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ID.4952
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2018/04/03(火) 20:57
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それは悪魔の様に黒く 五話 前
         
平岡は一つ疑問に思っていた。平岡が聖に守っておいてねとお願いされたのは竜美と蘭、悪魔だからと世莉と葵が見捨てられたとしても亜里沙は何故別じゃないのか。

世莉と最も関係が深いのは亜里沙、それぐらいのことは出身中学を調べたり、なんなら見ているだけでもわかると平岡は思った。

聖が適当に世莉と同じクラスの仲間のデジモンに一日の動きを盗撮させた動画を早回しで見ると名前をさん付けで呼んでいるのに違和感を感じるぐらい世莉と亜里沙の互いに対する態度は親しげだ。

亜里沙のデジモンは成熟期で実体も持てないから今は利用価値もないが抵抗されるリスクもない、世莉相手の人質として踏み台として扱うならば最も適してる様にも考えられる。

「ねぇなんで、神室 亜里沙さんの事は守る相手に含まなかったの?」

枕をぼすっと投げつけながら平岡は聖に問う。そこは聖の家だったが平岡の家はすぐ隣。聖の部屋は週三ペースで平岡が泊まるのが日常と化していた。そしてまた逆も然り、毎日同じ部屋で寝ていると言っていい程だった。

「んー?それはまぁ、心配要らないから、かな?確証はないけど多分委員長よりこの学校で心配しなくていい相手だよ?」

聖は書き込みをした付箋を貼り付け過ぎて元の何倍の厚さにもなったノートを本棚に差し込む。その表紙には年度と月と、ステータス表という文字が書かれていた。

「委員長よりって……何?予知能力か瞬間移動でもあるの?」

半笑いで言う平岡に聖はかもしれないと微笑んで応えた。

「……それ、本当なの?だったらなおさらそっちを気を付けないと……」

「予知があるかは微妙なんだけど、予知だと考えると納得いかなくはないって感じかな。ひょっとするとそうかもしれない。何かしらの危機察知能力に近いものなのは間違いないと思うんだよね」

具体的にはわからないんだけどねと聖は今しまったばかりのノートを広げてあるページを開いて見せた。

そのページの一行目に書いてあったのは究極体二番(仮)という文字、意味するところは平岡もすぐわかる。委員長とジャスティモン以外にもう一体だけいる究極体。そのデジモンを指している。

「……えーと、まさかこれがそのまま神室さんって事はないよね?」

「んー、五分五分……かな。わりと気まぐれに出てきてるみたいな動きでこの究極体は現れてる。そして、大抵叩きのめされるのは盗撮とかそういう感じの委員長がそう簡単に気づかないタイプ、私達もなかなか気づきにくいタイプのやつら」

キツネ顔のそれを聖が知ったのは連れているデジモンが認識だなんだに関わる能力を持っていて洗脳が後から解けた被害者が一人いたから。その被害者が助けを求めてくるまでは単に勢力を拡大しているグループがいるという程度にしか聖も認識できていなかった。

デジモンの能力は想像が及ばないところも多い。機械を仕掛けたわけでもない、小柄なデジモンがそのまま忍び込み見たままをデータとして保存されるなんて方法を取られたら見つける術がほぼないと言ってもいい。

「そう簡単に気づけないタイプのを現行犯でなく叩きのめす。現行犯の現場を確認したうえでついてる人間を特定したからか、もしくはそもそもそれを行う前に把握したのか。普通に考えたら前者だけども……行動する前に注意しに来た例もあるからやっぱりこれから起こることをあらかじめ知っていた、と考えるのが妥当だよね。となると読心とかも考えられるけど、予知の可能性も捨てきれないなって」

「で、それが何故神室さんだと?」

「正直確信はないけど、予め知っていて止めるならば既に被害に遭った人より遭う筈だった人に関係してるんじゃないかと思って、犯人側を調べてたら私が調べただけでも被害に遭う筈だったのに遭わなかったという人が該当するのが二人だけしかいなかった」

平岡は聖の調べたの精度を知っている。

聖は周りの人間を動かすことはあまりしない、基本的にそれぞれの幸せに導くのが聖であって聖のやることの為に拘束するようなことはまずない。キツネ顔の件すら積極的に動いているのは聖の仲間の中でも少人数だった。

それでも学年も成績も性別も問わない聖の勢力はその層に偏りこそあるもののかなりの数がいる。そして拘束はしなくても一行二行で事足りる質問なんかは聖もする。

その究極体に会ったという証言をしている人間を炙り出すことも直接は口にしていなくとも誰かに警告されて馬鹿な行為をやめたというような曖昧な証言をしている人間も炙り出すこともできる。そしていざ顔を合わせれば下調べがなくても嘘か本当かやおおざっぱな感情の動きは読める。

最悪、聖には世莉にも聞かせた切り札があるから暗示をかけて証言を引き出すのも容易。少なくとも聞き込みをされた人間が真実だと信じるものしか拾わない。

「……それが黒木さんと神室さんだった、そういう感じ?」

「そう。最初は黒木さんだと思ってた。でも目撃証言と系統があまりに違う。神々しさすら感じる女性のデジモン、色は金が多く、マントには目玉みたいな孔雀みたいな模様があったって話だから。堕天使と捉えれば近いのかもと思ったけど、ここ数日聞いた印象だと今までの活動の少なさがおかしく見えてくる」

レディーデビモンの姿は金でもなしし模様らしい模様もほぼなく孔雀でも目玉でもない。そして何よりも最近の活動であまりにも簡単に姿をさらしすぎている。

「……でも、成熟期でしょ?神室さんについてるの」

「そこはね、ちょっとしたコツで変えられるから。脳の中にデータ削って保存すると……」

聖の側に現れたエンジェウーモンが光に包まれながら小さくなって全然別のデジモンへと姿を変える。

「これやってると頭が重く感じたり嫌なんだけどね?」

そう聖が言うとそのデジモンはまた大きくなってエンジェウーモンへと姿を変える。

「……セイバーハックモン、知ってた?」

「いや、知らなかった。試みてみないとわからない類かも。寄生させた側が持たせた知識は完全じゃないのか、それともこうした変化は想定外なのかもしれない」

セイバーハックモンが首だけ現れてそう言うとすぐ姿をまた消した。

「……まぁでもこの二人を大切に思ってるまた別の誰かという可能性も無いわけじゃないけどね。キツネ顔がこの二人のどちらかに手を出したら姿を見せる筈。この二人のどちらかなら、昨日の話が本音だったなら委員長よりは話が通じるだろうし、多分私達にも声をかけてくると思う」

「なんで?」

「神室さんがそうだとしたら黒木さんに対して一番気を使って演じてるから」

少ししか見てないし最近の動き見て急に集めたからちゃんと表情とかも見れてないけど、と予防線を張りつつそれでも間違いないと聖は断言した。

「デジモンとか関係なく、小学校からか中学校からか……おそらくは小学校の頃からだろうと思うけど神室 亜里沙は何か嘘を吐いてそばにいる」

そう言ってばっと聖が平岡に見せたのは亜里沙の中学校と高校の成績。平岡でもパッと見でわかる。この高校にいるのがおかしな成績をしている。聖と同じ様にこの学校になぜ来たのかと聞かれてもおかしくない成績だった。

「あと、これもクラッキングして調べた神室さんの高校受験の記録。多分これ以外には受けたとかないと思う」

それを見て平岡は唖然とした。この高校の受験の時には当たり前のように満点を取っていたが、そこよりも偏差値の高い県内の別の高校の試験では解答をそもそもしていない。名前だけ書いて提出した形。

徒歩で通えるからとここにした聖の時にも平岡は大概だと思っていたが受験だけして白紙提出だなんてよりわけがわからなかった。

「高校からの関係の二人は関係ないし、他に同じ中学で亜里沙さんと特に接触してる生徒もない。この学校で何か積極的な設備利用とか部活とかもしてない」

それに完全体を成熟期にする負荷と究極体を成熟期にしておく負荷が同じなわけもないよねと聖は言いながら平岡から資料を取り上げた。

「何にしても無理して今の状態を作ってる。その状態でいきなりカミングアウトしてってことはないんじゃないかな?今までも隠してきたようだし……そうなると一人でやるか、利害の一致する誰かを頼るか」

被害者の数は多い。洗脳を解く必要もあるし、本体を押さえたとして同時に処分もするには人手がいる。隠し場所を確実に聞き出せる尋問向きの能力も欲しい。

「そうなると聖とエンジェウーモンが最適と。キツネ顔と敵対してるってことは多分伝わってるし……」

エンジェウーモンなら洗脳が解ける。聖なら心が読める。人手も集められる。

「うん、そういう事。こっちに来るかちーちゃんに来るかもしかしたら別の誰かを窓口にしてくるかもしれないけどね」

じゃあもう今日は寝ようかと聖に言われて平岡もそれ以上話をするのをやめて明かりを消した。

そこに聖がいるとわかっているのになにも見えないのが平岡は急に不安に感じた。








「ハッ、ァッ、ハッ……ハァ……」

亜里沙は布団から一気に身を起こすと差し出されたタオルを受け取って寝汗を拭いた。

「……ありがとう、ユノモン」

「どういたしまして、私」

タオルを渡したデジモンは世莉の見た様な山羊と人の混ざった、亜里沙の言ったように言うならばパーンだサテュロスだというのとは程遠い姿をしていた。

成熟した女性であり、その服装はとても露出が多い。大きなマントも、顔を覆うマスクも、肩の周りや腕を覆う手甲脚甲の黄金もその胴をほとんど隠していない。着ているタイツのような布すら穴開きである。

その異様な姿に亜里沙は何も言及しない、元からそういう姿なのだと知っていたからだ。そう、知っていた。その究極体が自分に宿っていることを亜里沙は世莉より早く竜美より早くから知っていた。

世莉達にそのデジモンの姿を見せられた時、サテュロスだパーンだという意見が咄嗟に出たのはそれがキリスト教的な悪魔につながる存在ではないと知っていたからだ。その色こそ黒ではなかったが山羊の角の生えた頭に山羊の脚、目の前には悪魔のように思えるレディーデビモン。キリスト教的な悪魔のいわゆるバフォメットを想像したっておかしくはない。

亜里沙は自分の持った能力も知っている。世莉に関する夢を見る能力。それは正しいが言葉が足りない。

世莉の過去の亜里沙が側にいなかった時間と世莉にこれから振りかかる危険を夢の形で見る能力。それは起きる事を完全に表しているが本質とは程遠い。

それは側にいる能力だ。亜里沙という個人が人間の限界を超えて世莉の側にいてその助けとなる能力。

寄生したデジモンがユノモンの姿を取った。それはそのためなのだとそう亜里沙は認識している。

ユーノーとはローマ神話の女神である、全能神の側に寄り添う妻であり、女性の守護者であり、多くの力を持つ神々の女王と称されるものである。

しかしそんなことは今の亜里沙にはどうでもよかった。大切なのは今見た悪夢の内容だ。

小さな金色のネズミのデジモンを肩に乗せた細い目の男がいた。亜里沙の記憶が正しければ稲荷とかいう名字の男子である。おそらくキツネ顔というのは彼だろうと亜里沙は思った。

稲荷は複数の女子と男子を連れていて、どうやったのか世莉を呼び出していた。

そして稲荷の側にいた金色のネズミが世莉の耳元で話しかけ、洗脳されないことに驚き、数の暴力で世莉の服を剥ごうとし、委員長が乱入してなんとか解放されるものの世莉のシャツが破かれて下着姿を委員長に目撃される。

つまるところ世莉の尊厳が傷つけられるという事態。知った今、ジャスティモンほど戦闘に特化したデジモンでないにせよ亜里沙がそこにいてユノモンの力で蹂躙するのは簡単なこと。しかし、亜里沙はそうする気はなかった。

亜里沙は強くてはいけないからだ。亜里沙が考える世莉の為になる亜里沙は強くてはいけない。

そして、亜里沙は昨日あった事も把握した。メールを確認すると世莉から今日ちょっと話があるから蘭さんと竜美さんと家に行くという内容が。十中八九洗脳されないようにという話だろう。

「……ユノモン、今回の条件を整理したいんだけど」

「うん、まずは世莉ちゃんの安全の確保。当然だけどね」

それは世莉が直接的に傷つくから。

「被害者が被害をこれ以上被らないようにする事もそうだよね」

それは世莉が間接的に傷つくから。

「そしてこれもいつもだけど私がやっている事が世莉ちゃんにバレない事」

それは世莉が望む亜里沙が側にいられなくなってしまうから。

「あとはない、よね」

「多分。でも、可能な限り私は亜里沙でいた方が保険としてはいいかも。どこからバレるかわからないけどまだ亜里沙を装いながらなら言い訳もできるだろうし」

「……殺すのは自重かな」

「うん。私が何を見たにしても殺すのは亜里沙がやっていいラインじゃないよ」

ユノモンの言葉は見ていないから言えるもの。そして、ユノモンから見た亜里沙の言葉や表情には殺意に近い憎悪があったということだ。

亜里沙はふーと一つ長く息を吐いた。

亜里沙はそれがわかる。その行動は自分とユノモンが逆でもすることだ。逆に言えばユノモンが亜里沙ならばユノモンは殺意を抱いただろうとも言える。

聖はエンジェウーモンを自分色に染め上げたと言っていい。聖に都合よく聖の延長としてエンジェウーモンというものを染め上げた。でも、エンジェウーモンにとってエンジェウーモンと聖は別のものである。

エンジェウーモンにとって聖は聖であって私ではない。一方でユノモンにとっての亜里沙は私だった。

食らう、という事を考える事すらできずにユノモンは成長に伴って亜里沙に染められていた。ユノモンにとっての自分は亜里沙の一部であり亜里沙の人格のバックアップのようなもの、亜里沙という人間はユノモンにとって寄生している先ではなく本体だった。そして、亜里沙にとってのユノモンは自分の手足でありもう一つの脳、自分のコピー。

亜里沙は少し不安になった。

不安になったのは世莉が傷つかないようにすることに関してでも被害者をこれ以上増やさないことに関してでもない、不安になったのは亜里沙が亜里沙でいられるかだ。

どうせ治せるからと洗脳状態のデジモンにひどい痛みや障害を起こすような攻撃をしてしまわないか、いざ目の前にしたら悪夢がよぎって勢い余って殺そうとしてしまうんじゃないか、そうしたら善人の、世莉が考えているような亜里沙でいられなくなるんじゃないかというそういう不安だ。

亜里沙は聖を頼るつもりではあった。だけど聖の連れているエンジェウーモンもユノモンを止められるデジモンではない。

亜里沙は一度息を吐いて鏡を見に行った。そこにいるのは弱気で善良で世莉に守られている亜里沙ではない人間だ。長い前髪はまばらで、隙間から覗く目に怯えた様子はなく底なし沼の様な暗くて深くて濁った目だった。

前髪を丁寧に整えて目を隠す。前髪の下の目も世莉には見える、だからそう見えない目をし続けなければ行けない。そうでなければ亜里沙で居られない。

世莉の前でも竜美や蘭の前でも、両親の前ですら亜里沙は亜里沙で居るべきだ。

この日もユノモンは成熟期まで退化し、亜里沙は表情を作って蘭の描いた薬を飲むために世莉の家に行き、薬を飲んだら竜美と蘭が自発的にはやらないだろう宿題を世莉と一緒に手分けして見たりして、家に帰ってからもいつも通りに過ごしつつ聖にメールを送り、準備を始める為に学校へと向かった。

ユノモンは成熟期から一つ進化をし山羊の角の生えた少年が顔の半分を緑色の仮面で覆っているような姿のデジモンへと変わった。

あらゆる面を持つユーノーの名を持つデジモンにつながる種にふさわしくそのデジモンは多くの姿を持ち、緑の仮面をつけた姿もその一つだった。

そのデジモンは腕の先に生えた鞭の様な茨からとげを幾つかそぎ落とすと亜里沙に一度渡してユノモンへと姿を戻しもう一度そのとげを受け取って手の中に握り込み開くとそれは種に変わった。

そしてユノモンはその種を持ったまま夢の中で見たその場所へと向かい部屋の隅や端に小さく穴をあけたりして種を埋め込み、かけらを戻して外見上修復した。

一見すると意味のない行動だがそれがユノモンの取った行動であるならば意味が出てくる。より正確に言うならばその内側にいるのがユノモンである時に意味を成す。

ローマの神殿と言えばとくに有名なのはパンテオンだが、ローマは戦争でギリシアを侵略したが文化では侵略されたと言われるほどの影響を受けている。ギリシア神話の多くの神々がローマ神話の神々と対応する事からもそれはわかり、神殿も例外ではない。

ギリシアの神殿はパルテノンに代表されるように内側に神のいるべき部屋を、その周りを多くの柱で囲うようにしている。

その柱は木の象徴であると見られていて、柱を並べるのは疑似的に森を創る行為。古代ギリシアより神のいるところは森であり、同時に森というのは神の領域であったという事。

これだけだと単なる知識でしかない。蘭の絵にかいた設定ともそう大して変わらないものだが、ユノモンという神の名前を冠するデジモンがその内にいることでそれは現実に力を持つ。

仕込んだ茨の種は木になるもの森を作るものでありユノモンとの縁があるものである。それらで囲まれた場所はユノモンがいる時神殿と同じように疑似的な森であり、神域と言える。

神域であるという事はそこは人の力の届かない場所であるという事だ。

人に画像を晒すには人が繋がる場が必要になる。しかし隔絶された神域からはインターネットにも当然つながらない。その中では応援も呼べず、画像を拡散することも外の誰かに託すことすらできない。

その準備は聖が乗ってくる前提での準備だ。ここで事をかまえ、そして同時に外のどこかに保管されている画像を処理する。

聖が乗ってくる自信はあった。聖の立場で二体しか今のところこの学校にいない究極体を調べていない訳がない。気づいているならば利害の一致が見えているから当然乗って来る。もし気づいていなかったとしても情報欲しさに乗って来る。

連絡ありがとう。聖だよ。明日はよろしくね。

短い文。亜里沙が隠しているということもわかってるだろうからこれはある種の脅しの意味があるのだろうと亜里沙は考えたが、返信はしなかった。

最初のメッセージで一方的に待ち合わせの場所は伝えていたし、行くのはユノモンだけ。亜里沙がそこに行く気はさらさらなかった。

「……明日から世莉ちゃんの前ではアイギオテュースモンにしておこうか、緑のやつで」

「そうだね、でも緑でいいのかな?黄色の方が神聖な感じが亜里沙らしいかもよ?」

「それは悩みどころだけど神聖さよりも安らぎを覚えさせるような色合いの方がより亜里沙らしいと思う」

確かに、とユノモンは頷いて姿を消す。

そして亜里沙は眠りにつく。その日亜里沙が見た夢にはもう未来の内容は含まれていなかった。

「お、はよ、世莉さん」

次の日、亜里沙は朝のバス停で世莉に会った。普段世莉が使う時間帯と違ってすでにちらほらと人はいたがこの時間帯にいる理由は考えるまでもない。自分の安全と亜里沙の安全のためだ。

「おはよう、亜里沙さん」

そう返す世莉は窓側の席に座り亜里沙は通路側に座る。

亜里沙は誰より世莉を見ている。誰も見ていない世莉を見ている。

例えばつい先ほどまで体育の授業があったとする、そうしたら次の授業中はどうしても汗の臭い、場合によっては多種多様な制汗剤の臭いも混じって教室に広がってくる。汗の臭いはそれだけで不快な人もいるが、その比でないのが世莉だ。

体育の次の授業の後の休み何でもないような顔でトイレに行って吐きそれでも気づかれて心配させまいと口の中を洗って何でもないように一緒に弁当を囲むようなことをしているのを亜里沙は知っている。

だから人がいるバスに乗るのがどれだけストレスかも亜里沙は想像がつく。

それらは危険として予知夢で見るほどのものではないが、警戒するというだけでそれそのもののストレスに加えて確かに世莉にダメージを蓄積していく。

亜里沙はバスの中でアイギオモンが完全体に進化してアイギオテュースモンになったという話をし続けた。

少しでも気が紛れる様に、そして自分が世莉の視線を意識し続けて望まれる亜里沙でいられるように。少し普段より積極的に話した。

学校に着いてからホームルームまでの間は教室で本を読んで過ごし、蘭と竜美が一緒に登校して来たのも確認して聖にメッセージを送った。

亜利沙の予知は全てが見えるわけじゃない。特定の事柄しか見れないから危険が何かはわかってもそこに至るまでの過程の全ては見えない。

今回の場合はどうやって世莉が一人にされてそこに誘導されたかがわからない。亜里沙は常に隣にいるつもりではいる。世莉だって警戒はしているはずだ。

だけども一人になるわけで、であるならば世莉は自分の意思で一人になったか先生のような頼みを断り難い誰かを利用したか。特定の教室に誘導するとなると世莉が自分の意思で出て行くようにさせたと考えた方が納得しやすい。その時の理由はなんであれ接触したタイミングが何処かにある。それを見つけるのに聖の使える目の数は都合が良かった。

そう考えて亜里沙は世莉に接触してくる様なら阻止して欲しいというメールを送ったが、ある程度見当自体はついていた。目立たずに接触するならばタイミングは数回しかない。

朝来る前に下駄箱か机に入れておくというのがまず一つ、これがなかったのは亜里沙も確認している。

移動教室の間に机の中や鞄の中にに入れておく、これが亜利沙の考える最有力候補。一人誰もいない教室に引き返したりしても何か忘れたのだろうかとなるだけ。その移動教室が体育でもなければ自分のクラスでないクラスに入ったからといってそう目立たない。

あとは昼休み、世莉は亜利沙や竜美、蘭と食事を取るため席から離れる。ただ、同じ教室内にはいるから亜利沙達にも気づかれやすく、考えにくい。


スレッド記事表示 No.4952 それは悪魔の様に黒く 五話 前ぱろっともん2018/04/03(火) 20:57
       No.4953 それは悪魔の様に黒く 五話 後ぱろっともん2018/04/03(火) 20:58
       No.4954 それは悪魔の様に黒く 五話 後書きぱろっともん2018/04/03(火) 21:27
       No.4959 これはもっと愛を込めて夏P(ナッピー)2018/04/07(土) 04:56
       No.4960 感想返信ぱろっともん2018/04/15(日) 18:48