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ID.4757
 
■投稿者:ぱろっともん 
■投稿日:2017/07/23(日) 22:50
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アオミドリ色の景色 第二景【天使の住む洋館】
         
一台のゼンマイ式のデジタルワールド製バギーが山道を駆けていた。

「もうそろそろ中継する街が見えてもいいはずだけど、どこかで間違えたかな……」

運転している黒いコートに黒い手袋の人間がそう聞く。

「……記憶間違いはないだろうし、一つ街を飛ばした時に方角間違えたんじゃない?」

助手席の妖精の姿の小柄なデジモンがそう返す。実際、その人間、ミドリには多少の覚えがあった。

「……だって、人間の街とか通り抜けたくないから……」

「せめて外周に沿っていけばよかったのに」

「……人間界で有名らしいから、とにかく避けたくて」

「何で有名なの?」

「私というよりもパパとママが有名で、悲劇だなんだと言われて問答無用で憐れまれるの」

「あ、親いたんだ」

てっきりグリフォモンに育てられたのかとと言った白い花園のにミドリは半分合ってると頷いた。

「親子でグリフォモンに保護?拉致?されて、パパが死んでからはグリフォモンが親代わり」

そっかーと言う白い花園のは人間の感情の機微に疎かった。なんせ親なんてものは持ったことがない。家族に近い存在はいたが、家族というよりは自分自身と言うべきで、本の知識は一通りあれどそれは記憶としてあるだけで理解には遠かった。

「なんで死んだの?」

だから無神経でもそれはどうしようもなかった。大切なものを失った悲しみを掘り返されるのは辛いとわかっていたとしても、そもそも親が大切なものだとわかっていない。

「ママは野良のデジモンに襲われて、川に飛び込んで逃げたらはぐれて、多分死んでると思う。パパは人間界で死んだ」

ミドリも淡々と答える。デジモンとはそういう生き物で、個々のつながりは相応に重視するが血の繋がりがあるというだけじゃ大切だとわかってはくれないとミドリも知っていた。

「あの時は悲しかったな……」

「……ごめんね、辛い事聞いて」

大丈夫と返してミドリは笑う。それくらいなら何もミドリにとっては辛い事ではなかった。

しばらくして、白い花園のがそろそろどこに泊まるか決めないといけないかもねと呟いた。

「もう少し走ったら見えそうな気がする……」

でも運転するのも体力使うんだからと言われてしぶしぶミドリはブレーキを踏んだ。速度を落としながら良さげな場所を探していると、一軒の洋館が建っているのを見つけた。

「ヴァンデモンとかのトラップ?」

「どうかな?そのイメージは強いけども、わざわざ洋館建てるまでするとすぐ噂になって近寄らなくなるからそこまでやる事っては少ないみたい。まぁ……だからこうして街と街が点々とある様な地域に建てたとも考えられるけど」

止まるべきか止まらないべきか、とりあえずもう少し近づいてから判断しようと洋館の方にハンドルを切る。

「外見とかから察知するとかはできる?そういうデジモンが好む様式とか……ある、のかな?」

「精神的な方向とか傾向とかは赤の花園の領分だったから私にはちょっと……建築様式とかはわかったとしても参考にはなんないと思う。中に住んでるデジモンハル後から住み着いてるデジモンって事もあるし」

近づいてみると、すぐ近くに畑と池がつけられているのが見えた。畑には立派な肉がゴロゴロと生え、池のほとりには小降りだったがオレンジバナナの木も生え、実をつけていた。よく見ると森との際には切られた木が並び、デジタケを自分の手で増やしてもいる事がわかる。

これを、他のデジモンを食べてはいないと取るかそれとも余りに豊富すぎるのですでに幻覚にでもかけられていると見るか、二人は迷わなかった。

街と街の移動には数日かかる。その間は日持ちする類のものしか食べられない、美味しかったレトルトも買ってみたりはしたが、嗜好性が高いものは値段も高い。やはり大部分は味気ない携帯食になる。

食欲に二人はとても正直だった。

二人してとりあえず屋敷の周りをぐるりと回ってみると、屋敷の窓から人間が顔を出した。どうやら子供らしい。

その子供に手を振ると、怯えた様な顔をして中に引っ込み、しばらくして洋館の中から六枚の翼の、人間で言えばその肉体は女性的に見える天使が出てきた。

「ようこそ、旅の方ですか?お疲れでしょう、どうぞ中へ。車は……そうですね、どこか適当なとこに案内させますので」

中から十五か十六歳頃に見える白髪交じりの、十代半ばか少し上ぐらいに見える人間が出て来て、天使の言葉を聞いていたのだろう、洋館の脇にミドリ達を誘導した。

「荷物もお持ちしましょうか?」

「いや、それはいいです。長居するつもりはないので」

「それがいいと思います。すぐ動かせるようゼンマイも巻いた方がいいかと」

まるで早く追い出したいみたいだと思いつつ、ミドリはゼンマイを巻いた。その言葉に悪意を感じないのがミドリにはどうも不思議だった。

「エンジェウーモンと人間とって不思議な組み合わせね」

白い花園のは花畑ので首を傾げていた。天使の類のデジモンにも幾つかの宗派や、他と交流したことがないならば全く別の宗教的価値観を持ってることは少なくはないのだが、はて、どんな価値観を持てば人間を育てる事になるのだろうと思ったのだ。しかし、やはりそれも赤の花園の領分だった。

二人が入ると、まずばっと色々な食材が書かれた紙が出され何か食べられないものはないですかと今度は先ほどの人間より少し小さいぐらいの人間が尋ねてきた。その指の一本は過去に変に折られて放置されたのか少し曲がっていた。

ミドリ達が質問に答えると、大きな円卓の様な机のある部屋でそのエンジェウーモンが座って待っていた。

「どうぞ、紅茶はお好きですか?」

ミドリと白い花畑のが頷くと、そのエンジェウーモンは嬉しそうに旅の話を聞いた。

ミドリはアオのことを、白い花園のは自分の出自は言わずにいた街の話をして、幾らか話して運ばれてきた紅茶も空になって来た時、白い花畑のがエンジェウーモンに尋ねた。

「ところで、あなたは何故人間と暮らしているんですか?」

「あなたは、人間界の旧約聖書というものをご存知ですか?」

待ってましたとばかりの反応に一瞬白い花園のは戸惑う。

「ユダヤ教、キリスト教、イスラム教等の人間界の主要な宗教に共通する聖典、だったかと思いますが……」

白い花園のがそう返すと、ミドリはへーそうなんだと隣で頷き、そのエンジェウーモンはまた笑みを浮かべて頷いた。

「その通りです。その内のキリスト教が、これまた色々な考え方の違いはありますが……この世界の天使型のデジモン達、つまり私達の信じる教えと概ね一致する教えを持つところもあるのはご存知ですか?」

それに白い花園のもミドリも首を横に振る。白い花園の人間の知識は正直浅かった。

「私は二つの世界を作った神は同じなのでは?という学説を支持しています。その理由の一つが旧約聖書の一節、神は自身の似姿として人を作ったという部分です。人間という存在、そして天使の私達や悪魔達、非常に近しい姿をしています。向こうでいう天使といった存在と私達もまた近しい姿ですし、これは二つの世界の神が同一であるからこそと考える訳です」

つまり同じ神の子であり神が自身を模して作った子ならば保護するのもまた当然とそのエンジェウーモンは言う。

それになるほどとミドリは頷いたが、宗教というものがそもそもわかってなかったのでただ頷いただけだった。

「ところで、ミドリさんは産まれもこちらなんですよね?恋人……などがいた事はありますか?」

「それはないです。本当に小さい頃ぐらいしか人間の友達もいた事ないですし」

ミドリが強いて言うならば今探しているアオの事を思う気持ちが恋なのかもなんて冗談めかして言う。

「それは良い事です。神は純潔と愛を尊びます。しかし、多くの人間界の人間というものは産まれながらに罪源たる色欲を持ち、それをもってしか種を維持できない性質を持ちます。私はそれがあまりにも悲しい……」

白い花園の視界の端にちらりとこちらを伺うさっきの少年の不安そうな顔が映った。

「実際、神は一度、尤もその時のその理由はそれだけには止まらないのですが……人間に失望し人間界を洗い流してしまわれています。やはり、それだけが理由かといえば別ですが、それはそもそもそういう機構を持った体を有してしまったが故でもあるでしょう。その点でデジモンは、一部不埒な種もいますがそうした色欲から解放されています。これは、神が人間の失敗から作り出したのがデジモンである証拠ではないかと思うのです。私達の中でも悲しい事に時折堕天してしまう者もいますが、産まれながらに欠陥を持ってしまった人間に比べれば優れた生き物でしょう。ですから私達は人間を楽にしてあげる必要があると思うのです」

楽にする、という言葉にん?とミドリが首を傾げた。白い花園のは少し悟って覚悟した。

「わかりやすく言うならば、全人類の生殖器を取り除くということです」

そのエンジェウーモンの話は徐々に高まっていく。

「人間という生き物の体はデジコアによって一元管理されているのではありません。脳で管理をしていますが、その脳に全ての機能が集まっているわけではなく、性欲に繋がる性ホルモンの分泌にはそれぞれの生殖器が大きく関わっています。そうした場所から脳に向けてホルモンを出す様にという信号が出され、それを受け取った脳から性ホルモンが出されるるのでそうしたものを取り除けばかなりの性欲を削る事ができる事になります。これによって人間は性欲の枷から抜け出す事ができるのです。それでもなお快楽を求めて不埒な行為に走るというものは最早救われるべき存在ではないでしょう。しかし、なかなかこの考えが受け入れられないのもまた事実で……実は私がここに住んでいるのは以前いた場所にいられなくなったからでして……いえ、決して誰が悪いのでもありません。彼らは哀れにもそうする他の事を知らず、この性欲という獣の手綱を取る事ができず、私はそれを見過ごせなかった。それに、確かに神が創られた肉体、それが複製されていっているのですからそれを傷つけ形を変えるという事もまた罪深い行いだとは私も思うのです。特に人間には受け入れ難いでしょう。しかし、しかしですよ?人間の世界にある性犯罪!あれ程悍ましいものはそうはないでしょう!純愛の末、子供を望み行うというならばまだ理解を示せますが、己が快楽の為にだなんて……あぁ、今その事を思うだけで……すみませんね、涙が溢れてきてしまって……また、性差別などという神が創りたもうた平等であるべき全ての人にあろう事か、信仰でも行いでもなく生まれ持った肉体の持つ特質の違い等という不条理極まりないもので差別を行うなどという恐ろしいものもあるのです!神がその姿で産まれる様にしたもうたのはきっと理由がある筈です!全て等しく本来ならば尊ばれるべきです!だというのになんと恐ろしい事でしょう!今は改善の傾向にあるとも聞きますが……男性には力強くたくましく、女を守る存在である事が義務であるかの様に押し付けられ、女性には男よりも力を持ってはならないという暗黙の重圧がかけられものの様に扱われる事もある!嗚呼なんと悍ましい!醜い!罪深い!もちろん、それぞれの肉体の特徴で適した役割などを分ける必要は社会を形成する中でありましょう、ですが、嗚呼そうしたものの酷い場所ではその役割を満たさなければまるで劣等な存在下等な存在とされるのです!!人は全て平等であるべきであるのに!!なんという事でしょう!!またそれに近いのが能力主義、資本主義、あれも酷い。努力したものはその分確かに報われるべきです、それは素晴らしい事です。その点で共産主義の様な形はやはり問題はありました、しかし、ああいったものの中では他者を食い物にするものこそが繁栄するのです!!なんという……なんという事でしょう……粗末にされていい命が何故存在するでしょうか!?そしてこうした、他者を食い物にする商売などというものの中には性に関わるものがやはりあり、姦淫に関わるものもまた存在します。お金がないばかりに清い体を保つ事もできずに自分の体を売らなければならない、そうしたものを悲劇と言わず何と言えばいいのです?もちろん、望んでというものもあるでしょうが……そうした色欲に溺れるものはやはり救われ難い。もし、全ての生殖器がなくなれば需要がなくなり、そうした悲劇も減らす事ができるでしょう。そうなったらどれほど素敵な世界になるでしょう?もちろん、全ての人を救うには程遠いでしょう、それは悲しいことです。全ての人を救う事はそれこそ神にしかできない事であり、いくら私達が天使であろうともそれはきっと成してはならぬ事なのです。ただそうであろうと……」

こんな話が熱っぽくあまりに長い事成されるもので、次第にミドリは眠くなってきた。ミドリにはそうした知識もなく、強いられた事もない。意味のない記号の羅列と大きく変わりはしなかった。

「今日一日中車運転してたもので、ミドリの肉体の疲れがピークになってしまったみたいです。お話の途中で申し訳ないんですが……」

「えぇ、それはもう仕方のない事です。私も多少熱が入りすぎてしまいましたから、きっと真摯に受け止めようとすればするほど疲れてしまった事でしょう」

食事の用意はできていますか?とそのエンジェウーモンが誰に言うでもなく問えば、様子を伺っていた白髪交じりの人間がひょっこり出てきていつでも出せる状態ですと言ったので、ミドリと白い花園のは食事をとり、風呂も入らせてもらい、そしてふかふかのベッドを借りて寝た。途中、何度か人間の姿を見たが、半分以上がミドリに怯えている様な様子だった。

ミドリは眠気もあって気づかなかったが。

翌朝、ミドリ達は朝日と共に起き、そこに白髪交じりの人間が入ってきた。

おはよう、おはようございますと軽く挨拶を交わすと白髪交じりの人間はまず頭を下げた。

「昨日はあの方の話に付き合って頂いてありがとうございました。特に口出しをしなかった事も、重ねてお礼を……」

「まぁ、それは一宿一飯の恩って事で……ところで、あの思想はもう実行には移してるの?」

「……見ますか?元からなかったみたいになってますよ?」

自分のズボンに手をかけた白髪交じりの人間に、いやいいと白い花園のは首を横に振った。本音を言えば少しだけ見たかったが、白い花園のは服を脱ぐのは恥ずかしいという感覚があるタイプのデジモンだった。

「……ミドリにもとか言わないわよね」

「それは……保証できないです。ですから早く去る事をオススメします」

白髪交じりの人間が困った顔をすると、ミドリは大丈夫大丈夫と呑気に笑った。

「パパがいなくなってすぐに……十二、三歳ぐらいで取ったから、もう取るものがないですし」

「……えぇと、なんで?」

「よくは覚えてないんだけども、血が出たりとかなんかしてて、慌てたグリフォモンがデジモンの医者に連れて行って、これから月一ぐらいで苦しむことになるって話になって?そんな苦しむなら要らないよね?って判断して摘出してもらった……らしいよ?」

白い花園のは暫し絶句した。それが年齢と合わせて考えるとおそらく生理であるとグリフォモンはちゃんと理解していたのだろうか、健康に関しての問題がないものであると理解していただろうかと。

「……そうですか、ところで、あなたはあのミドリさんですよね?」

白髪交じりの人間の言葉にミドリの顔が能面のようになる。

「それを聞いてどうするの?」

「いえ、特には何も。あの方は気づいてない様ですし、気づいたら……面倒な事になるかもしれないですけど」

「ここら辺では知られてる?その話」

「大丈夫かと思いますよ。あの方が人間の事を調べる様になったから知ったわけで、調べなければそうそう知ることはないでしょう。人間界のニュースなんてものは。あの方も、性的な事を中心に調べてるので覚えてるかも怪しいです」

そう、とミドリはまた顔を崩した。白い花園のはやはり人間界のことについて詳しくなかったため意味がわからなかった。

人間界の技術を学んでも物理法則から違う世界ではどれほど通じるかわからない、種の動物的特徴を調べるならば猿でもいいしとなる、そんなこんなで思想哲学なんかがメインの赤の花園以外には人間界の本はほとんどなかった。

二人は、そこの会話を終えてすぐに出発した。ミドリはもう少し残ってもいいのではと言ったが、白い花園のが頑として譲らなかった。ミドリが摘出したのが子宮だけならホルモンを出す卵巣は残っている筈だからだ。その知識もまた専門外な為薄いものだったが、薄いが故にどの程度体調を崩すのかわからない為危機感は強かった。

ホルモンを出させるものを全て性欲の根源罪の源と考えていそうなそのエンジェウーモンは取る事を勧めるだろうし、あの場所で手術できそうだという事も分かった以上顔も合わさせたくなかった。

ミドリが車を走らせながらそんな白い花園のの説明に生返事を返す。

「……ミドリ、ホルモンバランス崩すとほぼ間違いなく体調崩すんだからね?わかってる?」

「うん、わかったわかった。ところで、あの話についてあの子は謝ってたけどそんなに悪い話だったのかな?」

その質問に白い花園のはえ?と返した。白い花園のは多種が混在する街で生きてきたデジモンである、社会性があり、活用できたものばかりではないが広い知識もある。矛盾だらけの話はだからこそ聞くに耐えなかった。

「……決定的に悪い点を言えば、あの言葉を実現したら人間が絶滅するところ。こればっかりは……」

「本当に避けられない?」

白い花園のは、口をつぐんだ。頭の中で本当に可能性はないかと考えて見た時に必ず絶滅するとは限らない可能性に思い当たってしまった。それは人間が動物でなくなるに等しく、デジモンと同じ様な存在になる方法だった。

つまり、ある種自分と同じ存在にもなる方法だ。

「まぁ、それはなんとかなったとして、……そうね、この回答も絶対的なものと言えないけども、一つ言えるのはその方が絶対いいとは限らないから、みんなに強制する様なのは悪いと言う事ができるのよ」

自由が必ずいいとは限らない、子供を作れるのがいいとは限らない、性欲があるのがいいとは限らない、だけどこれは同時に全部裏返りもする。だから一つに決めつけてしまうのは悪い。

ただ、そう決めつけてしまうのもまた悪いと言えてしまう。絶対的な回答はあまりにも難しすぎる。

なるほどねと頷いて、ふとミドリはブレーキをかけ始めた。行く手に銀色の鎧の大柄なデジモンが複数見えたからだ。

「なんだろうね?」

「ナイトモン、だね。ロイヤルナイツ関係かな?そうでもしないと同じ種の完全体が複数はそう揃わないもの。無難に考えればロードナイトモン派閥だけども一番部下が多いから出向もさせるのが慣習になってて、正直誰の使いでもあり得るわね」

へーと関心しつつ、そのナイトモン達の前で車を止めると、そのうちの一体、おそらくリーダーなのだろう、一人だけ腕に赤い布を巻いているその個体が話しかけてきた。

「こんにちは、旅の方」

「こんにちは」

「こんにちは」

「いきなりで失礼だが昨日から今朝にかけて洋館であったことを聞かせてくれないかな?」

はて、とミドリは首を傾げた。それを見て白い花園のははーとため息を吐いたが、どうやらそれは聞かれる事が嫌だというため息だとナイトモン達に取られたらしかった。

「いや、申し訳ない。我々も不本意なんだ……あの洋館に住むエンジェウーモンは人格者と名高い。まさか子供を、すでに五年も誘拐監禁してるだなんて……とは思うのだがね」

「私の見た子供達はとても元気そうでしたよ?いつでも食べ物にありつけて、暖かいベッドがあって、服も清潔で、逃げようと思ったら大量の食べ物を手に逃げ出すぐらいはできそうなぐらいに」

ミドリの素直な、少しエンジェウーモンを擁護している様な回答にナイトモンの目には少し真剣な色が灯った。

「それに、誘拐程度でなんで調べてるんですか?」

ミドリがそう聞く、それはある程度的を射た発言だった。デジタルワールドでは捕食だなんだというのは日常茶飯事だ。そこに善も悪もないのだから、ロイヤルナイツが例えその使いっ走りとはいえ動く事もない。

例えばその誘拐が大きな影響を及ぼしかねなかったりしない限りは。

「人間界で大規模なデモが起こってるそうでね。国や国連?とかいったか、とにかく、移住したものの帰れなくなった人間がいるはずだから帰って来れる様にしろと訴え出られてるらしい。そこからロイヤルナイツにどうにかならないかと話が来て、また核とかで汚染されても困るからと人間達の行方を調べて回ってると。そうしたら子供が誘拐されたという人間のつがいが何組かいて、その犯人はエンジェウーモンだという。本人達が帰りたがっているなら帰すのが仕事だから私達はこうして調べてる訳だ。つまり、誘拐自体はオマケさ。今考えてるのは人間は帰りたいがエンジェウーモンが帰す気がない場合かな。そうなると任務として私達は奪還作戦をしなければならなくなる」

隊長、話しすぎでは?と他のナイトモンから声がかかったが、むしろ行く先で人間に会ったら呼びかけてもらう方がいいだろうと隊長は返す。

「……私が帰りたいかどうかとかは聞かなくていいんですか?」

「君は帰りたかったらすでに帰ってる様な類の人間に見える。確実に自活できている格好であるし……バギーもある。帰りたいならばそれはもちろん仕事として行うけどもね」

「まぁそれはもちろんないですね」

白い花園と二人であった事を喋り、アオに関して何か知らないかなんかも聞いて、二人はナイトモン達と別れた。ナイトモン達はとりあえず話を聞いてから判断することにしたらしい。そしてアオの事は知らなかった。

またバギーを走らせてしばらくして、ミドリが思ったんだけどと話し始めた。

「なんでエンジェウーモンはあんなに性に対して厳しくなったのかな?」

「言ってたように教えに反するからじゃなくて?」

「だって、デジモンだって殺し殺され罪を犯しってするし……悪魔に対してもなかなかだったけど悪魔型のデジモンは必ずそういう感じなの?」

「んー……緑の花園の程詳しくはないけど、デジモンにその必要はない種が多いからその感覚は無いか薄いかがほとんどで、それが悪魔になれば多少なら増えるとは思うけども必ずとは言えないと思うし……」

思うから、とそこまで考えて白い花園のはミドリが何を考えているか悟った。

「つまり、性に関する醜いとか赦されないと思うようなものを目撃したからって事?」

「私はそう思うよ。言ってた様にさ、人間界の事なんて、調べようと思わなければ知らないだろうし、あの考えを持ったのが後なんじゃないかな」

憎いと思ってしまうほどに醜い何かを目撃した。親元から誘拐したという事とそれを繋げて考えた時白い花園のはやっと腑に落ちた。

みな、親がいたというならば、親の元からエンジェウーモンが連れ出したというならば、それはそういう事だろう。

大概の狂人には狂人なりの理屈がある。狂うに至った理由がある。それは醜い事だと認識していただろうエンジェウーモンが、特におぞましい類のそれを眼前にする。加えて、それはどれだけ調べようと自分は持ち合わせてないから理解なんてできやしない。

だとしたら悲しいねとミドリが呟いた。そうだねと白い花園のも返した。だが二人の考えていることは違っていた。悲しいと思っている事が違っていた。

白い花園のが来た方向を向いたが、もうナイトモンも見えず、洋館は見える訳もなかった。


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