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ID.4985
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2018/05/02(水) 18:14
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それは悪魔の様に黒く 七話 上
         
「白河さんから聞いてきたんですけど……」

世莉はぽりぽりと頭を掻いた。世莉達が昼食を取っているところにその男子生徒はやってきた。

「あー……えと、何か相談事?」

「あ、はい。最初は白河さんに言ったんですけど……黒木さんが適任だって……」

「悪いんだけど、放課後に時間はある?あるならここで話聞くから」

地図アプリを表示して真田達のいる喫茶店を指差すとその男子生徒はでは放課後に伺いますと言った。

竜美の方をちらっと世莉が見るととても一緒に来ないで欲しいと言えた表情ではなかった。蘭もまた、興味を引かれてしまった表情をしていて、説明しないわけにも巻き込まないわけにもいかないのだろうなと諦めて世莉はご飯を一口含んだ。

その後、喫茶店で話を聞くと自分にデジモンが付いてることに気づいてびっくりしてしまっただけらしく、下手なことをしなければ大丈夫なこと、変な能力が目覚める可能性があることなんかを告げて帰した。

「なんだか私だけ置いてけぼりだったみたいでなんかなー……」

「全く、私がいればすぐにでも犯人を特定できたでしょうに……それはそれとしてミイラの探偵が夕暮れの道ですれ違いざまに話しかけてくるシチュは見たかったです!」

机に突っぷす蘭とその横で怒るエカキモンにひとまず謝りつつ、世莉は宿題を広げた。

「一応言っておくと、あくまで私も巻き込まれた形だし、さっきのだってあくまでここに来たのは真田君とかに丸投げする為だから」

「まぁ、探偵としては頼られてこそだから悪い気はしないけど、一杯のコーヒーを飲む暇もなくなってしまうぐらいに来られたら流石に困るかもね」

真田は恥ずかしさ半分嬉しさ半分で顔を赤くしながらコーヒーを啜る。

「……ところで、嘉田さんとかいう人はどちらに?渋いマスター、ミイラの探偵、元凶悪犯のウェイトレスという組み合わせは正直イマジネーションが刺激されまくりなのですが!」

可愛い系かおっとり系だとなお好ましいですねと言う
エカキモンに真田はわかると頷いた。

「普段は元凶悪犯感が出てないけど、探偵がヘマしたりした時に颯爽とナイフか何か片手に現れて、しょうがない探偵さんですね。このままだと捕まった私までしょぼく見えるじゃないですかとかエプロン姿で言って欲しい」

「依頼人の誰かを好きになってでもかつて手を血に染めた私では……みたいなこと考えて欲しいですね!」

「彼女を更生させた弱そうで実はタフな常連も欲しい……ん?これは一応いるか?」

「その話詳しく聞かせて頂きましょうか!イマジネーションが刺激される香りがします!」

「香りといえばその子はなんか、あれだ。人の香りが嗅ぎ分けられるとか言ってた様な」

「フゥーッ!あなたは本当は悪い人じゃないって私の鼻が教えてくれるのみたいな感じですね!」

エカキモンと真田の話が盛り上がり、蘭も加わりこそしないが目に見えて興味がそっちに向いていくと、自然と竜美と世莉だけが向き合う形になった。

気まずかった。世莉としては負い目がある。相談せずに危険な目にあったのは確かで、ローダーレオモンが来たことで状況が少し好転したのも確か。昨日も怒られたばかりだ。

助けてくれる亜里沙は今日は居なかった。

「……怒ってる?」

「少しだけね、世莉さんと亜里沙さんのことだから巻き込まない様にってなるのはわかるし……」

竜美はコーヒーにミルクだけほんの少し入れてかき混ぜた。黒いコーヒーに混ざったミルクはほとんどその色を変えられず消えていく。

「でも、二人がどうにかなったら私は悲しいから……」

だからせめて次からは私にもと。ローダーレオモンまでもそれを後押しするかの様に真っ直ぐに世莉を見ていて、世莉はごめんと謝るしかできなかった。

その展開を横目で見ていた真田とエカキモンがいい展開ですね、あとはここで依頼が舞い込んで来ればと目で会話していたが、それに触れられた空気でもなかった。

「……これからは、また、もし白河さんに振られたらやる、つもり?」

「やるつもりはないけど……」

そう言う世莉に竜美は首を横に振った。

「多分世莉さんはやると思う」

嘘吐き。そう聖に言われたのがまた頭に浮かんだ。やはり今も嘘なんて吐いたつもりはない。

「……あー、真田くんは得意な科目何?」

「へ?国語か……世界史とか?」

「あー、そっかーそうかー。今日数学の宿題出たから教えて欲しかったけどそれじゃあ世莉さんか竜美さんに聞くしかないかー」

会話中断サセテゴメンネーと蘭がぎこちなく話しかけると、竜美はふっと笑いローダーレオモンは寝に竜美の頭の中に戻った。

ふと、そういえばレディーデビモンの姿を見てないなと世莉は思ったがそれ以上気にしなかった。昨日の夜も姿こそ見なかったが右手で顔を洗ったりはしてくれたのを世莉は覚えている。

蘭の理解の進んでいなさに世莉達が頭を悩ませていると、喫茶店の扉が開いて嘉田と縁が入ってきた。

嘉田は上機嫌で裏に行きエプロンを受け取って髪を一つ結びにして出てくると、縁に出すコーヒーをニコニコと運んだ。

先日殺そうとしてたとはとても思えないその関係は奇妙に見えた。

「いや、よく殺そうとしてきたやつと一緒に帰れるよな……」

帽子とコートを着て暇そうに英字新聞を電子辞書と真田のスマホとを使って読もうと試みていたマミーモンがそう聞くと、縁の代わりに嘉田がマミーモンの隣に座って答え出した。

「付いてるデジモンを殺しても人間は死なないし、なんならデジモンだって本気で仲間に引き込みたかったし、殺そうとしたのは私ってかザミだから」

「でもそいつの性格ほぼお前だろ?」

まぁ、とマミーモンの前に出されているコーヒーに少し口をつけて嘉田は少し渋い顔をした。

「ザミはちやほやされてない。私はちやほやされている」

この差が大切という嘉田にマミーモンは残されたコーヒーの上で何か指をくるくると回し調べてから恐る恐る口をつけた。

それはつまり、ちやほやしてくれた覚えのない誰かなら殺す事もそれほど躊躇わないという事だろうと。そう思わなくもなかったがまた反論されそうだからやめた。

マミーモン、というよりも真田は知っている。性欲が脳の大半を占める男子という生き物の大半はわりと簡単に人を好きになる。それは五浦もおそらく例外でなかろうとそう思っている。自分の為に誰かに頼み込み、自分の為にその誰かに土下座もしてくれた、何かない限りはこれからも合流していけば順調に好きになってしまうだろう。

好きになった子の隣にいるのが自分を追い詰めようとしてたやつ。これは大変だろうなぁと思いながらマミーモンはコーヒーを飲みきって、仕事に戻れよと嘉田を追い払う様に手を動かした。

「あ、そういえば……今日、昨日あった事について聞かれたんです」

縁がコーヒーをふーふーと冷まして口に含み、そんな事を言うと、真田がするりと世莉達の座っている席から抜け出て縁の隣に行こうとし、しかし女子の隣という事で照れを感じて正面に座った。

「いったい誰から?」

「えと、話したことはないんだけど……三つ子の一人だと思う。その、あの、同じ学年にいる女子三人の三つ子の……」

ふむ、と真田は頷いたがその実三つ子なんていたっけと考えていた。

「け、結構根掘り葉掘り聞かれて……ゆうちゃんのことも、だ、大体はわかってたみたいな口ぶりだったから……」

誰かの知り合いかと思ったんだけどと徐々に小さくなっていく縁に、世莉は隣に座ってその手を軽く握ってさすった。

「それは情報屋だからまぁ話さなくて正解だ。というか悠理がいない時を狙ったなあいつら……」

机の上でそう呟く指サイズのザミエールモンに世莉と真田が視線を向ける。

「かなり珍しい奴らで、確か……一人に三体ずつ色違いで同じデジモンが付いてるんだよ。顔面にブラウン管テレビみたいなのつけたモニタモンってやつ。それぞれが情報を共有する能力があって、普通のネットと違って情報が漏れない」

あれもなぁ、仲間に欲しかったんだけどなぁ身元わかんないやつには情報占いとか言われたんだよなぁとか言いながらザミエールモンはスプーンで縁のコーヒーを少し取って飲んだ。

「情報屋か、探偵的にはやっぱり繋がりが欲しいところだけど……」

知らない女子に話しかけるのはハードルが高いなと考えている真田に俺が話しかければ良いだろとマミーモンが言いかけ、ふと静かにというジェスチャーをした。

「委員長だ。何でかは知らないが委員長が来てる。ジャスティモンも出してやがるな……実体は持たせてないがそれでもかなりやる気に見える」

マミーモンの声を聞き取って、世莉が来たら私が対応すると呟き、聞き取ったマミーモンは真田と縁にシーと人差し指を立てる。

蘭と竜美はヒソヒソと喋ったマミーモンの声は聞き取れなかったらしくそのまま宿題を見ている。

荒い息をした委員長は店内を軽く見渡してすぐに世莉のいる方のボックス席に向かい、見つけると世莉に対して座っても良いかと聞いた。

「どうぞ」

「……昨日あった事についての話を聞いた」

そういの一番に切り出した委員長に、世莉は嘉田を呼び止めて水をもらって委員長の前に出した。

「まずは水でも飲んだら?」

「……ありがとう」

水を一口飲んで委員長は一度深く息を吐いた。

「僕がいればきっと危険に遭わなかった筈だ。葵だって間違いなく協力してくれた」

その言葉に世莉は確かにと頷いた。でも、確かにと頷いただけだった。

「犯人を、委員長ならどうした?」

「犯人の心配よりも僕は黒木さん達の心配をしている」

それは正論だと世莉も思った。犯人の話はまず乗り切ったという結果ありきだ。犯人が嘉田で縁の友達だとわかった後の視点からの話だ。

実際迂闊だったとは思う。格上だとわかっていてでも数がいれば何とかなるんじゃないかと思っていった。実際は何とかはなったが竜美や五浦がいなければ危うかったかもしれないと、世莉は思った。

「戦いの顛末も聞いた。レディーデビモンは敵の大技を受け止めた。そしてその後姿を見せていない。実は結構なダメージを負っているんじゃないのか?同じ様な事を繰り返しているうちに死ぬかもしれない」

委員長の懸念は、世莉からすれば尤もだった。亜里沙が未来を見ていた。いざとなればユノモンがいた。それは世莉にはわからない事だ。

「私は大丈夫。全然平気」

そう言って世莉から出てきたレディーデビモンは委員長の側からは傷などない様に見えた。

一方で、世莉から見たその左腕はボロボロだった。腕の内側がレンガかブロックが崩れたみたいになっていてとても平気と言えた状態ではなかった。

世莉の隣に座っていた蘭もそれが見えたらしく明らかに動揺し、レディーデビモンは戻ろうとしたがその左手を実体化したジャスティモンが掴んで軽く捻った。

何の抵抗もなく捻られた腕は内側のボロボロになった部分を露わにし、それを見て委員長は悲しい顔をした。

「犯人を捕まえることより安全が大事な筈だ。それに捕まえるにしても犯人のアタリがあって別働隊を必要としているなら、僕を頼ってくれれば良かった。そこに守りに行ったら逃したかもしれない。でも、犯人の方が僕とジャスティモンから逃げられたとは思えない。葵とネオデビモンがいればネオデビモンの手で包むことでどれだけ安全を確保できたか……」

それも正しいなと世莉は思った。最終的にアイギオテュースモンは巨大な手を盾にした。それはネオデビモンでもできただろう。ネオデビモンの巨体ならマミーモンが殴り飛ばされた様にはならなかったかもしれない。

レディーデビモンの蝙蝠が包帯を咥えて巻く程度の矢を一回受け止められるかどうかという盾よりもより強固に何重にも包帯を巻いてシェルターにもできたかもしれない。

そうしたらもっとリスクは少なかった。レディーデビモンが攻撃を受け止めざるを得なかったのは世莉達を逃せなかったから。それだって、ネオデビモンのサイズならまとめて動かせる。

「ところで誰から聞いたの?」

顛末を細かく知ってるのはそれこそ世莉達ぐらいだろう。なんなら世莉達も直接見ていない。頭を下げて丸まっていたのだから外から見てはいない。

「……ある程度なら情報を得る手段はあるから」

委員長は少し苦い顔でそう言った。

委員長は三つ子の元締めと繋がっていた。

三つ子は情報屋の調査員であり窓口でもある。潜伏して調べている情報屋がいて、それらが完全に潜伏している元締めのところに集められる。三つ子を通じて元締めに聞きやはり三つ子を通して聞くのが通常の情報屋の利用法。

一方の委員長は情報屋の元締めの側から情報を渡される立場だった。理由は二つ、一つは元締めに宿るデジモンの能力が社会に及ぼす影響が大きい能力で治安が維持されていないと困るから、二つ目は個人的な親交。

委員長も詳しい出どころは知らないが、委員長が必要だと元締めが判断すると委員長に情報が渡される。

だから稲荷の事を委員長は知らなかった。稲荷が委員長はある程度どこかで情報屋とつながっていると考えて三つ子をかなり早い段階で狙ったことで元締めは三つ子を庇う為に委員長に伝えられなくなっていた。

尤も、代わりに人を使って聖に情報を流したりしたので稲荷の行動が正解だったとも言い難いところはあるが。

決してやましい関係であるわけではなかった。出どころも知らないのだからどうやって調べられたかも知らない。でも、おそらくは助けもせずに見ていた誰かの情報なのだろうと思うと委員長は引け目を感じた。

それが世莉でなければ引け目を感じなかっただろうに、世莉だから、委員長は引け目を感じたし、冷静になった。

「……ごめん、つい感情的になって当り散らした。でもこれから何かあったら僕にもちゃんと相談して欲しい。絶対に守るから」

委員長に真っ直ぐ見つめられたらきっと多くの女子は好きになるんだろうなと世莉は思った、思ったが世莉には急いで来たのだろうその気持ちに伴って発生した汗の臭いも強く感じてしまうしときめくにはとても難しかった。

さらに言うならば、隣の席でヒソヒソとマミーモンが委員長の匂いってどんなのだと縁に聞き、草刈り終わった後の汗と草の臭いだなんて言われてるのも聞こえている。

「……じゃあ今一つお願いをしてもいい?」

世莉はそう言って蘭の手からノートを取り上げた。

「教えてと言われたけど私と竜美さんだとこことか説明できなくて……」

あぁ、ここはと委員長が喋り出すとレディーデビモンはスッと姿を消し、ジャスティモンもそれに続いた。世莉の目には委員長の背後に仁王立ちして腕を組む姿は見えていたが視線をやらない様にし、隣の席のマミーモンに向けて小声で話しかける。

「委員長が話聞いた情報屋の話聞き出す?」

「いや、無理はしなくていい。俺達は後で三つ子から当たるから」

「そう」

委員長の説明を受けてなおそのままだとぽとりと落ちそうなほど蘭の首が曲がっている内に世莉は亜里沙の事を考えていた。

もしも、委員長が過去の自分に執着した結果自分のところに来ているならともかく、純粋な親切心からならばきっと亜里沙のところにも行くだろうと。別働隊を動かしたのは亜里沙で世莉は終わるまでその存在を知らなかった。

それとも、どこがどう繋がっていたかはわかっていないのだろうか。世莉が作戦を立案していた、そう思っているなら世莉にとっては都合がいい。亜里沙に委員長が話しかけに言ったとしても多分世莉が無茶しない様に止めて欲しいとなるだろうとそう思った。







「クマちゃん先生!」

三年の女子にそう話しかけられてその先生はん?と振り向いた。

国語教師の酒田 登紀夫は教えている古文とサカタと読める苗字から金太郎を連想させ、同時にその体格の良さからでも金太郎というよりもクマ、と一部生徒からはクマちゃん先生やクマ先生と呼ばれていた。

「今日まで学校来てなかったから言えなかったんだけどセンターの自己採点めっちゃ良かった!国語では過去問で今まで出した最高得点とほぼ同じぐらい取れたんだよ!」

おぉと酒田はその女子が差し出した問題用紙を受け取ってうんうんと頷いた。

元々その女子生徒はとても国語が苦手だった。古文漢文は運任せ、現代文も半分以上は落とす。それが差し出された問題用紙を見ると六割は取れている様だった。運任せの部分も少々残るが、選択肢を一つは潰せる様になっていたこともわかる問題用紙で、特別良いとは言えないが元を考えると大きな進歩だと言えた。

「よく頑張ったね。本命は結果待ちだったかな?」

うん、と頷いてその女子生徒は絶対いい知らせ持ってくるからと笑って返された問題用紙を鞄にしまった。

よかったよかったと思いながら職員室に戻らないとと歩き出した酒田は左手に振動を感じてそこに付けられた端末を覗き込んだ。

アノコハツケラレテイル、タスケテクダサイ、センセイ

表示された文字を見て酒田は表情に出さない様にわかっているさと口の中で呟いた。

酒田にはその女子の後ろを追い回している黒い毛の獣人の姿をしたデジモンは見えていなかったが、持った鞄の二重底の下には明らかに教師には不要な刃渡りの折りたたみナイフが仕込まれていた。

さらにその後ろから少し髪色の明るい快活そうな男子が眉間にひどくしわを寄せているのにも気づきはしなかった。


スレッド記事表示 No.4985 それは悪魔の様に黒く 七話 上ぱろっともん2018/05/02(水) 18:14
       No.4986 それは悪魔の様に黒く 七話 下ぱろっともん2018/05/02(水) 18:16
       No.4987 それは悪魔の様に黒く 七話 あとがきぱろっともん2018/05/02(水) 19:33
       No.4990 ガチで殺しに来られると流石に恐怖夏P(ナッピー)2018/05/04(金) 23:26