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ID.4823
 
■投稿者:ヤギ  HOME
■投稿日:2018/01/27(土) 09:34
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赤ずきんのお話/序
         


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 ○


遠い遠い、おとぎ話の世界のお話です。

その少女は、遠い遠い昔に死んだ、偉大なお婆さんのかけらから作られました。

お婆さんが少女だった頃にそっくりな、作り物の少女。

お父さん達は、少女の中に偉大なお婆さんの魂を入れて、蘇らせようとしたのです。


でも、少女の中に入ったのはお婆さんではなく、とても恐ろしい狼の化け物でした。

お父さん達は恐ろしくなってしまい、化け物が入った少女のことを捨ててしまいました。

あてもなくさまよう少女のことを、みんな、みんな、怖がりました。

少女はやがて、ひとりぼっちとなってしまったのです。


化け物の恐ろしい力で誰かの命をうばいながら、一人で必死に生きようとする少女。

その姿はまるで、返り血に染まった化け物に頭からすっぽりと包まれているかのよう。

そんな少女のことを、人々はいつしか『赤ずきん』と呼ぶようになりました――


 ○


「はあっ、はあっ、はあっ……!」

 赤く明滅する鉄の通路を、アテもなく走り続けている。
 何処へ向かえばいいのか。誰に会えばいいのか。何をすればいいかも、分からないまま――僕は、彷徨って、探し続けて、逃げ続けている。

――クソッ! こっちもダメだ! 逃げ……! あ、あああ!!!

「ひっ……!」

 遠くから、色んな音が聞こえる。
 警報、足音、爆発の音、戦いの音――断末魔。
 思わず蹲って耳を塞ぎ、目を瞑ってしまう。あまりの恐怖と悲しみで、気が狂ってしまいそうだ。
 ここはとても怖い場所だ。とても恐ろしい世界だ。
 違う、そうじゃない。本当に恐ろしいのは、あの“霊石”なんだ。この地獄絵図を描いたのも、きっとアレのせいなんだ。
 全て僕の責任だ。一刻も早く取り戻さなくては……。
 
 ――王女として、僕が、どうにかしなくちゃ……!

「……!」

 大きな“憎悪”が、ゆっくりと近付いてくる。長居はしていられない、どこか安全な場所へ逃れなくては――王国に、戻らなくては。
 でも、どうやって? どうすれば帰れる? 異世界へ転移するならまだしも、異世界から転移する魔法なんて、見たことも聞いたこともないのに。 
 何も分からないまま、何もできないまま、今はこうやって逃げ続けるしか……。
 その時だった――目の前に、小さな影が飛び込んできたのは。

「ビ!」
「わわっ!?」

 ビックリして、思わず尻餅を突いてしまう。
 涙ながらにお尻をさすりつつ、その小さな姿に目をやる。

「ビ! ビー!」

 それは、此方に迷い込んでからこれまでに何度も見てきた“彼ら”によく似た姿のデジモンだった。少し違うのは、丸っこい体の真ん中に付いた一つ目が緑色にぴかぴか光っていることと、“彼等”が子供一人分くらいの大きさがあったのに対し、この子は掌にすっぽり収まるくらいに小さいこと、そして――“怒り”や“憎しみ”に支配されていないところだろうか。
 ぴょこぴょこと飛び跳ねながら、僕のことを見上げている。起ち上がれ、とでも言いたそうに。

「……、ひょっとして、助けてくれるの?」
「ビィ!」

 相変わらず飛び跳ねてる。冷たい床に手を突きながら何とか立ち上がると、まるでその子は案内するかのように前方へと駆け出した。

「あっ、ちょっと! 待ってよ〜!」

 “彼等”の発する気配に気を付けながら、その小さな影を追いかけ始める。
 その光景に不思議な既視感……いや、懐かしさのようなものを感じたことをちょっとだけ不思議に思いながら。その子の後ろを、直走る。
 “霊石”を取り戻さなくては、という焦燥感。“王国”に戻れるかどうか、という不安。そして、生き残れるかどうか、という恐怖。
 色んな感情を、でも今だけは忘れながら。その小さな影を見失わないよう、追いかけながら――


 “あの日”と同じように、僕は必死に走り続けていた。












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