミさんに向けられている。しかし、私は特に気にする事もなく、顔をあげると、

「私、この子も連れて行きます!」
「メイメイ、そー来なくっちゃ!」

テーブルを挟みながら、ハグをする私達。
うう、これが女同士の友情ってやつなんですね!
「ハイハイ。2人とも、そろそろお開きにしましょう。そろそろいい時間になってきたし、ピヨモン達も眠そうだしね」

空さんの声でメイちゃんたちを見ると、うとうととした表情をしている。放課後から集まったので、結構いい時間になっている。

「皆さん、遅くまでお付き合い頂きありがとうございます! 私頑張ってきますね」

私は力強くそう答えたのだった!



「フッフッフー、うまくいったわね」
「ええ、いつ芽心さんに渡すのかハラハラしましたよ」
「なかなかタイミングが無くて、正直アタシも焦っていたわ…」
「忘れてただけじゃない?」
「Don’t worry! 上手くいったからいいの♪」
「そう言うものでしゅかねぇ〜」
「これで第一段階は完了ですね! では、これからは次の段階へ移行します」
「OK!  よろしくね、京ちゃん!」
「お任せ下さい、ミミお姉様!  行くわよ、ポロモン!」
「ちょっと京さん、どこに行くんですかぁ〜」

ID.4696
 
■投稿者:すすやん  MAIL
■投稿日:2017/03/19(日) 23:38


デジモンアドベンチャーtri. タケメイ二次小説 第4章「独白」
「なあ、太一。聞いてくれ…」

ヤマトは口の前で手を組んだポーズで対面の太一に問い掛けた。その横のガブモンは「またか…」と呆れた表情を浮かべている。
太一も同じ事を考えていた。

ヤマトがブラコンなのは、昔からわかっていた。最近はそれも落ち着いていたと思っていたのだが……。

(ブラコンって、再発するんだな…)

正直、ヤマトのブラコントークは夫婦喧嘩並みに食う奴はいない。小学生のころは、「タケルぅ〜、タケルぅ〜」とタケルにべったりだったが、いつの間にかそれも落ち着いていたと思っていたのに。今は話が長く、正直鬱陶しい……。
それを差し引いても、ヤマトのタダ飯が食えるのだから、食べ盛りの金なし高校生には多少の事なら我慢できる。
要は聞き流せばいいんだからな。

「昨日、タケルの家に行ってからこうなんだ。なんとかしてくれよ」

ガブモンが困った表情でこっちを見ている。たった1日でガブモンが根を上げるなんてよっぽどなんだろうな。
俺はチャーハンをレンゲで掬い、ひとくち頬張る。
うん。豚キムチチャーハンが美味い! キムチの辛さと豚バラ肉の脂の甘さがちょうどいい。

「昨日、タケルの家に飯作りに行ったんだ」
「うんうん。このチャーハン美味いな! なんかコク?  っていうの?  それが美味い!」
「………ラードを使って食材を炒めている。あと隠し味に味噌をいれてる」
「あー、このコクは味噌がミソなのか!  味噌だけに!」
「………太一、人の話聞いてるのか?」
「んあっ? うん、聞ひてふ、聞ひてふ」
「なら、食ってるだけじゃなくて、ちゃんと聞けよ!」

ヤマトは目の前の皿を奪い取り、俺を睨みつけた。
なんだよ、お前のブラコン話に付き合わされるこっちの身にもなれよ……。

「わーってるよ。でっ?  タケルの家で何があった?  タケルがナニしてるのを見ちゃったとか!」
「…………見られた事はある」

マジか! あれは気まずい!

「あっ、そう……。まあ、気にすんなよ!  俺もヒカリや母さんに見られそうになった事あったから!  ほらっ、俺の部屋ベランダ越しにあるだろ? だから、洗濯物干す時とかにさ___」
「お前……いや俺たちのナニの話はいい!  本題に戻るぞ!」
「なあ、ヤマト?  "ナニ”ってなんの話だ?」

慌てて取り繕う俺に、ヤマトは少し顔を赤らめて、反応した。
いや、ホントナニする時は部屋の鍵とカーテン閉め忘れには注意しないとな。
ヤマトはフランスの血が混じってる割には、意外に奥手___いやムッツリスケベなところあるよな。

「まっ、ナニを教えたのは俺なんだけど……」
「はっ⁉ ︎ 嘘言うな!  お前も似たような感じだったじゃねーか!」
「まぁー、今はいいじゃん……。でっ、"ナニ”ってなんだよ⁉︎」

睨み合う俺たちにガブモンが困った感じで聞いてきた。ハハッ、まー無理ないよな。デジモンには無関係な話だ。
「お前は気にしなくていい」とガブモンに言うと、

「タケルが望月と付き合ってるのは、知ってるよな?」
「ああ、空から聞いた。いやぁ〜、残念だね、1番じゃぁ無くなって。オニイチャン?」
「だから、やめろって! たくっ、そんなに俺をイジって楽しいかよ?」

ムスッと不貞腐れるヤマト。そんな表情をするから、からかい甲斐があるんだけど!
正直、タケルがそこまで本気になるとは思ってなかった。結構、望月に対して気を遣っている印象はあったが、もう告白するなんて……。

「やっぱ、タケルの方がフランスの血が濃いのかもな!」
「うっせー。手が早いのは島根の神様の方が上手だぞ?」

ヤマトは俺を一層キツい目で睨みつけると、

「そこで俺は見つけたんだ……」
「えっ⁉ ︎ 使用済みのゴム?」
「…………(ギロッ)」
「悪かったって……。 そんな目で 睨むなよ……」
「…………リビングにあの?ランド?のパンフがあったんだ」

…………。
ランド……て、あのランドだよなぁ? トロピカルなパレード曲が流れているあのネズミの王様がいる? 確か王様の恋人が昔の空みたいな声してたよな?
俺も家族やサッカー仲間で何回か行ったけど、まあ恋人同士でいくのも悪くないよな。
…………………。
悪くないどころか、普通じゃね?
なら、別に可笑しなところはないし、むしろ当然じゃあ……。
えっ?  てか、それだけ?

「なんだよ!  それだけって、なんだよ!」
「いや、口に出してねーし!  そもそも付き合ってたら、そんくらい、普通だろ?」
「普通だと⁉ ︎ まだ中学2年生が高校2年生との初デートにあの?ランド?を選ぶか⁉︎」
「選んだっていいだろ⁉︎ もう中学生だし、そんなに遠出する訳じゃないんだから……」
「でも……、タケルは……いつも……俺のライブに女の子連れて来てて……」

そう言うと、ヤマトは持っていたチャーハンの皿をテーブルに置き、うっうっと嗚咽しながら、泣き出した。
メンドクセー!
泣くことか、そんなことで! ホント、付き合ってらんねー!
俺はそーっとチャーハンにレンゲを伸ばす。しかしヤマトは嗚咽しながら、皿をスッと離れたところに移動させる。まともに対応しないと、食えねーのかよ!
アー、メンドクセー!!

「なっ?  もう俺じゃあ、どうしようもできないんだ!  あの闇堕ちした時より重傷なんだよ!」

困り果てた顔を浮かべ、両手を広げるガブモン。
いやっ、俺にどうしろと……。
俺もそんなに経験豊富な方じゃないし、どうアドバイス……いや、この場合恋愛経験は関係ないか……。

「なら、ヤマトはタケルの初デートはヤマトのライブに来て欲しいんだ?」

俺の問いに、ヤマトは小さく頷く。
ウワー、メンドクセー!!!!
初デートに兄貴のライブって、どんだけブラコンなんだよ! 俺が彼女なら引く!  よくこれまでの彼女たち、耐えられたな……。

「太一、これでもヤマトは心配してるんだよ。中学生のお小遣いで無理してるんじゃないかって……」
「……俺のライブだったら、チケット代安く渡せるし、なんなら飯代も少しは出せるから……」

へー、ヤマトも考えてるんだ。たまに”お兄ちゃん”やってるじゃんか。
でも、タケルなら本当に必要と思った時に、ヤマトを頼るんじゃないか? 案外、俺たちの誰よりもしっかりしてるし、ちゃっかりしてる。そんなに心配しなくてもいいんじゃないか?

「まあ、タケルの事だし、きっちりデート計画してるんじゃないか? 俺らよりも場数こなしてんなら、まだお前を頼らなくても大丈夫だって判断したんじゃねぇーか?」
「そんなもんか?」
「まっ、俺もタケルには頼られたいしな!  アイツ、小さい時に俺の弟になりたい、とか言ってたけど、十分弟みたいな存在だよ」
「お前にはヒカリちゃんがいるだろ?」
「うまく言えねぇーけど、もっとワガママ言ったり、頼って欲しいんだよ、俺も……。でも、多分気兼ねなく無理な頼み事を相談されるのはお前しかいないよ……、オニイチャン?」
「バッ……バカっ!」

眉間に皺を寄せ、悪態を吐きながらも、ヤマトの表情は何処か嬉しそうに見えた。

「まぁ、俺もタケルのデートプランは興味あるけど!」
「因みに太一は今までどんなデートした事あるんだ?」
「確かにオレも知りたい。そもそも太一、女の子と付き合ったことあるのか?」

軽く零したひと言から、ガブモンとヤマトがなんか食いついて来た!

「バカッ、俺だってデートの1つや2つ……って言いたいけど、サッカーに集中しちまって、グループデートみたいなのしかないなー」
「…………それ、ホントにデートか?」
「ガブモン、触れてやるなよ。そこは温かい目で見てやろうぜ……」
「なんだよ、ソレ!  ふざけんじゃねぇーぞ!  そもそも向こうの方が俺に好意持ってたらしいし!」

それを言った瞬間、俺は「ヤバい、言い過ぎた!」と思った。が、既に後の祭り。ガブモン瞳には好奇色が、ヤマトは一見興味なさげだが、チラチラと視線をこちらに向けてくる。あー、鬱陶しい!

「なあ、相手の女の子……女の子でいいよな?」
「当然だ! 怒るぞ!」

ホッと安心した表情を浮かべるガブモン。おい、ヤマト。お前はなんでそんな驚いた表情をするんだ!

「その女の子との関係って……」
「相手のプライバシーががあるんから、黙秘する!」
「黙秘って……」
「大体、俺は呼ばれて来たんだぞ?  ヤマト、お前が先に話すのがマナーじゃないか?」

俺は無理矢理話題の方向性をヤマトに軌道修正する。こうすれば、ヤマトの事だ、なんだかんだで話をはぐらかすに違いない。

「俺か?  そうだな、基本ライブかな?」

……マジかよ。この話、引っ張るのかよ……。唖然とする俺を横目にヤマトは話を続ける。

「結構渋谷や恵比寿のライブには行くな。やっぱり他のバンドの曲を聞いて、俺もインスピレーション貰ったりするし、いいもんだぞ。後は合羽橋とか築地を回るのも…」

ヤマトが嬉々として、調理器具や食材の話を始める。あー、こいつの趣味の世界が始まった…。
大体、デートで合羽橋や築地って盛り上がるのか?  俺は行ったことがないからわかんねけど、楽しいモンなのかねぇ〜。

「まっ、金ないし中々買う事は出来ないけどな…」
「でも、ヤマトの料理はスーパーの食材でも十分美味いぞ!  これでいい食材や道具を使ったらどうなるんだろうな!」
「ガブモン、良いものを使えば良いってモンじゃない!  大事なのは、丁寧な下準備とどう調理するかだ!」

料理を語り出したヤマトを見ていた俺はフッと思った事を口にした。

「ヤマトはミュージシャンになるのか、それとも料理人になるのか?」
「いや、違うけど」

あっさりとした回答。しかも意外な答えでびっくりした。

「えっ、だってお前……!  そんなに料理や音楽に対して、熱く語ってるじゃないか!」
「ああ。でもこれは好きな事でやりたい事じゃない」
「なら、ヤマトは何をやりたいんだ?」

ガブモンがストレートに聞く。ヤマトはしばらく考えた後、手に持っていた皿を置き、

「俺は防衛大を考えている」
「…………」
「…………何それ?」

俺の返答に呆れて溜息を吐くと、

「要は自衛隊の育成機関だ。今回の感染デジモンやリブートの件で俺自身の無力を痛感した」
「…………」
「デジモンの事はこれから先、決して避けられない。だから、西島先生が所属する組織みたいなのが、秘密裏だけど組織されたんだと思う」
「…………」
「それに今回の件も、俺たちが高校生どころか一般人がどうこう出来る話じゃなかった。でも、例え秘密組織でどうこうできる問題でもなかった。俺たちには権力がなく、先生たちには武力がなかった」
「…………だから、俺たちみたいな選ばれし子供達による問題解決組織が必要なのか。しかも、一組織ではなく世界的に発言力があって……」
「オレたちみたいなパートナーデジモンがいるヤマトたちがオレたちを使って、問題を解決するのか?」

ガブモンが真っ直ぐな瞳でヤマトを見つめる。ヤマトはガブモンの頭も軽く叩くと、

「対デジモン兵器はあるようだが、それが完全体や究極体に通用するには時間がかかる……。俺もお前を戦わせたくないけど……、俺たちしかできないなら……」

そこで言葉を区切ると、ヤマトはガブモンに視線を向ける。その視線を感じ取ったガブモンは、同じように見つめ返し、

「 ヤマトが戦うって言うなら、オレも戦う! だって、ヤマトは……」

そこでガブモンは顔を赤らめる。その表情を見て、ヤマトも照れくさそうに、

「ガブモン……。ああ、俺も同じだ。ガブモンは大切なこの世界で唯一の俺のパートナーだ!」

アイコンタクトで頷き合う2人。
…………………。
俺、帰ろうかな…。

「今度はお前の番だぞ、太一?」

急に俺に話を振り、真っ直ぐに見つめるヤマト。
くそっ、ニガテなんだよ。その瞳。
俺は観念し、小さくため息を吐いてから、

「俺は……、もっと世界中人たちにデジモンやデジタルワールドの事を知ってもらいたいと思ってる。感染デジモンの件で、アグモンたちはいわれの無い風評被害を受けた。確かにデジモンの力は強大だ。でも、それは人間も同じだろ? 使い方を誤れば、世界は崩壊するだろうし、平和にもなるだろう。
俺は世界が……世界中の人がデジモンやデジタルワールドを受け入れられる世の中にしたい。これ以上、あいつら傷つけたくない。でも、その為に何をすれば良いのか……、何になれば良いのかわからない。わからないけど、俺は世界中にデジモンとデジタルワールドを知って貰う仕事に就きたい…! そう考えてる」

ふっ、我ながらクサイ台詞を言っちまったぜ…。でも、それが今の俺の正直な気持ちだ。だから、外国語を勉強出来る学校に進もうと、先生と相談して………、アレ?  なんだ、ヤマト?  その気不味い表情は?

「いやっ、まさかお前も将来の目標を語り出すなんて…」

えっ……⁉︎

「てっきり、もう少しグループデートの話を聞こうと、話を振ったつもりだったんだが……」
「オレもそんな話になると思ってたんだけど…」

ヤマトとガブモンは顔を合わせると、

「なんかゴメンな。将来の夢なんて、語らせちまって……」
「でも、太一もしっかり考えてる事分かったから、よかったんじゃないか、ヤマト?」

えっ……えっ! 何に⁉︎ 俺、語り損?

「マジかよっ!」

うっわっ、ちょー恥ずかし!
項垂れる俺を不憫に思ったのか、ヤマトがそっとチャーハンを差し出してくる。そんなんで、俺のこの傷ついたハートが……!

「…………うまい」

結局、食ってるし!  ええい、もうやけ食いだ!
俺が皿ごと食い尽くす勢いで、チャーハンを駆け込むと、ヤマトは「でっ」と前置きを入れ、

「タケルのデートの件だが、俺は後をつけようと思う……」

ワー、ココニオトウトノデートヲストーキングスルオニイチャンガイルゥゥゥゥ……

「マジかよ、ヤマト…。お前も堕ちるところまで堕ちたな……」
「うるせー、だからお前も誘ったんだ。俺ひとりだと、かなりヤバいのは分かってる」
「よかった。オレも最初に相談されたときは、変態かと思ったけど自覚はあったんだな!」
「うるせー、ガブモン。どちらかといえば、あのタケルが女子をどうエスコートするのか気になる! 太一、お前だって、そうだろ?」

そこにはふざけた笑みを浮かべたヤマトはいない。真剣な顔をしている。
どうやら、この前の空の気持ちを汲み取れなかった事を気にしているみたいだ。まあ、俺も人の事、言えねーけどなッ。

俺はしばらく考えるフリをする。即答だと、ただの野次馬に思われる。そう、俺はタケルから女子への対応方法を学ぶんだ!  なんだろう、言ってて悲しくなってきた……。
俺はレンゲを皿に置くと、その手を前に差し出し、

「分かった、俺も協力しようじゃねーか!  他でもない、お前の頼みだからなっ!」
「太一!」

ヤマトはその差し出した手を両手で握る。ガブモンが冷めた目で見ているが気にしない。気にしない。気にしたら、そこで試合終了だ!
いつか女心がわかるようになるなんて言ってたら、あっと言う間にオッさんになっちまうよな!
こうして、俺たちの週末のプロジェクトは動き出したのだ。

ID.4702
 
■投稿者:すすやん 
■投稿日:2017/03/27(月) 00:10


デジモンアドベンチャーtri. タケメイ二次小説 第5章「高潔」
「光子郎はーん、タケルはんとパタモンが来ましたでぇ〜」
「いらっしゃい、タケルくん。すみませんが先約を済ませますので、ソファに掛けて下さい」

僕とパタモンはテントモンに案内され、光子郎さんのオフィスに。そこには既に先客が居て、

「あっ、タケルさん。ご無沙汰です」
「だぎゃ!」

伊織くんとそのパートナーのウパモン。お菓子の袋に顔を突っ込んでいたから、口の周りにカスが…。
テーブルにはウパモンが食い散らかしたと思われるスナック菓子の残骸と家から持ってきたおはぎの重箱が置いてある。
パタモンは僕の手から離れると、ウパモンの横に降り立つと、

「ウパモン、久しぶりだねぇ〜」
「ポロモンとはよー会っとるがぁ〜、他のみんなとは都合が合わんで、会えとりゃせんでぇ〜」

確かにあの冒険の後、伊織くんたちは体調が優れなくて、お見舞いにも行けなかったっけ?
「伊織くん、久しぶり! 学校が同じなのに全然逢ないね?」
「建物が違うので、仕方ないと思います。あっ、タケルさんもいかがです? 母のおはぎです」

相変わらず、律儀だなぁ〜。
伊織くんが皿に盛ったおはぎを受け取り、ひと口大に切ると、

「はい、パタモン!」

パタモンに差し出す。パタモンはそれをパクッと食べると、

「ふふふ! 伊織のお母さんのおはぎ、いっつも美味しいね!」
「そうだね」
「ありがとうございます。母にも伝えておきます」

僕もひと口頬張る。うーん、このさっぱりとした甘さがたまらない!
「体調はどう? 戻ってきたときはあの大輔くんがげんなりしてたくらいだし?」
「タケルさん。僕は小学生ですよ? 真夏の道場で防具を来て剣道をやっているので、3日くらいは動けませんでしたけど、それからは問題ありません」

逆に動いていないと、鈍ってしまいます、と一言付け加える伊織くん。ははっ、ホント相変わらず真面目だね。

「伊織のお母さんはもっと休んどけ、ってゆーとるが〜! この前もケーコでふらついとっただぎゃ!」
「えっ?! そうなの? 伊織くん、無理はよくないよ………」
「いえ、お爺様もそこは気を遣っていますし、大丈夫です。それに………」

すると、伊織君はケータイを取り出すと、

「僕には疲れたときに癒してくれる相手がいますから」

ニヤッと笑みを浮かべる伊織くん。
あー、そっか………。伊織くんにもいたよね、彼女。まさか、スマーティに彼女自慢してくるとは、誠実の継承者、あなどれない。
光子郎さん、知識の先輩としてなんか負けてますよ。

「んっ? どうしました、タケルくん?」
「いえ、なんでも」

僕のチラミに気付いたのか、光子郎さんが声を掛けてきた。僕が慌てて、流すと、

「そうですか。もう少しですので、待っていてください」
「はい、タケルはん、パタモン。お茶でっせ」

僕が苦笑いしていると、テントモンがおはぎに合う煎茶を出してくれた。さすが、できる秘書だ!
「これがこーで。…………よし、これで問題ありません。タケルくん、お待たせしました」

光子郎さんはデスクから離れると、引き出しを開き、手の平大の包装紙に包まれた箱を取り出す。それとノートパソコンを持って、僕らと対面する様に座った。

「今、伊織くんのD-3に特別なプログラムをインストールしています。それが出来れば、同じものをタケルくんのD-3にもインストールします」
「インストールって、何を?」
「ホーリーリングです」

ホーリーリング? どうして、そんなものを?!
「光子郎さん、説明をお願いします」

困惑する僕を横目に伊織くんが代弁してくれた。恐らく伊織くんも同じ事を思ったんだろう。
光子郎さんは小さく頷くと、

「今回はイグドラシルにいい様に踊らされました。そしてこの様な事は幾度となく訪れると僕は予想しています」

光子郎さんはそこでテントモンが用意した烏龍茶をひと口飲み込む。

「そこで戦力アップの為、ジョグレス進化に注目しました。以前の様に簡単にジョグレス進化はできなくなりました。その理由はわかりますか?」
「テイルモンのホーリーリングを媒体にしていたので、それができなくなったから、ですよね?」
「そうです。ジョグレス進化は特異な進化。2体のデジモンで構成されるのに、デジコアはひとつのみ。ホーリーリングがなくても進化はできますが、安定が難しく、長期戦は困難でした。そこで…」

光子郎さんがノートパソコンの画面を見せる。そこにはワイヤリングされたホーリーリングと解読不能なコンピュータ言語、数字とデジ文字の羅列。

「テイルモンのホーリーリング、そして嘗て一乗寺くんが使っていたイービルリングのデータを元にジョグレス進化に必要なデータを抽出したものです。これをお二人のD-3にインストールして、安定性を確認します」
「光子郎さん、先程戦力アップと仰いましたが、僕はアルファモンとの敗北を経験しました。確かに僕たちはアルファモンの力の前に敗北しましたが、正直ウパモンを戦わせたくありません………。弱いままなのは問題があるとは理解していますが………」

俯きながら、膝に置いた拳を強く握る伊織くん。どうやら?戦力アップ?という言葉が引っかかる様だ。

「僕も闇雲に戦わせたくはありません。それでも、力が無くては蹂躙されるだけです。?倒す?ではなく?抗う?力として、理解してくれませんか?」

光子郎さんは諭す様に伊織くんに説明をする。伊織くんには感情や誤魔化しよりも正攻法で行くしかない。論理的に説明をして、納得して貰うしかない。

「…………」
「つまり、オレもシャッコウモンに進化できるだぎゃ?」

葛藤する伊織くんを他所にウパモンが尋ねてきた。

「理論上は。更にアルマジモン単体でもシャッコウモンに、その上の究極体へも進化できないか考えています」

まだまだ調べる事は多いですが、と光子郎さんは苦笑い混じりでウパモンの質問に答えた。
その言葉にウパモンは目を輝かせ、

「イオリィ! オレも究極体に進化したいがや! やってみるだぎゃ♪」

ウパモンは伊織くんの膝の上に乗ると、ぴょんぴょん飛び跳ねている。伊織くんは複雑な表情を浮かべながら、

「そうですね。というか、既に実行済みなんですよね、光子郎さん…」
「すみません。やはり、伊織くんにも事前に説明するべきでした。失念していて、申し訳ありません」

苦笑する光子郎さんに対して、伊織くんは小さく首を振ると、

「いえ、僕もわがままもいってしまって、申し訳ありません。それに僕も負けっぱなしは性に合いません」

伊織くんはウパモンの頭を撫でながら、答えた。その言葉にホッとした表情を浮かべる光子郎さん。

「よう、おましたな、光子郎はん。1番説得が難しそうな伊織はんに最初に声を掛けて!」
「ええ。まだ上手くいくかもわからない内容でしたし。このような無茶なお願いができるのは、知識の紋章を引き継いでくれた伊織くんでないと難しいと思ってました。タケルくんは巻き込んでしまってすみません………」

申し訳なさそうに謝罪する光子郎さん。

「いえ、そんな! 僕は喜んで協力しますよ!」
「わーい、ボクもシャッコウモンに進化できる!」
「パタモンはセラフィモンに進化できるだぎゃ! 贅沢だぎゃ!」
「まあまあ、パタモンもウパモンも、まだ可能性の話やから、みんなで長い目で調査していきまひょ」

テントモンがお菓子の入ったバケットを差し出して、2人を宥めた。その瞬間、2人ともお菓子に群がる。

「ところでタケルに来て頂いたのは、もうひとつ渡したい物があったからです」

そう言って、傍に置いていた箱を僕の前に差し出す。

「光子郎さん、これは?」
「お菓子?」
ビリッ!
僕が手に取るよりも先にパタモンがその箱に手を掛ける。

「出来れば、家に帰ってから開けて貰いたいですが………。まあ、芽心さんとお付き合いを始めたタケル君への僕からの餞別…」
「だぎゃ!」

ビリッ!
ウパモンが勢いよく包装を破いた。
「あっ……」と小さくを声を出した光子郎さんは右手を出した状態で固まっている。
そこに見えるのはビニールに包装された箱。表面に「めちゃ薄…」の文字が見える。

「…………」
「…………? …………!」
「…………」
「あちゃぁ…………」

三者三様の表情を浮かべる。
僕らの顔を不思議そうな顔で見回すパタモンとウパモン。
この空気の中、言葉を発したのは、伊織くん。

「光子郎さん、これをどこで?」

そこを聞きますか。確かにコンビニやドラッグストアで入手可能だけど、光子郎さんがそんなところで買える勇気があるとは思わない。きっと…、いや間違いなく、

「伊織くん、世の中にはネット通販というものがあります!」

やっぱり、そうだと思った。

「まだお付き合いし始めだと思いますが、いつかその……セ……そうジョグレス! ジョグレスする機会が来ると思います!」

赤面しながら、なんで言いにくい事を言うんだ、この人は…。

「そんな時、お二人はまだ未成年ですし、このコン………そうデジメンタル!高潔のデジメンタルが必要になる筈です!」

高潔のデジメンタル……。まあ、いいや。そこにはツッコまない。

「光子郎さん、どーしてこれを?」

困惑しながらも、餞別の由来を確認する。

「えっ? アメリカの友人に聞いたら、これが一般的だと言っていたものですから…?」
「一種のアメリカンジョークというヤツですね」

伊織くんがため息混じりに呟いた。

「まあ、そこそこいい値段ですから、中学生には嬉しい贈り物ではないでしょうか、ねっ、タケルさん?」
「まあ、そうだね」

乾いた笑いをする僕と伊織くん。アレ? 伊織くん、なんで高潔のデジメンタルの値段知ってるの? さすが彼女持ち…と言ったところか。

僕が伊織くんに小さな疑問を浮かべていると、光子郎さんのデスクトップパソコンから「ピロリン」と音がなる。
光子郎さんがパソコンに向かい、少しキーボードを叩くと、

「よしッ! インストール完了です! 次はタケルくんのD-3を貸してください」

僕はD-3を光子郎さんに渡すと、改めて餞別の箱を見る。

「うーん、サイズ合うかな?」

僕は帰ってから、こっそりデジメンタルアップする事を心に誓ったのだった。

ID.4704
 
■投稿者:すすやん 
■投稿日:2017/04/02(日) 22:50


デジモンアドベンチャーtri. タケメイ二次小説 第6章「瀟洒」
「うーん、こっち? いや、やっぱりこっちかなぁ?」
「めぇ〜いぃぃ〜、まだぁ〜?」
「ごめん、メイちゃん。でも、ヘアスタイルが決まらんのぉー」

私は先日ミミさん達と選んだ服に着替えて準備万端の筈だったのに…。
うう、まさかヘアスタイルでこんなに悩むなんて…。
いっつもロングで特にかまった事なかったけん、こういうとき、どがにーすぅーだぁ?
「芽心ぉ〜? お弁当忘れてもいいけど、傘忘れたらいけんでぇ〜?」
「お母さん、大丈夫だけん! 両方ともバッグにいれとるけん!」
「そう。ならええけど…。あんた何しよるん?」
「ヘアスタイルが決まらんのぉ〜。もう時間ないのにぃ〜」

少々癇癪を起こし気味に言うと、お母さんは呆れた様に、

「芽心、ちょっとそこに座りなさい!」
「ええ! 時間ないのに!」
「ええけん、座るだがな!」

珍しくキツめに怒るお母さん。メイちゃんもびっくりしてる。

「何時に何処に行けばいいの?」
「……9時45分にお台場の展望広場で…」
「なに、まだ30分以上あるがな。鳥取とちがって、1時間に一本じゃないけん、急かさんでもええよ」

そう言って、お母さんは部屋を出る。私は大人しくベッドに腰を下ろす。メイちゃんは私の横にちょこんと座ると、頭を寄せてきた。

「お待たせ、芽心! なら、やろうか?」

お母さんの手にポーチを持って、私と対面する様に椅子に座った。

「日焼け止めは塗った?」
「うん、一応…」
「芽心は元がいいから、あんまり濃くせん方がいいけど、折角の初デートだから少しはオシャレせんとね」

そう言って、お母さんは私に軽くファンデーションを塗り、アイラインを整える。

「お母さんみたいな年になると、いろいろ隠さないといけないから濃くなるけど、芽心くらいの年なら少し整えるだけでええよ」

お母さんは眉毛を描きながら、話を続ける。

「芽心に彼氏ができるなんて、あんな山ばっかり駆け回っとった、芽心がな…」
「私だって、女の子だけん。お化粧くらい…」
「でも、メイクーモンが居ったから、あんま外に行けんかったでしょ?」
「…………」
「そうなん、芽心?」

メイちゃんが不安そうな顔を向けてくる。私は優しくメイちゃんの頭を撫でた。

「それでも、芽心の魅力に気付いてくれる男の子がおったんね。なら、芽心もその思いに返さんといけんよ?」

お母さんは筆で口紅を塗り終えると、今度は髪を梳き始めると、

「もう一度、惚れさすくらいおめかしせんとね。お母さんがお父さんを落とした時のヘアスタイルにしてあげるわぁ!」

それ何年前の話? とツッコみを入れようとしたが、鼻歌混じりで私の髪を梳くお母さんに私は何も言えなかった。

「いつぶりくらいだらぁかなぁ、芽心の髪をかまうのは…」
「うーん、小学生?」
「そんなにかぁ〜。芽心はいっつもメイクーモンと山ん中駆けずり回っとったけん、体中にくっつき虫つけとったなぁ〜」
「そうだっけ?」
「あんたは知らんと思うけど、あれ洗濯するの大変だっただで? いっつもくっつき虫取ってから、洗濯せんといけんけぇ、面倒だったわぁ」

確かにメイちゃんと山ん中駆け回っとたけど、そんなに大変だったとは知らんかった。私がメイちゃんを見ると、何か物欲しそうな顔でこっちを見ている。

「どうしたん、メイちゃん?」

私がそう言うと、両手上げて、

「メイもぉ〜、メイもぉ〜」

私が首を傾げると、

「メイクーモンもお洒落したいんでしょ? ほら、芽心。このブラシでメイクーモンも綺麗にしてあげない」

私はお母さんからヘアブラシを受け取ると、やさしく撫でる様にメイちゃんを梳いてあげる。ほんの数回梳いただけで、メイちゃんはうっとりした表情に。

「なら、髪をあげてくで」

そう言うと、お母さんは後ろ半分を束ねると、左側に寄せ、軽く捻る。そして捻じれが解けないようにお団子状に丸めると、ヘアピンで留めた。

「後はこのアクセサリーで…」

最後はヘアピンを隠すようにハマナスの花をあしらったヘアアクセサリーを留めた。

「ほれ、芽心! できたで!」

お母さんに言われて、私は鏡の前に移動する。
そこにはハーフアップをお団子状にまとめた黒髪の女の子。程好いメイクのお陰で鳥取の田舎娘が凛として、しかし儚げな印象を持っている。

「メイ、綺麗だがん!」

メイちゃんが嬉しそうに目元を細め、キャッキャッと笑っている。

「メイちゃん、だんだん。お母さん、ありがとう!」
「ありがとう、じゃないわ〜。芽心、もっと自分磨きせんといけんでぇ!」

呆れ顔でため息を吐くお母さん。

「うん! でも、意外。お母さんがメイク得意だったなんて…」
「これでも?西校の桜田淳子?って言われとっただで? おしゃれには気ぃつかっとったよ!」

さくらだ……? 確か昔のアイドル?
私が首を傾げていると、お母さんは私の両肩をポンッと叩き、

「ほれ、そろそろ時間だら? 高石くんを待たせたらいけんで!」

そう言われて、私は携帯を見ると9時30分に切り替わった瞬間だった。私はバッグの中を確認する。
おサイフ、ハンカチ、ウエットティッシュ。うん! 問題なし!
「芽心! 折りたたみ傘は? 傘もって行きない!」
「…………お母さん、鳥取じゃないけん、傘はいらんがぁ?」
「わからんでぇ? かさばるけど、持ってきない」

お母さんはそう言って、部屋を出ていく。私もメイちゃんとバッグを抱えて、部屋を出る。
リビングではお父さんが新聞を読んでいる。一瞬私をチラッと見たが、すぐに紙面に視線を戻してしまった。私が玄関に進むと、そこには立ち塞がるようにお母さんが立っている。手にはネギが。
えっ…ネギ?
「コレ! 貰いもんの折りたたみ傘! ネギみたいで面白いだら?」

よく見ると、取手側を緑、他は白のツートーンで色分けした傘だ。こんなの売ってたんだ…。うーん、外で差したくはないけどな。
私は折りたたみ傘を受け取ると、バッグの底に押し込むと、ストラップを肩に掛ける。そしてヒールを履いて、

「メイちゃん、おいで!」
「だがん!」

私が両手を広げると、メイちゃんは嬉しそうに飛び込んできた。

「なら、行ってくるね」
「うん。気をつけてね」

笑みを浮かべ、手を振るお母さん。お父さんは相変わらず、新聞を読んでいる。なんかひと言あってもいいのにな。
私がドアノブに手を掛けた時、

「芽心…、気をつけて行って来なさい」
小さく、はっきりした声で声を駆けてくれた。私は自然と口角が上がるのを感じた。

「…いってきます!」

私は振り返る事なく、家を出たのだった。

ID.4710
 
■投稿者:すすやん 
■投稿日:2017/04/09(日) 21:40


デジモンアドベンチャーtri. タケメイ二次小説 第7章「欺誑」
「おい、何だよその格好は?」
「なんだよ? おかしなところないだろ?」
「そうだよ、いつも通り決まってるだろ(笑)」
「いや、ガブモンお前笑ってるじゃねーか…」

太一は呆れ顔で顔を臥せた。
今日はタケルと芽心のデートを尾行……ストーキング……追跡する為に、太一とアグモン、ヤマトとガブモンの4人は東京テレポート駅の改札前に集合した。
タケルたちにバレない様に、変装してくる様に太一に伝えていたヤマト。
そのヤマトの格好はいつもの様にシルバーアクセサリーを着けた痛…カジュアルな格好ではなく、赤と黒を基調とした独特なジャージを着ている。背中には奇抜なロゴが入っており、一瞬サングラスを掛けた人の顔にも見える。
それに合わせるかの様に、ヤマトもサングラスを掛け、いつもなら立たせている髪を大人しめに押さえている。
一方ガブモンは特に奇抜な格好はしておらず、いつも通りだが、

「ねー、ガブモン? どーしてサングラス掛けてるの?」
「あと頭に乗せてる緑の耳の長いウサギみたいなのなんだよ? それどこで売ってんの?」

アグモンとと太一の言う通り、ガブモンは丸いサングラスを掛け、頭には耳の垂れた薄緑のウサギの帽子を被っている。

「何って変装に決まってんだろ!」
「タケルたちにバレない様にヤマトが選んでくれたんだ。似合うかなぁ〜」
「似合うか、ってよりも…」
「いいなぁ〜、タイチィ〜! 僕もガブモンみたいなのがよかったぁー!」

アグモンが不満げに太一に顔を向ける。その反応に太一はギョッとしながらも、

「いいか、アグモン。ああ言うのはな、悪目立ちするから良くないんだぞ?」

そういう太一は、欧州のサッカークラブのロゴが入った青地のTシャツ。下は膝下までのデニムパンツ。

「いつも通りじゃあねーか!」

ヤマトがツッコミを入れる。

「なんだよ、悪いかよ! そもそもそんな奇抜な格好してるとなんか不自然だろ」
「そうそう! だから、太一と僕が一休さんとパンプアグモンに進化するから……」
「悪ぃ、アグモン。俺、一休さんに進化出来ないわ……」
「えっ、どうして?」
「大人の事情ってヤツさ……」

寂しそうに遠い目をする太一。

「だからと言って、そのまんまじゃ尾行出来ねーだろーが!」
「まぁ、待てって。こう言うのは、特徴さえ消しちまえばいいんだよ。例えば、俺の場合……」
「ウルトラルーズとゴーグルだろ?」
「いつ話だよ! 大体、両方とも中学で喪失したわ!」

太一が喚き散らすと、ヤマトの横にいたガブモンが頷き、

「つまり、その寝癖をなんとかすればいいんだな!」
「…………ベビーフレイムしちゃう?」

ガブモンとアグモンの冗談に聞こえない会話に太一は咄嗟に髪を庇った。

「怖い事言うなよ……。そもそも寝癖じゃねーし!」

寝癖じゃない発言にヤマトは雷に打たれたような顔をしたが、

「兎も角だ! 先ずはそのねぐ…ヘアスタイルを何とかしないと」
「その為にいろいろ用意したぜ? ほら、アグモン。これ着けて みろよ」

太一はそう言って、アグモンにヘッドホンと赤いマフラーを着けてあげる。
アグモンはマフラーを物珍しく触っていたが、

「暑い……」
「我慢しろよ、アグモン……。俺も被るから」

すると太一はリュックから麦わら帽子を取り出し、それを被り、「2005」とデザインされたサングラスを掛けた。

「うわっ、ダサッ!」
「その言葉、そのまま返す。ぜってー、隣にいたくねー」

正直異質な雰囲気の4人が駅の改札前に屯ろしているので、非常に浮いている。
ガブモンはこちらを不審な目向ける人たちに気付き、そっと顔を伏せた。
そうしている内に、見慣れたシルエットがエスカレーターを降りてくる。
パタモンを抱えたタケルである。
太一たちはタケルにバレない様、少し距離を取った。
タケルは周囲を見渡し、それから携帯を取り出し電話を始めた。すると、コンビニから鐔の広い帽子を被った女性が電話片手に出てきた。タケルもその存在に気付き駆け寄る。

「アレが望月か? なんか雰囲気違うな……」
「デートだからおめかししてるんだろ?」

ヤマトは芽心の印象がいつもと違う事に気付いたが、太一は素っ気なく答えた。
ヤマトは小さな勝利を感じたが、今大事なのは目の前の2人だ。

「メイクーモン、どこかな?」
「多分、あの大きなバッグの中に入っているんじゃないか?」

対するアグモンたちは、一緒に行くと言っていたメイクーモンの姿がない事に気付いたが、タケルたちが移動する素振りを見せると、

「取り敢えず、後を追うぞ!」
「待て、ヤマト! 切符買ってない!」

ICカードを片手に改札を通ろうとしたヤマトは太一の言葉でズルッとコケて、改札のバーに頭をぶつけそうになる。

「おまっ…、Suicaは?」
「持ってねーし」
「太一ぃ、スイカってー、なーぁにぃ? それ美味しいよね?」

イントネーションと自分の記憶を探って、アグモンがそれを食べ物だと認識し、ヨダレを垂らしてる。
その様子を呆れ顔で見ていたガブモンは、小さな紙を取り出すと、

「電車に乗る為の切符だよ。普通ならこ切符を買わないといけないけど、前もってヤマトが持ってるカードにお金をチャージしておけば、切符を買う手間がなくなるんだ」
「そっか…。食べ物じゃないんだ……」

がっくりと項垂れるアグモン。
ガブモンの知識に驚きながらも、太一は2人分の切符を券売機で購入する。
太一とアグモンが改札を抜けると、苛立ちを隠さないヤマトが貧乏ゆすりをして待っていた。

「悪りぃ、悪りぃ!」
「……前もって買っとけよ」

本当はもっといろいろ言いたい事があったが、次の電車まで時間がない。4人は地下のホームに移動する。
丁度ホームに下りた時、電車がやって来た。
太一たちがタケルたちを探すと、入って来たばかりの新木場行きの電車に乗り込む姿を確認できた。
太一たちは1両後ろの車両に乗り込む。その直後、電車が動き出した。

「なんとか間に合ったな」
「ああ、このまま舞浜まで……、えっ……ええっ!」

ホッとひと息つくヤマトに太一も同調するが、その瞬間有り得ないものを目撃する。
そこにはホームでこちらに向かって手を振るタケルだった。

「今のタケルだよね?」
「ああ。手振ってたね」

アグモンとガブモンも目撃しているので、見間違いではない様だ。
太一たちの様子にヤマトが怪訝な顔をしていると、

「あー、まんまとタケルくんに駄まされたわね、おふたりさん!」

ヤマトが振り返ると、そこには帽子を目深く被った白のワンピースの女性、望月芽心。

「望月!?」
「太一さんもヤマトくん、とっても目立ってましたよぉ〜」
「…………じゃあないよな……」
「そもそも望月、そんな甘ったるい声で語尾伸ばすかぁ?」
「て言うか、空だよね?」
「ああ。何してるんだ、空?」

アグモンたちからも正体がバレてガックリする望月芽(偽)こと武之内空。

「タケルに頼まれて、一芝居うったの」

すると肩掛けバッグからピヨモンが顔を出して、経緯を説明した。
タケルは選ばれし子供たちの中で確実に自分たちの後を尾ける人物がいる事を予想していた(特にヤマト)。
そこで予め偽のデートプラン情報を流し、そして追跡者を撒く為に空にお願いし、一芝居うってもらったのだ。

「遠目だとバレないと思ったけど、やっぱり声でわかっちゃうか〜」

そう言うと、眼鏡とカツラを外し、苦笑いを浮かべた。
すると、太一とヤマトは急にそっぽを向き、よそよそしい態度をする。

「何よ? 言いたい事があるなら、言いなさいよ!」

その態度に怪訝な表情を浮かべた空は2人を問い詰めた。
太一とヤマトはお互い顔を見合わせると、

「そのワンピース……似合ってるな」
「意外に眼鏡を掛けてるのも、雰囲気違ってよかったぜ」

2人からの意外な答えに顔を赤くする空。まさか、この2人からそんな言葉が出てくるとは想定していなかったのだ。
空はピヨモンバッグごと抱え、顔を隠すと、

「その……ありがと……」

ぼそりと返した言葉だったが、太一とヤマトにも聞こえていたのだろう。こちらも顔を赤くしている。
アグモン、ガブモン、そしてピヨモンはパートナーたちの反応に自然と笑みが溢れていた。

「ところでこれからどうする?」
「どうするって?」
「もうすぐ新木場よ?」

切り出したのは空。太一は乗車口の電光掲示を確認すると、「次は新木場」と表示されている。

「まさかこのまま夢の国に行くつもりなの? 男2人で?」
「えっ……いやぁ〜」
「まぁ……なぁ?」

口籠る2人に空は少し意地悪な顔をして、

「ならこれからタケルくんと芽心ちゃんのデート追跡しない?」
「お前、タケルの味方じゃないのか!」

タケルの陽動作戦に協力していた空はタケルの味方と思っていた太一は驚き、ヤマトも肯定の頷きを繰り返している。
対する空は、そんな2人の態度を機にする様子もなく、

「私だって頼まれたから協力しただけで、2人のデートに興味あるわよ! それにタケルくん。私も信用してなかったのか、教えてくれなかったしね」

少し恨みがましい笑みを浮かべる空に太一たちは恐怖を感じた。

「でも、タケル見失っちゃったわ。どうやって後を追うの?」
「匂いも追えないしね」
「俺がガルルモンに進化すれば、なんとかなるかも!」

ピヨモンが困った顔をして、ガブモンがとんでもない事言い出すと、空は不敵に笑った。丁度そのタイミングで電車は終点新木場に到着する。
6人はホームに降り立つと、空は携帯を取り出し、

「同じ事を考えているのは、私たちだけじゃないって事」

そう言って、電話を掛けた。

ID.4711
 
■投稿者:すすやん  MAIL
■投稿日:2017/04/17(月) 00:20


デジモンアドベンチャーtri. タケメイ二次小説 第8章「期待」
「タケル! もう時間がないよっ!」
「わかってるから! てか、パタモン重い!」

頭の上で喚くパタモンを、一喝入れる余裕もなくオレは走っていた。
兄貴たちを撒く為に東京テレポート駅に行ったのはいいけど、地下から歩道橋へ駆け足で上がるのは、やっぱりしんどい……。
でも、足を止める訳にはいかない。だって、

「待ち合わせまで、あよ3分!」

オレは歩道橋の直線を一気に駆け走る。歩道橋を渡りきり、マンションの広場を駆け下りると、海浜公園は目の前だ。階段を降りた所で一瞬立ち止まったけど、左右を確認し、ガードレールを飛び越え道渡る。そのまま、垣根沿いを走ると切れ目が見えた。
そこに来てオレは足を止め、時計を見る。
9時45分……から1分経過……。
ああ…、初デートで遅刻だなんてサイテーだよ。サイアクだよ……。
オレは荒くなった呼吸を落ち着かせる為、深呼吸を繰り返す。
ヒッヒッフー。ヒッヒッフー。よし!
ひと通り呼吸は落ち着いた。が、心臓の鼓動がドクドクッと早鐘を鳴らしている。これは全力疾走の後遺症ではない。
オレは左胸を押さえて、今度は心臓が落ち着くのを待った。

「タケリュ、いよいよだね!」

オレの緊張を感じ取ってか、パタモンも緊張した面持ちで声を掛けてきた。
小さく頷き返すと、待ち合わせ場所の展望広場に向かって歩き出した。
カモメに餌を与える親子連れ、レインボーブリッジを背景に写真を撮る観光客、腕を組みながら砂浜を歩くカップル、サングラスを掛け日光浴に勤しむおじさん、サーフボードで地球と語らうお兄さん達。みんな、それぞれのやり方で休日を楽しんでいる。
オレは砂浜沿いの木陰を早歩きで移動する。9月になったとは言え、残暑が厳しいと連日ニュースになっているので、自然とオレの額にも汗が滲む。こんな環境に芽心さんを置いておく訳にはいかない。
そう思っていると、急に視界が開けた場所に出た。待ち合わせの展望広場に着いたのだ。オレは1番目立つ建物ーマリーンハウスへ駆け寄った。暑いので中で涼んでいて、と事前に伝えていたのだが、彼女はマリーンハウスに併設されているカフェの前で佇んでたい。
夏の澄み切った空の様な水色に白のフリルがよく映えるワンピース。そしていつもは下ろしている黒のロングを今日はハーフアップにしている。そこから見えるうなじが! うなじが何ともエロい!

ボカッ!

「タケリュッ! 何してるの⁉︎」

咄嗟に右手で自分の右頬を殴ったオレに驚いたパタモンが焦りの声をあげる。これは戒めだ! 初デートでいつもと違う彼女にトキメキ、ヤラシィ〜妄想をしてしまった自分への!
だって、しょうがないじゃ無いか!
恐らく芽心さんもデートと言う事で気合を入れてくれたのだ! 『いつもと違う私を見て!』って感じで! そしたらそれがオレの好みにクリティカルヒット!
しかも慣れていないのと、周囲からの視線に少し照れ気味に頬を染める初々しさ!
ヤバい! 護ってあげたい指数MAXデス!

「…………タケリュ、さっきから変だよ?」

呆れ顔のパタモンの視線が痛い……。
さあ、このまま見惚れている訳にはいかない! 何故なら遅刻しているのだ。
オレは小走りで芽心さんに駆け寄る。その足音に気付いたのか、芽心さんがこちらに振り返った。

「おはよ、芽心さん! ゴメン、オレから誘っておいて、遅刻するなんて……」
「あっ、タケルくん! おはようございます。私もさっき来たばかりですよ?」
「だがん!」

さすが芽心さん。オレが気にしない様に気づかってくれている。でも、その優しさが逆にツラい!
そもそも男の方がデートに遅れる事が問題だし、その時点でスマーティじゃない!

「それでも、ホントごめん……。暑い中、待たせちゃったし……」
「メイクーモン、暑くなかった?」
「ン〜、まあちょっこし暑いがぁ〜……」
「でも、海風が気持ち良くてそんなに不快じゃ無いですよ? ここ日陰ですし?」

ううぅ…、その気づかいがオレの良心にじわじわとダメージを与えてくる。
スタートは失敗……。でも、ここから盛り返す!

「そう言ってくれて、少しホッとしたよ……。じゃあ、時間もないし行こうか?」
「はい!」
「だがん!」
「レッツゴー!」

こうして僕たちは砂浜の遊歩道を歩き出した。

「大丈夫?暑くない?」
「平気です。鳥取でも暑い日はざらにありましたし、こうして砂浜を歩いていると、なんか懐かしくて…」
「鳥取砂丘歩いてる感じ?」

オレが冗談っぽく言うと、芽心さんは困った表情をして、

「正直、鳥取と言えば鳥取砂丘! って皆さん思われてますけど、私は西部地方に住んでいたので、砂丘はそんなに行ったことないですね」
「へー、そうなんだ? ちなみに何回行ったの?」

すると、芽心さんは顎に手をあて考え込むと、

「小学校入る前に、2回位でしょうか?」
「オレも島根のお婆ちゃん家に行った時に1回位行ったかな? 兄貴が中学入る前だったから、小学3年かな?」
「なら、おもちゃの王国に行ったことあります? よくCMでやってたので、前から興味あったんですけど!」
「うーん、さすがに小3では遊ばなかったかなー」
「ああ、そうですか……」

と少し残念そうな芽心さん。
実際日帰りでそんなに遊ぶ時間なかったし、何より兄貴が鳥取砂丘でハイテンションになって、1番高い所から海に転がり落ちて、メチャクチャ怒られていたのを記憶している。

「私としては、この風景は皆生海岸や弓ヶ浜に近いですね。まあ、漂着物も多いですが……」
「トドもおーがね」
「トド?」

えっ、トドって北の海にいるオットセイのでっかいの?

「よく叔母達がサーファーの事をそう言うんです。頭の黒いトドって」

芽心さんは懐かしそうに話してくれた。
いつも鳥取はお婆ちゃん家への経由地か観光地に行くくらいだったけど、今度ゆっくり観光したいな。

「いつか2人で行きたいね、鳥取」
「へっ⁉︎」

突然の告白で耳まで真っ赤になる芽心さん。

「ずるいぃ〜! 僕も行きたいぃ〜!」
「メイも! メイもぉ〜!」

案の定、パタモンとメイクーモンが不満の声を挙げた。

「うん! みんなで行こうね?」

オレがそう言うと、2人は納得したように微笑んだ。
そうこうしている内に次の目的地、海上バス乗り場に着いた。
出航の10分前、丁度いい時間だ。

「じゃあ、チケット買ってくるから…」
「いえ、一緒に行きましょ?」

そう言って芽心さんはスタスタとチケット売り場に向かう。
うーん、うまくリードできないな〜。
オレたちはチケットを購入すると、乗船可能になった遊覧船へと乗り込む。
船と言っても、その形は楕円形、船体上部は透明なガラス張りと一見宇宙船を連想させる。
中は椅子とテーブルが設置してあり、座ると目線が水面と同じになる構造だ。オレたちは1組の席に着き、船が出航するのを待った。

「メイィ〜! 水面が目の前にあーが!」
「タケリュ……、船沈まない?」

目の前の光景にメイクーモンは興奮し、パタモンは少しビビっている。パタモンちょっとビビりすぎ!

「大丈夫よ、パタモン! もし沈んでもパタモンが進化して助けてくれるでしょ?」
「そっか〜! そうだよねぇ〜! 僕がエンジェモンに進化すれば大丈夫だねぇ〜」

芽心さんの答えにオレは思わずズッコケ、パタモンの返しにテーブルに頭をぶつけた。

「タケルくん、大丈夫ですか?」

オレの行動に驚いた芽心さんが心配そうに声を掛けてくれた。
今日、オレ変な行動が多いな……。

「大丈夫…大丈夫だから」

オレたちがそんなに会話をしていると、船内に出航を報せるアナウンスが流れる。

「やっと出航だね」
「ハイ! 今日は1日よろしくお願いしますね、タケルくん」
「だがん!」
「出発しんこー!」

こうしてオレたちの初デートはスタートしたのだった。

ID.4712
 
■投稿者:すすやん  MAIL
■投稿日:2017/04/23(日) 23:45


デジモンアドベンチャーtri. タケメイ二次小説 第9章「思惑」
「今、空さんから連絡がありました。協力して頂けるそうです」

カリカリカリ…

光子郎は携帯から耳を離し、机の上に置いた。

「じゃあ、これで全員が協力者になったわけね? なんだかんだで、最後にはまとまるのね、私たち!」

カリカリカリ…

ミミは小悪魔的な笑みを浮かべ、とても楽しそうにしている。

「はぁ…、なんで僕まで巻き込まれるんだ? 僕ぁ、受験生だよ!」
「そう言う割には、朝からノリノリだったじゃないか、ジョ〜?」

カリカリカリ…

深いため息を吐く丈にゴマモンが呆れ顔でひと言返す。

「なんや、今日の光子郎はんは一味違いまっせ!」
「あの『そーさほんぶ』ってなんなの! それにどうして顔の前で手を組んでいるの?」

カリカリカリ…

光子郎から放たれる謎の威圧感にテントモンとパルモンはたじろいでいる。
光子郎は椅子に座り、机に肘を突き、鼻の下辺りで手を組むポーズをとっている。何故か薄暗いオフィスに小さく開いたカーテンからの日差しを背中で受けて、まるで後光が差しているようだ。

カリカリカリ…

「なんか雰囲気出てるな、光子郎。でも、それより…」

テントモンたちと同様に光子郎の異様な雰囲気に飲まれそうになりながらも、丈は何故かこちらをチラチラ見てくる。
あのミミでさえ、何故か呆れ顔でこちらを見ている。
その理由はわかっている。ワタシは顔を半分上げて、

「ヒカリ、ボーロ食べ過ぎ」

一心不乱にーーそれを超えて一種の恐怖さえ覚えるーーボーロを口に運ぶヒカリをたしなめた。

「えっ……? あっ、ごめんなさい……。ついつい夢中になっちゃって……」

すまなさそうな顔をして、俯くヒカリ。しかしその手はボーロに向かっている。

「やっぱりヒカリちゃんって……」
「いや、どうだろう? 僕はどちらかと言えば、タケルの方がヒカリくんに想いを寄せてたと思ってたんだけど…」

その様子を見たミミと丈がコソコソとヒカリに聞こえない様に話している。まぁ私の地獄耳にしてみれば、そのこそこそ話もよく聞こえるのだが…。

パキッ

「ミミさん? 丈先輩?」

にこやかな半分微笑みを浮かべるヒカリ。その指からボーロの残骸がワタシの頭に降りかかる。
その微笑みはミミと丈向けられたものだが、何故か光子郎やテントモン達まで戦慄で顔を引き攣っている。
何をそんなに恐れているんだ? こんなにヒカリがカワイイィ〜笑顔をしているのに?

「オホン! では気を取り直して……」

光子郎はそう言うと、リモコンで大型モニターをオンにする。
そこには簡略化されたお台場の地図が。そこに赤く点滅する一点がある。
その場にいた全員がモニターに注目すると、光子郎はモニターの前に立ち、

「ミミさんが芽心さんに渡したぬいぐるみの中には発信器が内蔵されています。そこから発せられる信号がこの赤い点と言うわけです。つまりこの点のルートを解析すれば、お2人のデートを追跡する事が出来ます」

何時もの様に淡々と説明する光子郎。すると、丈が手を挙げて、

「ひとつ質問いいかい? その発信器はどこで手に入れたの?」

全員の視線が光子郎に注がれる。

「丈先輩、秋葉原で手に入らない電気部品はありません!」

力強く答える光子郎。その自信満々な顔で返した答えに丈も納得するしかなかったのか、静かに手を下げる。

「それだけでなく、実働部隊として、京くんと一乗寺くん、大輔くんと伊織くんにそれぞれ田町と月島に配置して貰っています」
建物に入られはったら、発信器でも追えへんさかい、その為にいてもろうてますぅ」
「更に空さん達が新木場にいますので、これで東京のどこへ行こうにも、あらゆる手段で追えるはずです」
「光子郎くん、すっご〜い! やっぱ頼りになるぅ〜」
「いえいえ、そんな事は」

謙遜しているが、ミミに褒められ口角がゆっるゆっるの光子郎。
しかし、人間は変わっているな。何故2人のデートをここまでして追跡したいのか?

「きっとみんな寂しいんじゃないかな?それを紛らわす為にこんな茶番をやってるんじゃないかな?」

ヒカリに今朝ここまで来る道中に聞いた時、そう答えてくれた。その時のヒカリは少し哀しそうな顔をしていた。
やはり、ヒカリもタケルに対して思う事があるのだろうか…。決して話してはくれないが、それを溜め込めるのはどうだろうか? ワタシにだけでいいから、話してもいいんだぞ、ヒカリ?

「ねぇねぇ? 赤い点が海の上に移動してるんだけど?」

パルモンの声にワタシはモニターに視線を戻す。確かに赤い点は何もない海の上を移動している様だ。

「そんな! 何故!」
「ああ、水上バスだね。料金は割高だけど、隅田川沿いにいろいろ見えるからデートや観光にはぴったりだね」
驚いた声を挙げる光子郎。それに答えたのは、丈。

「そういやー、ヴァンデモンの時もオイラ達、水上バスでお台場に帰ろうとしてたっけ? 結局乗れなくて、竹芝桟橋からイッカクモンで向かったんだよな?」
「レインボーブリッジでメガシードラモンと戦って、ズドモンに進化してで勝ったんだよね」

懐かそうに話すゴマモンと丈。

「なるほど。てっきり原宿か浦安方面に向かうと思っていたので、水上バスは盲点でした」
「じゃあ、2人を追えないの?」
「安心してください。その為の別働隊です」

顔を間近に寄せるミミに赤面しながら、光子郎は携帯を取り出した。

「もしもし 、泉です」

◆ ◆ ◆

「ハイ! こちら青いイナズマ隊です!」

大輔は元気よく光子郎からの連絡に答えた。
背中に背負ったリュックから顔を出したチビモンも体を出して、電話に耳を寄せる。

『今、月島駅ですか?』
「はぁーい! もちろん、伊織もいますよ!」

愛想よく答える大輔。そんな大輔に三白眼で睨んでいた伊織が、

「大輔さん、僕も聞きたいのでハンズフリーにして下さい」

対面する伊織に睨まれ、大輔は携帯のハンズフリーボタンを押した。

「光子郎さん、伊織です」
「ウパモンもおるでよ!」
「オレも! オレもいりゅぜぇ〜」
『全員、揃っていますね?』

携帯を前に全員が頷き、

『? 聞こえてますか?』
「ああ、すいません! います! 全員います!」

声を出さなければいけない事に気付き、大輔と伊織は慌てた。

『早速ですが、移動をお願いします。タケルくん達は水上バスに乗船しました』
「水上バスですか? じゃあ、東側の可能性は……」
『限りなくゼロに近い、と思います』

光子郎の答えに伊織は暫し考え込むと、

「では、竹芝桟橋で下船し原宿方面に、そのまま乗船で両国に向かう可能性がありますね」
『ええ。ですから、竹芝は京くん達にお願いしようと思っています。大輔くん達は自転車で水上バスと並行して、隅田川を登って下さい』
「任せといて下さい! あっ、あとヒカリちゃん、そこにいます?」
『いますけど……』
「伝えて下さい。オレ、このミッションを見事クリアしてみせます! って伝えて下さい」

キメ顏で宣言する大輔。何故キメ顏で言うですか?といった表情を浮かべる伊織。

『? 取り敢えず、気を付けて下さいね?』
「わかりました。また何か情報があれば、ご連絡下さい」

伊織はそう言って、通話を切った。そして地図を取り出すと、

「もし隅田川を上がって来る様でしたら、ここから目と鼻の先ですれ違いますね」

伊織は月島駅から北西方面に延びる道路を辿り、隅田川と交差す橋を指差す。

「おっ、余裕じゃん! のんびり行こ〜ぜ!」

余裕綽々といった表情を浮かべる大輔に対し、伊織は首を横に振る。そして橋から指を上流に進めながら、

「見て下さい。この周辺は水路が張り巡らされていて、川沿いにある道は途中で途切れてしまっているんです」
「? 何が言いたいんだ?」

目を点にして、チビモンと一緒に首を傾げる大輔に伊織は小さな苛立ちを覚えながらも、説明を続ける。

「自転車で並走するには、門前仲町方面に移動する必要があります」
「モンゼン…ナカマチ……って言うと……」

大輔は地図で門前仲町を探すと、

「げっ! 遠回りじゃん!」

月島から門前仲町を通り、再び隅田川と並走できるのは、橋を2つ渡る必要があるのだ。

「ヤバいじょ、だいしゅけ! 急がないと、タケルたち行っちまうぞ!」
「イオリ、早う出るだぎゃ!」

チビモンはその小さな手で大輔の頭を叩き、ウパモンは伊織の頭の上で飛び跳ねている。

「取り敢えず、移動しましょう大輔さん。まずタケルさん達が乗っている船を探さないと……」
「だな! よーし、行くぜ!」

2人はお互いの自転車に跨ると、

「おっしゃー! 青いイナズマ隊、出動ぉー!」

大輔は右手を掲げて叫ぶ。

「おー!」
「だぎゃっ!」
「………そのネーミング、辞めません? 正直恥ずかしいです……」

伊織の呟きに気付く事なく、大輔は自転車を漕ぎ始めたのだった。

ID.4713
 
■投稿者:すすやん  MAIL
■投稿日:2017/05/07(日) 23:56


デジモンアドベンチャーtri. タケメイ二次小説 第10章「満喫」
「ハイハイ、こちらぁー赤い太陽隊です!」
『…………大輔くんもそうですが、流行っているんですか、そのネーミング?』
「へっ? なんの事ですか、泉先輩?」

後輩達の奇跡のコラボに光子郎は言葉に詰まるも、

『タケルくん達は水上バスで移動しています。日の出桟橋で下船する可能性がありますので、待機をお願いします』
「水上バスですか……。なかなか乙なチョイスするね、タケルくん!」
『乙かどうかはわかりませんが、裏を掛かれたのは確かです。時間的に厳しいですが、最寄駅の浜松町に向かって下さい』
「了解しましたぁー! 京隊員とその一同現場に向かいます!」

ビシッと敬礼までして、対応する京。並んでいた賢は京が電話を切った事を確認すると、

「光子郎さん、なんだって?」
「タケルくん達、水上バスに乗ったみたい。だから、私達は浜松町に移動して、降りて来るか確認します」
「ねぇ、賢ちゃん。その水上バスにボク達も乗らないの? そうすれば、確実に追いかけられるよ?」
「そうでしゅ。なぜ、皆さんやらないのでしゅか?」

ミノモンの疑問にポロモンが同意する。すると賢は解説しようとして、

「先ずは電車に乗ろう。こうしている間にも、タケルくん達は日の出桟橋に近づいているからね」

そう言って、賢と京はミノモンとポロモンを抱えて、改札へと足早に移動した。


◆ ◆ ◆


「あっ、東京タワー!」

水上バスからその姿を見つけて、今日一番の声を挙げる 芽心さん。僕らは中の座席から移動して、船尾のオープンテラスに移動した。中と違いガラスはなく、風を感じながら風景を楽しむ事が出来る。

「今日一番のテンションの上がりようだね?」

俺が少しからかう様に言うと、芽心さんは赤面し、

「すっ…すみません。やっぱりザ東京を目にしちゃうと、興奮しちゃって……。田舎者ですみません……」

恥ずかしさいっぱいで謝ってくる芽心さん。そんなに謙遜しなくても……。純粋に楽しんでくれているんだから、俺は嬉しいのに。
心無い人は「あざとい」って言ってきそうだけど、芽心さんの行動や表情を見れば、そんな事一切考えていないのがよくわかる。

「ううん、素直に喜んでくれてるみたいで、デートコースに選んでよかったよ。鳥取の人ってみんな芽心さんみたいに素直なのかな?」

そう言うと、芽心さんはしばらく考えて、

「全員、そうかと言われればそうではないと思いますが、素朴さとお淑やかを売りにしているのは確かです。でも、地元のええところはきちんと言えます! …多分」

最後は自信なく萎んでいったけど、地元愛は結構あるんだね。

「メイ〜、でもあげな高い建てモン、米子にもないがないがなぁ〜」
「だなぁ〜。駅サが1番……、あっ、夢みなとタワーがあるがな!」
「ああ、そげそげ!」

完全に鳥取ローカルトークに入る芽心さんとメイクーモン。くっ、俺とパタモンは蚊帳の外だぜ!

「タケリュ〜、それで今日はあそこに行くの?」

パタモンが東京タワーを指差す。

「残念だけど、違うよ。アレ? パタモンには言ってなかったっけ?」

てか、丁度芽心さんと相談した時、側に居たはずなのに。

「僕きいてないぃ〜! ねぇ、どこ行くの!」

ムッと頬を膨らませるパタモン。怒ってても可愛いヤツめ!

「チェンぱい、それは着いてからのお楽しみだがん!」
「そうだよ、パタモン。ここまで来たら、何処に行くか聞かん方がエエよ」

メイクーモンと芽心さんは敢えてパタモンには内緒にしたい様だ。まあ、俺も反対はしないけど。

「うぅー、メイクーモン達が言うなら僕聞かない! 楽しみにしてるね!」

しばらく考えた後、そう結論付けたパタモン。
そうこうしている内に水上バスは日の出桟橋に着岸した。

◆ ◆ ◆

「意外に早く着いたわね」
「うん、結構近いんだね? 近所だけど知らなかった」

京と賢はテラスに座り、近づいてくる船を見ていた。
テーブルには併設されたカフェで出しているラテとココアが置いてある。
賢はラテをひと口啜ると、

「さっきの続きだけど、一緒の船に乗っちゃうとバレちゃうからだよ」

先ほどミノモンに返し損ねた件について答えた。

「そうかな? うまく隠れれば大丈夫だと思うけど……」

ミノモンの言葉に賢は首を横に振った。

「向こうにはパタモンやメイクーモンがいる。人間では気付かない事でもデジモンはわかる可能性がある。それに……」
「それに?」

賢は言い難い表情を浮かべて、

「やっぱりデジモンは目立っちゃうよね?」
「まあ、そうよね」

賢と京は苦笑いを浮かべた。

「やはり、目立ちましゅかね? ワタシタチ?」
「うーん、ボクは悪目立ちしそうかな?」

自分で言っておきながら、勝手にダメージを負うミノモン。
そうしている内に水上バスは目の前の桟橋に着岸した。

「ミノモン達はテーブルの下に隠れて。京はサングラスでも掛ける?」

賢はショルダーバッグからサングラスを取り出すが、

「ダイジョーブ! 今日はコンタクトだから。これは伊達メガネ」

メガネを外し、ケースにしまう京。
ベッド上でもお目にかかれない京の素顔が見れて、賢は内心ガッツポーズをとった。すると、賢の視線に気付いた京は、ニヤッと笑うと、

「ナニナニ? いつもと違う違う私が見れて、エッチな妄想しちゃった?」
「なっ…何言ってるんだよ! ………まあ………少しだけ………」

尻すぼみに答える賢にも京は嬉しそうに笑いながら、

「やっぱ、賢くんも中学生! そんな妄想しちゃうよね? ベースケだねぇ〜」

楽しそうに賢の様子を見ていたのだが、

「…………京、後で覚えておいてよ?」

賢は冷酷な言葉と共に、残酷な瞳でギロリと京を睨みつける。その目にかつてのカイザーの面影を感じ、京は口元を固めて慌てて目をそらす。

「賢ちゃん………」

その様子を下から見上げていたミノモンはその様子に恐怖を覚えながらも、何処か光悦に浸る自分がいる事を感じた。
その様子を横から見ていたポロモンはミノモンの言葉の最後にハートマークがついたのを聞き逃さなかった。

京達がそんな事をしている内に、水上バスは桟橋に着岸した。京はココアを飲む素振りをしながら横眼で、賢は渡しそびれたサングラスをかけて、下船する客を観察する。しかし、その中にタケルと芽心と思わしき姿を確認する事は出来なかった。
水上バスは桟橋に待機していた客を乗船させると、汽笛を合図に出向していった。
それを確認し終えた賢と京はお互い顔を見合わせ、

「降りなかったわね」
「そのようだね……」
「これからどうしましゅか?」
「まずは泉先輩に連絡。もしかしたら、私達が見逃している可能性もあるから」

ポロモンの問い掛けに答えながら、京は携帯を取り出して電話を掛ける。

『泉です』
「こちら赤い太陽隊!」
『…………京君ですね』
「アレ? なんか飽きれてます?」
『……いえ、なんでもありません。ところでタケル君達は降りた様子はないですよね?』
「はい! バッチリ見てましたけど、降りてないです!」
『発信器も隅田川を北上しています。まだ乗船中と見て間違いないですね』

京が光子郎と話していると、賢が電話を代わるように手を出してきた。京は携帯を渡すと、賢はハンズフリーボタンを押し、

「一乗寺です。僕らは山手線を内回りに移動しようと思いますが、何処に向かうべきでしょうか?」

賢の質問に光子郎は無言になる。賢達も黙って光子郎の答えを待った。

『浅草に移動して下さい。水上バスの停留所側にあるデートスポットと言えるのはそこです』
「浅草ですね。わかりました!」
『もう少し場所が絞り込めればよかったのですが……』

申し訳なく答える光子郎。太い眉を八の字にしている様子が目に浮かぶ。

「先輩! そんな謝らないで下さい!」

京はすかさずフォローを入れる。さすが出来た後輩をお持ちですね、と賢は微笑ましく思った。

「賢くんと〜、こ〜してぇ〜、デート出来るんでぇ〜、先輩には感謝しきりですぅ〜!」
「…………」

前言撤回。かなりの俗物でした。

『皆さん、よろしくお願いします。何か進展がありましたら、ご連絡します』
「ハイハ〜イ、こちらも移動しま〜す」

電話を切り、小さく息つく京。

「そんなに気張る必要ないのに……。まあ、そこが先輩のイイところだけど……」

少し呆れ気味にため息をつく。

「もしかして光子郎さんの為にあんな事を?」

賢が尋ねると、京は不敵な笑みを浮かべ、

「ハイ、ポロモン! いつまで隠れてんの! 行くわよー!」

テーブルの下からポロモンを引きずり出し、高く掲げる。

「京しゃん、人前でしゅ! みんな見てましゅ!」

慌てるポロモンに「ゴメンゴメン」と悪怯れる様子なく返す京。
賢が足元を見ると、ミノモンが訴えかける瞳でこちらを見ている。賢はミノモンを抱きかかえ、京がしたように高く掲げると、

「これでいいかい、ミノモン?」
「ありがと、賢ちゃん!」

ミノモンはその小さな手をバタつかせ、嬉しそうに答えた。その様子に賢も自然に頬が緩んだ。

「賢くん、ポロモン、ミノモン! 私達も行くわよ! いざ、浅草ぁー!」

こうして4人は浅草を目指し、動き出した。

ID.4723
 
■投稿者:すすやん  MAIL
■投稿日:2017/05/14(日) 23:38


デジモンアドベンチャーtri.タケメイ二次小説 第11章「懐抱」
「それでですね、その子の演技が面白くて! 最優秀演技賞まで取っちゃったんですよ!」
「アレはホンに可笑しかったな!」
「ヘェー、ソーナンダー……」

芽心さんとメイクーモンのローカルトーク(中学生編)を聞かされている。でも、俺はその話を聞いていて、腹の奥に燻る何かがあった。
確かに芽心さんのカコバナを聞きたいと言ったのは俺だよ? でも、まさか中学校の話でその時の面白かった男の話を聞くことになるなんて…。しかも、文化祭の劇で女装して、大爆笑とって、賞を貰うなんて…。確かにぃー。確かにぃー。どんな人なのか気にならないといえば嘘になるよぉ〜。でも、そんなことよりそれを嬉々として語る芽心さん。彼女に他の男の話をされるのは、彼氏としては悋気を隠せない。

「あっ…すみません。私ばかりお話してしまって…」
「えっ? そんなことないよ! 芽心さんの話聞けて、俺楽しいよ?」
「………そうですか…」

少し俯く芽心さん。ヤバい、心配かけちゃったかな? なんか気まずい空気になってしまった。
俺は話題を探すため、周りを見渡す。

「タケリュ! 見て、お相撲さん!」

パタモンの声に俺たちはその方向に顔を向けた。そこには両国の国技館が見える。

「国技館だね! 前にエレキモンと相撲っぽく、綱引きしたことあったっけ!」
「そうそう。僕たちがベビーたちをイジめたって勘違いしてたんだよね!」
「へぇー、そんなことがあったんですか?」
「うん! そこで僕とエレキモンが喧嘩しそうになったら、タケリュが綱引きで決着つけるように言ったんだよね」
「うん、そうだね……」

あの時は2人に喧嘩してほしくなかった。どうしても、喧嘩が絶えなかった父さんと母さんを思い出してしまったから。だから、とても仲良くなったエレキモンたちとベビーたちの世話をしたのは、懐かしくあり、かけがえのない思い出。
でも、その後忘れたくても忘れられない記憶が……、

「タケルくん!」

俺は芽心さんの声で我に返った。
芽心さんだけでなく、心配そうに俺を見つめるメイクーモンとパタモン。パタモンは小さく「ゴメンね……」と呟いた。

「あっ……ゴメン!」

俺が笑いかけると、芽心さんは表情を変えずに俺の右頬に手を添え、親指で目元を拭う。そして、その手で俺の頭を撫でた。
芽心さんは何も言わず、ただ俺の頭を撫でる。でも、どこか憂いを帯びた笑みを浮かべていた。

「ツラい事は誰でもあります。だから、一人で抱え込まないで下さい。タケルくんだって、私にそうしてくれたじゃないですか?」

そう言われた瞬間、俺の中でいろいろな記憶が溢れだしてきた。

――深夜、口論する両親。
――あの日、僕の元から去っていく父さんと兄さん。
――女手一つで僕を育ててくれた母さん。
――初めてデジモンワールドへ行った日、シードラモンから僕を助けてくれた兄さん。
――デビモンを倒すため、すべての力を使い果たしデジタマへと還るエンジェモン。
――ファイル島から旅立つとき、再び僕の元へ帰ってきたポヨモン。
――守られてばかりの僕にとって、初めて特別な存在になったヒカリちゃん。
――そして、たった一度だけ……。

…………。

芽心さんは俺の心の中に何かを感じたのか、すっと俺の頭を自分の胸で抱きしめた。本当ならば、人目のある中恥ずかしい状況。
でも、今はこうしていたいと心からそう思った。

「ありがとう、芽心さん。もう少し……こういさせて」
「泣いていいんですよ?」

彼女の言葉に俺はフフッと小さく笑った。そうそう、彼女に格好悪いところは見せられないよ。
芽心さんは俺を抱えたまま、背中に回した手をまるで子供をあやす様にぽんぽんと叩いた。それはリズムを持って……。とても心地よいリズムをもって……。

ひとしきり顔を埋めていた俺はゆっくりと体を起こす。

「もう大丈夫ですか?」

本当はもう少し彼女の温もりを、香りを嗅いでいたかった。
でも、人目もあるし、メイクーモンから無言の視線を感じたし……。あれ? 少し目が据わってる?
「だがんっ!」

俺が離れるのを確認すると、メイクーモンは勢いよく芽心さんの膝元へ飛び込んだ。その衝撃で横にあったバッグが甲板に落下し、中身が飛び出してしまった。

「あっ! メイちゃん!」
「メイィ〜、メイ! メイ! メイィ〜! メイはメイのぉ〜!」

どうやら芽心さんを獲られるかと思って、嫉妬したみたいだ。メイクーモンには悪いことをしちゃったな。

「いいよ、俺がとるから。ゴメンね、メイクーモン」
「すみません、タケルくん。こら、メイちゃん!」

芽心さんはメイクーモンを叱るが、メイクーモンはキッと睨み付け、さらに服をキュッと強く握りしめた。

「メイクーモン、ごめんね〜。でも、タケリュもメイクーモンに負けないくらい芽心の事大好きだから、メイクーモンもタケリュをもっと好きになってあげてね?」

パタモンの言葉にシュンとするメイクーモン。どうやら、先輩からの言葉が結構響いているようだ。
メイクーモンは大きな耳を折り下げ、

「タケル……ゴメンだがん……」
「気にしないでいいよ、メイクーモン」

そう言って、俺は散らかったバッグの中身を回収する。

「んっ!?」

そこで俺は見慣れないぬいぐるみを見つけた。それはもんざえモンによく似たパンダモンのぬいぐるみ。

「芽心さん、これは?」
「ああ、それは……」

何故が頬を赤く染める芽心さん。えっ、なに!? すっごく気になる!
「ミミさんが……デートがうまくいくようにって……渡してくれたんです」

えへへ、とだらしなく笑う芽心さん。なんでそんなに嬉しそうなの? 嫉妬の炎が炎上しながらも、俺はぬいぐるみに視線を戻す。
そこには目が据わって、首には赤いスカーフが巻いてある。背中にはもんざえモンと同じようにジッパーがついている。たぶん、パンダモンにはジッパーはなかったはずだけど……。
俺はパンダモンも数回軽く握った。どうしても、第6感が警鐘を鳴らしているのだ。あのミミさんがわざわざぬいぐるみを? すると、握りしめる手の中にジッパーとは異なる異物感を感じた。
俺は芽心さんにばれない様にこっそりとジッパーを開ける。
中には白綿が敷き詰められていたが、黒いコードが綿から飛び出していた。

「タケリュ?」

俺の行動に異変を感じたのか、パタモンが俺の頭に乗ってきた。そんなパタモンに俺は唇に人とさし指を当てて、静かにするように指示すると、そのコードを引っ張った。その先には黒い直径2センチ程の機械。その表面には赤ランプが点滅している。

あの年中常夏天真爛漫娘めっ!
俺は心の中で悪態をつき、その機械を投げ捨ててやろうと思った。

「どうしました、タケルくん?」

芽心さんも俺の行動を不審に思ったのか、声を掛けてきた。俺は慌てて、パンダモンのジッパーを閉めて、謎の機械をポケットに隠した。
「なんでもないよ! はい、これ!」

そう言って、バッグを渡す。

「ありがとうございます。ほれ、メイちゃんも!」
「だんだん!」

俺は何とか笑顔を取り繕った。そして、ポケットに隠した機械を見る。
恐らく、この機械の正体は盗聴器か発信機。集音するための穴がないので、発信機だろう。わざわざ追跡するために、ここまで用意するのか? 俺はここまでして執拗に追跡するミミさん、そしてそのお願いに協力してしまう光子郎さんに愕然としてしまった。
だが、今更どうする事もできない。なぜなら……。

「終点『浅草』です。危険ですので、船が停止してから席をお立ち下さるよう……」

無情にも到着を告げるアナウンスが船上に響いた。
既にミミさんたちには俺たちが浅草に着いた事がばれている。では、ここからどうすれば……。

「やっぱり何かあったんですか?」

心配そうに俺を見つめる芽心さん。ここで芽心さんに心配をかける訳にはいかない。

「ううん。なんでもないよ。さっ、早く列に並ぼう!」

俺は眉を顰める芽心さんの肩を押して、下船する乗客の列に並ぶ。通路が意外に狭く、その列は混雑していた。だから、多少の接触でもみんな気にしない。なので、見も知らぬ他人のバッグに忍び込ませる事など、中学生の俺でも簡単だった。
無事にミッションを完遂した俺は晴れ晴れとした顔になっていたと思う。

「なんか、さっきからタケルくん、表情コロコロ変わってません?」

じと目で俺を睨む芽心さん。なかなか見れない表情で、ゾクッと感じるものがある。

「なんでもないよ! さあ、行こう!」

俺は何かから逃げるように芽心さんの手を取り、駅へと歩き出した。

ID.4731
 
■投稿者:すすやん  MAIL
■投稿日:2017/05/21(日) 22:45


デジモンアドベンチャーtri.タケメイ二次小説 第12章「衝撃」
「あっ! 川から離れた!」

真っ先に気が付いたのは、モニターを凝視していたパルモン。皆、ソファでお菓子を食べ漁り、少々だられきった空気がオフィスを支配しかけたとき、事態は動き出した。

「既に空さんたちは東京駅に移動してもらっています。大輔くんと京くんたちがタケルくんたちを補足するのを待つだけです」

光子郎は勝ち誇った表情を浮かべ、頷いている。丈はそれを半分呆れて見つめていた。

(一体、この追跡に意味があったのだろうか?)

しかし、さすがの丈もその疑問を口に出したりしない。なぜなら、自分もこの場所にきているのだ。そんな自分の首を絞めるようなこと、言えるわけがない。

「ジョー、なんか空気読んでる?」

ゴマモンが含みを持たせた目で丈を見つめる。図星を突かれたので、苦笑いで返した。
その間も赤い点は地図上を移動していたが、駅を少し過ぎたところで停止する。それが意味するところは1つ。
光子郎は椅子に座ると、ヘッドセットを装着。携帯と接続すると、京達に電話を掛けた。

「泉です。今どちらにいますか?」
『雷門から少し離れたコンビニにいます』

その場所を聞いた光子郎は発信器と京達の位置が近い事を確認し、小さく安堵の息を漏らした。

「今からタケルくん達のいる場所へナビゲートします。先ずは道を渡って下さい」


◆ ◆ ◆


京達は光子郎の指示に従い、移動を開始した。
観光シーズンは外れているとはいえ、東京の名所である浅草周辺は人でごった返していた。電話を片手に人混みを進む京に賢は必死なってついて行く。

(まったく、一度集中すると周りが見えなくなるんだよな。ほんと、困ったもんだよね)

賢はそんな彼女を愛おしそうな目で見つめた。そんな賢を複雑な瞳で見つめるミノモン。

(ずっと賢ちゃんの1番にはいられないよね)

デジモンカイザーの一件以来、賢との絆は一層深まったと感じいた。それでもその絆はあくまで、パートナーとしてのもの。家族や恋人といったデジモンでは理解出来ない絆もある。友情ならデジモンでも理解できる。特にジョグレス進化の相手であるブイモンに対して、他の仲間とは違う繋がりを感じる。
しかし、それさえも超えるのがパートナーとの繋がりだとミノモンは思っている。それでも賢が家族や京への想いは自分へ向けられるものとは違う、とミノモンは感じていた。実際は家族については、血の繋がりだけでなく、法律上もしくは紙面上で構成される。しかし、何より重要なのは当人同士の【情】の繋がりで、デジモン達とのパートナーとの関係と変わりはないはずなのだが、ミノモンとしてはそこに一線を引いてしまうようだ。
ミノモンが物思いに耽る内に、道を渡り切った一同は光子郎の指示に従い、移動を続ける。そして車一台が通れそうな道に入ると、

『すぐそこが目的地です』

電話口から言われ、京は目の前の建物を見上げる。賢もつられてその目線の先を追う。

「どうしたんでしゅか、京さん?」
「賢ちゃん、なんで固まってるの?」

完全に停止した2人に戸惑うポロモンとミノモン。
何故2人が固まったのか、その理由は……。


◆ ◆ ◆


『……泉先輩?』

困惑した様子の京の声が電話からでもよくわかる。

「どうしました?」
『本当に……ここで合ってますか?』

何故か京の声に覇気がない。周りを伺うように、小声に成りつつある。光子郎の様子にその場にいる全員が問題が発生した事を直感した。

『光子郎さん、一乗寺です』

口籠っていた京に代わり、賢が電話に出た。しかし、その声音は硬い。

「一体何があったんですか?」

光子郎の問いかけに、賢は非常に言いにくそうに、

『僕が言うのもなんなので、そちらで一度調べて下さい……』

そう言われて、光子郎は位置情報から住所を割り出し、それを検索にかけた。そこに映し出されたのは……、

「なっ……!」

その瞬間、赤面し硬直する光子郎。

「どないしはったんでっか、光子郎はん?」

様子のおかしい光子郎にその横に移動するテントモン。そして、硬直した理由を見ると、

「…………?」

テントモンの表情は基本的に大きく変わることはないが、今回に限っては、首を捻り困惑している様子がわかる。

「ちょっとぉー、テントモン! 何があったのよー!」
「てか、光子郎くん! 何か硬まってんのぉー!」

光子郎とテントモンの様子から、何があったのか気になってしょうがない、といった様子でパルモンとミミが急かす。一同、声には出さないが思いは同じであった。
テントモンはパソコンとモニターを同期させる為、キーボードを叩く。

「ちょっと待っておくんなはれ。今モニターに映しますさかい」
「ちょっ……! まっ……!」

キーボードを叩く音を聞いて、ハッと意識を取り戻した光子郎が声を挙げると同時に壁掛けモニターの画面が切り替わった。

「えっ……?」
「はっ……?」
「…………」
「何! オシャレな建物!」
「なーなー、ジョー! なんて書いてあるんだってばよ!」
「ヒッ……ヒカリ。ぐっ……苦じいぃ…」

その反応は子ども達とデジモン達で異なって(一体例外はいるが……)いた。その理由はモニターに映し出された建物の写真と名称。デジモン達は写真からその建物が自分達が住んでいるマンションの入り口と異なり、多少派手ではあるが妙な魅力を放っている。
対して子ども達は、建物の紹介文章を読んで、その建物が一般に宿泊もしくは休憩ができる施設だと判断した。ただ一般的なホテルのような宿泊施設でなく、好意を持つ異性(もしくは同性)が、2時間程度休憩(多くの利用者は休憩せず、激しい運動)を行う施設だと言う事を。
丈は口角をヒクヒクと動かし、ミミはこの世の絶望を見たような悲壮を浮かべる。ヒカリは表情こそはオファニモンフォールダウンモードのように無表情を貼り付けた様にしているが、手に持ったボーロを袋ごと握り潰している。
デジモン達はパートナーの表情を見て、状況がかなり不味い事を察した。しかし、どう打開するか妙案など浮かぶ筈もなくお互い顔を見合わせるだけであった。その空気をミミの悲鳴にも似た叫びがつんざく。

「いやぁあああああ! そんな、メイメイの……メイメイの……メイメイがぁあああ!」
「落ち着いて、ミミくん! なにかの間違いだよ。ねっ、光子郎!」

何が間違いなのか、自分で言っていて訳が分からないが、丈は光子郎に助けを求めた。しかし、無情にもその答えは彼らが求めたものではなかった。

「残念ですが、お二人はこの建物に中に入ったと考えるべきでしょう。まさか、こんな事が……!」

この場にヤマトがいなくてよかった、と光子郎は思いながらも、後々聞かれた場合どうしたものか、と苦悶していた。
一方ヒカリは未だに無表情の鉄仮面を外さぬまま、モニターをじっと見つめる。
全員が困惑する中、突然リズミカルに電子音が部屋に鳴り響く。

「あっ……、僕の携帯だ」

丈は一瞬取るのを躊躇うが、鳴り続けさせるのもこの場にはそぐわないと判断し、通話ボタンを押した。

「もしもし?」
『丈さんですか? 伊織です』
「伊織くん! どうしたんだい?」

それは京達とは別で移動していた大輔と伊織からの連絡だった。

『すみません。連絡が遅れまして。今、タケルさん達を追跡しているんですが……』
「タッ……タケル達を追跡しているだってぇー!」

丈の素っ頓狂な声に全員の視線が丈に集まった。丈は二の句が継げず、口をパクパクと動かしていると、

『ギリギリでしたが、地下鉄に向かうお二人を見つけたので、慌てて追跡を続けました。地下鉄に乗ったので、ご連絡が遅れて申し訳ありません』
「そう……それはよかった……。でも、どうして僕に?」
『光子郎さんがずっと通話中だったので、丈さんに連絡を……』

そう言われて、丈は光子郎に視線を向ける。光子郎は未だヘッドセットを装着しており、恐らく未だに京達と繋がっているのだろう。

「光子郎、伊織くんから連絡来てない?」

そう言われ、光子郎は自分の携帯に目を向ける。すると、伊織からのキャッチを告げる表示が映し出されていた。光子郎はバツが悪そうな顔を浮かべ、

「京くん、どうやらタケルくんにしてやられたようです。タケルくん達はそこにはいません」
『あっ……、そうですか……』
『アレ? 京、ちょっと入ってみたかった?』
『なっ……何言ってんの! そもそも、入れないでしょ!』

電話の向こうで京と賢のノロケ口論が聞こえる。光子郎は何故か無性に切りたくなったが、彼女達に伝えなければならない事がある。

「丈先輩、タケルくん達はどこにいるんですか?」

光子郎に聞かれ、丈は頷き返すと、

「それで伊織くん、タケルくん達はどこに?」
『今移動中ですが、十中八九あそこだと思います。その場所は―――」

ID.4740
 
■投稿者:すすやん 
■投稿日:2017/07/10(月) 00:08


デジモンアドベンチャーtri. タケメイ二次小説 第13章「享受」
「うわぁぁぁぁぁ! タケルくん! パンダ、パンダですよ! あっ、あっちにはシカ! ゾウもいるぅー!」
「ほんものだーで! メイィ! スゴイだがん!」

尋常じゃない興奮した様子を見せる芽心さんとメイクーモン。フフフ、やっぱり芽心さんの行きたい所を聞いて正解だった。
彼女が希望したのは、動物園。たまたまテレビで流れた映像を見て、ここを選んだ。

「すごいすごいすごーい! こんな近くで見れるだなー!」
「喜んで頂いて光栄です、マイプリンセス」
「はっ……、すみませんすみません! 私達だけ興奮しちゃって……」

…………。あっ、これ”マイプリンセス”の部分完全に聞いていなかったな……。チョー恥いんだけど。

「ねー、タケリュ! 僕ゾウさん見たいよぉー!」
「メイもぉー。ゾウさん見たいだがん!」
「うんうん! ゾウさん見よ―ね!」

若干キャラ崩壊気味に芽心さんは頭にパタモン、胸にメイクーモンを抱いた格好で進んでいく。いつもなら、あんな恥ずかしい格好出来ないだろうに、それさえも忘れてしまうほど、アドレナリンが分泌しているんだろうな。

「本当にうれしそうだね?」
「ハイ! 鳥取には動物園はありませんでしたから。パンダとかゾウとかテレビでしか見た事なくて!」

なるほど。動物にふれあう機会に恵まれなかったわけか……。

「牛や馬はみるくの里におったな!」
「あとタヌキは見たかな? イノシシやクマもおるらしいけど、見た事ないな」
「…………」

いや、どこかの童謡じゃあないんだから、熊さんなんかに出会ったらアウトでしょ…。
僕達は他愛のない会話をしながら、園内をぶらりと歩く。休日なので、お客さんはそこそこ多い。だけど、各人思い思いに動物達を見て回っている為か、人集りまでは出来ていなかった。
しばらく歩くと、頑丈な柵に囲われたエリアに。そこにはブラウンの立髪を纏った百獣の王ーライオンのブース。しかし、当のライオン達は秋に入ったとは言え、そこそこ強い日差しを浴びて、腹を上にして寝っ転がっている。百獣の王風格は何処へやら……。
少し呆れ気味に見ていた僕とは違い、芽心さんは悲しい表情をしている。

「レオモンさん……」

あっ、そこに行っちゃう! 僕が驚いていると、芽心はライオン達に向かって手を合わした。そして、それに釣られる様にメイクーモン達も手を合わせる。

「レオモンさん、のんのん……」

なんか言ってる! えっ、なに? 「NonーNon」ってどう言うこと?
そんな事より気になるのは……、

「ママぁ〜、あのお姉ちゃん達変だよ?」
「コラ!見ちゃいけません!」

周囲から白い視線が! パタモン達だけでも十分なのに、これ以上はアウトだ!

「芽心さん、早く次行こう。視線が痛い」

そう言うと、芽心さんはハッとして、恥ずかしそうにメイクーモンで顔を隠す。

「すみません! なんか興奮しちゃって、変なテンションになっちゃいました……」
「それはわかるけど、ライオンに手を合わせるのは、やめようよ……」
「はい……、すみません……」
「あと、その”すみません”も禁止ね!」
「えっ!」

驚いた様子の芽心さん。だって芽心さん、その言葉癖になっているよね?
初めは謙虚な人だな、って思ってたけど、どうも"すみません"が口癖になっている節がある。痛くないのに、軽くぶつかっただけで「痛い」っていう人いるよね? そんな感じがする。
それにこういうの、恋愛ドラマとかでよくあるよね? あるよね?

「私、そんなに言ってました?」
「メイ、前からよー言っとだで?」
「結構言ってるよ? 本編も含めて、見直してみたら?」
「えっ、本編って……?」
「ああ、気にしないで! で、今からこのデート中”すみません”禁止だからね?」

芽心さんは釈然としないながらも、「わかりました」と納得してくれた。

「ねー、タケリュ! 次行こうよー! あっちに鳥がたくさんいるよ!」
「そうだね、それじゃあ行こうか?」

そう言って、僕は手を差し出す。

「えっ! あの……」

困った表情を浮かべる芽心さん。
うーん、雰囲気的に行けると思ったんだけどな……。
僕が差し出した手をどうしようか考えていると、その手をに握り返す反応が……。手元を見ると、長めの茶色い毛むくじゃらが……。僕の手を握ったのは、芽心さんから離れたメイクーモンの片手。もう一方の手は、芽心さんの手に。
すると、メイクーモンはニコニコを嬉しそうに笑いながら、「だがん!」と声と共に僕達の手を繋げた。
突然の事で、僕達は完全に固まった。僕はその繋がれた手を見た後、視線を芽心さんの顔に向ける。

「…………」
「…………」

芽心さんと目が合った。芽心さんが耳まで真っ赤になるのが、はっきりとわかった。

「あれ? タケリュ? 顔真っ赤だよ?」

芽心さんの頭の上に乗っていたパタモンがからかう様に言ってきた。

「なっ……なーぁ!」
「えっ! そっ……!」
「二人ともなに言っとーだぁ?」

この結果を生み出した張本人は呆れ顔をしている。
僕がどうしたものかと考えていると、僕の手を握る力が強くなった。芽心さんを見ると、照れて顔を背けているが、嫌そうな雰囲気は出ていない。
僕は……俺は芽心さんに答えるように手を握り返すと、

「じゃあ、行こうか? 芽心さん!」

優しい声で返すと、芽心さんも、

「はい!」

それを確認すると、俺はメイクーモンを抱きかかえた。

「だがん?」
「パタモンは芽心さんが乗せてるから、メイクーモンはこっち!」
「だがん!」

嬉しそうに俺の胸の中ではしゃいでいるメイクーモン。パタモンが少し恨めしそうな眼をしていたけど、お前は特等席にいるじゃないか!
俺達は手を繋いで、再び歩き出した。

ID.4756
 
■投稿者:すすやん 
■投稿日:2017/07/16(日) 23:27


デジモンアドベンチャーtri.タケメイ二次小説 第14章「円満」
「なによ! なんでメイメイと手つないでるの! まるでデートみたいじゃない!」
「ミミ、”デートみたい”じゃなくて、デートよ?」
「パルモン、シャラップ!」

パルモンは困った顔をしながら、「昔のミミみたい」と勝手に納得して口を噤んだ。

「なぁーなぁー、俺もう少しライオン見たいんだけど?」
「ヤマト、何普通に楽しんでんるんだ?」

父親に引き取られた為か、あまり行楽地へ外出した記憶のないヤマトが目的を忘れ、純粋に動物園を堪能し始めたので、止めに入るガブモン。

「ダイシュケぇ〜! 何、あのでっかいの!」
「おっ! あれはゾウだぜ! ゾウさんだぜ!」
「ゾーウん、強いの?」
「そりゃー、あんなにデカいんだから、強いに決まってんだろ!」
「オレ、ゾーさんの背中乗りたい!」
「おーし、なら行くか、チビモン!」

そう言って、柵に足を掛けようとした大輔を空が止めた。

「大輔もアンタ何処に行くつもり! ああ、ちょっとヤマト、勝手に移動しない!  アグモンも落ちてるもの食べない! 光子郎くんもそろそろ復活してぇー!」

いつもの事ながら、基本フリーダムなメンバー。それを纏めようとする空は、既にボロボロである。

「ホント、みんなのお母さんだな?」
「太一! それは空くんの前では禁句……」
「ピヨモン? 後で太一と丈先輩をシバくわよ?」
「よくわかんないけど、わかったわ、空!」
「納得すんなよ、ピヨモン!」
「ちょっ……、なんで僕まで?」
「ジョー……、諦めよ?」

ガックリと肩を落とす丈にショルダーバックから顔を出したゴマモンが声をかける。

「あそこにいるの、オイシそー!」
「アグモン、柵の向こうにいるは食べ物じゃないからな!」

羊を見つけてヨダレを垂らすアグモンにテイルモンが注意する。

「なんかこうして、みんなでワイワイするのがホント久しぶりねぇ〜」
「京しゃん、声が大きいでしゅよ!」
「賢ちゃん、なんか遠足みたいで楽しいね!」
「そうだね。ただ少し……」

短い手を上下に動かし、喜びを表現するミノモン。賢はその様子に微笑みで返しながらも、周囲を見回し、

「騒ぎすぎだね……」

呆れながらも、変わらない様子の仲間に心の中で、ホッと一息ついた。

「あれ? 光子郎さん。どうしたんですか? なんか元気がないですね……」
「腹でも減っとるだぎゃ?」

園内のベンチに腰を掛け、うなだれる光子郎に伊織はジュースを片手に声を掛けた。

「いえ……、気にしないで下さい……」
「今日は前半が格好よかったさかい、後半のミスが光子郎はん的には響いてまんねや……」
「テッ……テントモンッ!」
「ああ……、そう言うことですか……」

テントモンの言葉に納得し、伊織は一気にジュースを飲み干した。そして、いつもの仏頂面からは想像できない意地悪な笑みをニッと浮かべ、

「でも、あまり慣れない事をするのはお薦めしませんよ?」
「いっ……伊織くん! 君はなにを言って……!」
「えーっ? 何の話?」
「何の話!」

項垂れた表情から一気に赤面して顔を上げた光子郎に、横からミミとパルモンがヒョッコリ顔を出した。

「ミッ……ミミさん! いっ……いえ……別に……!」
「落ち込んどるコーシローをみんなではげましてただぎゃ!」
「そっ……そんな! 僕は落ち込んでなんか……!」
「えー、光子郎くん、けっこーカッコよかったと思うよ!」
「えっ……」

首を傾げて尋ねるミミに光子郎は耳まで真っ赤にして、

「ふっ……ふひょーーーーー!」

耳から蒸気を出すと、糸が切れたように顔面から膝に落下する。

「綺麗に落ちましたね……」
「ちょっと、光子郎くん! しっかりしてよー!」
「あっ……、なんか面白いことになってる?」

突然、壊れた光子郎の背中を揺するミミ。その様子に動揺する事なく見つめる伊織の横に、ソフトクリームを食べながらヒカリがやってきた。
いつも抱えているテイルモンが今は離れているため、片手が手持無沙汰のようだ。
伊織は横目でヒカリの様子を確認する。
その視線は目の前の光子郎とミミには向けられておらず、その先にいる二つの影を追っていた。

「ヒカリさん、つかぬ事をお聞きしますが……」
「伊織くんからの質問って、なんか新鮮ね」
「そうですね……」
「でも、その質問私に聞く?」

伊織と同様に横目で見つめるヒカリ。しかし、その視線はいつもの優しげな瞳ではなく、凍てつくような瞳。伊織は一瞬背筋に冷たいものが奔るのを感じた。

「それでも誰かが聞いてあげないと、ヒカリさん自身が辛いのでは?」

しかし、伊織はその視線に臆する事無く、はっきりと答える。その答えにヒカリはソフトクリームを食べる手を止めた。そして、バツが悪そうに表情を歪めると、

「伊織くん、本当に小学生?」

そう言って、ヒカリは苦笑いを浮かべた。その様子に伊織も小さく笑うと、

「こう見えて、お爺様からいろいろ教えて頂いていますから。それに彼女持ちですし?」

その答えに、ヒカリは噴出し、そして声を出して笑い声を挙げた。それにいち早く気付いたテイルモンが駆け寄った。

「どうした、ヒカリ?」
「アハハッ! なんでもない! なんでもないよ、テイルモン?」
「ヒカリちゃ〜ん、どうしたの? 突然笑い出して? オイ、伊織! お前ヒカリちゃんになんかしたか!」
「大輔さんとタケルさんじゃあるまいし、ヒカリさんを困らせるような事しませんよ」
「そりゃそうか……。って、なんで俺が混ざってるんだよ!」
「ダイシュケ〜、オレ否定できない……」
「チビモ〜ン、フォローしてくれよぉ〜……」

パートナーであるチビモンからも見放され、肩を落とす大輔。その様子を知ってか知らずか、未だに興奮冷めやらぬヤマトが大輔の肩を強くと掴んだ。

「どーした、どーした、大輔! 元気ねーぞ!」
「やっ……ヤマトさん? どーしたんすか、そのテンション?」
「ええぇ? いつもどーりだろ?」
「うわっ……、ヤマトがいつも以上にウザい!」
「オイ、コラッ! 太一! ウザいとはなんだ、ウザいとは!」
「ヤマト……、さすがにそのテンションはオレもフォローできないよ……」
「えっ……、俺そんなに?」

目を見開き、周囲のメンバーに意見を求めるヤマト。その反応にその場にいた全員が、
「…………(コクッ)」

無言で首を縦に振った。
その反応にヤマトは顔を赤らめて、ガブモンの後ろに隠れてしまった。

「女子か!」
「なんか、今日のヤマト、ハッチャケてるわね」
「下手に捻くれてるよりはいいんじゃない?」
「オイ、ピヨモン。そんな事言ってくれるなよ……。俺悲しくなるよ」
ヤマトの様子に太一、空そしてピヨモンがそれぞれ感想を言うと、ガブモンはため息混じりに呟いた。
一方渦中のヤマトは未だにガブモンの背中に隠れている。その様子に丈は、乾いた笑いを浮かべている。ゴマモンはそんな丈の横腹を長い爪で器用に突くと、

「なあ、丈? ヤマトのフォローしなくていいのか?」
「フォローしたいのは山々だけど、あの状態のヤマトになって言っていいか……」

そう言って、苦笑いを浮かべる丈。

「あれ? ねー、みんな。タケル達どこに行ったの?」

アグモンの抜けたひと言にその場にいた全員が周囲を見回す。
先程まで、猿山を見ていたタケルと芽心達はいつの間にかその姿を消していた。

「しまった! 一瞬目を離した隙に……」
「賢ちゃん、どーするの?」
「賢くんが気にする事ないよ」

賢は頭を抱えて、苦虫を噛み潰した顔をしたが、京がすかさずフォローを入れる。

「それより大輔! アンタもうちょっとちゃんと見ときなさいよ!」
「なんで俺が文句言われなきゃなんないんだよ!」

京は、賢に向けた真逆の表情で、大輔に詰め寄った。

「オイ! この人混みでタケル達探すの大変だぞ!」
「お前も一因噛んでるんだけどな……、オニイチャン?」
「太一、お前いい加減に!」

緊急事態に立ち直ったヤマトに対し、太一は冷たく言い放った。

「もう、2人とも喧嘩しない! それよりも、手分けしてタケル君と芽心ちゃんを探すわよ!」
「へー、俺たちを探してどうするの?」

太一とヤマトを止めながら、空が次の行動を指示した時、不意に後ろから声が掛けられた。
空が振り返ると、満面の笑みを浮かべたタケル。しかし、その瞳は笑ってはおらず、奥にある怒りを隠そうとしていない。その横には恥ずかしそうに俯く芽心、呑気に笑顔を振り撒くパタモンとメイクーモンがいた。

「やっほー、ガブモン!」
「チェンパイ達も来とっただなぁ〜!」

パタモンとメイクーモンは嬉しそうにニコニコしている。

「皆さん……いつから見ていたんですか?」

芽心は恐る恐る尋ねる。少し前の自らの痴態を思い出し、背中に嫌な汗が流れる。その様子を察したのか、ヒカリは微笑みながら、

「いえ、私たちもさっき着いたばかりで! ねっ、伊織くん?」
「えっ……、あっはい。まあ、追いかけていた事は申し訳ありません」
「あっ……、そんな謝らなくてもいいですよ」

伊織の言葉を聞いて、ホッとした表情を見せる芽心。

「メイメイ!」

ホッとしたのも束の間、突如横から現れたミミに芽心は抱きしめられる。

「ミミさん! びっくりしました」
「もう、メイメイ今日はホントに可愛いいんだから!」
「そっ……そんなそんな可愛いだなんて! 」
「嘘じゃないよ? いつもと違って髪上げてるのも新鮮だし。あとあんなにパンダではしゃぐ姿なんて、チョー可愛かったよ!」

ミミの言葉が嬉しくて顔を綻ばせていた芽心だったが、最後のひと言で表情が固まった。その様子を見ていたヒカリと伊織は苦悶の表情を浮かべる。

「僕が誤魔化したつもりなんですけど……」
「どーも言ったらいけん事を言ったみたいだぎゃ……」

ウパモンが呆れた表情でミミを見上げる。

「チョット、メイメイ? なに、どーしたの?」

ミミは自分が仕出かした事に気付かないまま、放心状態の芽心の肩を揺する。
すると、タケルが割り込むように2人の間に入ると、

「ミミさん? あんまり俺の彼女を困らせないでくれる? 俺の彼女を!」

?彼女?という単語を強調するタケル。対してミミは下唇を噛み締めて、苦渋の表情を浮かべる。その顔を見た瞬間、タケルは周りに気付かれないように小さく鼻を鳴らした。

「まあまあ、お2人とも。少し落ち着きましょ?」
「そうだよ。特にタケルくん。君の言葉で?彼女?さん、ゆでダコみたいになってるよ?」

賢に言われたタケルは腕の中の芽心に目を向ける。タケルの腕の中で?俺の彼女?と宣言された芽心は、頭から湯気が出始めている。頭の中では理解していたが、改めて言葉に出して言われると嬉しさと恥しさで胸が張り裂けそうだった。

「メイ〜、タケルゥ〜。苦しいだがん!」

タケルと芽心に挟まれたメイクーモンが苦しそうに声を挙げ、空いた片手でタケルの胸を押す。

「あっ、ゴメン。メイクーモン!」
「もうタケリュ……。イチャイチャし過ぎ! もっと僕たちも構ってよ!」

慌てて芽心から離れたタケルに、パタモンがその胸に飛び込む。その顔をムクッと膨らませ、ヤキモチを妬いているのがよくわかった。

「ゴメンねぇー、タケルくん。結局みんなで来ることになっちゃってぇ〜」

空は謝罪の言葉を言いながら、タケルに近づいた。しかし、言葉とは裏腹に悪びれる様子のない笑顔を向けている。

「ホントですよ。折角手伝って貰ったのに、まんまと裏切るんですから……」
「でも、それも想定済みでしょ? ここの事だって、私に教えてくれなかったし」
「まあ、空さんの囮は保険だったんで。まさか、アレに引っかかる人がいるとは思いませんでしたけど……」

タケルも同じように笑顔で返す。

「それ、どーいう意味?」
「嫌味ったらしぃ……。あの素直で可愛いタケルくんはどこ行ったのかしら?」

そんな二人を横で見ていた京は『そういうセリフがお母さんっぽい』と心の中で思った。もちろん、言葉にはしないが……。

「ちょっと待て、タケル! 何気に俺達をディスってないか?」
「おい、”俺達”ってもしかして俺も含まれてるのか?」

タケルと空の会話を聞いたヤマトと太一が慌てて駆け寄ってくる。タケルはそんな二人に笑顔を返した。

「いや、なんか言えよ!」
「そして、なんか憐みの目を向けるな!」
「まあ、しょうがないよヤマト……」
「タイチ……、大人になろ?」

お互いのパートナーに慰められるヤマトと太一。
その二人を苦笑いで見ながら、丈とゴマモンがやってきた。

「タケル、それに望月くん。先ずは尾行していた事を謝るよ」
「いえ、そんな!」

頭を下げる丈に芽心は戸惑い、タケルは「丈さんらしい」と小さく笑った。

「タケル、空から聞いたゼ! 今日のデート、丈の意見を聞いてくれたんだってな?」

ゴマモンが嬉々とした表情で聞いてきたので、タケルは一瞬焦りが顔に出そうになった。横目で空を見ると、その視線に気づき、ピヨモンと一緒に悪そうな顔を浮かべる。
丈とゴマモンの顔を見ると、自分の意見を参考にしてくれた事が嬉かったらしい。どうやら二人にはセンスを疑った事は伝わっていない様子。タケルは心の中で悪態をつきながらも、それを表に出さない様に、

「はい、丈さんに相談してよかったです!」
「ふふー、そうかそうか! そう言ってくれるか!」

丈は眼鏡を外し、涙を拭う。

『ここまで喜んでくれるとは……』

その行動にタケルは複雑な気持ちになりながらも、その素直な反応に心を和ました。芽心はタケルの表情に違和感を覚えながらも、特に口を挿まずにいた。

「なー、もうタケル達にバレちまったからよー! これからどーすんだ?」

苦々しい表情をしながら、大輔が声を挙げた。このタケルに謝罪しなければいけない空気が大輔からすると、どうしても納得できない……というかしたくない。

「そうですね、いつまでも大人数で屯すわけにも……」

伊織が腕を組み、チラッとタケルを見る。その視線に他のメンバーもタケルを見た。

「……絶対嫌だからね?」
「まだ何も言ってねーだろ!」

タケルの言葉に大輔が返し、自然と睨み合う二人。今にも火花が飛び交いそうな勢いになった時、

「……あの……みんなで回りましょうか?」

芽心が小さく手を挙げる。恐らくそれが最善策だと、直感が判断したのだ。
その言葉を言った時の表情はそれぞれ。
タケルは手で顔を半分多い、大きなため息を。
そのタケルを表情を見た大輔はニンマリと笑顔を浮かべ、

「ねーねー、ヒカリちゃん! 西園の方は不忍の池と繋がってるんだってぇ〜。一緒に行かない?」
「テイルモンも一緒にいこーじぇー!」

こそこそ隠れる必要がなくなった途端、大輔はヒカリを誘い、チビモンも便乗する。それに対してヒカリは、

「いいわよ?」
「ええっ!」
「やたァー!」

ヒカリの答えに大輔は両手を挙げて喜び、京はその意外性に眼鏡をずらしながら驚愕の声を挙げる。

「いっ……意外だね……」
「賢ちゃんも? 僕もそう思う」
「何か裏がありちょうな気が……」

京と同様に驚く賢とミノモン、そしてそこに裏があると勘ぐるポロモン。

「いいのか、ヒカリ?」

テイルモンもヒカリの返答に驚いているが、それに気付いているのかいないのか。ヒカリは口元に指を添えて、「うーん」と悩むと、

「不忍池か……。あひるボートが有名よね? 後で二人でそれに乗る?」
「ヒッ……ヒカリちゃんとアヒル……デート?」
「あっ……だいしゅけからなんか出てる! だいしゅけから……だいしゅけ!」

天にも昇らんばかりに感動する大輔。しかし、その言葉の裏にある意味を察した伊織は、

「悪い人だ……」
「んっ? イオリ? なんか言ったきゃ?」
「いえ、別に……」

その小さな呟きは誰にも聞かれる事はなかった。

「ほれ、光子郎はん? そろそろ会話に戻りましょ? あれ? なんかこのセリフ前にも言ったようなぁ〜?」

腕を組んで悩むテントモンの言葉を受けて、放心状態だった光子郎が再起動する。

「はっ! すみません、取り乱しました!」
「大丈夫でっせ、だーれも気にしてませんさかいに」
「それはそれで悲しいですが……」

テントモンのフォロー(にはなっていないが……)に苦笑を返す光子郎。

「なあ、光子郎! 他にどんなところがあるんだ?」
「そうそう、光子郎くん! 調べて!」
「きゃっ、ミミさん!」

完全に目的を忘れたようにヤマト、そしてどさくさに紛れて芽心に抱き着きながら、光子郎に尋ねる。

「あっ、ハイ! この先だと……近くに白熊やアザラシのブースがありますね!」
「よーし、じゃあみんなで行くか!」
「ねぇ? 白熊っておいしい?」

慌てて検索した光子郎が提案すると、太一はそれに賛同し、アグモンの一言を聞いて、表情が強張る。

「よし、タケル一緒に……」
「はいはい、ヤマト。俺達はさっさと行こうぜ……」

テンションがおかしいヤマトがタケルを誘うと、ガブモンがそれを制止し、背中を押して移動を始めた。なにやら、ヤマトが喚いているが、太一も肩に手を回し引き摺るように歩き始める。

「オーケー! メイメイ一緒に……」

芽心と一緒に移動しようと高らかに声を挙げたミミだったが、その腕を空と京が掴む。

「へっ?」

突然の事で困惑するミミに空と京は笑顔で、

「まあまあ、ミミちゃん。珠には一緒に行きましょ?」
「そうですよ、ミミお姉さまぁ〜?」
「パルモンも一緒に行きましょ?」
「あっ、恐縮ですぅ〜!」
「あっ、待って下さい、京しゃん!」
「ちょっと、空さん、京ちゃん! 私はメイメイとぉー!」

必死に懇願するミミの叫び虚しく、二人は引きずる様に足を進める。その様子を見た伊織も丈と光子郎の背中を押し、

「さっ、光子郎さん、丈さん。僕たちも行きましょう」
「ちょっ……伊織くん! そんなに押さなくても……」
「いいから行こうぜ、ジョ〜。そろそろオイラ、暑い……」
「そうでっせ、光子郎はんも行きまっせ!」
「えっ、テントモン? 急にどうしました?」
「全く……、世話が焼けるだぎゃ……」

ウパモンは呆れ顔でひとつため息を零した。

「じゃあ、僕達は先に行くから。二人はごゆっくり。ほーら、大輔いくぞ!」
「ぐえっ!」
「だいしゅけ、トノサマゲコモンみたいな声出したぞ?」
「賢ちゃーん、早くいかないと置いて行かれるよ!」

賢が大輔の襟首を掴み、大輔は後ろ向きに引っ張られる形で移動していった。
そして、残されたのはタケルと芽心とヒカリとそのパートナーたち。ヒカリは三白眼でタケルを睨み、タケルはそれに笑顔で返す。その様子を芽心が困ったようにあたふたしている。

「あの……二人とも……、えーっと……その……」

困りながらも、やっとの事で声を挙げた芽心だったが、その先をなんと言っていいのかわからない。口籠り、少し涙目になってきた芽心を見て、遂にヒカリが耐え切れず、

「ぷっ!」

小さく吹出し、そして声を出して笑った。突然の事で芽心もパートナーであるテイルモンもポカンと口を開けて驚いている。

「ヒカリさん?」
「もう芽心さん、可愛いんだけど」

突然の事で戸惑う芽心を余所に、ヒカリは涙を拭う。その様子に唖然としていたテイルモンも呆れ顔になり、

「何がそんなに可笑しいんだ?」
「なんでもないよ、テイルモン?」

テイルモンの問いをヒカリは笑顔ではぐらかす。そう言うと、軽く駆け足で他のメンバーのところへ走っていく。その様子にテイルモンは安心したように、目を閉じる。だから、ヒカリが一瞬下唇を噛み締めた事に気づかなかった。

◆ ◆ ◆

俺達がヒカリの後ろ姿を見送った芽心を見ると、はホッと小さく吐息をついていた。

「ゴメンね。撒いたつもりだったんだけど、なんか結局みんな集まっちゃって……」
「あっ! いえ、そんな謝らないで下さい。こちらこそ、心配かけたみたいで……」

芽心さんは途中まで言いかけて、その言葉をぐっと飲み込んだ。俺の謝罪に芽心さんは気にした素振りを見せずに、逆に気遣わせてしまった。

「まー、ちぇんぱい達がおるけぇー、賑やかで楽しいだがん!」
「そうだね。なんかピクニックや遠足みたい」
「いや、これ完全に遠足だよね?」

キャッキャと笑う芽心さんとメイクーモンに俺はため息をつきながら、小さくツッコミをいれた。そんな俺の様子が可笑しかったのか、芽心さんはメイクーモンの頭に顔を埋めてクスクス笑った。

「メイィ〜、こしょばいだがん!」

そういうメイクーモンの顔は言葉とは裏腹にとても嬉しそうにしている。

「まあ、僕とメイクーモンを連れてきてる時点で本当にデートなのか、よくわかんないけどねぇ〜」

毒の入った一言を言ってくるパタモン。

「元はと言えば、パタモンたちが他の皆に喋ったのが原因だろ?」
「だってぇー! 僕だって嬉しかったんだもん!」
「ちゃんぱいを叱らんでごしない! メイも一緒にしゃべっただがん」

俺がパタモンを責めると、パタモンは不貞腐れて、メイクーモンはそのフォローに入る。「ありがとー、メイクーモン!」とパタモンが涙目で言っている。

「パタモン、大丈夫だで。タケルくんも本気で怒っとる訳じゃないけん」
「それは僕もわかっているよ。でも……」

パタモンが見上げるように俺の顔に視線を向ける。

「ちょっと不機嫌だよね?」
「うん。みんなにいろいろ邪魔されてるからね」

「うう、やっぱり……」とパタモンは伏し目がちになっている。どうやら反省しているみたい。これ以上意地悪するのもよくないよね?

「まあ、もうみんな来てる事だし、俺も想定してない訳じゃないから、別に気にする必要ないよ?」
「そう? ありがとうー、たけりゅ!」

俺の言葉を聞いて、パタモンはホッとした顔をして、耳(翼?)をはためかしている。
パタモンの様子に俺は胸を撫で下ろしながらも、どこか釈然としない気持ちもあった。パタモンとメイクーモンが一緒に来るのには、別に問題ないんだけど、最終的に他のみんなが集まってしまった。出来れば、芽心さんとの時間を満喫した気持ちが胸に閊えている。

「さあ、タケルくん。私たちも行きましょう?」

俺の気持ちを知ってか知らずか、芽心さんは微笑みながら手を差し伸べてくる。
まあ、今更気にしても仕方がないか。
そう思い、彼女の手を握ると、芽心さんは急に強い力で俺の引っ張る。バランスを崩し、前のめりになった俺の耳元に芽心さんは顔を寄せて、

「今度は二人っきりでお願いしますね」

俺にしか聞こえない小さな声で、そっと囁いた。驚いて彼女の顔を見ると、まるで悪戯が成功した子供のように、歯を見せて満面の笑顔だ。

「敵わないな……」

そんな俺の小さな呟きに首を傾げるパタモンとメイクーモン。
俺は体勢を立て直すと、芽心さんの手を改めて強く握り返し、

「取りあえず、今はゆっくりみんなに追いつこうか?」
「ふふっ、そうですね!」

そうして俺達はみんなの後を追いかける。
俺達のペースで、ゆっくりと……。