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ID.4855
 
■投稿者:パラレル 
■投稿日:2018/02/10(土) 20:33
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不帰の森
         
※オリジナルデジモン小説アンソロジー企画「DiGiMON WRiTERS」寄稿作品




 鬱蒼と茂る森を少し呼吸を荒くしながら歩く。草を踏むテンポよりも早く、森林のマイナスイオンを受けても収まらないほどの心音。それが自分のものだとは分かっているし、それが脇に立つ紫と白の衣裳を纏った同伴者――ロトスモンのせいだとも分かっていた。
「どうかしましたか、ハル?」
「いや……」
 慌てて顔を背けて平静を装う。表情を読めないためにばれているかは分からないが、何か気恥ずかしさを覚えてしまう。
 おかしい。見た目は確かに多少官能的な姿をしているが、結局はデジモン。人ではない。そもそも今まで彼女と一緒にいてこんなに意識したことがあっただろうか。
「……ん?」
 軽く記憶を探ろうとするも、霧がかかったようにいまいち曖昧で不鮮明だ。恥ずかしい話、ロトスモンがいつ、何をきっかけに究極体のこの姿にまで進化したのかも憶えていない。これは本人の前では口にできないほどに素直に不甲斐ないと思っている。
 テンションが下がったところで思考を目の前の森林へと切り替える。
 そよ風が木々を揺らし心地よい音色を奏でている。緑しか目立つものがないと思っていたが、案外そうでもなくところどころ可愛らしい花をつけている木もあった。すべての木々が花をつけている訳ではないが、それが逆に愛らしく思える。花をくすぐる甘い匂いに気分も安らぎ、小さな幸福を得たような気分だ。
 どこかは知らないがここはとても心地の良い場所だと心からそう思えた。
「いいところだな、ここ」
「お気に召したのですか。それはよかった」
「うん、木くらいしか目に映るものはないけど、ただ娯楽施設を固めて楽しい場所を演出する場所よりかは、大自然って感じで俺は好きだ。まあ、一番酷いのは娯楽施設固めて演出はしたものの閑古鳥が鳴くほどに寂れたパターンだけどな。あれは何もないよりも悲しい」
「そうですか。よく分かりませんが、そういうものなのですね」
「まあ、そういうもんだ」
「そういうものなのですね、ハル」
「ん……」
 会話が途切れてしまった。一応会話の形は成しているのだから不機嫌という訳でもないようだ。しかし、なんというか後を繋ぐのがいつもどおりいかないというか、距離を測りかねて無理に話を進展させようとして尻すぼみになっているといった感じか。
 変な話だ。長年連れ添った相手だというのに不思議と微妙に調子を狂わされる。これはきっと自分が健全な青少年であるために変にロトスモンを意識しているという理由だけではないだろう。間違いなく。絶対に。
「んお?」
 少し前方が明るくなった。木々が少なくなって日差しが射してきたのも一つ。そして、前方に見えてきた小さな湖に反射した日光がもう一つの要因だろう。退屈していたわけでもないが、こう目に見える変化というのも新鮮で良いものだ。何より深い森を抜けた先に鎮座する澄んだ湖というのはなかなか絵になる。写真の趣味はなくとも一枚は撮ってみたくなる。ここにカメラなりスマートフォンなりを持ち込んで来なかったのが非常に悔やまれる。依存度が高いと心配されていた自分がなぜこんなタイミングで忘れているのかも非常に不思議でならないし、そんな間の悪さに怒りすら覚える。
「ちょっとここで休憩するか」
「そうしますか」
 別段急ぐこともないだろう。折角素晴らしい場所に来たのだから少しくらい腰を落としてもいいはず。
 比較的草が生い茂っていて、地面が露出していないところを探して尻をつく。風が頬を優しく撫で、香しい匂いを運んでくれる。今なら自分も込みでいい感じの一枚の絵になっていそうな気がした。
「なんというか……静かだな」
「そうですね」
 捻り出した感想があまりに普通すぎて少し泣きそうになったが、ロトスモンが淡々と同意してくれたので少し気が楽になった。
 二人何も言わずに静かに湖畔を眺める。
鳥も魚も気配すら感じられないのが残念で不思議だが、これはこれでゆっくりできるような気がする。
「…………」
「…………」
「……あの」
「ん?」
「あ、いやなんでも……」
「そうですか」
「はい、すいません」
「…………」
「…………」
 訂正する。会話がなさ過ぎて息がつまりそうになった。確かにこちらから話そうとしなかったのもあるが、果たしてロトスモンはこうも無口だっただろうか。何か自分が悪いことでもしたのかと思えて気分が悪い。
「そういえばこの湖の水って綺麗ですね」
「お、そうだな。確かに澄んでいて鏡のように俺のきりっとした顔を正確に余すことなく映している」
「そうですね」
「む……」
 折角語りかけてくれたのだからと渾身のジョークを返してみたのだが、予想外の反応をされてこっちが反応に困ってしまう。それはどういう意図を持って言ったのだというのか、いまいち感情を計りかねる。
「どうぞ」
「あ、どうも」
 少し悶々としたところで不意に突き出されたコップを受け取る。どこから取り出したのかという野暮な疑問は無しにして、そこに満たされているひどく透き通った水は湖の水だろう。話の流れからすればそう考えるのが自然だ。
 なるほど、確かに澄んで美味しそうな水だ。穢れ一つなさそうな無色透明のそれは覗き込む自分の顔をよく磨かれた鏡のように映し返す。こう覗いているとなんというか吸い込まれそうな感覚に包まれる。自然と腕が持ち上がり、顔が近づいていき唇がコップのふちに触れる。
――……こい
「んお?」
 不意に頭を過る声。それは脇でこちらを見つめるロトスモンのものとはまったくの別物でありながら、何故か彼女以上に親しみを感じるものだった。
「何だ今の……あ」
 意識を目の前の手元に戻すと先ほどの声で驚いたのかコップを取り落してしまっていたようだ。折角注いでくれた水も地面にこぼれてしまった。
「ああ、悪い」
「……いえ」
「あ……なんだ。すまん」
 その言葉に刺があったように感じたのは気のせいだろうか。なんとなく気まずくなってもう一度謝ってしまう。そこまで機嫌を損ねるようなことだったのか。今さらになってロトスモンの新たな一面を見ることになったが、驚きよりも少し肌寒い恐怖を感じたのは何故だろう。
「別にいいです。コップは別のがありますし」
「あ、ああ」
 別にこちらのミスなのだから落としたコップを使い回してもよいと思ったが、これ以上地雷を踏みたくないので何も言わないでおく。
――……こい
「あ?」
 再び聞こえる声。それはこちらを誘導するような声音で、反芻するうちになぜか脳裏にどこに行くべきかも浮かんできた。
すっと立ち上がって湖畔に沿って歩き出す。目的地は先ほどから頭にこびりついている。だが、これは声に引っ張られて歩き出したという訳ではなく、あくまで自身の意思によるもの。なぜかこの言葉に従うべきだと思ったのだ。
「ハル、どちらに?」
「あ……いや、ちょっと散策に」
「一人でですか?」
「まあ、な。あ、水はもういい。悪い」
 また水を汲んでいたロトスモンが、こちらが立ち上がるのを見つけたようだ。疑るような視線を向けられるのも無理はないが、どうにも引き下がる気にはなれなかった。こっちが溢したにも関わらずまた水を汲んでくれたのにそれを蔑ろにするのも相まって、そんな風に意地を張るのを申し訳なく思った。
「もう俺も十七だぜ。流石に迷子になるような無茶はしない」
「しかし……」
「すぐ戻るって」
 尚も食い下がろうとするロトスモンを振り切り、テンポよく歩きはじめる。
 行く先の目標は不明。だが、どう行けばいいのかは分かっていたし、そこに何かがあるのも分かっていた。
 湖畔に沿って歩いてすぐ、左方に木々が開けた道が見えてきた。若干傾斜が出てきたその道を進み始めて少しすると、地面に深い溝や亀裂がしばしば見られるようになってきた。普通ならば正しい道を通っているのか不安になるところだが、道順も完璧に覚えているし、ロトスモンからもそこまで離れていないのでまあ大丈夫だろうと楽観的な思考で気にしないことにした。
 それよりまずは目的地への到達。頭に浮かんでいる道順通りにいけば、きっとここまで抱えていた微妙な違和感のようなものも解消できるのではないか。そんな根拠のない希望が一瞬ちらつき、その後それを半ば本気で信じている自分に正直驚いた。
――……こい
「もうすぐそこか」
 目の前の、今までで一番の急な勾配の道の前で何の根拠もなくそう呟いた。いや、根拠がない訳でもない。但しそれは自分を呼ぶような声が聞こえてから脳裏にへばりついた道順だけ。今思えば、何者かの術に嵌められて誘い込まれたという考え方も出来たはずだが、ここまで来てはもう遅い。半分無意識のうちに足は動き、一歩一歩確実に坂道を歩いている。
――……こい
 坂を上った先、今視線の先に見える一本の木の根元に何かがある。根拠はなくともその確信だけはあった。それは一歩一歩踏み出すごとに頭にじりじりと焼け付くように浮かぶ道順と同じもの。きっとそこに何かがあって自分はそれを確認しなければならない。そんな使命感が自分を強く突き動かし、ここまで足を進ませてきた。
 ところでその使命感は本当に自分の意思によるものなのだろうか。
――……こい
「む……」
 自分は何かとんでもないことをしているのではないか。何か重要なものを壊そうとしているのではないか。不意に浮かぶその疑問たちが、テンポよく動く足とは裏腹に、自分の心の内を不安定に揺らす。
――……こい
 そして、先ほどから何度も反響するこの声。聞こえる度に頭に鈍い痛みが走り、その重みは回数を増すごとに無視できないものとなっていく。
 自分を呼ぶのはいったい誰だ。なぜ、自分に何度も同じような言葉を掛け、ここまでの道を指し示すのだ。こんなことになるのなら、最初から無視しておけば良かったのだろうか。いや、それは無理な話だろう。根拠を述べることはできないが、なぜかそれは断言できる自信があった。
――……こい
「……るさい」
 尚も言葉は反響し、足は自分の物ではないかのように進む。明白なまでにおかしくなった自分の身体に恐怖を覚えるよりも苛立ちが募ってきた。
――……てこい
「うるさい! いったい何なんだ!?」
「失礼しました、ハル」
「あ……」
 思わず叫んでしまったのをすぐに後悔した。後ろを見ると、いつの間にか追いかけていたロトスモンが言葉とは裏腹に怪訝そうな表情をしていたのだ。
「ついてきてたのか」
「黙っていたのは謝りますが、当然でしょう? あなたを遠くに行かせる訳にはいきません」
「あ、ああ……そうか。すまん」
 確かに何も考えずに一人で突っ走るのは無策で無謀だった。それでもふらふらと歩き出した自分をロトスモンが追いかけてくるのは当然といえる。
「では帰りましょうか」
「いや、このままあの木まで行くぞ。ロトスモンもいるなら何かあっても問題ないだろ」
 自分の浅はかさは恥じるが、正直ありがたいと思っている自分もいる。ずっと頭に響いていた声はフィルターに阻まれたように遠ざかり、精神的にも少し安定したような気がする。そうして冷静さを取り戻した上で、自分を呼ぶ声の正体、そいつが自分に見せようとするものが何かを見極めたくなった。
「いけません。すぐに引き返しましょう」
 だが、ロトスモンはそれを許そうとしない。確かに勝手な行動ばかりで怒るのも当然だが、どうにも今回の頑なな態度はそれだけが原因ではないように思えた。
「なんでだ。もしかしてあそこに何があるのか知ってるのか?」
「いえ……しかし……」
「なら別にいいだろ。すぐそこなんだし」
 問いかけてみても、ロトスモンは何かを隠そうとするように口をつぐむ。その不審な態度が少し癇に障り、また彼女を振り切るように足を踏み出す。
「駄目です!」
 立ち去ろうとする自分の手をロトスモンが掴む。その珍しく必死な声に思わず振り向き絶句した。
「かは……」
 ロトスモンの腹部から突き出る一条の光の剣。それは確実に彼女の核たるデジコアを貫いていた。
「く…ふ……」
「……は?」
 綺麗な衣装を血で濡らして、彼女は膝から崩れ落ちる。脳が目の前の事象を理解するのを拒んで、足が一歩も動かない。助けなくてはいけないはずなのに何もできそうにはなかった。
「――そろそろ返してもらうぞ、蓮の魔女」
 静かに、だが明らかに殺意と同等の怒気を孕んだ低い声が耳に染み入る。その声は、倒れた彼女の奥から現れる、その心臓部を貫いた張本人のもの。そのはずなのに一瞬安堵に似た感情を抱いてしまったのは何故だ。
 蒼銀の鎧を纏った竜人の聖騎士。ロトスモンの仇は一言でいえばそんな出で立ちをしていた。彼女を貫いた光剣は腕のブレスから出現させたらしく、今も右の拳でバチバチと火花を出していた。
 見惚れそうになるほどに優雅で気高く強く、――そしてなぜか親しみを覚える姿。そんな相手を前にたかが一介の人間に過ぎない自分に何が出来ようか。しかし、それでも吼えてしまった。
「てめえ、よくもロトスモンを。何者だ!」
「は?」
 こちらの出来る限りの怒声を張ったつもりなのに、聖騎士はそんな呆けた声を漏らす。数秒後、顎に手を置いて少し考えた後、彼は何の警戒もなく、一歩ずつこちらに歩き始めてきた。
「な、なんだよ……」
 意地を張って吼えてみたがすぐに尻すぼみになって消える。依然足は動かず、一歩ごとに威圧感が増していく聖騎士が近づくのをただただ待つだけになってしまっていた。
 そして、聖騎士はもう目と鼻の先。自分もまたロトスモンと同じように殺されるのかと、恐怖から思わず目を瞑る。
 だが、死につながるような痛みが走ることはなく、多少乱暴な程度に両肩を掴まれただけだった。
「え……」
 ゆっくり目を開けて、こちらを真摯に覗き込む聖騎士の瞳を視界の中心に収める。その瞳には長い戦いの果てに磨かれた強き意思を宿し、その一方で、大きな心の支えを失いかけているような不安定さも持っていた。――そして、自分はその瞳をよく知っていた。
「戻ってこいって、散々言っただろうが、ハル。いや、青崎春市」
「あ……」
 自分の名を呼ぶ声で、すべてが崩れ、すべてが正しく作り変えられる。
 今までの違和感の正体、微妙に噛みあわなかったその根底となる理由が一つの真実となって自分の目の前にいる。
「……そうだ。――俺のパートナーはお前だった」
「気づくのが遅すぎるぞ、相棒」
 シニカルに笑うその顔も何だかんだ言って寂しがりなところも見慣れたもの。当然、いつ彼がここまでの姿にまで進化を遂げたのかもしっかり憶えているし、その過程で何があったのかも鮮明に思い出せる。今までともに歩んできた旅路、そのキーポイントを忘れたりはしない。
不帰かえらずの森だと言ってるのに、興味本位で突っ走って、結果これじゃざまあねえな」
 そうだ。自分は最近知り合いのテイマーから聞いた都市伝説を聞いて、その調査に向かったのだった。
 曰く、デジタルワールドのある森の深奥のエリアに行った自分くらいの年の青年テイマーが軒並み行方不明になっているとかなんとか。
 不帰の森などそれらしい名前がついていたその案件の中で自分も被害者になってしまっていたようだ
「悪い。今回は本当に助けられた。俺としたことが迂闊だった」
「いつものことだろうが」
「む……」
 反論したいところだが、現在進行形でそうできない理由ができてしまった。今回は完全にこちらのミスなので、文句の言いようがない。
「あ、が……ハル……」
 辛うじて聞こえるほどにか細い声が聞こえる。地面に倒れていたロトスモンが残った生気を振り絞ってこちらに手を伸ばしていた。ゆっくりとした動作にはほとんど力など無く、何度も地に落ち、その度に震えながら腕が持ち上がる。
 目に見えて弱っている彼女の目には何が映っているのだろうか。今まで一緒にいたのに何もしようとしない無責任な自分だろうか。
「……くそっ」
「おい、待て!」
 本当のパートナーが止めに掛かるより早く、彼女の手を取り、両手で出来る限り優しく包み込む。その身体を救う手段はないし、パートナーにしてみれば生かすことも許しはしないだろう。
 だから、せめてその最期くらいは看取る。その義務が多少なりともあると思った。
「ハ……ル……」
 きっと彼女にはもう自分のことは見ていないし、自分のことを呼んでいるのではないのだろう。いや、多分最初からそうだった。彼女は最初から自分ではなく自分を通して誰かを見ようとしていたのだ。
「ああ、ここにいる。俺はここにいる」
 それでも少しの時間を過ごした分、思うところはある。それが元々の調査の標的だとしても。自分が屈辱的なほどの幻に魅せられていたとしても。
「ァ……ハ……」
 手から伝わっていた温かさが消え、支える力が無くなったことで急に重みが増す。完全に熱が消えて冷たくなったところで諦め、静かに彼女の腕を下ろした。
「十数年前、十七歳の誕生日に事故で死んだテイマーがいたらしい。で、そのパートナーのロトスモンは翌日から行方不明。因みにそのロトスモンはテイマーのことをハルって愛称で呼んでいたらしい」
 今息を引き取った彼女がそのロトスモンなのだろう。十七歳でハルという愛称のテイマー。なるほど、悲しみを埋める代わりにするにはなかなかの逸材だ。
「そういや、お前この坂を上った先の木に何があるかって知りたがっていたな。見てみるといい」
「ん……ああ」
 なぜこのタイミングで、と思いながらも言われたとおり坂を駆けあがり、目標の木の前に立つ。
「……そうなるか」
 木の根元には、自分と同い年くらいの青年が十人ほど川の字になって倒れていた。皆穏やかな表情を浮かべているが寝ている訳ではない。既に全員の生命活動はとっくの昔に終わっていた。
「俺もそのうちこいつらのお仲間になるところだったって言いたいのか?」
「彼らよりは長く生きられただろうが最後は同じだろうな。結局、同じ人間など存在しないからな」
 きっとロトスモンはかってのパートナーを求め、同年代のテイマーを攫っては自分のようにテイマーに仕立てあげようとしたのだろう。だが、全員どこかで相違が生まれ、このように見切りをつけて捨てた、といったところか。
「そもそも彼女自身、自分のテイマーのことも完全に理解などできていなかっただろう。先ほどの有様では姿を思い浮かべることも無理だっただろうな」
 記憶は劣化し、少しずつ事実から剥離していく。さらにさまざまな人間をテイマーに投影しようとしていたのだ。最後の最後に彼女が手を伸ばしたのは本当に彼女のテイマーで相違なかったのだろうか。
「それでもロトスモンはテイマーに手を伸ばそうとしていた」
 結果的に、彼女は彼女と同じような境遇のデジモンをさらに増やした殺人犯となっただけだったが。
「なあ、俺がもし死んだら、お前どうするよ」
 こんなことに巻き込まれたからか、どうしても問いかけたくなった。もし、自分がパートナーを彼女のような悲しい存在に変えてしまわないか、と不安になったのだ。
「そんなことを心配するなら、俺より先に死なないでくれ。盾も剣も使う奴がいなきゃ何もできない」
「……そっか。肝に命じておくよ」
 返答に頷きながら、自分の中でテイマーとして気合いを入れ直す。ひとときをともにした彼女の悲劇を繰り返させないように。互いに互いを見失わないように。
 さあ、帰ろう。束の間の夢幻はここで終わり。唯一無二の繋がりは確かにここにある。


スレッド記事表示 No.4855 不帰の森パラレル2018/02/10(土) 20:33
       No.4856 後書きパラレル2018/02/10(土) 20:34
       No.4871 俺はナツだ!夏P(ナッピー)2018/02/11(日) 23:49
       No.4873 感想という名の波の乗ってみたtonakai2018/02/12(月) 12:38
       No.4876 感想ありがとうございますパラレル2018/02/12(月) 21:59