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ID.4928
 
■投稿者:アナ銀スカイウォーカー 
■投稿日:2018/03/17(土) 16:23
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短編『愛と狂気と』 前
         
【注意】
R-18とまでは勿論いきませんが、物語の一部で少々性的に過激な表現が含まれています。ご注意ください!






 むかしむかし、あるところに、選ばれし子供たちと、そのパートナーデジモンがいました。彼らは、デジタルワールドの支配を目論む魔王を退治するために、立ち上がりました。

 魔王の住処を目指す中で、子供たちとそのパートナーデジモンは成長し、友情を育んでいきました。その中でも、ある天使型デジモンは自分のパートナーのことを、心から愛していました。徐々に、周りのデジモンが不審に思うほどに、その愛は大きくなっていきました。パートナーはその愛を、精一杯受け止めようとしました。

 そして長い時を経て、遂に選ばれし子供たちとデジモンは、魔王を退治することが出来ました。そしてそれは、子供たちとデジモンの別れの時が来ることを意味していました。子供たちは、自分たちの元の世界へ帰らなければなりません。自分のパートナーを愛したデジモンは、この事実を受け止めきれずにいました。そして、そのデジモンはある行動に出てしまったのです。

 子供たちが元の世界へ帰る前夜、そのデジモンは自分のパートナーを連れて、皆の元から遠く遠く離れた山奥に連れて行きました。そして、パートナーの子供を抱き寄せて、言いました。

「あなたと離れたくない。私と、永遠に一緒に暮らしましょう」

 伝えたのは、愛。しかしその言葉は狂気を孕み、子供を抱きしめる徐々に強くなってきました。そして、子供は小さな声で

 「嫌」

と言い放ち、デジモンを突き放しました。デジモンは戸惑いました。自分の愛を、初めて拒絶されたことに。そして、そのデジモンは思いつきました。

 この子を殺し、自分の中に吸収してしまえば、私の中で永遠に生き続けるのでは、と。

 そして、そのデジモンは自分のパートナーを手に掛けようとしたのです。
 幸い、ほかの仲間たちが駆け付けたことにより、子供の命は助かり、自分のパートナーを殺し、食らおうとしたその愚かなデジモンは、仲間たちの元から逃げ去っていきました。

 そのデジモンの歪みきった心は、元々持っていた白く、美しい翼を黒く塗りつぶし、美しい天使だったその姿を醜き魔王に変えました。そしてその魔王は、デジタルワールドの深く、深くに潜り、叶わぬ恋を今も想いながら、密かに暮らしているそうです。

 おわり


―――
――


 随分と長い間眠っていた気がする。夢から醒めた魔女は、座っていた玉座で少し伸びをした。その傍らでは、丸く小さな黒い騎士が、2人には広すぎる部屋の先にある扉を、じっと見つめていた。そして彼は、目覚めた魔女に気づき、あるのかないのか分からない背筋を伸ばし、魔女の方へ向き直る。

 「お目覚めですか、リリスモン様。こちら、何も異常はございませんが、お疲れでしたら、寝室でお休みになった方が……」
 「ご苦労、スカルナイトモン。そうさせてもらうとするかね」
 「最近、正義ぶった連中が殴り込みを仕掛けることが多かったかですからね。まぁ、リリスモン様が出る幕もありませんでしたが」

 スカルナイトモンに導かれ、リリスモンは玉座から扉へ続く長いレッドカーペットを歩いていく。

 七大魔王・色欲のリリスモン。周囲を魅了する妖艶な容姿と圧倒的な力から、デジタルワールドに君臨する強大な力を持つ7体の魔王型デジモンの一角を名乗る彼女であるが、七大魔王の称号も、彼女が知らぬ間に付いた称号である。実際にほかの6体の魔王とは幾らか面識があっても、特にそれに対して干渉したことも無ければ、結託して世界の覇権を握ろうとしたことも無い。ただ訳あって逃げ込んで来たこの世界で身に振る火の粉を払ううちに、その名が広がっていっただけである。
 彼女が住むこの大きな城も、元は彼女が身を隠すために逃げ込んだ廃城であるが、彼女の下に付いた手下たちが勝手に根城として改築したものである。

 ようやく扉の前に着く、といったところで慌ただしい足音が外の廊下から響いてきた。乱暴にドアが開け放たれると、吸血鬼がリリスモンの前で息を切らせて倒れこんだ。

「はぁ、はぁ、き、緊急事態でございます」

 スカルナイトモンは、倒れこんだ吸血鬼・ヴァンデモンの袖をその手の代わりに携えた赤いスピアーで引っ掛け彼の顔を眼前まで引き付けると、凄まじい剣幕で睨みつけた。

 「貴様、リリスモン様の御前であるぞ。なんだその様は」
 「落ち着け、スカルナイトモン。どうしたヴァンデモン、話せ」

 ヴァンデモンは少し息を整えると、涙目になりながらリリスモンの方へ向き直る。

 「っ……現在、恐ろしい力を持ったデジモンがこの城に」
 「ほう、数は?」
 「それが、たったの一体でして」

 ヴァンデモンの話を聞き、スカルナイトモンが驚いた様子を見せる。

 「なっ、城前に居たお前の指揮下にいる護衛隊はどうした」
 「全滅です。致命傷に至ったものは一体もいませんが、一匹残らず戦闘不能に……現在も城内の者を倒しながらこちらに……き、きた―――」

 話の最中に自分が来た道を振り返り、声を裏返らせるヴァンデモン――を、スカルナイトモンは前方へ突き飛ばしたのと同時に、廊下の果てから迫りくる何かとヴァンデモンが激突、ヴァンデモンはそのまま薙ぎ払われ、廊下の窓の外に弾き飛ばされた。
黒く禍々しい鎧を纏ったそれは、自らが薙ぎ払ったヴァンデモンに一瞥をくれてやることも無く、乱れた自分の長髪を払うと、目の前にいたスカルナイトモンとリリスモンをその赤い瞳で捉えた。

 スカルナイトモンはリリスモンの守るように彼女の前に立つ。

 「貴様か、城を荒らす不届き物は。このスカルナイトモン、我が主リリスモン様には指一本触れさせはしな―――」
 
 一瞬だった。スカルナイトモンの球体のような体が宙を舞い、まさしくボールの如く天井、そして地面へと叩きつけられた。激しい音と共に天井の一部が倒れたスカルナイトモンの上に降りかかるが、スカルナイトモンはピクリとも動かない。いつの間にスカルナイトモンが元いた位置に佇む黒いそれは、改めてリリスモンの方を見やる。

 「ほほぅ」

 一方のリリスモンは、倒れたスカルナイトモンに気をかけることはなく、ただ不敵にほほ笑み、一歩、黒いそれから間合いを取った。

 「闇の十闘士、ダスクモン……」

 十闘士、選ばれし子供より遥か昔に利用されていた、デジタルワールドを防衛するシステムのひとつである。子供の心の力を利用しデジモンに強力な力を与え、世界の脅威に対抗させる選ばれし子供に対し、十闘士は、人間の子供を媒体とし、伝説のデジモンの力を持つ『スピリット』を与えることによって人間そのものをデジモン化させるものである。強大な力を持つ反面、人間の肉体・そして精神に対して強い負荷をかけることから、選ばれし子供が防衛システムとして採用されたと同時に、システムそのものの使用が禁止され、スピリットは世界各地に封印されていたと聞いていた。今では図鑑の中でのみその存在が確認出来るまさに『伝説』だ。
 リリスモンの前に対峙するのは、10種類存在する『スピリット』のなかでも強大かつ精神汚染のリスクを伴う、闇の十闘士である。

 「伝説の十闘士にすら命を狙われるとは、私も随分と有名になったものだな」

 目の前にいる伝説に対しても、リリスモンは怯むことはなかった。むしろ新しいおもちゃを見つけたかの如く、少々興奮気味の様子である。彼女の命を狙うものは数多くいたが、ここのところ、彼女と戦うまでに至る骨のある存在がいなかったからである。

 「最近運動不足だったんだ。少し楽しませておくれよ」

 その刹那、それでは遠慮なく、と言わんばかりにダスクモンは一瞬でリリスモンとの距離を詰め、彼女を捉えんと飛びかかった。

 「ほう、面白い」

 それに対して、リリスモンはひらりとダスクモンを受け流した。華美な衣装に身を包むリリスモンであるが、それに見合った、舞のような華麗な動きで、ダスクモンから繰り出される手を、次々と回避していく。
 そうしているうちに、ピタリ、と、ダスクモンの動きが止まった。

 「スライドエヴォリューション」

 ぼそっとそう呟きが聞こえてすぐ、ダスクモンを中心に突発的な暴風が吹き荒れた。リリスモンは思わず防御態勢をとる。

 「ちぃっ」

 部屋中の埃が舞い、ダスクモンの姿を見失ったと感じたのとすぐに、明かりを灯していたはずの部屋が暗闇に閉ざされた。いや、違う。リリスモンはすぐに頭上を見上げた。
それは影。広い天井を、怪鳥の翼が埋め尽くしていた。

 闇の闘士のもう一つの姿・ベルグモン。十闘士にはそれぞれ、人の形を象ったヒューマン、獣の形を象ったビーストの2つの姿を持ち、かつて十闘士はこの2つの姿を巧みに使いこなし戦っていたという。そして今も。

ぎぃああああああああああああああああ

 怪鳥・ベルグモンは鼓膜を突き破る勢いの鳴き声を上げ、大きく広げたその翼を地面に叩きつけんとばかりに大きく動かした。その度に舞い上がる暴風はリリスモンに超重量の風圧として襲い掛かる。

 「上等よ」

 振り上げた右腕から描かれた魔法壁が、リリスモンを暴風から守る。涼しい顔をしたリリスモンをよそに、部屋の床はその原型を失い、重みで割れ、その跡が砂塵として吹き荒れた。
 一通り風が止み終わった途端、今度はリリスモンが描いた防御壁に、ズシリと、何かが降りかかってきた。再び黒き騎士に姿を変えたダスクモンが、魔法壁に降り立っていたのだ。そしてその壁を破らんと、その拳を構えた。

 「そろそろ飽きたね」

 リリスモンがパチンと指を鳴らすと、ダスクモンが乗っていた魔法壁が一瞬にして消えた。足場を失ったダスクモンは、一歩後方へ下がったリリスモンの足元に、なすすべもなく転落、リリスモンは態勢を整える隙を与えんと、そのままダスクモンの腹部を蹴り飛ばした。

 「ぐぅっ」

 強烈な一撃に、ダスクモンから思わず声が漏れた。リリスモンはそこからすかさず魔方陣を描き、そこから現れた無数の闇の拳が追い打ちをかける。一撃で仕留めることは考えない。痛みを極力長く与え、いたぶり尽くした。

 拳の雨が止み、ぼろ雑巾のようにその場に倒れているダスクモンの元へ駆け寄り、左手でその胸倉を掴み、自分の眼前までそれを引き寄せた。ダスクモンはまだ生きている。息は絶え絶え、体はボロボロでも、その赤い瞳にはまだ活力が残っており、リリスモンの瞳をただ見つめている。

 リリスモンはここまでの戦いを通して、一つ疑問を持っていた。この闇の闘士のから、彼女はこれまで一切の『殺意』を感じていなかったのである。これまでの攻撃も、一撃で決定打を与えようと繰り出されたものがなく、牽制や相手の動きを封じることを目的としたもののみのように感じたのだ。

 「あんたの目的はなんだい」

 ただ一言そう聞いた。ダスクモンはそれに応えるように、ゆっくりと右腕を上げた。そしてその手はそっと、リリスモンの右頬に触れた。
そしてその右手は頬をなぞり、首筋、そして彼女の開いた胸元へと降りていく。

 「おっと、レディの胸元に無断で手を突っ込むとは、マナーがなってないねぇ、十闘士さんよ」

 リリスモンはニヤリと笑うと、ダスクモンの手を、自分の右手でがっしりと抑えた。そしてそこから、徐々に煙と、じゅうぅ、と、肉が焼けるような音が上がり始めた。リリスモンの持つ右手に持つ魔爪「ナザルネイル」が、ダスクモンの鎧を溶かし始めたのである。ダスクモンはハッとした表情を見せると、その右手を、なんとか振り払った。

 「まだそんなパワーが残ってたかい。関心関心」

 ダスクモンを掴んでいた手をパッと放すと、ダスクモンはリリスモンの前に跪くように倒れこんだ。ダスクモンは溶けて原型をとどめていない自分の右腕を見て、舌打ちをした。まだ煙を上げ、溶け続けるその右腕に対し、ダスクモンは左指で何かを描くような仕草を取ると、右手に纏っていた黒い鎧が、パっと粒子になって消えた。そこから、その黒い姿とは対照的な、白く細い腕が現れた。

 「どこから来たか知らんが、うちの連中を一人で叩きのめした上に少しでもあたしの相手が出来ただけ、大した実力だね。なんなら、あたしの下で働いてみる気はないかい?」

 いくらか疑問は残るが、目の前にいるこの騎士の実力は本物だ。それに、伝説の十闘士という存在に、リリスモンは単純に興味を抱きつつあった。仮に反乱を起こしたとしても、ねじ伏せることは容易い。リリスモン自身、まだ実力の半分も出していないのだ。

 「実績次第じゃあ、褒美、やってもいいがね」

 リリスモンは胸元の大きく開いた花魁風のその華美な着物をさらに着崩し、胸元を大きく開けて見せた。これは、ダスクモンの正体が恐らく『人間』であること、先ほどの手の仕草から、もしやダスクモンの目的が彼女の首ではなく『彼女自身』だったのではないかという予測からくる、彼女のおふざけである。

 「まだ、足りない」
 「ん?」

 ぼそりと、そう呟いたのが聞こえた。その瞬間、ダスクモンはその場から大きく飛び、とっさに距離を取った。あのボロボロの体からまだそんな動きが出来るというのか。

 「また、出直す」

 ダスクモンはボロボロになった大部屋を抜け出し、廊下の窓から飛び降り姿を消した。リリスモンは特に追いはしなかった。その後一瞬の光と共に遥か彼方へ飛び去って行く怪鳥をただ見つめていた。

 「何が足りないって言うんだい、エロ助が」

 小さく丸い騎士が瓦礫から起き、ボロボロの体で無傷の主の元に駆け付けたのは、それからすぐのことである。


スレッド記事表示 No.4928 短編『愛と狂気と』 前アナ銀スカイウォーカー2018/03/17(土) 16:23
       No.4929 短編『愛と狂気と』 後アナ銀スカイウォーカー2018/03/17(土) 16:35
       No.4931 獣の王と書いて狂う夏P(ナッピー)2018/03/17(土) 22:16
       No.4933 感想返信アナ銀スカイウォーカー2018/03/22(木) 08:53
       No.4947 狂気の中に驚喜をみたtonakai2018/03/28(水) 00:22