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ID.4747
 
■投稿者:パラレル 
■投稿日:2017/07/16(日) 14:06
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What is the cage? 3-1
         
(これまでのあらすじ:地下都市アングラのギルドに所属するテイマー、セト・ケイジは失踪中だった同僚のイリノ・コータと再会。任侠ヤクザの仁清組を標的とした彼の依頼を遂行する。その1件から、ケイジは上層社会トップのアースガルズ社がヴァルハラ計画という事業を進めていることと、コータがその計画に巻き込まれて精神を幽閉されており、現在彼の身体を動かしているのは彼の使い魔サーヴァントであることを知る。
 翌日、ギルドからアースガルズ社を標的とした仕事ビズを割り振られるケイジ。ギルドへの疑念から、彼はコータの仲間のモリイ・リオンに潜入を頼み、自分は彼女のサポートに回ることに。アースガルズ社へと潜入したリオンは仕事ビズと並行してヴァルハラ計画に関わる情報を奪取。しかし、計画の統括者であるヒラタ・ヒデオに2人の行動はお見通しだった。
 リオンはヒデオと戦闘を開始。その一方でケイジの意識はヴァルハラ計画の中核である知性体――アスク・エムブラの元へと飛ばされる。警戒するケイジに対し、アスク・エムブラはアースガルズ社からの解放を内密に依頼。アスク・エムブラの手引きでコータと再会して彼の意思を確認したケイジはその依頼を受けることにする。
 一方でケイジの「身体」にも危機が迫る。ギルドの長、ジュリ・アスタはアースガルズ社に内通しており精神が抜けた身体を処分しようと襲撃を掛けてきたのだ。しかし、ケイジの使い魔が応戦して時間を稼ぐ間にケイジが帰還し窮地を脱出。また、ケイジらの情報をジュリに売っていたイイダ・リンが彼に反抗したことを足かがりに反撃を仕掛けてジュリを抹殺。リオンも自分を育てたヒデオに苦戦を強いられるが、コータの使い魔サーヴァント――アーミテジにより救出される。
 仕事ビズそのものは完了コンプリート。危険な目に遭っただけの収穫もあった。しかし、明かされた真実は、事態が混迷に向かいつつあることを示していた。)




act.3 Bird in the cage -- fall out




 1.




 指を1本ずつ内側に折って、右手の反応速度レスポンスを確かめる。結果は上々。1時間前まで指1本すら動かなかった鋼鉄クロームの四肢は手足マニピュレータとして十分な働きをしてくれている。偏屈で勝手に余計な改造をしてくる変人でも、インの技術は本物。やはり持つべきものは友と優秀なかかりつけ医メカニックだ。
「そわそわして……緊張でもしてるの?」
「馬鹿言え」
 リオンの言葉には反射的に否定をしたが、あながち間違いではない。多少緊張しているからこそ、完全に直ったはずの機械義肢サイバーウェアの動作が気になってしまう。とはいえ、曲がりなりにもギルドの上位五指に入っている男が怖気づくだけの理由がある。――今からケイジはギルドの全員に対して演説をしなくてはならないのだ。
「本当に任せていいのか」
「今さらだな。俺達の仲だろ、アーミテジ。どど泥船に乗った気分で構えていろ」
「一緒に沈めと?」
 合戦に挑む大将のように堂々と構えなくてはいけないことはケイジも理解はしている。この問題はじきにケイジやリオン、アーミテジや彼のテイマーだけのものではなくなるだろう。そうなる前にギルドの力を結集して手を打たなくてはならない。
「はぁ、どうしてこうなった」
『俺達がジジイに引導渡したからだろ』
 ぼやいたところで原因は使い魔の指摘通り。殺らなければ殺られていたとはいえ、長の訃報はギルド全体に少なからず波紋を起こしていた。せめてもの救いは長の仇を取ろうと義憤に燃える忠義者が皆無だったこと。そして、その理由がジュリの人望の無さだけではなく、単純に混乱して二の足を踏んでいることも絡んでいるということ。
 意図して起こした訳ではないが、この混乱を利用しない手はない。ジュリとアースガルズ社の悪行を盛りに盛って語り、盛大にプライドを煽れば一気に味方を増やすことができる。死人に口無し。偉大な長には戒名代わりに、自由を脅かす悪の象徴という異名を進呈しよう。
『集合状況は上々。いつでも始められるぞ』
 舞台は非公式のチャットに作ったルーム。招待客であるギルドメンバーの8割は既に着席完了。公式のチャットを使わなかったのは、ジュリの死亡により彼と繋がっていたギルドの基盤システムに障害が発生したため。今は有志がハードウェアの処理能力のみを間借りして非公式チャットを運営している。おかげでギルドメンバー全員が入って多少遊んでも余裕が有るほどリソースが潤沢なVIPルームとなった。
「いつでもって……悪い。少し気持ち悪くなってきた」
「オッケー、始めて」
「聞けよ、おい」
 ケイジの意思を無視して使い魔サーヴァント経路チャンネル開くオープン。瞬間、ケイジの意識は強制的にチャットルームへと飛ばされる。

 flip_out


**** Chat room ****

KG:おいこら、勝手に飛ばすな。馬鹿、おい

mob1:あのー、話あるんじゃないんすか?

mob2:というか、帰っていいすか? こっちもいろいろあるんで

KG:すまんすまん。さっさと話すから帰らないでくれ。な、モブの諸君

mob1:んだとぉ!

mob2:ちょっとランクが高いからって調子乗ってんじゃねえぞゴラァ!!

KG:ああ、はいはいごめんごめん

JM:最初から本題を話せば良かっただろうに

KG:反省してる。で、その本題だが――全員、俺と擬験シムステイムで情報を共有しただろ。見てないなら、ログを上げておくからそれを参照してくれ。あれがほぼ全てみたいなもんだ

mob25:ちょっと待て、あれが真実だっていうのか!? あんな馬鹿げたことが?

mob310:アースガルズ社がなんとか計画を立ち上げて、俺らギルドのテイマーを幽閉。我らが蟲爺ギーザーはアースガルズの社長と結託して、せっせと出荷をしてたと。……本当に馬鹿げていて、信じられないな

KG:信じる信じないは各々に任せる。俺や俺の連れが擬験シムステイムに手を加えるなんて面倒くさい真似をするって思うなら、信じなくてもいい。――だが、現に俺の身体と使い魔サーヴァント蟲爺ギーザーに狙われ、仕方なく完膚なきまでに返り討ちにしてやった。

Dingo:途中から自慢になってるのは気のせいか

Angela:いいんじゃない、別に。ウチのトップってだいたいどこか子供だから

KG:とりあえず事の顛末はそういうことだ。で、子供のお願いとして全員に頼みたいことがある

JM:ほう

KG:アスク・エムブラから受けた俺が受けた依頼――奴をヴァルハラ計画から解放するのを手伝ってくれ

mob1:はぁ!?

mob25:冗談だろ、そのアスクなんとかって……なんかヤバい奴だろ

mob310:確かヴァルハラ計画の中心となる複合知性ハイブリッドだか何だかで、全ての使い魔サーヴァントに影響を及ぼすマスターコールが使えると言ってたな。そんな厄介者を信頼しろと?

JM:仲間の出荷にも加担してたようだな。蟲爺ギーザーという繋がりも切れたなら、おとなしく手を引くのが賢明か

Guest:……それは困る。お願い。手を貸して

mob1:ゲストアカウント? どちらさんだ?

KG:あー、俺の仲間のモリイ・リオンだ。ほら、擬験シムステイムで最初に視点を間借りしてたちみっこ

Guest:別に気にしてないけどしつこく言わないで

KG:へいへい

mob1:あー、あの可愛い子ちゃんね。どう、この後お茶する?

Guest:手を貸してくれるなら

mob1:うっ、痛いとこ突くなぁ。あー、まあ今回はご縁がなかったってことで

KG:このチキンが。少しは漢気見せろよ

mob1:うるせえ。危ない女には近づかない主義なんだよ

Coat:何もしない方が危ない場合もある。今がそのパターンだ

Angela:あら、確かコータのアカウント。わざわざ敵の腹からアクセスしてきたの?

Dingo:いや、使い魔サーヴァントだろ。今、コータの身体を使ってるのは使い魔サーヴァントと聞いてる。コータの人柄を考えると、使い魔サーヴァントがアカウントの権限も預かっててもおかしくない

Coat:その通り。俺はイリノ・コータの使い魔サーヴァントで、テイマーからいろいろと預かっている身だ。便宜上、アーミテジとでも呼んでくれ

mob43:使い魔風情が名前をねえ

KG:何か文句でもあるか

mob43:いや、あの人らしいと思っただけさ

Coat:寛容な対応痛み入る。さて、ケイジが提示した依頼だが、これはギルドの……いや地下都市アングラ全体の利になると進言しよう

JM:俺達にもメリットがあると?

Coat:厳密にはデメリットから身を守ることができる、と言った方が良いだろう

Angela:何かヤバいことに巻き込まれそうになってるとでも?

Coat:考えてもみて欲しい。アースガルズ社はジュリ・アスタというヴァルハラ計画とギルドを繋ぐパイプを失った。加えて、計画の情報はギルドの全員が知るところとなっている。――アースガルズ社がそんな危険の種を放置するだろうか

Dingo:多少手荒な手を使ってでも潰しにかかる。そう言いたいんだな

Coat:簡単な推測だ。現にアースガルズ社はギルドを殲滅するための準備を始めていると、上層社会トップでは大々的に宣伝している。――地下都市アングラのギルドが上層社会トップの侵略を目論んで攻撃を仕掛けてきた。これはその報復であると大義名分をでっち上げてだ

mob25:ちょっと待てよ! え、冗談だろ?

JM:いや、確認したがマジらしい。これは流石に笑えないな

Coat:地下都市アングラの危機は理解できたか。――こういう状況だからこそ、アスク・エムブラを解放することに意味がある。奴を解放すれば中核の抜けたヴァルハラ計画が頓挫するのは自明の理だ。また、解放の謝礼として力を借りることも可能だとコータから聞いている

JM:そのアスク・エムブラは複合知性ハイブリッドとやらで、俺達とはモノの考え方からして違うんだろう。本当に信用できるのか?

Coat:逆だ。モノの考え方からして人と違うからこそ、奴は安易な裏切りはしない。1度組んだ契約は是が非でも裏切らない使い魔サーヴァントの性質もあるからだ。……奴の力さえ借りられれば、アースガルズ社からの圧力を抑えることも容易い。当事者として計画の内容を一般市民にも危険だという側面を強めてリークする手も使え、最悪の場合マスターコールという切り札もある

KG:これで嫌でも分かっただろう。俺達に選べる道は1つだけで、もう退路は無いってことだ

mob1:退路を潰したのお前らじゃねぇか!

mob2:なんてことしてくれたんだ、おい!

mob310:これは……本当にとんでもないことに巻き込んでくれたな

mob43:あんた達らしいっちゃらしいけどな

mob25:どうすんだよ。どう責任取ってくれるんだよ!?

KG:あれ、そういう流れになるのか? そこは漢気を見せてくれるところだろ

mob1:うっせー馬鹿!

mob2:間抜け!

mob25:引っ込め―!

KG:おいおい。マジか。そうか……そうなるのか、マジか


---- Login:Dixie ----

Dixie:狼狽えるな者ども! 恥を知れ、恥を!!

---- Login:Ruka*2 ----

Ruka*2:ルカルカもぉ、あんまり五月蠅いのは嫌だぞ☆

---- Login:Blade ----

Blade:あ、今日届いた新作武器の実験体になりたいならジャンジャン喚いてください


mob310:No.1の餓狼王ガロウオウにNo.2の大海神オオワダツミ、No.3の千剣竜センケンリュウ。ギルドのトップ3が勢ぞろいだ

Blade:まず君が実験体1号ですね

mob310:最初から説明に徹していたのにそれはあんまりでは?

KG:師匠、ご無沙汰しております。事態の鎮静ありがとうございます

Dixie:気にするなあ!。話もだいたい分かっておるわぁあ!!

KG:流石。ところでもう少しボリュームを押さえて頂けると助かります

Dixie:おお! すまんな!!

Ruka*2:ライ君は相変わらず話聞かないにぇー。でーも、本当にだいたい分かっちゃってるから問題ナイナイ

KG:貴女は年を考えてください。34になってそのキャラ付けはきつ

Ruka*2:あ?

KG:いえ、なんでも。……って、また話が脱線した。なんだこれ。ぐだぐだになるのは全面的に俺のせいか?

Coat:同情する

Guest:私も

KG:ありがとさん。……馬鹿みたいな茶番は終わりだ。改めて全員に聞きたい。――お前らはこのまま何もせずに、アースガルズ社に怯えて最期の日を待つだけで良いのか? モブどもの指摘通り蟲爺ギーザーを殺して地下都市アングラ全体に危機を招いたのは俺達の責任だ。お前らが望むんなら野糞の上で土下座してやる。でも、蟲爺ギーザーを放置していたら上層社会トップで実験体扱いされる仲間はもっと増えていたのも事実だ。……いつだって、あいつらは俺達を人間扱いしない。だから旨みが得られないと判断したら、管理が面倒になったらすぐに排除に掛かる。それを理解した上でこのまま蝿みたいに潰されるのを受け入れるのなら、もう何も言わない。――だが、もし一泡吹かせてやりたいと思うなら、俺達を手伝ってくれ

Dixie:聞いたかお前らあ! 漢を見せるところだぞ。ほら、我こそはと思う者から声を上げろ!!

KG:ちょっと師匠黙って。せっかくの俺の演説が

JM:乗った

KG:え?

Angela:私らも乗る

Dingo:お前の演説が響いたんだよ。言わせるな、恥ずかしい

KG:お前ら……。

mob310:仕方ない。俺も新兵器とやらの実験体になるのはごめんだ

mob43:あんた達の手助けだろ。上等だ

mob1:あー、マジで。そういう流れ? 俺らはどうする?

mob2:どうするたって……

mob25:仕方ねえ、いっちょ手を貸してやるか

mob1:あ! お前、せこいぞ

mob25:何がせこいって? 俺は勇敢なギルドの一員としてだな

mob2:はいはい。俺も参加しまーす

mob56:俺も

mob602:私も

mob78:おいどんも

mob99:拙者も

KG:おいおい参加志願が止まんねえよ……ありがてえありがてえ

mob1:いや、なんだよこれ……なんだよこれ

Blade:自分も参加しますよ。滅多にない実験の機会ですし

Ruka*2:ルカルカの魅力で上層社会トップのエリートのハートを撃ち抜いちゃうぞ☆

Dixie:ガハハハハハ! みんなよい心構えだ。当然、俺も力を貸すぞぉおおっ!!

KG:おお、心強いことこの上ないです。ギルドが一致団結すれば上層社会トップ大企業メガ・コーポだろうと、ヴァルハラ計画だろうと怖くない。そう、ギルドの面々1人残らず力を貸してくれれば。……そうは思わないか、モブ1号君

mob1:ああもう、分かったよ。協力すればいいんだろ。協力すれば。……でも、1モブの俺の力なんてたいしたことないぞ

KG:なに、モブにはモブなりの活用法がある

mob1:おい、待て。何する気だ、おい?

KG:とりあえず話がまとまって良かった。作戦はまた1時間後に。――ありがとう、お前ら愛してるぜ。

mob1:答えろよ、おい!?

---- Logout:KG ----


「はあ、疲れた」
「お疲れ」
 意識を現実リアルに戻すと一気に疲れが押し寄せてきた。肉体的な疲労だけではない。寧ろ精神由来のものが大半だろう。それほどに緊張する舞台で、内容もなかなかに混迷カオスを極めたものだった。
 それでも十分な結果は得られた。あとはアースガルズ社を仕留める程の策を考えて実行するだけ。戦争ウォーゲームを避けられない可能性があるのなら、せめてその火ぶたはこちらから切って落としてやる。
『いやあ、面白かった。ばっちり記録も残しておいたから、後でまた見直したらどうだ』
「すぐに消せ」
 やらなくてはならないことはまだ大量に残っていて、寧ろここからが本番だと言った方が適切。しかし、一仕事を終えることができたのも事実。使い魔サーヴァントの軽口に答えるのを最後に、ケイジの意識はまどろみへと溶けていった。




 


スレッド記事表示 No.4747 What is the cage? 3-1パラレル2017/07/16(日) 14:06
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       No.4753 What is the cage? 3-7パラレル2017/07/16(日) 14:12
       No.4754 What is the cage? 3-8パラレル2017/07/16(日) 14:12
       No.4755 あとがきパラレル2017/07/16(日) 14:13