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ID.4760
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2017/08/06(日) 22:57
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アオミドリ色の景色 【第三景ミドリの友達とその仲間達1】
         
森の中を一台のトラックが走っていた。それはデジタルワールドに進出した人間界の企業の作ったもので、森の中だろうとしっかりと走る事ができる様に作られていた。

ただ、そのトラックは空調が壊れているのか、それとも閉じる鍵が壊れているのか、荷台の扉が開けられっぱなしで、落ちない様にか荷物は可能な限り縛り付けられていた。

ふと、そのトラックの運転手はブレーキをかけた。

進行方向に大きなデジモンがいたからだ。より正確に言うならばトラックの大きさに比べて大きなデジモンがいたから。

頭の方から背中までを深い緑がかった青色の甲殻で覆い、首から胸にかけて生えた羽毛は赤みがかったオレンジ色で、腹から足、尾羽の方は黄緑色、背中と同じ色の甲殻に覆われた脚の、その爪はカギのように曲がっている。同じ様なカギ状の爪のついた翼もまた甲殻に覆われている。茶色い鬣は天を突く様に鋭く立っていて、その青い目は冷たい氷の様だった。

威圧的な外見のそのデジモンの種族はディアトリモン、個体名はアオといった。

アオもまたトラックには気づいていて、一瞬飛びかかる様な仕草を見せたが、抑え、片翼を持ち上げた。

それに運転手は思わず目を瞑ったが、アオが進路から退いて翼で行く様にと促すと、ありがとうと声をかけて横を通り過ぎていく。

アオがなんとなくその姿を見送っていると、ふと荷台にいた子供と目が合った。

『助けて!!』

子供がそう叫ぶと一緒に荷台に乗っていた男が素早く子供の口を塞いだ。

ふと、アオはその姿に誰より大切な誰かの姿を重ねた。

アオは即座に走り、トラックを追い抜くとその前に立ちはだかり、体で受け止める様にしてトラックを止めた。

その体に傷はなく、衝撃を吸収しきれなかったせいで少し歪んだ車には細かい引っ掻き傷が無数についていた。

「ちょっと荷台にいる子、見せてもらってもいいかい?」

アオとしては優しく声をかけたつもりだったが、運転手の男は足元から拳銃を取り出すと乱発した。

それを瞼を閉じてアオがやり過ごすと、荷台から降りてきた男達が散弾銃を乱射した。幾らか羽毛が抜ける程度ではあったが、明確な殺意にアオはその男達を踏みつけた。

爪と、地面との間に挟まれた男の体は土人形だったかの様に大きく割かれ、一人、二人、三人と順にアオが踏んでいくと縦にか横にか斜めにか程度の違いはあれど爪に体を割かれて絶命した。

運転手の男だけは逃げ出したが、アオが少しスキップでもするぐらいの感じで走ればその距離は瞬く間に縮まるものだった。

さて、とアオがトラックの中を覗き込むと唖然とした。そこにいた子供は髪の色は茶色だったが明るい茶色で、皮膚の色は明らかに白く、目の色は緑だった。さらに言えば、人間の基準で、ではあるがかなり可愛らしい顔立ちをしていた。

「あー、人違いだったみたいで、その……ごめんね?」

アオがそう声をかけて立ち去ろうとすると、子供は鎖の繋がれた足で立ち上がった。

『ありがとう!』

そう声をかけられ、さらには熱心に話してくる子供にアオは困った。子供が話していたのはデジタルワールドの共通言語ではなかった。アオにはその言葉の意味がわからない。

こういう時はどうするんだったかと少し首を傾げながら考えて、アオは子供と同じぐらいの高さにまで頭を下げた。

「あい、きゃんと、すぴーく、ひゅーまんわーるどらんげーじ」

記憶を必死に手繰り寄せてそう言ったアオに、子供は少し喋るのを止めて、奥の方から本を取り出してきて、それをチラチラっと見てからアオの方を向いた。

「私、助けられました、あなたに。ありがとう、とてもとても」

「助けられた……?」

アオが首を傾げると、子供は自分の足の鎖をガチャガチャと言わせた。

なるほどとアオは頷いて、ちょいちょいと自分の方に近づけさせると一息に爪で砕いた。

アオは人間達がこのデジタルワールドで売り買いされている事を知っていた。その用途は、嗜好品である。

誰のと言えばそれもまた人間の。ここはデジタルワールドで、基本的に法はない、そして、デジタルワールドに人間は戦争で敗北したからルールなど持ち込めるはずがない。

複雑な機械は人間界から持ってくるとうまく使えなくなったりする。娯楽は限られ、最終的に高級な娯楽として、最も原始的でありながは未だに他で再現できていない人間そのものを定着させている現状があった。

「えー、あー、とりあえず……どこかの村とか町とかまで送りたい、ん、だけども……」

どうしようとアオが言うと、子供は首を傾げた。

「私、乗ります、背中に、できない?」

アオは一気に苦しい顔になって、少し考えてから子供から見える位置に生えていた木に体を擦り付けた。

ガリガリガリとヤスリで削る様な音がして、少しの間続けてから離れると、皮が剥けて白い中身が見える程になっていた。

「僕の羽毛は人間には危ないんだよ。血が出ちゃう」

子供は少し考えると、荷台の中のものを色々とひっくり返し、荷物を固定するのに使っていたワイヤーを見つけると、色々と結んだり、アオの爪を使って穴を開けたり切ったりをして何かを作り始めた。

一体何をと思いながらアオが見ていると。アオの首にワイヤーを引っ掛け、そのワイヤーに穴を開けた寝袋を通し、ワイヤーを引っ張ってアオの体に触れない様に寝袋をその体の上まで持っていくと、その寝袋にさらに寝袋を、さらに、さらにと紐でつないだ。

それをしっかり確認してから、自分の両手両足に大人の皮手袋を二重に、靴下も何重にも履いた上で靴を履いて、服も長袖長ズボンの服を引っ張り出して、アオの背中に寝袋越しによじ登った。

「いや、すごいすごい!」

アオに褒められながら、繋いだ寝袋の端に繋げたロープを引いて全部の寝袋をアオの背中に引き上げ、子供自身の体にも巻きつけてからワイヤーに引っ掛けた。

「この方法は、できます。私を、あなたの背中に乗せることが」

「本当にすごいよ!すごい、とてもすごい!なんというか、すごい!」

得意げな子供を一通りないボキャブラリーで褒めつつ立って歩いたりしてから、アオはふとある事に気づいて子供に降りる様に提案した。

「僕、お金になるもの持ってないから、君は、価値がある様なものを持っていかないといけないよ」

あと服とか食べ物もできるだけと言って、子供が素直にトラックの中を漁り出すと、アオはそういえば自分も腹が減ったなとその死体に視線をやった。

「ねぇ、死体はどうしようか?」

アオがそう尋ねると、子供は色々とアオに言いたそうにしていたが、言葉がわからなかったのか、先に使いそうなものとして油を持ってきた。

「それをどうするの?」

「塗ります、おでこと両手に。求めます、神に、赦しを、罪の。そのあと、私は埋めます。土に」

アオとしては、どう食べようかという意味で聞いていただけに少し戸惑ったのだが、人間界の何かしらのおまじないなのだろうと爪で穴を掘り死体を埋めた。頭が割れてる死体にも口を抑えながら油を塗る子供の姿に、それはとても大事な事なのだろうと思ったからだ。

子供は人間界の紙幣と、宝石の類いのついたネックレスや指輪、イヤリング、服、あと携帯食料にライターなど、最後にデジタルワールドの言語の本もリュックに詰め込むと、さっきと同じ様にアオの背中によじ登った。

「それで大丈夫?えーと……名前は、なんだっけ?」

「クレラ、私はクレラです」

「クレラ、じゃあ行くよ?」

アオとしては加減して、しかしその速度は充分に車よりも速く、クレラはすぐに目を開けていられなくなり、体に巻きつけた寝袋に顔を埋めていないといけなくなった。

そうして数時間、クレラには何日にも思えたが、走ると小さな村があった。

さて、とアオが近づいて行くとその門のところに武装した人間が立っていた。ちゃんとデジモンも想定しているのだろう、武器はデジモン製のものの様で、流石に食らったら危ないだろうということはアオにも想像できた。

しかし、何はともあれ人間である。自分よりはいいだろうと思いながら近づいて行き、背中の子供を見せて中に入れてくれないかと頼むと、一度内部に無線で連絡を取った後、簡単に許可が出た。名前がアオだという事とディアトリモンという事を確認したらアオの背にいるクレラの名前なんかは聞きもせずに通された。

中に入ってパッと見てみるとデジモンはほとんどいない、基本的に人間達の作った村であることは明らかだった。アオの姿をみてヒソヒソざわざわとしだす姿にミスったかとも思ったが不思議と悪意は感じないのでアオは首を高く伸ばして少し様子を見ることにした。

同じ様な小屋が並ぶ村だ。道路なんかは舗装されてないし、あまりここで発展してきたという様なものには見えない。別の場所から持ってきた、という様な感じだ。あまりに服も揃いすぎているし、みんな一様に四つ葉のマークのワッペンのついた上着を着ている。

そうこうしててもざわつく声はなかなか止まず、何人かがどこかに駆け込んで行くのすら見えた。

アオは妙にざわつくなど思いながら、どこか泊まれるところとかないかを聞く誰かを探すことにした。武器を持っている人間やデジモンはクレラが怖がるだろうなとか、なんか、一際大きな倉庫の様な建物の方は嫌な予感がするからその近辺にいるのには聞きたくないなとか、アオが優柔不断に迷っていると、ふと一人の人間が話しかけてきた。

「もしかして、ミドリの知り合いのアオさんですか?」

その人間は女性の様だったが長身で、金の髪を持ち鋭くも大きな青い目が印象的で可愛らしいや美しいより、凛々しいと言われるだろう顔立ちをしていた。この人だけは、黒くて丈の長い上質に見えるコートを着ていた。

「ミドリを知ってるの?」

アオは反射的にそう返した。

「えぇ、ミドリは私の……友達、ね。うん。私はミドリの友達。ミドリからあなたの事を聞いたの」

その人の言葉にアオは信じられないという顔をして、大きく仰け反り、クレラは必死でワイヤーに掴まった。

「ミドリは今ここに?」

アオがクレラの事を気遣う余裕もなくそう聞くとその人は焦らない様にと手を前に出した。

「とりあえず私の小屋に来て?そこで話しましょう?」

その人はエヴァと名乗り、小屋に着くとまず簡素なコンロでお湯を沸かし紅茶を淹れた。

最初はアオも気づかなかったが、中からよくよく見ると家は簡素な作りで、人間界のもので言うならばモンゴルの遊牧民のテントの様に分解して移動する事も出来そうに見えた。

しかし、それでもゆったりとアオが入れるのだからかなり大きな小屋でもある。他の小屋より一回り大きい様ですらあった。

「さて、ミドリなんだけども。私が知る限りはあなたを捜して旅をしているはず、会ったのはその道中だっていうミドリ、私が別の場所にいた時の話。三年ぐらい前の事になるわね」

「ミドリは、グリフォモンと一緒に?それとも誰か他のデジモンと一緒に?身を守る手段とかは?」

アオが矢継ぎ早にまくし立てる。少し体を動かした際にその翼が隣で座っていたクレラに当たりそうになった。

「その時は一人だったけども……グリフォモンの声を録音してあるとかいうものを爆弾がわりに持ってたわ。銃は扱えなかったから……代わりに私が護身用に持ってた爆弾とかを渡したりしたし、バギーに乗ってたからそれなりの装備ではあったと思うわ」

アオは信じられないと思いながら悔やんだ。少なくとも三年前から一人で旅をしている。それはとても信じられないし信じたくもなかった。

持ち歩ける程度の火薬程度の熱や衝撃は無視できる種も少なくない、バギーなんて歩いてるのと変わらないという種もいる。自分がそうである様に。アオには不安でたまらなかった。

「ミドリがどこに向かったかは……?」

「その時は、とにかく手当たり次第にこの大陸を回って見るって言ってたわ。あなたと、あなたに触ることができる様になる方法を捜してね。その時は、あなた達が一緒に住んでたっていう北の高山地帯の近くにいたから、多分南下してると思うんだけど……人間がいそうな街は素通りしたりしてるでしょうし……私のいた街にも、デジモンに追いかけられて仕方なく荷物を捨てながら逃げて来て立ち寄らざるを得なかったって言ってたわ」

それじゃあ結局わからないのと同じじゃないかとは流石にアオも言わなかった。明らかにミドリはアオのせいで旅に出たのだから。

ありがとうとアオが弱々しく言うと、エヴァはごめんなさいねとピアスを触りながら言った。

「ところで、その子は……服とかはあるの?旅の荷物とかは?その寝袋も……もうボロボロみたいだし……」

エヴァはクレラの足の鎖をちらりと見て察したらしくそんな事を言うと、すぐに無線を取り出して、誰かを呼び出した。

呼び出された人は一分と経たずに工具を持って現れ、手際よく足枷を外すとエヴァに何か耳打ちして、それにエヴァが頷くと、愛想よく出て行った。

「色々とと考えてくれるのは嬉しいんだけども、僕の羽毛はすぐに人を傷つけるし、よかったら、ここで……」

「それはできないわ。私達は私達で、次々に拠点を変えないといけない様な立場なの。あなたといた方がずっと安全よ」

クレラにアオとエヴァの二人の視線が向かう。するとクレラは申し訳なさそうに体を縮めた。

その様を見てエヴァは大丈夫よ、クレラの髪を撫でて目を細めた。

「できる限りの支援はするわ。動きやすい防刃の服も……子供服はないかもだけど……小柄な人はいるから、ちょっと大きいかもしれないけど着れると思うし、寒さを防ぐにはコートもいるわよね?私が着てるのはもう予備もないんだけど、コート自体は都合つくと思うわ。あと、携帯コンロとかナイフとか鍋とか?その寝袋はちょっともう使えなさそうだから寝袋もいるわね。安全靴と縄梯子があれば背中に登るのもできるわよね?子供用の安全靴はなかったと思うけど……中に詰め物して足首のとこきっちり締めれば履けなくはないと思うわ」

クレラの持ってる荷物を確認しながらエヴァは小屋を出たり入ったり、時に無線を使ったりしながら忙しなくしかし手際よく色々なものを集めてくる。

『あ、あの、そんなに色々もらえるほどお金とかなくて……』

クレラの言葉は分からなかったが、雰囲気で察したアオはそうなのかとクレラの方を見る。アオには人間のものの価値がわからない。アオにとっての社会は自然とのものや育ての親とのものだけだったから、そこに交換という概念はほとんどなく、ちょろっと知ってる程度だったのだ。

不当にもらうのはよくないとアオもエヴァを止めようとしたが、エヴァは断固として譲らなかった。

「私はね、ミドリに対して償いをしなければいけないの。またミドリに会うことは多分ないでしょうし、ここで少しでもその罪を清算したいって事だから、代金なんて要らないの」

ミドリはコートの一枚ぐらいしか受け取ってくれなかったけどねとエヴァがピアスをさすりながら言う。

そうなんだと言いながらアオは受け取る様クレラを説得する側に回った。エヴァは、償いたいのであって、これは受け入れる事こそが対価なのだと感じ取った。

クレラは最終的には折れて、ありがとうございますとエヴァに素直お礼を言った。

そのクレラをエヴァは強く強く抱き締めた。抱き締めながら、少し泣いてる様にすら見えた。

ある程度荷物が揃うと、エヴァはクレラに何があったのかを聞いた。そういえば聞いてなかったとアオも聞こうとしたが、デジタルワールド共通語だとクレラはうまく喋れないので、クレラが英語で喋った言葉をエヴァが復唱する事にした。

『私の両親は兵士でした。戦争後、取り残された一部隊の中で産まれた子供だったそうです。この世界で人間が生きていくのは大変です、周囲を警戒したりしながらデジモンとも戦い、ただ生きる為に、そうした事をする内に両親は亡くなったと聞いています。私はその部隊に同行していた神父様とシスターに育てられました。

ある時、ピッドモンという天使のデジモンに出会いました。ピッドモンは、移動し続けるのは無理だと、一度腰を落ち着けて態勢を整えてからまた目指せばいいと私達と一緒に小さな村を作ってくれたそうです。

小さな小さな村でしたけども、教会もあって、ピッドモンのおかげでデジモンとのいざこざもなくて、余裕が出て来たので村の中から何人かが食料や荷物を持って、ピッドモンが知っている近くの街へと行ったり、少しずつ人間界に戻るための動きもできる様になって、一人、また一人と帰って行きました。神父様と私と、シスターと、ピッドモンとだけがまだいましたが、もうすぐ帰るのだと神父様もシスターも笑っていました。

そこに、そこに、やって来た人達がいて、この世界で生活を続けているのだが、まだ、ここに人間がいると聞いたと、一緒に帰らないかと、神父様もシスターも喜びましたし、ピッドモンも喜んでくれました。

なのに、のに、裏切られ、たんです。ピッドモンと神父様をこ、殺そして、庇ったシスターは死にました。神父様も、も……あの人達は、最初から奴隷にするつもりの様でした……』

エヴァは、またクレラを抱き締めて、優しく背中をさすった。するとその目からは途端に大粒の涙が溢れて、何を言ってるかわからないほどにしゃくりあげながら泣き出した。

アオは少し目を逸らした。

翌朝、クレラはアオの背中に縄梯子をかけ、その背に登り、アオから荷物が満載のリュックを受け取ると、そこからワイヤーを伸ばして自分のコートの穴を通し、アオの首にかけた。

指と手のひらに鉄板を仕込んだ手袋でしっかりと背にしがみつく。

『本当に、本当に、ありがとうございました。皆様に神のご加護があります様に!』

「ありがとう、もしまたミドリが来たら……その時は僕も探してるって伝えてね」

二人がそう言うと。エヴァとその仲間達は口々に気をつけてね、頑張れよ、元気でな等の声をかけたり、ピューと口笛をふき鳴らしたりした。

そうして二人が旅立ち、その姿も見えなくなると、エヴァはピアスを一度さすって、口元を引き締めた。

エヴァと一緒にいた人間達もその背中を見ながら、さっきまでの陽気な雰囲気や笑顔が嘘かのように憤りと決意を露わにした顔をしていた。

「……一つ、聞くわよ。彼女の両親は、おそらく、このままでは人間の世界が侵略されるという国の言葉を信じて戦ったあの子の両親、そんな兵士達の心を救うべく同行した神父とシスター、その二人に手を差し伸べたデジモン、そしてあんなに幼い子供……その全員が欲の餌食になる、そんな事がこの世にあっていいと思う?いい訳ないわよね?」

はい、とそこにいた人間達は一斉にそれに同意する。

「私達はそうした人間を根絶やしになければならない。人間界の社会と繋がったままの人間を!この世で人間の社会を残そうとする人間を!」

はい、とまた唱和する。より強いそれに空気の震えが肌で感じられる。

そこに、一体のヘルメットを着けた蜥蜴のようなデジモンが小走りで駆けてきた。

「報告します!アオ殿の足跡を追っていったところ、トラックと簡素に埋葬された遺体を発見しました!トラックのタイヤ痕や中にあった荷物から行き先を探っていますが、恐らくは標的と同じかと……」

「ご苦労様。下がっていいわよ」

その報告を聞いたエヴァはそう微笑みかけ、皆に聞いたわね?と問いかけた。

人間をもののように出荷する人間を、食いものにする人間を、手を差し伸べてくれた手を取り合ったデジモンさえも欲を満たす道具にしかしない人間を全て駆逐するのだとそう演説をした。それを聴き終え、その人間達は各々の作業へと移った。

実は、この近くには一つ大きな街があった。そこもまた人間が主になっている街であったのだが、人間や成長期までのデジモンの奴隷を扱っていた。

そこは、奴隷市の為に造られた街だ。人間界では違法となる、一部の権力者や金持ちのさらにその中でも醜悪な嗜好を持つ者達の街。そのいくつかある内の一つ。

エヴァ達は、テロリストだった。カルト教団でもあると言えたかもしれない。メンバーは利益ではなくデジタルワールドに醜い人間がいるべきではないという思想で結びつき、その思想がリップサービスでない事を示す為、繁殖能力を全員が放棄していた。つまり、自分達の子供を残すことをしないことで人間は残るべきでないという意思を明確にしていた。

悪意あるものには殺戮を、悪意なきものは駆逐せよというのが基本。完全に見逃されるケースは、クレラの様な、おそらくこれから否応なくデジモン達の社会に馴染まざるを得ない場合ぐらいであった。

普通ならばエヴァ達に勝ち目はない。人間が武力を得ようとした場合、まず大きく影響するのは数と、数を揃える手段、そして次にその数を活かす武器だ。金で雇われた人数はエヴァ達の思想で集めた人数よりも多い、エヴァ達の用意できた武器はそれらのものに敵わない。

ただ、数日中にその街は破壊されるだろう。運悪くその日そこにいた権力者は死ぬ。奴隷商も死ぬ。残された金はエヴァ達の資金と奴隷達の帰国の為の資金となる。

倉庫の中から出てきたデジモンは、一日ぶりの日光に冷たく青い鋼の体を浴びせ、尾を一度二度と確かめるように動かして、自分の小屋へと戻ろうとするエヴァの隣に並んだ。

「私の仕事が来るのですねエヴァ。この闇より生じた罪深き身に、また殺害の業を負えと、そうおっしゃるのですね?」

ダークドラモンというその種のデジモンは究極体だった。人の武器ではまず勝てない、例え核を打とうと止まらないそれが究極体なのだから。

「えぇ、その通りよ。ユダ、あなたの罪も最後には私が背負って死ぬ。何度もそう言ったわね?今は、その心を私に預けて。そして私が死んだ後は私の代わりに人間がまたこないようにあなたが見張るの」

「であれば私はこの身この心その全てをもってエヴァ、あなたに仕えましょう。エヴァ、このやり取りも何度となく行っていて、さぞや辟易しているでしょう。しかし、私はまた罪に飲まれないか心配なのです、あなたが分かち合ってくれる、受け止めてくれる、この言葉によって救われ正気を保てる我が身なれば、あなたの愛を喪うのが怖く、何度も確認せずにはいられないのです」

ユダはそう言って、小屋の中へと入っていくエヴァの額に一つキスをした。エヴァはそうして自分のすべき事の準備へ向かうユダを見送りながら自分の額を優しく撫でた。

小屋に入り、エヴァは一度ピアスを撫でた。四葉のクローバーの形をし、裏に、Mよりと彫り込みの入れられたピアスを。

「復讐を……贖罪を……」

エヴァは、四葉のクローバーの花言葉を多く知っていた。ミドリは、幸運のシンボルということしか知らなかった。ミドリは復讐なんて花言葉もある事を知らなかった。


スレッド記事表示 No.4760 アオミドリ色の景色 【第三景ミドリの友達とその仲間達1】ぱろっともん2017/08/06(日) 22:57
       No.4761 アオミドリ色の景色 【第三景ミドリの友達とその仲間達2】ぱろっともん2017/08/06(日) 23:00