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ID.5007
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2018/06/20(水) 00:07
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それは悪魔の様に黒く 九話 一
         
三月に入っても真田は何も黒木 藤音の痕跡を見つけられなかった。延々と学校のどこかにないかと調べても何も見つからない。

「……ねぇねぇ、世莉さん。エカキモンが手助けしちゃダメなの?」

昼食を食べながらの蘭の提案にうーんと世莉は唸った?おそらくそうすれば解決はするだろう。でもどうやって解決したかも明かさないわけにはいかなくなる。それは真田にその能力を伝えるということと同じだ。

一応は隠してある。聖達にも知られているしおそらく他にも潤理の様な知っている誰かはいる。だとしてもまだ大丈夫なのは知られていけない相手には知られていないからだろうとも考えられる。

「えと、ならアイギオテュースモンが、手助けするのはいい、よね?」

え?と世莉が首を傾げるとアイギオテュースモンは腕に付いた鞭をダウジングのように揺らしてみせた。

「……精度は高くないし、それが吉か凶か、みたいな、その、それぐらいしかできないけど。この捜査でいいのか、どうか、ぐらいはわかると思うよ」

実際にはそれはハッタリだった。ユノモンならともかくアイギオテュースモンではそれはできない。しかし黒木 藤音がどこで死んだか亜里沙は見当がついていた。

そもそも踏切で事故死というのが不自然なのだ。何故事故死に見せかけられたかということを亜里沙は警察の資料をクラッキングして調べた。

結果わかったのは黒木 藤音の肉体は踏切まで歩いていたことだった。

投げ込まれたのではなく、踏切まで歩いてその上で轢かれた。可能性は幾つかあるだろうが、亜里沙はこれと真田達の調査から一つの仮説を立てた。

この件にはマミーモンのような死体や魂になんらかの干渉をできるデジモンが関わっている。

そもそも、マミーモンの調査で成果が期待できるのはマミーモンの様な能力を持ったデジモンが関わっていない時に限定される。

学校や踏切以外で殺された可能性がなくなったわけではないが、どこかの見当がつかない以上はそれに固執してはダメなのも自明だった。

もし彼等がチョ・ハッカイモンもその踏切で死んだらしいことを知っていればそれを疑っただろうが、井上はその事を誰にも話していなかった。依頼をやはり受けるという連絡こそ受けたものの事件に関係があると思っていなかったし井上は真田達の調査の仕方を知らなかった。

二月末の入試結果を受けてその準備や、卒業前にとなにかと誘われる事も多く、ほとんど話す機会が持てていなかった。

喫茶店で真田とマミーモンに占いの話をし、アイギオテュースモンは当然凶相を示した。

「……クソっ、まぁわからないんじゃ仕方ないか」

「一気に核心に飛びつこうとしたのが間違いだったのかもしれない。となるとどうするか……」

一月もかけてないとはいえ、それだけあれば学校全体は歩きまわれる。薄々これは結果が出ないと悟っていたらしい真田とマミーモンは悔しそうではあったが素直に手詰まりを認めた。

「人間関係…かなぁ。でも黒木 藤音はかなりの人数から恨みを買っていたはずだ。加えて現場は学校の側、特に誰かと絞れない……」

「……となると連れているデジモンの情報が必要だな。少なくともその時そのデジモンを殺せる実力者でないといけなかったはずだ。不意打ちであれなんであれ」

となると白河さんに三年の情報がないか聞くかと真田は電話をかけ出した。

「まぁ、私みたいな速いのが人間の方狙って不意打ちしたならば強くなくてもいいんだが、私は強いが」

縁のコーヒーに添えて出された角砂糖をガリガリ齧りながらザミエールモンがそう言うと、真田は嫌そうな顔をした。

それは確かに否定できなかったし、薄々気づいてはいた。

「……でもお前は白河さん殺すの失敗してたろ」

「矢で殺そうとしたから。別のやつで成功したからと調子に乗った」

ん?待てよとマミーモンも話を側で聞いていた亜里沙や世莉も眉を顰めた。

「……ん、あぁ、殺してはない。殺してはないから。うちのクソ親どもがな?ついには自分の娘の体を売ろうとして来やがったから股間とか脚を射抜いたりしただけ。救急車呼んだし一応生きてる。退院もしたし、それから家に帰って来なくなって楽になった」

ザミエールモンが今は少しだけ反省してると言ったのに縁は人差し指でその頭を撫でた。

いやいやおかしいだろとマミーモンは言いたくなったが、縁に睨まれて追求するのをやめた。

「甘過ぎるだろ……あ、このコーヒーの話な」

マミーモンはブラックコーヒーを飲んでるにも関わらずそう言った。どう考えても皮肉だったが、ザミエールモンは特に気に止めず角砂糖を齧っていた。

世莉も亜里沙もあえてそれには触れなかった。その内に真田の電話も終わったが、芳しい結果は出なかったようで首を横に振った。

「とりあえず知ってる人がいないか話こそ聞いてくれるもののやっぱりそこは実際に戦った事のある委員長に聞くしかないんじゃないかってさ」

「……私から連絡取る?」

世莉に言われて真田はうーんと肩肘をつき、カバンから白い棒状のものを取り出した。

一瞬タバコの様にも見えたがそれはボキッと折れた。

「タバコを吸う探偵も定番だからかココアシガレット常備してるんだってさ、探偵さんは」

ザミエールモンはそう小馬鹿にして笑った後で真田に向けて手を出した。

「……今の流れでなんで貰えると思ったんだよお前」

お前今めっちゃ俺のこと馬鹿にしてたじゃんと言いながらザミエールモンの前で箱からもう一本取り出してこれ見よがしに食べようとするとザミエールモンはそれを横から掻っ攫った。

「それしかないならそうするか……」

真田がはぁとため息を吐いた。真田から見ても委員長にとっての世莉が何か特別らしい事は容易にわかる。

そして巻き込まれてほしくないこともわかる。答えてくれない可能性だって十分にあるが、一方でなら自分が聞いて答えてくれるかと考えると果たしてどうだろうと真田は思った。普通の誰かはやはり彼にとっては守る対象ではないかと。

ふと、世莉の携帯に一本のメッセージが届いた。

情報のことでお困りならば相談してくれていいんだよ?私は三年にも情報源があるから。 あなたの潤理。

まさかここにも何か仕込まれているのかと世莉が机の下なんかを少し見ているともう一度メッセージが来た。

追伸、学校に残っていた白河さんとの電話を盗聴しただけなのでそこが喫茶店ならばそこにドリッピンはいないです。

ドリッピンというのはあの液状の使い魔かと世莉は思いながら真田達にその事を、潤理の名前は出さずに告げた。

「んー……怪しいが、話だけは聞いてみる価値があるか。情報は何と引き換えだって?」

真田がそう言うとまたすぐにメッセージが来る。

私と一日デートしてくれればそれだけで。私は正義を傷つけたくない、私はあなたも傷つけたくない。あの時は邪魔されたから本当に二人っきりで少し話がしたいだけ。

世莉はもしやと自分の鞄を漁ると鞄の底に昨日の瓶と同じ形の瓶に同じピンクの液体が詰まって入っていた。昨日のそれは百均で買った梱包材でぐるぐる巻きにされて世莉の部屋の隅の発泡スチロールの箱の中にしまわれている筈だからそれは明らかに学校で仕込まれたものだった。

「……これで、聞いてるの?」

世莉が蓋を開けて話しかけると、その液体は昨日見た様に生き物の様な姿になって口のところまで登って来た。

「その通り、せっかく渡した分身が何も言えなくされてしまったからね。代わりに一つ私のお友達に入れてもらったのさ。このドリッピンは真田君が持っているといい、白河さんの陰謀でなにかと君達は今後組まされそうだしね。君にも正義は一目置いてる様でもある」

黒木さんに比べるとまぁそれほど騒ぐ程でもないけどね、とスプラッシュモンの声を甲高くした様な声で喋るドリッピンに真田は眉を顰めた。

「……女子か?」

別にその言葉に特別意味はなく、強いて言うならばそれは世莉に話をちゃんと聞かないと委員長に好意を持ってる女子は多いから誰が本体か特定できそうにないなという程度のものだったのだが、それは潤理とスプラッシュモンの逆鱗に触れた。

「どうやら君は大した奴じゃないらしい。体積が少ない使い魔では声が本体と違うかもしれないと考える脳もない様だからね。その手に持ったコーヒーを頭蓋の中に流し込んでカサ増しでもしたらどうだろう?まだマシになるかもしれない」

そうなると君かな?とドリッピンの小さな目がザミエールモンに向けられた。

「嘉田 悠理。私と同じように究極体ではないが究極体とも張り合えるデジモンを連れている。学校の成績はまぁ一応の指標にしかならないが一桁から落ちた事はないようだし、元はここは真田が始めたようだから君ではなく真田をと思ったがひょっとするとここの本当の頭は君なのかな?」

「いやいや、そう評価されるとそんな素敵で凛々しくて可愛い悠里に付いてる私としても嬉しいね」

ザミエールモンの明るい声にこいつ本当チョロいなと真田が呟いたが、ザミエールモンは今度は真田を睨みつけた。

「でも、まぁ真田のやつは適当で寒い悪口とスベってる探偵になりきった挙動ばかりする様なやつだから許してやってくれよ。あいつは脳みそコーヒーで浸すまでもなくすでに脳みそにコーヒー染み込んでティラミスみたいにぐずっぐずだから」

真田を庇う言葉が出てきたことに目を丸くしている二人を無視してザミエールモンは話を続ける。

「私達は毎日来るわけじゃない。真田も毎日ここにはいない、ここ数日は縁が一番よくいるけど土日はまずいない。黒木さんも来るのはまばら。ここの奴らと連絡を取りたいならこの場所自体に置いておくのが一番いい。マスターに置いておくよう頼んでおくことならできるかも」

「ではお願いしてもいいかな?」

任されたとザミは言って真田の方を見てニタァと笑った。

その頭を縁が撫でるとザミは何も言わない真田にへいへいと両手と尻尾の先の手と三つの手で催促した。

真田は悔しそうに顔を歪めながらココアシガレットを一本ザミエールモンの前に差し出した。

「ところで、話し合いっていうのはどこに行けばいいの?」

世莉がそう聞くと、潤理はデートね、と訂正した。

「……デートはどこで?」

「私は二人で話せればどこでも構わないから、好きな場所を指定してくれていいよ。でもそうだな……美術館なんてどうかな?ネットで検索しても出ないのだけども、ガラス工芸品を中心とした美術館が近くにあるんだ。小規模なこともあって混み合うこともなく、土日でもほとんど人が入っていない。館内は館長の趣味なのかレコードでクラシック音楽が流されていてね、とても落ち着いた雰囲気のある場所だ」

どうかなと聞かれて世莉はじゃあそこでと了承した。明らかに潤理が世莉の目と耳を知っていて指定しているのが少し恐ろしく感じたが、むしろ知らないわけがないと世莉は思い直した。

さらに潤理は今週の土曜日の予定を聞いて来た。問題ないと世莉が答えるとそれは良かったと明るい声が返ってきた。

「じゃあ、当日の話はまたメッセージでやりとりをしようか。君の友達を心配させたいわけじゃないけども盗み聞きされたくないからね」

情報は集まり次第手紙にでも書いて渡すよと言ってドリッピンはまたたんなる液体の様な姿へと変わった。

「……おし、とりあえずマスターからプチプチと布貰ってくる」

「いや、アホかお前」

席を立とうとする真田を抑えてマミーモンは瓶の蓋を閉め、シャルシュルシュルと一回りもふた回りも大きくなるほど厚く包帯を巻きつけた。

そして、インテリアで窓の手前に積まれているらしい厚い本を取るとそれをぱかっと開けて中にしまうと同じ様に中身が空らしい本の形をした小物入れ二つで挟んで元の位置に戻した。

「……探偵のキャラ付け様のこれ見よがしに厚い本だからな、本とか同じのしか置いてないと普通に読む分には飽きるし」

マミーモンは誰に言い訳するでもなくそう言い、真田もそういえばマミーモンはそういうデジモンだったと座った。

「ところで、縁さんに聞きたいんだけどもあの液体はどんな匂いがした?」

真田が報酬かの様にココアシガレットを縁に渡すと、縁はそれをそのままザミエールモンに渡した。

「えと、でもそんなに信用できないと思うよ?私の鼻、ゆうちゃんがそうだってこともわからなかったし……」

「かもしれない。でも、それは能力が現れる前に嘉田と知り合ってたからかもしれない。だから聞いておきたいんだ」

世莉は潤理であるということを口にするのは控えていた。あれだけ敏感だったのだし、話してる時は男というのを貫いていた。少なくとも肉体的に女性であるのがバレる事に繋がる内容は言わない方がいいと思った。

限りなく少ない情報、それは聖の様に持っているデータを全て視認する形ならばマイナス要因だったが縁のそれの場合は余計な先入観を持たない印象を露わにするとも言える。

もちろんそれはその発言からの印象のみ、当たるも八卦当たらぬも八卦という感じではあるのだが。

「……なんだろう、なんか甘いお薬みたいな嫌な感じでわざとらしい感じに甘い感じ……えと、なんか作り物、みたいな感じ」

多分だけどと言う縁にザミエールモンはその頭の上まで行き、よしよしと撫でた。

亜里沙は聖から聞いてそれが誰かは知っていた。性別のことは知らないまでも、作り物という印象がそこにある液体からの匂いはあくまで本体でない作り物だからではないだろうと察した。

「作り物……ね。今のが作ったキャラだっていうならかなりの演技派だな」

マミーモンは呟いてコーヒーを一口啜り、そいつを頼るしか今できることがないってのが一番嫌なとこだなと苦々しげに呟いた。


スレッド記事表示 No.5007 それは悪魔の様に黒く 九話 一ぱろっともん2018/06/20(水) 00:07
       No.5008 それは悪魔の様に黒く 九話 二ぱろっともん2018/06/20(水) 00:09
       No.5009 それは悪魔の様に黒く 九話 三ぱろっともん2018/06/20(水) 00:10
       No.5010 それは悪魔の様に黒く 九話 あとがきぱろっともん2018/06/20(水) 00:33
       No.5027 ウルトラマンより全力出せる時間短いんかザミエールモン!夏P(ナッピー)2018/07/09(月) 22:51