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ID.4961
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2018/04/18(水) 22:22
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それは悪魔の様に黒く 六話 一
         
世莉は回収されていくプリントを眺めてはぁとため息を吐いた。

回収された数学の小テスト、最後の問いの解答を書く時間は足りず、そもそも使った計算式が合ってるかさえ自信がない。

世莉達の担当の数学の教師はテスト前の一夜漬けが嫌いだと公言していて頻繁に小テストを行う。それがわかっているから世莉は亜里沙や竜美にちょこちょこ教えてもらう。

小テストの最終問題はなかなか解けないだろう思いつけば世莉でもちゃんと解けるが時間的に難しいような問題を置いていて、解けなくてもそれほど影響はないという噂もあったが解きたいと世莉は思っていた。

不完全燃焼のままに授業が終わる。

そうして昼休みになって、いつものようにお昼を食べようとした世莉の携帯に委員長からメッセージが届いた。

お昼一緒にしてもいいかな?少し話したいことがあるんだ。

嫌な予感がしたが世莉はそれを感じなかった事にした。行かないというのはできなくもないが嫌な予感がするならば好転させるためになおさらの事向かうべきだ。

その時に問題になるのは面子である。デジモンの話を知ってる側ならば二人でお昼を食べていたとしてもある程度の理解は得られるだろうが知らない生徒から見たら示し合わせて男女が二人で食事を取る。完全に色恋沙汰に巻き込まれる。

場合によってはデジモンも関わっての色恋沙汰になる。レディーデビモンは弱い完全体ではない。ただ戦闘に特化した完全体には勝てない事が多いだろう。

レディーデビモンがどんな奴でも腕一本犠牲にしていいなら勝てるしとふて腐れたように呟くが腕一本犠牲にするなら逃げ出すべきだと世莉は思った。

他に誰がいるの?

そう世莉が返すと、特には考えてなかったけどマズイかな。と返ってくる。

なら葵くんと白河さんを呼んでもいい?と世莉が返すといいよという返事と場所として屋上が指定された。

竜美に来たメールから聖のアドレスはわかっていたし、どちらもすぐに了承した。

屋上は鍵がかかっているが電子錠でデジモンがいるならば開けるのは容易い。そしてデジモン達が隠れられる場所もないから盗み聞きもあまり考えなくていい。特に聖を巻き込んだことは大きい、屋上を伺う不審なデジモンがいれば聖の味方の目の数が存分に機能する。

世莉が葵を巻き込んだのも一応世莉なりの理由があった。葵と委員長は少しだけいじめの件で意見が対立したところがある。世莉がほぼ前に出たとはいえ委員長との関係がこの学校でのデジモン関係の安全に直結すると思えば委員長がどう考えているかを引き出してあわよくば親密にさせておくのが安全だ。

ひいては自分の立場をよくすることにもなるかもしれないからそういう布石だと世莉は考えた。

亜里沙に委員長に誘われたことと葵にも来てもらうことだけ告げて世莉は葵のクラスに寄ってから屋上に向かった。

葵が先に扉を開けるとすでに聖と委員長はいて一見穏やかに話しているようだった。

「私も、黒木さんの話は聞いてみたかったんだ。デジモンの姿だけで判断するのはやっぱりいけないかなって……」

悪魔のデジモン付けてる人にホームから落とされかけた事があってつい偏見入っちゃったと聖は笑っていた。

委員長が世莉に小さく手を振ると今二人に気づいたというように聖も顔を向けた。委員長に向けていたのとそう変わらない笑顔だった。

「……で、委員長。話って何?」

世莉がそこに座るやいなやそう言うと場の空気が張り詰めたのがわかる。それぞれに付いているデジモン達が普通の人間に見える姿こそ表さないものの牽制しあっている。世莉にだけ見える景色だ。

「白河さん達が昨日やったことを聞いてさ。黒木さんも白河さんの方針に同意したって聞いたから、少し話だけしたくて……今の状況をどう思ってるか、とかこれから自分が動かせるとしたらどうするかみたいなことをね」

その方針次第では僕はきっとと委員長は少し悲しそうな顔を一瞬させてからまた普通の顔に戻った。

「……委員長は?」

「僕は自警団の様なものを作りたい。今回の顛末を聞いて僕一人でできることの少なさを感じたから……」

委員長の視線は一度手元のサンドイッチに落とされ、それから世莉の手元に向かった。

協力して欲しい、そう言っている様にも思えて世莉は返事に困った。良いとは言い難い、そうしたら協力する方になってしまうかもしれない。悪いとも言い難い、実際自分だって被害にあったかもしれないからそうした存在は心強さもある。

「そういうのは素敵だよね」

代わりに答えたのは聖だった。

「私だってやりたくてああいう事をしてないからさ。ただ、私達が対処しなきゃいけなかったからやっただけだもんね、そういうのを委員長が人集めてやってくれるなら嬉しいな」

自分はやらない。自分のところにある人達も参加させない。そう言っている様だった。

その反応はある程度委員長も予想していたらしく、黒木さんはと世莉の答えを促した。

「自警団みたいなのがあれば多少は被害も減るとは思うけど」

世莉も聖に習って直接言葉にするのは避けた。

恨みも買うだろうし、委員長と自分の結びつきを強めるのも困る。避けることは自分の安全につながる。世莉はそう考えた。

「あの、それは僕でも手伝えるかな……?」

葵の言葉に少し委員長は驚き喜び躊躇った。葵がいじめられていた側だったのはわかっている。わかっているからやりすぎないかが不安になった。すでにやりすぎた前例もあり、これから同じことがないと信じるのは少し難しいことだった。

聖には世莉が少し不安を覚えていたのが見えた。葵が今度こそはと不安を押し殺して進もうとしていること見えた。世莉には葵が勇気を出して口に出したことしかわからなかった。

「……大丈夫なの?」

レディーデビモンがネオデビモンにそう聞くとネオデビモンは黙って一つ頷いた。それ以上レディーデビモンは追求しなかった。

委員長と葵が連絡先を交換し、ある程度思惑通りになったのにもやっとしたまま世莉はご飯を少し大きく口に頬張った。

「委員長の次は私だよね。私は今までと変わらず、可能な限り誰かの為にその幸せの為に頑張りたいって感じかな」

恥ずかしげもなく聖は言い切る。誰かの為にその幸せの為に、頑張りたいと言葉を柔らかく言い換えたがこれはデジモンがいて犯罪の様なことをするものもいる状況での話。

今まで通り場合によっては被害が増えるのも見過ごして、実質的な黒幕をあえて放っておくのも厭わない。盗聴でも盗撮でもクラッキングでもなんでもやるつもりだということ。

「じゃあ最後は黒木さんかな?」

聖の言葉に世莉は返答に困った。世莉には特に何もない。今したいことは思いつかない。これからしたいことも思いつかない。今の状況や巻き込まれること、ゲートのことなどを不安には思っているがそれだけだ。

「……まぁ、色々と不安にはなるけども平穏無事に過ごしたいって感じかな」

「黒木さんは嘘つきだね」

聖は笑顔を微塵も崩さず本当に小さな声でそう言った。

「聞こえてるよね、黒木さんだけは。委員長のは肉体を強化する様な類みたいだけど感覚器には関係ないし」

確かにそれは世莉にだけ聞こえていた。デジモン達の側にも身長の分距離があって声が届かない。

「返事はしなくていいよ。私には見えるから」

委員長がその為にも頑張るよなんてことを言っているのに頷いたりなんかをしながらも聖は言葉を続ける。

世莉には嘘をついたつもりはなかった。正直に思ったことを言っただけだと思っていた。

「まぁそれはそれとして、お願いがあるんだけどいいかな?」

世莉は表情に反応が出てもいい様に咄嗟におかずを口に含んで口元を手で隠した。

「少し気になる子がいるんだ。デジモンが付いていて変な動きをしていてら一人をずっと追ってたりするらしいから片想いかなにかかとも思ったんだけど、どうも送られてきた動画を見る限りだと表情が噛み合わないから調べたいんだよね。詳細はメールするね?」

世莉は探偵でもないし、レディーデビモンは調査に向いたデジモンというわけでもない。なぜ自分にという思いと共に自分ではできないだろうと、根拠なく自信がなかった。

はそれっきり普通の会話に戻って世莉だけに小声を向けることはなく、世莉もなにも言えないままに昼休みは終わる。

聖から授業中に送られてきた長文メールには断る選択肢を与えるつもりはない様だった。

生徒の名前は剣崎 縁。身長体重や3サイズに住所電話番号までもメールで送られてきが世莉は極力見なかったことにしようとした。

添付された写真を見ると大人しそうな雰囲気と頼りなさそうな感じと小動物の様な怯えが見えた。付いているデジモンもどことなく小柄で白い猫のような生き物が立って部分的に鎧を着たような、そんなおもちゃかぬいぐるみのような可愛らしい外見をしていた。

見たからと言って世莉はやる気なんてない。やる気なんてなかったがすぐにやらざるを得なくなった。

放課後、さて帰ろうかと世莉がゆっくりと片付けをしていると縁が入り口にいるのが見えた。

「あ、あのー、黒木さん……」

か細い声はとても世莉のところまで普通は届いたものではなかったが世莉は聞き取れてしまった。

あまり人を呼ぶということをしないだろう事想像に難くなく、そうした人が声を張りあげることも、慣れないクラスに入ることのハードルが高いこともまた世莉は想像できてしまった。

「……どうする?」

「……とりあえず話を聞く」

世莉が教室の入り口のところに行くと縁は世莉に対して口を開こうとしたが目が合うと一瞬体を跳ねさせて俯いた。

「一応、話は聞いてるから……大丈夫大丈夫」

世莉の一挙一動にびくりと反応するその姿に自分の目つきの悪さを恨むしかできないでいると世莉の服をくいくいと帰る準備をしていたはずの亜里沙が引いた。

「あの、大丈夫……?」

亜里沙の言葉に縁がそっちを向いてまたびくっと体を跳ねさせた。両目を前髪で覆った亜里沙が奇怪に見えたらしい。

これは難しいと世莉が頬をかいていると、ふと縁の肩を後ろから叩かれた。

「……だからあたしも行くって言ったのに」

「で、でも……」

「はいはい、内容はあたしには言えないのよね?」

「う、うぅ……」

「大丈夫大丈夫、気にしてないから。白河さんにお願いしたのは私だし私に言えないのはともかく相談乗ってくれる人に言えなかったらどうにもなんないでしょ?」

「あ、う、手紙を……」

世莉からも、友達らしいその女子にはデジモンが付いているようには見えなかった。デジモンが隠れていればその限りではないが、言えないという事情を考えるとおそらくいないのだろうと考えた。

縁が鞄から手紙を出して亜里沙に渡す。世莉よりはまだとっつきやすかったのだろう、よくあることだった。

手紙を受け渡すのを確認して去って行く友達に小さく縁は手を振る。それが終わってから話しかけた。

「とりあえず場所変えようか。ファミレスでいい?」

「あ、だったら、その……あの、いい場所……あり、ます」





小さい頃、アニメを見て怖くなった話が彼にはあった。

ある帽子を被ると誰にも気にされなくなる。いたずらをし放題である一方で、水をかけてきた人もぶつかった人も誰もその帽子を被った彼に気づいてくれなくなる。その帽子が抜けなくなってもう誰からも気にされないのだと泣くが、最後にはその帽子は脱げる。

彼は、その時の自分が羨ましく思う。その時の彼にとって他人との関わりは基本的に嬉しいことでありがたいことで無くなると困ることだったからそう思ったわけだ。そう思えたのが羨ましかった。

彼は自分の鞄の中のお面に手をかけた。濡らした新聞紙を重ねて乾かし色を塗った子供でも作れるようなお面。そのお面は笑っている。

なぜ笑ってるか、笑いたいからだ。自分が、笑いたいから、笑えるようにありたいから。

最近の彼は不幸だと自分を考えていた。廊下を歩けば肩をぶつけられ、なぜか何もないところで転ぶ。テスト中に限って消しゴムがなくなったり、朝持って来た傘はなぜか骨が折れていたりする。

「もう嫌だ」

彼がそう呟くのは不幸な目に遭っているから、そうではあるがそうではない。

自分がもう嫌なのだ。

一年の頃はまだ誰かに優しくあろうと思えた。周りの誰かを人として見られていた。いつからか人の嫌なところばかり目につくようになり、ついに最近、他人そのものに無関心になり始めた。

薄情という言葉が自分を表す為にあるかのように思えた。自分自身のことには感情的になれるのに他人の事には無関心にしかなれない。

筋肉をつけるとポジティブになるというから筋トレを始めてみた。筋肉は少しずつついてきたがついてきただけだった。

顔を隠す事で大胆になった人が変わると聞いたからお面を作ってつけてみた。つけても自分は自分だった。

自分が嫌になっていく。

帽子の話で彼が怖かったのは誰からも気づかれない事だけではない。その帽子はら見えているのに無関心にするもの、アニメの中の人達は見えているのに手を差し伸べることもしなかった。それが帽子の効果によるものとはいえ。

それが怖い。他人への無関心が誰かを傷つけてしまうことが怖い。誰かの痛みを見て見ぬふりどころではなく見えているのに気づきもしないそんな存在になりたくない。

そんな自分から変われない自分も嫌だ。嘆くしかなく、行動は実を結ばず、だけどどう解決したらいいのかも分からず、ただただ嘆いてもがくしかない。

なりたいものも彼はわかっていなかった。

自分でないもの、より良いもの、変わりたいと願い行動はできるのにその先が決まらないから方法がわからない。誰に聞けばいいのかもわからない。

彼を追い詰める世界と彼しか彼の世界にはいなかった。頼れる誰かなんてものは彼の頭には浮かんでは来ない。

「誰か教えてくれよ……」

ボソボソと堪えきれない思いが口から漏れ出る。

あの人独り言呟いてたよ、え、キモい怖い、もう一個奥の車両乗ろ?

聞こえてくる言葉にも驚く程に無関心で、まるで路上で干からびたミミズを見るようなそんな目でしか見られない。人として見られていない、それがさらに彼を傷つける。

変わりたい、変わりたい、変わりたい、考えは繰り返されて彼の頭の中を埋め尽くし、前が見えなくなった彼はどんと肩をぶつけてしまった。

「あ、ごめんなさい……」

「すみません……」

やたら大きな女子だった。同じ高校の制服を着ていた。

ぶつかった女子である竜美は不思議に思って、頭の中のローダレオモンに話しかけた。

今の人、当たるはずがなかったのにぶつかった。確かに距離は空いていたのに。

竜美の見える距離ではわざわざぶつかりに行かないとぶつからないような距離だった。

ローダーレオモンからの返事はなく、寝ているのだと判断して竜美は首を傾げたまま電車に乗る。発車すると、扉の前に立っていた男子の鞄がドアに挟まっていたのが見えた。その姿はついさっき見たばかり。

竜美の目で見て身長も横幅もパーツの長さも一致する。さっきぶつかった男子だ。

「……あの、大丈夫?」

結構ガッツリと挟まってしまった鞄は全然取れないようで、大丈夫と返事しながら男子はビクともしない鞄を引っ張っていた。

「あの、一回だけでいいから私にやらせて」

竜美の身長はその男子より高く、その男子が鞄から手を離す。代わりにバッグを掴む。

頭の中のローダレオモンにうるさいぐらいに話しかけると、すっと爪の先だけ出現させてドアの間に挟んでほんの少しこじ開け、竜美が引っ張り出すともう起こさないで欲しいとだけ言ってまた返事しなくなった。

「ありがとう、同じ、学年……だよね」

見たことがあるというその男子に、竜美も確かに見たことがある気がすると思って記憶を遡る。身長と顔のパーツの位置が一致する誰かが確かに教室前の廊下を歩いていたのを思い出した。

「あ、多分」

「あ、やっぱり」

互いに何を話したらいいのかわからず、気まずい沈黙だけが残る。二駅ほど行くとその男子は本当にありがとうと言って電車から降りた。

少し寝ぼけ眼のローダーレオモンだけが彼の背中につくその紫色の固まりを見ていた。


スレッド記事表示 No.4961 それは悪魔の様に黒く 六話 一ぱろっともん2018/04/18(水) 22:22
       No.4962 それは悪魔の様に黒く 六話 二ぱろっともん2018/04/18(水) 22:27
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       No.4965 それは悪魔の様に黒く 六話 五ぱろっともん2018/04/18(水) 22:37
       No.4966 それは悪魔の様に黒く 六話 あとがきぱろっともん2018/04/18(水) 23:12
       No.4970 た、探偵だと……!?夏P(ナッピー)2018/04/22(日) 23:18
       No.4972 かんそうマダラマゼラン一号2018/04/24(火) 01:18
       No.4988 感想偏心ぱろっともん2018/05/02(水) 21:22