オリジナルデジモンストーリー掲示板NEXT
 

小説とその感想の掲示板です。小説を投稿される方は小説投稿規約を必ずお読みください。

         


ID.4675
 
■投稿者:Shot-A 
■投稿日:2016/09/20(火) 00:23
                [ 返信 ]


デジモンアドバンス advance.14
         
※注意※


この作品は、以前この掲示板に投稿した連載作品「デジモンアドバンス season.A」および「デジモンアドバンス season.B」の続編です。
 この話以前のバックナンバーを掲載しますので未読の方はまずそちらを読んでからこのお話を読んでください。


「season.A」              「season.B」
1話 >>2932 2話 >>3093    6話 >>3690 7話 >>3924
3話 >>3227 4話 >>3288    8話 >>4060 9話 >>4264
5話 >>3365            10話 >>4265

「season.C」
11話 >>4588 12話 >>4618
13話 >>4642
















デジモンアドバンス advance.14――Coffin



 閉じたばかりの彼の眼は、衝撃に開かれた。痛みはない。熱くもない。
ただ、胴体を握り潰されたような苦しさだけが達巳を襲った。いくら息を吸おうとしても、空気が肺に入ってこない。当然だ。彼の胸郭は既に、大気に解放されていたのだから。
自分の意志とは関係なく、餌を欲する池の鯉のように口がパクパク動いた。対照的に、その他の全身の力はくまなく抜けてゆくのが解った。徐々に意識に霞がかかり、ゆっくりと体温が下がってゆく。なにか、自分の体から大事な物が漏れ出しているみたいだ。

けれど、それでも達巳は自分を包み込む暖かな存在を最後まで感じ続けた。こんな温もりに抱かれて逝けるなら、もうどうなっても構わないという気持ちに支配されていた。

懐かしい……。この気持ち。そう、達巳が思考の最後の一片を終えようとしていたときだ。



「達巳っ!」

 冴島は既に、周囲のエンジェモン3体に向けて追加のD-bulletを放っていた。ホーリーエンジェモン達が一斉にヘブンズゲートを開き、ケレスモンの背から放たれる弾丸を吸い込み始める。
同時に、冴島は着ているコートの襟を立て、帽子を目深にかぶり、姿勢を低くしてメイルドラモンにしがみつくような体制をとった。そのまま最短コースをとって、達巳の元へと急行する。
 そして、大型バイクをドリフトさせるようにメイルドラモンをケレスモンメディウムに横付けさせると、ほとんど相手に銃口を突きつけた状態でガンデヴァイスの引き金を連続で引き絞った。
だがマズルフラッシュが消えるよりも早く、フロントサイトからケレスモンメディウムの脳天までの紙一重の隙間には幾重にも樹木の葉が折り重なり、弾丸は標的へ届くことはなかった。

冴島はそのまま停止せず、ケレスモンメディウムから離れる。

「無駄よ。その子はもう、助からない。だからあなたに返したの……カルポスヒューレの肥料にしても良かったけど、それは下に居る人間たちだけでも十分でしょう?」
「達巳っ……達巳! しっかりしろ達巳!」
「あっけない。私はその子の心の音色を聴いて、一番深くに眠った想い出をほんの少しくすぐっただけなのに」

 擦れ違い様、冴島は達巳の体をケレスモンメディウムから奪い返していた。しかし、何度呼びかけても達巳からは反応が無い。冴島が達巳の体を揺する度、魚か何かのように背骨からぱっくりと開かれた達巳の傷口から、命の残響のように赤黒い物が毀れて銀色のコートを汚し、雨に洗い流されてゆくだけだった。



この頃には流石に地上で戦っていた者たちも異変に気づき、雨粒に顔をしかめながら天を見上げていた。

「どうしたんです!? なにかあったんですか?」

 雨霧に霞んで小さく見えるだけのメイルドラモンに向かって、クレシェモンが叫ぶ。そしてすぐさま体を転がして、ジュエルビーモンの一撃を避け、また空を仰ぐ。

「何を動揺しているのですか。たかだか仲間が一人死んだだけの話でしょう?
 あなたたちが今まで、いったいどれだけのデジモンを殺めてきたと思っているんです?
ここは戦場。仲間の死を乗り越える覚悟の無い者は踏み入る資格すらない! ましてや勝つことなど!」
「ええい、煩い!」

 既に勝ちが決まったかのような声色で、ジュエルビーモンが笑う。
 クレシェモンが黙れとばかり、ジュエルビーモンへ飛びかかる。その安直な一撃を受け止めながら、ジュエルビーモンは笑い続けていた。

「お前たちは……アドバンスを成したデジモンは、愛することの何たるかを知ったのではなかったのか!」
「ええそうです、愛することも、愛されることも、あなたたち人間から学び取りました。
そしてそれを奪われる辛さも、想像するだけで十分理解できてしまうほど……私たちは成長したのです!」

 ジュエルビーモンが月牙を弾き返し、反撃に転じる。特別速い攻撃ではない。しかし、彼女の纏っている気迫がクレシェモンに付け入る隙を見出させない。
明らかに、つい数週間前に戦闘したときとは戦い方が違っている。今のジュエルビーモンは己の中に明確な芯を持ち、それを支えにして、絶対に譲れない覚悟を持って戦っているのがその鉾を通じて伝わってきた。
 他者を愛すること、ひいては子を育むことは、こんなにも生き方を変える事なのだろうかと、空新は記憶に無い両親と、考えたこともない母親になった自分の姿を少しだけ思い浮かべた。



 冴島は、動かない達巳に呼びかける事を止めてケレスモンメディウムを睨んでいた。そして視線を固定したまま、頭上に向けてガンデヴァイスを撃った。ほどなくセラフィモンとなった1体のホーリーエンジェモンが冴島の前に割って入り、ケレスモンメディウムに向けて重々しく構える。

「究極体まで出して大丈夫かしら? 知っているわ。その銃で扱えるデジモンの数は限られている。進化を重ねるほど制御に使う容量は増えてゆき、キャパシティを超えたデジモンは暴走する。そして、扱える銃の容量は使い手に依存する。あなたの器はどれくらいかしら?」

 一人の人間が扱える数のデジモンでなど、自分に敵うわけがないというのだろう。ケレスモンメディウムは微笑みを絶やさない。
冴島は最初に6体展開していたエンジェモンのうち、3体を弾丸に戻した。これで残ったのは完全体が2体、究極体が1体だ。冴島は達巳をメイルドラモンの上に横たえると、もう一つ予備の、黒い銃を取り出した。
そして残る2体のホーリーエンジェモンに向けて、左右の銃を同時に撃った。

「私の扱うデジモンの上限は、究極体が3体だ!」

 銃弾を受けたホーリーエンジェモンのうち一体は全身が刃物で形作られた細身の天使に、もう一体は大ぶりな鍵を携えた巨躯の天使に進化した。3体の天使はヘブンズゲートの消滅によって復活した弾幕から冴島を守る盾となりつつ、ケレスモンメディウムに向かってゆく。

「思ったより多いのね。遊び相手には丁度いいくらいに!」

 ケレスモンの森から瞬時に植物が伸びて、天使の行く手を阻む。同時にケレスモンそのものも軌道を変え、冴島へと突進してきた。
3体の天使はそれぞれに、まるで軟体動物の触腕のように自在にうねりながら迫る蔦の魔の手を捌きながら後退する。どこまでも伸びるそれをあと一歩で退けられるという段になって、鍵の天使――クラヴィスエンジェモン――の脚に蔦が絡みついた。絡みつかれた個所から瞬く間に養分が吸われ、天使の脚は萎れてゆく。
幸い、効果が胴体に達する前に蔦は断ち切られたが、冴島はデジモン達を手元にひき戻すこととなった。

「仲間を殺された人間の力がどれほどの物かと警戒して見ていたけれど、この程度なのね。
 拍子抜けしたわ。アドバンスの方が上よ……。叩き潰してあげる……」

ケレスモンメディウムは落ち着き払った声色で、ささやくように冴島に告げた。

「なるほど、お前は今までのアドバンスデジモン……アダムより数日長く生きているお陰で少しは物を学んでいるようだ。それは親の教育か? だとしたらそれもまた、アドバンスに関する新情報だな。だが、残念ながらその経験もここで潰えることになる。
 お前は恐らく誰も知らない、極上の恐怖を味わうことになるぞ」
「今さら負け惜しみかハッタリか知らないけど、何を言っても私を動揺させることなんてできないわ。揺るぎ無い大地と、果ての無い空。それが私だもの」

 桃色の髪をかきあげながら、余所者の去ったケレスモンの上をメディウムがゆっくりと進む。彼女が通過すると、達巳の居た場所に点々と付いていた赤黒い沁みは蒸発するように消えていった。
やがてケレスモンの頭の先端部、鶏冠状の岩の上にしつらえられた窪みに辿り着くと、今度こそ彼女は下半身を一体化させた。すると、岸壁に掘られた窪みの様だったケレスモンの眼が怪しく光り、嘴は活き活きと鳴き声を漏らし始めた。

 悠然と空を行く飛行船のように、かつ、精悍に佇む山のように。宙の航路を押し寄せるケレスモンが嘴を開き、メイルドラモンごと冴島を飲み込もうとした。

 だがその時、ケレスモンの鼻面を強烈な何かが抑え込み、急制動をかけた。
 いくら羽ばたいても進まない。しかし目の前には何もない。一体何が起こったのかと、ケレスモンメディウムは体を引き抜き、ケレスモンの先端部を覗き込んだ。そこには、意味の解らない光景が展開されていた。
人間の手が、ケレスモンを押さえつけていた。しかも、その人間は他のデジモン――メイルドラモン――の上に乗っていた。ましてや、その人間はつい今しがた、自分の手で殺した筈の者だったのだ。

「な、なんだお前は!? どうして生きている?」

 いや、その人間は生きていると言えるのだろうか。相変わらず背中から何かを垂らしながら、胸を反らすようにして半分宙に浮きかけている。その左手がケレスモンの嘴の先端を抑え込み、完全に勢いを殺していた。

やがてその人間の体は、メイルドラモンから離れて完全に宙に浮きあがった。

冴島はその様子を見て、11か月前の暁市を思い出していた。おそらくあの時と同じことが起きている。それも、あの時よりもっと根本的な部分からだ。浮いているというよりは、吊り上げられているような体の姿勢。その頂点となる胸の中心には、プライマリーハートが眠っている筈だ。
その人間はおもむろに地上へ右手を差し伸べると、指先から幾筋もの光の筋を伸ばして地上に残されたD.M.Cのデジモン達をとらえた。デジモン達は瞬時に光の粒となって右手に吸収された。同時に、ぱっくりと空いていた背中の傷が嘘のように塞がる。

「う、嘘だ……そんな、そんな事が……」

 ケレスモンメディウムが戦慄きの声を漏らす。感じているのは、恐怖だろうか、気味の悪さだろうか。
その人間は同じようにケレスモンの背中の方に腕を伸ばす。再び伸展した光の筋が捕まえたのは、森に囚われていたパイルドラモンだった。今度の光は針金のようにパイルドラモンに絡みつき、形を保ったまま達巳の元までそれを引き寄せた。

十分に警戒しながら、ゆっくりとその場から離れた冴島が固唾を飲んで見守る前で、パイルドラモンとその人間のシルエットが溶け合うように重なった。

「これが本来の手順なのか、あるいは……」

 雨粒の御簾の向こう。黒い靄のようなものに包まれた一人と1体の影は見る見るうちに大きくなり、ケレスモンと同等以上に膨らんで、新しい形を作った。

始めに現れたのは、大きく開かれた顎だ。そして、冠のような骨質の角の生えた頭。
続いて出てきたのは襟元に生えた鬣。その後ろからは筋肉質の首が伸び、四足の胴体へと繋がっている。
体の各部が色を取り戻し、輪郭が露わになる。鎧に覆われた背、黄金の爪、赤い翼、背中の砲。

「……インペリアル……ドラモン!?」

 冴島が漏らした驚愕の呟きまで、あのときと同じだと本人は気づいているだろうか。
デジタルワールドに君臨する絶対の現つ神。漆黒の皇帝竜が嵐の夜に顕現した瞬間だった。



奇妙な静寂に、稲光が閃いた。それが開戦の合図だったのか、インペリアルドラモンは鮮烈なる竜帝の唸りをあげると、ケレスモンの喉元に噛みついた。化外の力が加わった牙が土塊の体に食い込み、砂へと変えてゆく。

「いやああああああ!!」

 ケレスモンメディウムの悲鳴が上がった。インペリアルドラモンに向かって果実の弾が乱れ飛び、無数の蔦が絡みつく。全身全霊を持ってケレスモンが養分を吸い上げるが、皇帝竜は全く気に留める気配がない。徐々に閉じられゆく咢の形がしだいに笑みを作っているようにも見え、恐ろしげな姿がさらにケレスモンを混乱に陥れた。
滅茶苦茶に体を捻っても牙は外れない。それどころかインペリアルドラモンは大型のネコ科動物がそうするように、獲物に爪を立てて組みつき始めた。

「どうした? 速く逃げないと吸い上げた養分ごと食われてしまうぞ」

 真顔で嫌味を言う冴島に、心底忌々しいという視線をぶつけるケレスモンメディウム。
 自分の体が食われてゆくのをただ見ているしかないという側の心境は如何ばかりだろうか。しかし何をやってもインペリアルドラモンにはダメージが見られず、このままでは本当にただ食われるしかない。それどころか食われる前に墜落してしまうだろう。

ケレスモンメディウムが焦りで真面に働かない頭で必死に策を考える。そのときだ、インペリアルドラモンの下顎の辺りへ何かが連続して炸裂した。
衝撃でインペリアルドラモンはケレスモンから離れる。頭を振るって爆煙を払う皇帝竜。




当たったのはブラストモンの水晶弾だ。ブラストモンはさらに、両腕から光の奔流を放って跳んだ。そのまま剣山のような体をインペリアルドラモンへぶつける。
流石のインペリアルドラモンもバランスを崩し、大きく高度を下げる。ブラストモンはそのままインペリアルドラモンに取りつくと、文字通り重石となって地面へと引きずりおろした。それを見たジュエルビーモンもすぐさま、ブラストモンに加勢しに向かう。

「あ、待て!」
「放っておけよ。別段、この場であの二体を倒すのに急ぐ必要はなくなったわけだろう?」
「神抱明宮流、私があなたの指図を受ける筋合いはない!」
「融通の効かない御嬢さんだな。それとも今度は俺を、捕まえてみるか?」

 わざとらしく両手を上げるゼスチャーをする明宮流に、文字通り牙を剥くクレシェモン。
だがそんな二人の間に降り立ったメイルドラモンがとりあえず、二人の間の火花を断ち切った。

「やめておけ、それより今はあのインペリアルドラモンを如何するかが先決だ」
「大地さん、あのインペリアルドラモンはやはり?」

 明宮流の問いかけに冴島はメイルドラモンの上からチラリと視線をくれると、クレシェモンの様子を覗ってから口を開いた。

「察している通り、あれは達巳だ。正しくは、達巳の中の何かが達巳を護ろうとして、ああいう状態になっているのだろう。恐らくな」
「あ、あれが廻さん? それは、いったいどういう事なんですか!?」
「詳しくは判らん。だが、彼女を鎮めるには恐らく選ばれし子供の力が必要だ」

 その言葉を聞いたクレシェモンは、拒絶感を全面に張り付けた顔で明宮流を見つめた。

「そういうことなので、とりあえず今は殺さないでくれよ。空新くん」
「気安く呼ぶな! その……冴島隊長、他に手は?」
「無い。普通に倒してしまったら、達巳も助からないだろう。
 そもそも普通に倒すのが一番難しいかもしれない。
とりあえず今は、この場に選ばれし子供が居合わせた事を幸運と捉えよう」

「信用できません。この男はアダムを使役して人間を陥れるような事を企んでいるかもしれないのですよ?」

 空新にそう言われ、明宮流はわざわざ首を大きく左右に振ってから言った。

「いや、断言させてもらうがそれはない。ワイルドセブンとしてもアドバンスのデジモンには勝手に動いてもらっては困る。
 そもそも既に俺達にデジモンを統治する力なんか無い。俺達は何度か世界を救ったかもしれないが、でもそれは過去の事だ」
「……?」
「民衆は忘れっぽいだろう? いや、人間は忘れっぽい。誰でもそうさ」

クレシェモンは訳がわからないという風に苦々しい顔をしていたが、それ以上文句は言わなかった。冴島と明宮流はそれを了承と受け取った。

一方、山林を駆け抜け、隆起した丘を越えてインペリアルドラモンの落下地点に辿り着いたジュエルビーモンは、目の前の光景に絶句していた。折り重なるように倒れた二体のデジモン達、インペリアルドラモンの首元に組みつく様に倒れたブラストモンの背中のマントを突き破って、皇帝龍の前足に生えた黄金のブレードがそそり立っていたのだ。

ジュエルビーモンの目の前でインペリアルドラモンが動き出そうとしたのに反応するように、ブラストモンの背中から無数の水晶弾が放たれる。しかし、既に消耗しているブラストモンの身体はすぐに外皮を再生できないらしく、体表の宝石が剥がれて芯の部分が露出してゆく。

「ブラストモン様、お身体が!」
「構わん。既にこの命、長らえようもない。ならば諸共……やれ! ケレスモン!」

 雨雲の彼方から巨大な影が急降下してくる。ケレスモンはその体でインペリアルドラモンを押しつぶそうというのだ。岩鳥に気づいたインペリアルドラモンはその場を飛び去ろうとするが、ブレードに刺さったブラストモンにしがみ付かれてすぐには動けない。
さらに駄目押し、ブラストモンが体に残った水晶弾を一斉に撃ち放った。

 インペリアルドラモンと共に達巳も万事休すかと思われたとき、水晶弾の爆炎の中から一陣の光が出で、ケレスモンを貫いた。さらに続けて二発、三発と、皇帝竜の背中の砲がケレスモンを襲う。矢継ぎ早に射込まれる砲撃をよけ切れず、ケレスモンはコントロールを失って見当違いの方向に落下した。

その場に再び激震が走り、雷槌を掻き消した。

そして、噴煙と豪雨の暗幕の中から最初に立ったのはインペリアルドラモンだった。その口にはブラストモンの腕らしきものが咥えられている。前足のブレードには既にブラストモンの姿は無く、咥えられた腕もすぐさま光の粒となって皇帝竜の口中に消えた。

そしてゆっくりと、竜の帝は歩を進め、未だ伏したままのケレスモンの元へと辿り着いた。

「ま、待って! 待ちなさい……あなた、あの選ばれし子供なんでしょう?」

 ケレスモンメディウムの言葉に反応したのか、それとも相手の様子を少なからず警戒しているのか。インペリアルドラモンは一旦歩みを止めると、少し首を傾げるようにしてケレスモンを見下ろした。

 「だったら……だったらまた、私が抱きしめてあげるから。優しくしてあげる……今度は悪いようにはしないわ、だから……」

早口で言い立てながらも焦って頭が混乱しているのだろうか、ケレスモンメディウムは次の言葉に詰まった。それを見たインペリアルドラモンは、お預けを食らって居た犬のようににっこりと牙を見せると嬉しそうに口を開いた。




「終わったようだな。行くぞ」

 冴島は隣の明宮流に目配せすると、メイルドラモンを駆って空へと上がった。自分の周りに3体の究極体を展開させると、インペリアルドラモンに向かって攻撃をしかける。
熾天使の砲撃を受けたインペリアルドラモンは全く影響のない風ながら、冴島達の方に注意を向けた様子だ。

「失敗は許されない。全力で頼むぞ、グレイモン」

 明宮流が自身のパートナーに語りかける。グレイモンはそれに対して頷くと、インペリアルドラモンに向かって特大の火球を吐き出した。先ほどと同様にダメージは無い。
大きく翼を羽ばたかせ、向かってくるインペリアルドラモンを今度は能天使――スラッシュエンジェモン――が迎え撃つ。刃物となっている全身をくまなく駆使し、インペリアルドラモンのスプランダーブレードと切り結ぶ。
斬撃の回転はスラッシュエンジェモンの方が遥かに早く、攻撃は度々インペリアルドラモン本体にヒットするがその鎧には傷一つ残らない。

「やはり、いくら攻撃してもたちまち再生されてしまう」

 明宮流は全ての攻撃を受けた瞬間のインペリアルドラモンの様子を備に観察していた。あのインペリアルドラモンの体は傷がつかないわけではない。ケレスモンの技もエネルギーを吸い取ること自体は成功していたし、攻撃が通らないわけではないのだ。
だが恐るべきはその驚異的なスタミナだ。周囲のデジモンを大量にロードし、さらにブラストモンやアダムさえ食らったその体内には大量のデータが圧縮、蓄積されているのだ。

スラッシュエンジェモンがインペリアルドラモンとの鍔迫り合いに押し負け、地面に転がった。入れ替わりでセラフィモンが入り、横からグレイモンが火球で援護する。
攻撃が当たる度にデータは消耗させられているようだが、この方法では相当な長期戦になる事は確実だった。

セラフィモンが格闘戦を挑んでいる横から、さらに二体の天使が加勢する。インペリアルドラモンは器用にセラフィモン、スラッシュエンジェモンの攻撃を受け止めると、クラヴィスエンジェモンに噛みつき、がっちりと咥え込んだ。
そしてそのまま勝ち誇るように天を仰ぎ、頭を左右に振った。

「姿は変わっても、基本は達巳のデジモンというわけか。煤吏君、今だ!」

 冴島の合図を受けて、遥か上空の雨雲を突き破って一体のデジモンが急降下してきた。長い首、大ぶりなガルウイング、全身を蒼いアーマーで覆った猛禽のようなデジモン、メイルバードラモンだ。

「せいぜいしっかり捕まって居ろよ」
「言われなくとも、あなたに身の心配をされたくなどありません」

 独り言のようなメイルバードラモンの台詞に、その背中から答えたのはクレシェモンだ。赤い逆棘のような突起にしっかりと捕まっており、傍から見てもメイルバードラモンを乗りこなしているようにしか見えない。
二体は上空で待機し、突撃の機会を待っていたのだ。

口中の天使の味に酔いしれていたのか、当初は二体の接近に気付かなかったインペリアルドラモンだが、自分に害意のありそうな様子を見つけるなりすぐさま迎撃態勢に移ろうとする。
しかし、突撃開始と同時にセラフィモンとスラッシュエンジェモンはインペリアルドラモンを抑えにかかっており、容易に身動きは取れなくなっている。皇帝竜は止むを得ず、背中のポジトロンレーザーをメイルバードラモンに向けて連射した。ケレスモンには致命傷を負わせた技だが。空中での機動性に優れたメイルバードラモンは事も無げにそれを回避する。

「フン、こんなものにやられたのであれば、アドバンスも大したことはないな」
「油断しないでください、次が来ますよ!」

 レーザーでは当たらないと判断したのか、インペリアルドラモンは徐に顔を空に向けると口中にエネルギーを貯め始める。しかしそれはすぐに、クラヴィスエンジェモンの体に接触、誘爆した。インペリアルドラモンの顔が衝撃で弾かれ、動きが止まる。

「今です、行きなさい!」
「黙っていろ、舌を噛むぞ!!」

 メイルバードラモンが急加速し、ソニックブームを鳴らしながら皇帝竜に迫る。メタルグレイモンの巨体を飛翔させるだけの出力を全て、急降下するために費やしているのだ。
音速を超えた機械鳥は文字通り一瞬で皇帝竜に肉薄し、尻尾の鍵爪――トライデントテール――を差し向ける。しかし、二体が接触する瞬間、驚くべきことにインペリアルドラモンは体を素早く捻って見せたのだ。

巨大な体が回転し、取りついていた天使たちはふり払われ、殆ど接触していたメイルバードラモンも弾き飛ばされる。だがそのとき、メイルバードラモンの体を蹴って、クレシェモンは逆にインペリアルドラモンの体に取りつくことに成功した。
そして、ウォー・ピックをひっかけて体を固定すると、あらかじめ持っていたある物を皇帝竜の背中に突き立てた。

それは、倒れたD.M.C隊員の装備を使って加工した、アドバンスの失敗作のサンプルを使って作られた楔だった。御誂え向きにも鉱石であるそれは非常に硬度が高く、ほんの僅かにだがインペリアルドラモンの体表に突き立った。
クレシェモンはさらに間髪入れずにその楔尻に冴島から借り受けたミリタリーナイフを打ち付け、供えられたトリガーを引いた。刀身から放たれた、デジモンの体組成にゆらぎを与える電流が楔を伝わってインペリアルドラモンの内部に浸透し、楔その物を崩壊させながら鎧の表面に電磁的構成の緩い部分――デジタルゲート――を作り出した。

ゲートの発生を確認するとクレシェモンはすぐさま進化を解除。空新の姿へと戻り、太もものホルスターからガンデヴァイスを引き抜くとデジタルゲートに向けて連続して引き金を引いた。

弾倉の中身が空になる前に、空新の体は振り落とされ、嵐の空に投げ出される。
そこへメイルドラモンがすぐに飛来し、空新の体はしっかりと冴島に抱きとめられた。

「やれっ! 明宮流!!」
「承知した……!」

 冴島が空新の手からガンデヴァイスを抜き取り、明宮流の上へ落とす。それを受け取った明宮流はデジヴァイスと共にガンデヴァイスを構え、静かに気合いをこめ始めた。

直ぐにデジヴァイスを持った側の手から炎のようなオーラが上がり、雨の中で蒸気をあげて蒼く立ち上った。

ほどなくして、インペリアルドラモンの動きに影響が出始める。羽ばたく翼の動きが不規則に止まったり動いたりを繰り返し、何度も落下しそうになりながら寸でのところで持ち直す。
やがて皇帝竜の背中、空新が弾丸を撃ち込んだ場所からも同様の炎が上がった。
同時に、インペリアルドラモンは苦しむような呻き声をあげて明宮流へ向かって飛びかかって来る。
傍らに控えていたグレイモンとメイルバードラモンが攻撃を繰り出すが、全く止まる気配が無い。咄嗟にセラフィモンとスラッシュエンジェモンが割り込んで、ようやく明宮流への直接攻撃は防がれた。

「いいぞ、射込んだNol Bulletが計算通りに役割を果たしているらしい。再生速度が遅くなっている今のうちに、削り込むぞ!」

 火球が、光弾が、ビームが、次々とインペリアルドラモンにヒットし、体の構築データを削ってゆく。時折反撃しようと背中のポジトロンレーザーに光が灯りかけるも、どうやら発射に至るシークエンスが上手く行えないらしく、遠距離攻撃は完全に封じ込める事ができたようだ。
そしてついにはインペリアルドラモンは地面に墜落し、力無くその翼を垂らして倒れた。なおも立ち上がろうともがいているが、既に背中の蒼炎は彼の体を飲み込むほどに大きくなっており、体の自由は殆ど効かない様子だ。

「よし、達巳君本体の分離に成功したぞ」

 明宮流がそう言うと、炎の中心からゆっくりと達巳の体が浮かび上がる。達巳が離れるとインペリアルドラモンはたちまち形を失い、アナログテレビを消した時のように萎んで二発の弾丸へ戻った。

「やれやれ……これでようやく、片付いたな」

 ため息交じりにソフト帽を抑える冴島の横で、世話の焼ける後輩だと笑いながらも心底疲れた様子で明宮流が片膝を着いたのだった。

ID.4676
 
■投稿者:Shot-A 
■投稿日:2016/09/20(火) 12:33


銃匠的作者の後書き
休載の王者! ジュウオウヒャッホウ!!


はい、どうもー。感想返信はまた後で。
感想ありがとうございます。


はい、感想、誹謗、中傷、告白、質問、誤字・脱字の指摘は大歓迎で受け付けております。
テンプレ+1です。

では、以下感想返信で

>>夏Pさん

エロ魔神なのだ。
だって「THE 豊穣」みたいな体型してるじゃないですかメディウム。
元ネタが地母神入ってわりと控えめな体型で描かれてるのに豊かof豊かみたいな体しやがってよおお!

純粋なエロスっていうよりは母性愛風味でお送りしたかったんですが伝わったかなぁ。

デジクロスは選ばれし子供というか、ワイルドセブンのバリエーションとして出したかったんですよ。不完全さを合体で補うっていうのは達巳と同じ発想で。

メタルグレイモンは一応最初に出てるのがそれなんだけどまぁあんまり。

>>狐火さん

あそこはいかにセッ○スというワードを出さずにセ○クスさせるかっていう挑戦でした。長らくアドバンスは○ックスにしようっていうのは決めてたんですけど難しいねセック○。

空新がクリソツなのは、ドッペルネタもあるんだけど、あれはついでなので。そのうち使います。
しかし10ヶ月も帰らなかったら流石に親が心配するよな。

ジュエルビーモンは一応、騎士の時に出してるんだけど分かりにくかったですね。(*´・ω・`)

世界間の世界観の設定には元ネタがアリマス。探してみてくださいな。

読みやすい文体なのはウジウジ校正ばっかりしてるからだよ!


では!

ID.4677
 
■投稿者:夏P(ナッピー)  MAIL
■投稿日:2016/09/22(木) 00:31


Start your KANSO
 遅くなりましたが夏P(ナッピー)です、感想書かせていただきます。

 インペは漆黒という単語が散見されたけどやっぱりウイルス種なのだろうか。てっきりケレスモン様はにっこり笑ったインペに安心した瞬間、魔人ブウの口からビームみたいに消し飛ばされるもんかと思ったのに。お返しッ ノオオオオオオオオオ!!
 クラヴィスエンジェモンだと!? デジワーXで奴を出すとこまで行けなかった俺にとって、初代デジストでいきなりCVエンジェモンと表記されて何者だ貴様となったクラヴィスエンジェモンじゃないか! CVって何だよクロスボーンバンガードかよ。スラッシュエンジェモンと違って特に見せ場無く甘噛みされてただけのような気もしますが気にしたら負け。
 ケレスモン様が「あなたの器はどれくらい?」とか水属性のエロい声したグリードみたいなこと言ってましたが、アイツCVゆかなだったのか(そもそもよく考えたら死亡フラグだこの展開)。比較対象がパッと出てきませんが、究極体三体同時使役って凄いんじゃ……?
 ……何ィ!? ブラストモン様死んだ!?
 前々から死亡フラグを重ねていたとはいえ、まさかこんなあっさりと。実はXWオマージュで頭だけで生きてたとかそーいう……グレイモンとメイルバードラモンが一緒に出てきたから、ここはもしかしてガイアアアアアアアアアアアアアアアアン起動オオオオオオメタルグレイモン出てくるかなと思いましたが、そんなことは無かった。

それでは次回もお待ちしております。