オリジナルデジモンストーリー掲示板NEXT
 

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ID.4993
 
■投稿者:tonakai 
■投稿日:2018/05/27(日) 22:20
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転生したおっさんは元飼い猫とデジモンやっています1−1
         
「ブチ〜、デジタケとって」

俺は釣り用の餌を相棒に催促した。

「はいはいにゃー」

投げてよこされたシイタケのようなキノコを半分に割って、ぼろぼろの釣り針にひっかける。

「さぁて何が釣れるかにゃ?何が釣れるかにゃ?」

昔、お昼過ぎにTVでやっていたサイコロを投げるトーク番組を思い出す。
平日が祝日のときしか見られないのが残念だった。

「待つのが釣りの醍醐味さ〜♪」

「その背中、哀愁ただようー」

「まぁ……おっさんだからね」

自称おっさんことウィザーモン種族の俺は、前世の名前は間会 士(まかい つかさ)、享年39歳。
死因は過労死、職場での働き過ぎだ。
結婚こそしていなかったが、職場の人間関係は良好。
多趣味でそれなりに充実していた人生だった。
しかし、職場の大規模な人員削減が俺を追い詰めた。
なんと半年という約束ながら1人で5人分の穴埋めをする羽目になった。
そして3ヶ月で力尽きることに。
後悔があるとすれば、両親より先に逝ってしまったことだろう。
そんな俺が記憶を引き継いでデジモンとして生活することになるとは……
ウィザーモンというデジモンは元人間にとっては都合の良い姿だ。
ほとんど人間と同じ姿形をしている。
生前より背丈が縮んだり、口元が縫い合わせたような作りになっているなんて気にもならない。
それよりも、4足歩行の獣や体が腐ったアンデッドなんかに転生してみろ。
考えただけでぞっとする。
さて、釣りの続きだ。

「釣れるかな? 釣れるかにゃ?」

片足ずつリズミカルにバランスを取りながら小躍りしている黒い猫のような生き物。
鞭のようにしなやかで自身の身長ほどはある長い尻尾、肉食のライオンまたはトラの手を模したようなグローブをはめている。
種族名はブラックテイルモン。
このデジタルワールドでの生活の相棒になったこいつは、なんと昔実家で飼っていた黒猫の『ブチ』だという。
物的証拠はないが、昔の記憶をよく覚えており、僕や両親の名前を言い当て、当時よくやっていた家の柱に背中を擦り付ける癖をやってみせた。
ちなみにその理由をきくと、肩の筋肉をほぐしていたんだとか。
猫って肩こるんだ……
話を戻すが、呼び方はそのまま『ブチ』としている。
本人もそれでいいと言ってくれた。

「おっと、ひいてるひいてる……ふぃぃぃぃぃしゅ!!」

バス釣り漫画の真似が抜けない元おっさんは、リールの付いていないボロボロの釣竿を力任せに引き上げる。
勢い余って、腰を打ち付けてしまったが、周囲がしっとりとした土だったことで怪我はないようだが、

「あっ、長靴だったにゃ」

「お約束っ!? てか誰の長靴だよ!?」

「目に見えるものが真実とは限らない。この湖で魚は釣れるのか、テイルモンは猫なのか、そもそも現実世界の生き物がデジモンに転生することはあり得るのか〜!?」

そう言いながら、高く振り上げた右手首をくるくる回してお腹のあたりまでもっていきながらお辞儀をした。

「デジタルモンスターの世界へようこそ、にゃ!」

「誰に言ってるの?」

カメラなどどこにもない。
ここはデジタルワールド。
元おっさんと、元飼い猫が第2の人生を送っている。





釣りの成果は散々。メダカみたいな小さな物が2匹だけ。
そんなテンションだだ下がりの中、

「なぁ、ブチ?」

「なにかにゃ?」

「その偽者っぽいネコ語使うの、やめようか?」

器用に右手だけで逆立ちすると、くるくると回りながら言う。

「い〜〜〜やにゃ!!」

あざとい。
ネコは気分屋であるはずなのだが、ブチは頑固だと思う。

「元々、ネコやってたし、別に不自然なことなんてないにゃ」

「いやいや、語尾に“にゃ”をつけるのは、あざとい2次元キャラだけだから」

ブチは逆立ちをやめて、人差し指をちっちっちっと、左右に振ってみせる。

「2次元キャラだからいいにゃ!」

そんなメタ発言は求めていない。
いやまぁ、シルエット自体は可愛い。
あの声が、なんとか戦争の神父だったり、メダルを奪い合う特撮番組のナレーションだったり、地球征服を企む曹長じゃないだけマシだ。……全部同じ人だ。

「今日はどうするにゃ?」

くだらないことを考えるのはやめた。魚がダメなら、

「肉をもらいにいこう」

「OK!! お肉〜お肉〜♪」

ネコって魚好きなイメージはあるけど、ブチは雑食だよな。





しばらく歩くと、畑が広がるエリアに辿り着く。
デジタルワールドでは当たり前である“お肉の畑”である。
こちらの世界では、お肉が骨付きで地面にできるのだ。
最初はたまげたものだが、もう慣れてしまった。

「お、来たな」

「こんにちは」

褐色の肌に、黄と黒のシマシマ柄のパンツを履いた鬼のようなデジモンが近づいてきた。
フーガモンである。
肉畑を世話しながら、その先の出荷・販売も手がけているらしい。
今日の分をもらいに来ましたと言って、あまり多くもないビット(この世界のお金)を支払う。

「おう、そんじゃこのあたりで3個ほど持ってけ」

指定されたお肉は下から2番目のランクであるミディアムサイズ。
梱包費や運送費にかからないだけ市場より安価のため、わざわざ現地まで買いに来ている。
しかし、お肉のくせに米や野菜より安いとのこと。
お肉もいいけど、ご飯も食べたい……


「おっちゃん、今日もありがとにゃー!」

「おう。たまにはバイトにも来てくれよ。報酬は現物支給になるがな、がっはっっは」

それなりに広い面積で栽培?しているので、収穫や選別の人手が足りないらしい。

「えぇ、前向きに考えておきます」

「バイにゃ!」

肉を入れたリュックサックを背負って畑を後にする。

「畑になるのに焼きめがついているのなんでだろう?」

「なんでだろう?にゃ!」

ブチは両手を挙げてその場でクルクルと回った。
人間ネタに精通している元飼い猫、情報の収集元は不明だ。
俺が生前の思い出話をすることはあまりない。
過去は振り返らない主義だ。
それはさておき、実はここ1週間は肉続きになっている。
煮込んだり、焼いたり、干したりしてみたが、やはり飽きてくる。
米や野菜は高いのだ。
自力で育ててみようと思ったが、育つ地面も苗や種もなかなか手に入らないとのこと。
この世界は 肉 > キノコ類 > 魚 > 米 > 野菜
の順番でよく食べられているらしい。
種族によっては、燃料や草花なんかの需要があるようだが、おっさんの口には合わないに決まっている。
いやそれよりも食生活の乱れが気になる。
肉ばかりは怖い。内臓脂肪はどうなっているんだ?
今のところ肥満なデジモンには出会ったことはないが……

「みんな鍛え方が違うにゃ」

「ブチがランニングとか筋トレしているところを見たことないんだけど」

「悪いデジモンに捕まってムチで殴られていた日々を経験してるにゃ」

よく性格が歪まなかったな。
頭をよしよしと撫でてやった。

「くーすーぐったーいーにゃー」

でもそれって鍛え方の話と違くないか?





さて、食事は今後の課題として、仕事を探そう。
弱肉強食のデジタルワールドといえど、ある程度は人間並みの文明を築いている場所もある。
今いる山岳エリアは、やや草原寄り。
緩やかな傾斜に住居や小規模な畑が点在する。
俺とブチはその中の古い空き家に住まわせてもらっている。
生活費は、森や山で入手できる採集物を売って凌いでいるが、

「そろそろ討伐依頼を受けるにゃ」

「そんな狩猟的なアドホックいらない」

「お供するにゃー」

ブチは用途不明のデッキブラシを振り回し始めた。

「ブラシもそうだけど、どこからそのネタ拾ってくるの!?」

そろそろ家の中を充実させたい。
ここには、ベッドと簡易キッチンしかない。
水道はかろうじて通っているが、お風呂もない。
デジモンに日々の入浴習慣はないらしいが。

「ギルド行ってみるか」





この世界のギルドは『なんでも屋』といったほうがしっくりくる。
持ち込んだ物を買い取ってもらうこと。
お困りごとを相談して、専属のギルド員が動いたり、実動員を雇って解決する。
ブチがいった討伐依頼は実動員を雇うパターンに当てはまる。
住まいから徒歩15分のところにあるギルドは、手前から収集物買取、依頼受付の順に並び、一番奥に実動員の募集掲示板とその受付が設けられている。

「こんにちは、今日も買取で?」

買取担当のフローラモンが声をかけてきた。

「いや、今日は割のいい依頼ないかなと思って」

「そうですかぁ。奥へどうぞ! 今日も何件が来てましたよ」

特になければいつものように収集に出かけようと思ったところだ。

「ふぅ〜♪ ブラックテイルモンはドッキドキ!(メキョッ)」

「はいはい」

今のところ元ネタが全部わかるのだから、俺のオタク度も相当なもんだ。





ギルドの一番奥は少し広くスペースがとられている。
簡易的な木製の机とイスが置かれていて、壁の掲示板に何枚か依頼書が貼られている。
ゲーム的なイメージどおりの風景。
さて、早速拝見。

『指名手配』
黒い雷!ワルシードラモン
報酬額2万bit
最終目撃地:竜の目の湖のほとり

『指名手配』
呪われし人形 ワルもんざえモン
報酬額1万5千bit
最終目撃地:デスバレー

さすがに指名手配デジモンを狩るほどの腕はない。
ブチに教えてもらった話だが、2体とも完全体で、自分たちは一つ下のランクの成熟期。
計画的に多人数で挑めば討伐できないこともないが、そもそも出現場所がわかない。
つまり効率的ではない。

「こっちはどうかにゃ」

『討伐依頼』
盗賊団“蛇の道は舞台上”を討伐せよ!
リーダーのカブキモン率いる盗賊団が山岳エリアを中心に暴れている。
腕に覚えのある者は助力を請う。

「これも無」

「これ請けるにゃ!」

ブチは依頼書をジャンピング剥がしして、受付へ持っていこうとする。

「まてまてまてまて!!」

抱き上げても足をジタバタさせるブチ。

「はーなーすーにゃー、カブキモンは成熟期! レベルだけ見れば勝てるにゃ」

正式にはアーマー体という世代らしいが、俺は別に情報通というわけでもない。
ツッコミどころはそこじゃない。

「でも俺、戦闘は苦手なんだ」

実はこの姿に転生してからバトル経験はない。
必殺技はどうやら雷を使った魔法攻撃らしいが、試したことすらない。

「僕は鍛えてますにゃ!!」

ギャルピースしながら、そのままディスク的な何かを投げる動作をする。
無視だ無視。
しかし、盗賊団のネーミングって劇場版か?
まぁ危なくなったら逃げるのもアリだよな。
この依頼だって俺たちだけが参加するわけでもないし……

「……ブチ、お前の腕はどうなのかは知らない。危なくなったら」

「大丈夫にゃ! ツカサは僕が守る!」

あぁダメだ。そんなナリで説得力ないけど、俺がか弱い女子的な何かだったらその一言でキュンってしちゃうのだろうな。
依頼書を受付に持っていく。
受付にいたのはウッドモンという背の低い樹木みたいなデジモン。

「はいよ、承った。ここにサインしといてくれ。集合は明朝、この建物の前だ。よろしく」

僕は自分の名前を記載し、ブチはどこから持ってきたのか、赤いインクを自分の手(グローブ?)に塗ったくってハンコのように押し付けた。

「ペッタンにゃ!」

はいはい、かぁいいよ、同居してるからお持ち帰らないけど。





翌日。
再びギルド前に来ると、俺たちと同じく討伐依頼を受けたデジモンたちが集まっていた。
いや、小さい村のデジモンたちだ。
数にすれば自分たちを含めて6体。

「お主らも討伐参加だな? ……震えているようだが大丈夫か?」

声をかけてきたのは日本の戦国時代で見られるような赤い鎧兜を身につけたデジモン、名前をムシャモン。

「あはは、実はこういうの初めてでして……」

「大丈夫にゃ。危なくなったら皆に任せて逃げるにゃ!」

「はっははは、気持ちの良いふてぶてしさよ! ま、こちらも人数を多く見せた方が相手にプレッシャーを与えられるゆえ、戦闘になったら物陰にでも隠れておればよかろう」

ムシャモンは、豪快に笑いながらその他のデジモンにも声をかけてまわった。

「なんか場違いみたいなところに来なかったか?」

俺は急に不安になった。
戦い方の心得みたいなものは、ブチに日ごろから言われていた。
攻撃はためらわないこと。
決して無理はしないこと。
敵から目を離していいのは全力で逃げるときだけにすること。

待て待て、それはおそらく戦闘経験がある場合に言えることだ。
繰り返すが、俺の場合、今の姿に転生してから1度も戦闘らしいものを経験していない。
運良く、ブチという旧知の存在に出会い、居住エリアであるここも比較的平和なところなのだ。

他に集まったデジモンは、リボルモン、ナイトチェスモン、ティアルドモン。
リボルモンは西洋のガンマンのような姿。手にはマグナムのような銃を持っている。
ナイトチェスモンはケンタウロスのような体に巨大なダーツを持っている。
ディアルドモンは両手に盾を構えた非常に防御力がありそうなデジモンだ。
刀、銃、ダーツ(槍)、盾・・・・・・いや気にしすぎだ。

「あとは、サジタリモンとか、ズドモンあたりがいれば果物戦争できそうにゃ」

考えすぎ! 考えすぎだから!!
なんかそれっぽいこというのやめろよブチ!!
いやな汗が吹き出た。





時間になったのか、受付のウッドモンがギルドから出てきた。

「皆、今日はご苦労様。奴らのアジトはわかっている。森に入って15分ほど北に進んだところにある大樹だ。時間制限なし、生け捕りにして報酬と引き換えだ。」

その後も諸注意を何点か説明していたが、俺の耳には全く入ってこなかった。

「緊張してるにゃ?」

「当然だろ! あぁ……なんでこんなの受けたんだろう」

後悔先に立たず。
自分を含めた6体のデジモンは出発することになった。
勿論徒歩だ。
デジモンという種族のおかげか、1時間ほど歩いたが、大して体力を使った感じはしない。
それでも、森の入口で一旦休憩することにした。

「お主、顔色がすぐれんようようだが、本当に大丈夫か?」

声をかけてくれるムシャモン。
こういう人がいてくれて本当に助かる。

「えぇ、まぁ……ムシャモンさんはこういう経験が豊富なんですか?」

「うむ、全エリアを旅しておるからな。だが引き際は肝心だ。怖がっていられる内が花というものよ!」

その後、討伐メンバーで簡単な作戦を確認した。
まず森に入ったら陣形をくむこと。
先頭はムシャモン、続いて右にティアルドモン、左にリボルモン、その後ろにナイトチェスモンの順で並ぶ。
そして俺ウィザーモンに、ブチが着いていく。
しかしながら、森自体、罠が仕掛けてあったり、獰猛なデジモンが潜んでいることもない。
アジトとされている大樹にはすぐに着いた。





普通ならここで茂みから様子を伺うところだが、それをしなかった。
気配がなかったからだ。

「おいおい、これは移動した後か?」

ムシャモンが刀を肩に背負いながら拍子抜けした。

「いや、焚き火をした後があるな、そこまで時間が経っていないんじゃないか?」

リボルモンが大樹の根元にある薪の燃え残りを確認。

「こちらの情報が漏れていたか?」

「だとしても夜のうちに移動するか普通?」

ティアルドモンとナイトチェスモンもどうしたものかと困惑しているようだ。

「う〜〜〜〜〜〜ん……にゃ! あれなんにゃ!?」

周りをウロウロしていたブチが何かを発見したようだ。
指差した木の枝に、竿に干されたように2つに折れたデジモンがいた。

「ありゃ……ゴブリモンか?」

ゴブリモンは成長期のデジモンである。
緑の子鬼のような姿をしている。
あの体勢はただごとじゃない。
ブチが素早く登ってゴブリモンを背負い戻ってきた。

「おい、何があった!?」

「……うぅ、ば、ば」

「ば? なに言って」

「ば、ばけ……もん……」

そういうや、ゴブリモンは足先から徐々に粒子化して消滅した。

「なぁ、これって」

「やばい案件?」

「じょ、冗談じゃねぇぞ!! 俺は抜ける!!」

「おおおおお俺もだ!!」

「ば、ばか者! よせっ!!!」

ムシャモンの制止をよそに、ナイトチェスモンとティアルドモンは一目散に走り出し、森の出口に消えていく。
間髪いれず、2体の断末魔が響きわたった。

「あはは……なんともお約束な」

パニック映画の王道だ。
生前はよく観ていた。
そして、悲鳴の聞こえた場所から得体の知れない何かの声が聞こえるんだ。

「ギュルルルルルゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウ」

「ひっ!?」

反射的にブチを持ち上げて顔を覆った。
頭も尻も隠れてたもんじゃない。

「ツカサ、なんの解決にもなっていないにゃ」

「わかってる、わかってんだけど!!」

ブチは俺のホールドから抜け出すと、ムシャモンに言った。

「ツカサを連れて逃げるにゃ! ここは僕が時間をかせぐにゃ!!」

「な、なにを……」

馬鹿なことを言い出した。
ブチはそりゃ俺よりは強いかもしれない。
身軽だし、戦闘経験もそれなりにある。
しかし、これは何の経験のない俺でもわかる。
ヤバい。
絶対にヤバいことに巻き込まれている。
凄まじくヤバい化け物がこの奥にいる。
そしてその化け物がものすごい音を立てて、こちらに向かってくる。
怪しく光る目が見え、次第にその正体をあわらす。

「ギュルルルルルルァァァァァアアアアアアアア」

咆哮を上げ、現れたそいつは…・・・

「なんと!! こやつ、伝説の十闘士の!」

「木のビースト、“ペダルチャリモン”にゃ!!」

「……いやお主、この状況でそのボケはなかろう?」

「にゃ? 違ったかにゃ?」

「……その粋や良し!! 時間稼ぎを買ってでただけのことはある!」

ムシャモンに『考えるのを止めた』というウインドウ表示が浮かんだような気がした。
現れたのは、木の葉をライオンのタテガミのように生やした4足歩行のドラゴンのようなデジモン。
円らな瞳が可愛い感じだが、咆哮にすっかりびびっていた俺は、その時、この世の終わりだと思うほかなかった。
正しい名前はペタルドラモン。
伝説のデジモンの1体で、その攻撃力や完全体を凌駕するという。

「だからアドホック的な何かはいらないって言ったんだよ!! 乱入クエストかよ!?」

「あ、デッキブラシ忘れてきたにゃ!」

「今そこ重要!?」

元飼い猫に突っ込みできる謎の余裕の俺。
……っていうの誰も突っ込んでくれない。

「ヘイヘイ、先手必勝だぜ!!」

リボルモンが自身の銃による攻撃を始めた。
全弾、ペタルドラモンの顔面に命中。
しかし、効果は全くないようだ。
相手は、何今の?って顔をする。
見た目以上に頑丈のようだ。
部位破壊なんてできる気がしない。
って違―――う!
と思うや、突如何かがリボルモンに貫き、天高く舞い上げられたと思ったら、粒子化して消滅した。
おそらく本人も何か起きたか把握できなかっただろう。
ペタルドラモンの背中の突起物がムチのように伸びて、そのまま貫いたようだ。
南無三。

「猫の御仁! あれを見ても時間稼できるなどと豪語するか!?」

「な〜に、こっちには策があるにゃ。なんにしても早くツカサを連れて逃げて欲しいにゃ!」

いつになく真剣なブチの目。
それを信じるしかないムシャモンは、俺を担ぎ上げ走り出した。

「すまん、武運を!」

「ツカサを頼むにゃ!」

ブチ、お前何を言ってるんだ!と声に出なかったわけだが、目があった。

「ツカサ、今度美味しいナマコをご馳走するにゃ」

馬鹿野郎、この状況で言うネタか! 死亡フラグじゃねぇか!?
疾走するムシャモンに担がれながらも、化け物と対峙するブチに見えなくなるまで叫んでいた。
ブチはこちらにサムズアップしたように見えた。
せめて古代人のベルトが体に埋まっていればなぁとか思ったりもした。





森から出てもムシャモンは走り続けた。
そりゃ森からあの化け物が出てくるとも限らない。
だが、10分ほど走り続けたところで、ムシャモンの体力がきれたようだ。

「す、すまぬ。ここまでのようだ」

おろされた俺は、お礼を言いつつ、水を差し出した。
しかし、気がかりだ。
ブチは俺を助けるために囮になった。
あんな化け物を相手に無事ですむわけがない。

「むぅ……あの猫の御仁、相当な使い手のようだが、やはり成熟期が伝説の十闘士相手に適うはずが」

「くそぉ、俺に力があれば!!」

思えば、ブチは色々ふざけてはいたが、この世界のことを色々と教えてくれた。
俺は転生してから、前世の記憶を持ったまま、この世界を生きていくことなんかきっと出来なかっただろう。
ブチとはいつも一緒だった。
可愛いやつだった。
抱えあげるとき獣臭いけど、毛並みはツヤツヤで、枕のように顔をうずめてジタバタしたかった。
やったらあの爪で顔をひっかかれていただろう。
でも死ぬ前にやっておきたかった。
あいつは雄ではあるが、そんなことは関係ない!!!

「僕、参上!! にゃ!」

背後から声がした。

「ブチぃぃぃぃいぃぃぃぃぃいいいいいいいい」

「ふにゃぁーーーーーー!!!」

間髪入れずモフモフしようとして顔をひっかかれた。
黒猫デジモンが確かにそこにいた。



つづく


スレッド記事表示 No.4993 転生したおっさんは元飼い猫とデジモンやっています1−1tonakai2018/05/27(日) 22:20
       No.4995 転生したおっさんは元飼い猫とデジモンやっています1−2tonakai2018/05/29(火) 21:31
       No.4996 転生したおっさんは元飼い猫とデジモンやっています1−3tonakai2018/05/30(水) 21:57
       No.5000 転生したおっさんは元飼い猫とデジモンやっています1−4tonakai2018/06/02(土) 19:04
       No.5001 キャラ紹介と今作についてtonakai2018/06/02(土) 19:18
       No.5004 頭空っぽの方がネタ詰め込める夏P(ナッピー)2018/06/10(日) 17:03