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ID.4682
 
■投稿者:tonakai 
■投稿日:2016/10/10(月) 23:24
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デジタライズ〜あるハッカーの挑戦〜<6>
         
「おはよウ。気分はどうダ?」

竜山が気がつくと同時に電子音チックな野太い声が耳にはいった。
目覚めには良くない声だと顔を歪ませながら体を起こす。


「……俺、ベッドで寝てたっけ?」

あまり使っていないベッドの上で、しっかり毛布を着込んでいた形跡があった。
彼はベッドで寝る習慣はほぼ無く、ソファか机に突っ伏すことが多かった。

「秋月たちが運んダ。技亜瑠ヨ、どれくらいの時間が過ぎていると思ウ?」

「は? そんなのせいぜい8時間くらいじゃ……」

「技亜瑠がプログラムの転送を終えてから2日ダ」

「なっ!?っ〜〜〜やっちまった!!」

風呂に入っておらず、触った髪の毛がべたつくのを不快に感じながら、すぐさま立ち上がる。
パソコンのある部屋に移動しながら、MDは彼に問いかける。

「良い情報と悪い情報があル。どちらから話そうカ?」

竜山は一瞬ためらったが、選り好みに意味がないと割り切りることにした。

「じゃあ悪いほうから」

パソコンの前に座り、ディスプレイの電源を入れる。
MDは数秒の間を空けて話し出す。

「D社ビルの高層部に霧が発生しタ。おそらくコアエリアがリアライズしたのだろウ」

それを聞いた竜山は、手のひらで自身の額を叩いた。

「ついに来たか」

テレビを付けると、報道番組がその様子をまさに映し出していた。
原因不明の霧が発生し、ビルの中にも入ることも連絡することもできなくなっている。
その霧は徐々に下層部を含めてビル全体を覆い尽くしつつあるという。
D社会運営のオンラインゲーム『デジタライズ』もログインできなくなっており、プレイ中だったプレイヤーは、強制的にログアウトさせられたことで、SNSで炎上しているとのこと。

「本格的に動きだしたな、こうしちゃいられない。すぐにデジタルワールドへ」

「いや、その必要はない。良い情報だが、封鎖プログラムは無事に全エリアに行き渡ったようダ」

「ほんとか!?」

彼はデジヴァイスを手にして、液晶を覗き込む。
MDはそれに肯定し、次にすべき行動を提案してきた。
つまり、D社ビルへの侵入である。

「D社とのネットワークは完全に切り離されていル。まるで別次元ダ。プロテクトを破るのとはわけが違うゾ」

「D社だけスタンドアローンというわけか……支社の方はどうだ?」

「……数ヶ月前に既に閉鎖されていル。今回のことは綿密な計画の上にあったということだろうナ」






◆◆◆

男は身長180cmほどで、筋骨隆々の巨体で、金髪で両耳にピアス。
服装は、黒い無地のシャツに、ダメージジーンズといったラフな格好をしている。
目つきが鋭く、不敵な笑みを浮かべており、得物を前にした獣のような雰囲気を漂わせている。
女は身長160cmほど。
白いワンピースの上に、暗い紫の上着を羽織っている。
メイクはきっちりと、しかし、濃過ぎないように配慮した按配で、仕事ができるキャリアウーマンのように見える。



突如現れた男女。
リリスモンは、以前顔合わせした竜山技亜瑠という青年と比較する。
少しばかり目の前の2人の方が年上か?と、デジモンに年齢は関係ないというのに、どこか人間的な考えを持つ彼女は、警戒心を離さずに、問いただす。

「人間がなんの用かしら?」

「決まっている!」

「“突きに”来たの。お相手いただけるかしら?」

2人はデジヴァイス、『D3』を取り出すと、同時にそれを口にする。

『デジタライズ!!』

現れたデジモンに戦慄するリリスモン。

「これは……骨が折れそうねぇ」






◆◆◆

「技亜瑠、デジタルワールドに動きがあっタ」

竜山が昼食のカップ麺にお湯を注いだところで、MDが声を発する。
デジタル式の銀縁の腕時計で時間を計りながら、うんざりしたようにそれに答える。

「いやな予感がする」

「人間2人が魔王たちと交戦していル。D社のハンターかもしれン」

「だな。プログラムが間に合ってからで良かった。行くぞ!」

「いや待テ。カップ麺はあと30秒で完成するゾ?」

時間を計っているなら先に言えと思った竜山だが、それは2の次。

「むっ……食ってから、いや〜〜〜、南無さん!!」

カップ麺を断念して、デジヴァイスをPCのモニターに掲げるのだった。



やってきたのは、荒野のエリア。
しかし、しっかり管理されているのか、寂しさを感じさせない近代的なビルや住宅が立ち並んでいる。
日本のよくある風景に似たこのエリアは、ここが本当にデジタルワールドなのかと疑いたくなるほどである。

「あ、こんにちは!」

元気よく挨拶してきた少女は、春野真妃(はるの まき)。
元D社所属のハンターである。
秋月と同年代である彼女は、自分とも同年代であることを思い出し、竜山は改めて彼女を見る。
動きやすそうな薄ピンクのトレーニング用のTシャツと黒いスパッツという出で立ち。
それは、彼女がハイブリッド型のハンターであり、デジモンに変身して直接戦うスタイルをとっているからだろう。
ただし、このデジタルワールドにとって、服装など見た目でしかなく、動きやすさという感覚はエリア特性くらいでしか左右されない。
おそらく気持ちの問題なのだろう。

(それより、こんな活発そうな娘が、オンラインゲームのトップレベルプレイヤーとは……いろいろ間違っている気がする)

いわゆる廃人ゲーマーという固定概念と目の前の現実のちょっとしたギャンプに、竜山はそれを顔に出さないように必死に平静を装っていた。

「来てたのか。話は?」

「勿論! リリスモンが人間と交戦したって……やぱりD社のハンターかな?」

「わからんが、可能性は大きいだろうな」




「あらあら、珍しいお客さんね……ようこそ私のエリアへ」

眠そうな顔をしながら、長椅子に横たわるリリスモン。
彼女は、怪我をしているわけでもなく、いつもの調子で爪を研いでいるわけでもなく、ただやってきた客人に対して挨拶をする。

「人間が来たそうですね。しかも戦ったとか」

「あぁそれね。はぁ〜……ごめんなさい。また日を改めてくれるかしらぁ? なんだったら隣のルーチェモンのエリアにでも行って話を聞いたらぁ?」

そういい残すと、ノロノロと長椅子から立ち上がり、奥の部屋に引っ込んでしまった。

「あれれ、どうしたのかな? 元気なかったね?」

「……妙だな。勝ったとなれば武勇を誇るだろうし、負けたにしては、それをエリアの雰囲気からは感じ取れない。リリスモンもピンピンしてるし」

建物が壊れていたり、生活しているデジモンが怪我をしているということもなかった。
2人は釈然としない面持ちでルーチェモンのいる隣のエリアに向かうことにした。







「やぁ君か。この前からいろいろとご苦労様だったね?」

前髪をかきわけながら、ルーチェモンフォールダウンモードは2人を歓迎する。
彼が言っているのは、デジモンの人間界流出を防ぐために動いた件だろう。
だが、竜山はそれを払いのけるように単刀直入に聞いた。

「俺たち以外に人間は来ませんでしたか?」

すると、ルーチェモンは一瞬、目を大きく見開き、すぐにいつもの表情に戻る。

「あぁ、来たね。男女のペアだった。戦いはしたが……いや、あれを戦闘ととるべきか……う〜ん」

なにやら考え込んでいるルーチェモン。
やはり様子がおかしいと思った2人は、さらに質問する。

「様子を見るに、撃退はしたんですよね?」

「いや……向こうから引いていったんだよ。パートナーのデジモンを呼び出して……いや本当によくわからないうちにいなくなっていたんだ」

目を閉じて、顎に手をやり、まだ考えているルーチェモン。
謎は深まるばかりだ。

「状況はわかりました……あ、いや、よくわからないままですけど、とりあえず失礼します」

「おもてなしができず、すまないね」





ルーチェモンの町を後にした2人。
しばらく歩いたところで、竜山は立ち止まる。
察しが着いたのか、普段は明るい春野も緊張した表情をする。

「出てきたらどうだ?」

ただ目の前を向いて、それを言い放つと、どこからともなく声が響き渡る。

「あらら、なかなか油断がならない坊やたちね?」

「やりがいがあるというもの!」

人の気配が背後から感じ取られる。
2人は素早く振り向くと、自分たちより幾分か年上の男女のペアが立っていた。
男は体格が良く、少し不良チックな雰囲気を、女はオフィスで働いているような隙のない雰囲気を醸している。
相手のペアは手にしたデジヴァイス、「D3」を見せつけるように前へ竜山たちに掲げる。

「やはりD社のハンターか……春野、行けるか?」

「もっちろん! 最近暴れたりないところだったし」

春野は首や手組みを回して、屈伸運動をすると、Dスキャナを取り出す。

「スピリット・エヴォリューション!!」

デジコードが凄まじい勢いで春野を包み、炸裂すると、現れたのは元の身長をゆうに超える長身の鳥人。

「シューツモン!!」

手足が長く、プロポーションが素晴らしい見た目ではあるが、武器である爪も鋭く長い。
風のビーストスピリットというアイテムにより進化する設定から、かなり攻撃的なデジモンであることが伺える。
春野はハイブリッド型のハンターであるため、自らデジモンになって戦うスタイルである。

「MD、復帰後最初のバトルだな?」

「大丈夫ダ、問題なイ」

竜山はメガドラモンとギガドラモンを呼び出し、ジョグレスでムゲンドラモンを出現させた。
MDがムゲンドラモンに乗り移り、体に自身を馴染ませるように準備運動をする。

「さぁ、こちらの準備はできたぞ」

構える。

「そうか、ならば良し! デジタライズ!!」

「デジタライズ!」

向こうのペアが呼び出したのはバンチョーレオモンとダークドラモンであった。
バンチョーレオモンは、ライオンの獣人で、黒い詰入の制服を羽織った、名前のとおり番長の姿をしている。
ダークドラモンは機械竜型の、飛行能力を有した、全身が武器になっているデジモンである。
このデジモンに限っては、同じ機械竜型であるムゲンドラモンの天敵とも言える。

「じゃあダークドラモンは私が!!」

春野は勢いよく、ダークドラモンに飛び掛る。

「アルティメットスライサー!!」

長い腕と鋭い爪を活かした強力な一撃。
攻撃は確かに当たった。
だが、それは空をかいた。
シューツモン(春野)は目を見開く。
特段、高速で動いて回避したわけでもなく、装甲値が高いがゆえに弾かれわけではない。
目の前のデジモンはまるで幽鬼のように、目視はできるが、まるで効果がない。
シューツモンは再度、何爪を振るうが、その攻撃は当たることはなかった。

「MD、分析できるか?」

「やってみよウ」

MDが解析を始めながら、ムゲンドラモンを操り、バンチョーレオモンと対峙する。
隣に立っている男のハンターは、不敵な表情を向けながらD3を構える。

「魔王たちより楽しませてもらえるのだろうな?」

「どうだろうな? あんたが瞬殺されれば退屈だろうな」

「ならば受けよ!」

男がバンチョーレオモンに指示を出す。
構えた拳が閃光のように輝き、距離が一気に縮まる。
同時に、ムゲンドラモンが一瞬で後方に吹っ飛ぶ。

「なっ……!?」

「ふっ、これで終わりではあるまい! 来い!!」

ムゲンドラモンのダメージは軽微。
竜山はデジヴァイスでバンチョーレオモンのデータベースを呼び出す。

「バンチョーレオモン、究極体、必殺技は『フラッシュバンチョーパンチ』……いや、今のは別の技だな?」

竜山がそういうのは、ムゲンドラモンの腹部に刃物で付けた様な切り傷があったからだ。
勿論、バンチョーレオモンには本来、刀による技も存在している。
しかし、目の前のデジモンは丸腰。
エネルギーの刃でも使えるのであれば話は別だが、あの一瞬の動きからは結論づけることはできない。

「MD、こいつもスピードタイプだ! デッドスピードを使うぞ?」

MDがうなずくと、改造コードを走らせる。
物理を無視した高速移動。
まるでモーションを手抜きしたゲームのような無機質なスライドで、バンチョーレオモンの周辺を走りまわり、ジェノサイドアタックを放つ。
無数に放たれた有機的なミサイルは、バンチョーレオモンに着弾。
しかし、それはダメージにはなっておらず、蚊でも刺したのかと言わんばかりにムゲンドラモンに視線を向ける。

「妙だ。バリア系のプラグインでも使っているのか?」

「技亜瑠、おそらく別の何かダ。奴のデジヴァイスからオプションの使用ログが見当たらなイ」

「だとしたら……?」

竜山は男が構えるD3を観察する。

「そういえば、指示を出すだけなら構える必要もない。いや……それ以前にだ。
奴のD3の色……金ベースの本体に銀のフレームという派手なカラーリング」

なんとなく振り返る。
相変わらず攻撃が空振りに終わるシューツモンと、一向に攻撃をしかけてこないダークドラモン。
パートナーである女のハンターもD3を構えながら、不敵な笑みを浮かべている。
D3は、銀ベースの金のフレーム。
男とは逆のカラーリングであるが、そもそもD3の特性と言えば……

「……技亜瑠、ビンゴダ! あのダークドラモンからデジモンの生体反応がない」

「そういうことか!!」

竜山は呼び出したメタルマモンを手のひらに乗せ、思いっきり女ハンター目掛けて投げつけた。
突然のことに、体勢を崩した女ハンターがD3の構えと解くと、ダークドラモンの姿が掻き消えた。

「気づいたか、だが遅いな!!」

男ハンターは、なんらかの指示を出すと、バンチョーレオモンが左腕を構え、雷撃を飛ばしてきた。
寸でのところで、ムゲンドラモンが回避するが、∞キャノンの右砲身が融解する。

「今の攻撃、“バンチョーレオモンの技じゃない”」

「ふっ、そうだ」

男はD3の構えを解くと同時に、バンチョーレオモンの姿が別の物に変わる。
白い仮面と鎧で体を覆い、緑の羽衣をはためかせ、右腕がバンチョーレオモンの頭、口から巨大な刃が伸び、左腕はダークドラモンの頭になっていた。

「カオスモン……ジョグレス体か!?」

ご名答と、人差し指をこちらに向けてくる。

「単に強いだけでは面白くない」

「単に戦うだけでは飽きてしまう」

D社のハンター2人が1箇所に並び立つ。

「悪いが、俺たちの仕事は“突いて来い”なんでな。本気でお前たちとやり合う気はない。縁があれば会うこともあるだろう」

「またね?元気なお嬢ちゃんも」

2人の姿は無数のビットに覆われ、消えていった。

「“突いて来い”か……狙いはわからず仕舞いだな?」

「完全に遊ばれてたね?」

変身と解いた春野が近寄ってきた。
戦闘以外は笑顔な彼女も、珍しく不機嫌そうだ。

「目的はなんだったんだ?……MD、さっきの戦闘、分析できるか?」

「やってみるが……あの戦闘に意味などないだろウ。しいて言えば、こちらの出方を伺っていたようにしか見えんナ」

「普通、こちらが手の内を明かす前に撤退するか? 実力はこちらと同等かそれ以上だった。改造コード使ってる意味ねぇーよ、ったく……」

悪態をつく竜山に、春野がインチキいくない!と背中を叩いた。







◆◆◆
黄金の聖騎士、マグナモンはD社ビル屋上に佇んでいた。
その行為に意味などない。
ただ待つことだけが、今与えられた任務なのだ。
その任務も、自身の望みに繋がる行為だと信じ、今日まであの存在に従ってきた。
だが、その我慢も限界が近い。
騎士自身、精神はまだ子供なのだ。
今の姿は、幼年期からある特別な方法で進化している。

「目の前にいるのに、どうして待たないといけないの?」

マグナモンは、思い切って屋上から飛び降りた。
強大な力は、重力をものともしない。
静かに着地すると何事もなかったかのように歩き出した。
地上は、どこまで行っても霧がかかり、ビル周辺の景色はまったくない。
人の気配もなく、自動販売機や街灯も機能していない。
霧の向こうには行けなかった。
進んでいる感覚があるのに、振り返ると全く進んでいない。
D社ビルの正面出口の風景が数分前と変わっていない。

「誰も……いないの?」

ビルを2周する頃には、その行為に飽きたのか、その場に腰を下ろして空を仰ぎ見た。

「どこにいるの?会いたいよ、香蓮……」

捨てられた子犬のように、悲しい目でどこまでも遠くを見据える。
しかし、それは中断させられた。

「こないなとこで奇遇やな?」

「おい、南洞! 今はまずいだろ?」

声のした方を向くマグナモン。
白い竜人と、赤い鎧のケンタウロスが立っていた。
ハンターの2人、南洞翼と北道円馬である。
黄金騎士は、人間界に来たときに、一緒にくっついてきた邪魔者と認識した。

「うるさい」

2体のデジモンに力なく発した言葉。

「言ってくれるやないか! ここでさっきのケリをつけてもええんやで!!」

「だーかーら、」

「円ちゃん、止めてくれんな。こないなところに手がかりなしでうろつくんは我慢の限界や!」

血気たぎる竜人デジモンを、円ちゃんと呼ばれる赤いデジモンがいさめるが、効果はないようだ。

「ねぇ……、お前を倒したら僕は“香蓮”に会えるのかな?」

放たれた重苦しい殺気に、ハンター2人は息を飲んだ。
生暖かく、重く、ピリピリとした空気が辺りを支配する。

「……“カレン”って女の名前だな?」

「知らんわ。今は倒すしかあらへん!」

南洞(デュナスモン)はマグナモン目掛け、右肩から低空高速飛行で突っ込んでいく。
しかし、動きを読まれていたのか、マグナモンはヒラリと右へ半回転してそれをかわす。
行き場を失ったデュナスモンだったが、器用にも、そのまま上昇して宙返り。
狙いを再び定めて突っ込んでいく。
だが、やはりそれは簡単に回避されてしまった。

「南洞、少しは頭使えよ!! 援護するぞ」

北道(スレイプモン)は、左手に装備した聖弩(せいど)「ムスペルヘイム」を構える。

「『ビフロスト』!!」

灼熱の矢が放たれる。
だが、光速をほこる矢も、マグナモンはあっさりと、左手で掴み、そのまま回転しながら放った当人の元へ投げ返す。

「ま、マジかよ!?」

右手に装備した盾によって、返された矢を寸でのところで防ぐ。

「大した動体視力やないかい!?」

南洞は、再びマグナモンに突っ込む。
しかし、やはりかわされるばかり。

「なんか面倒になってきたな……」

マグナモンはやりとりに飽きたのか、一瞬にして南洞に肉薄し、取っ組み合いになった。

「よぉ、前もこないなことしたなぁ?」

「何のこと? ……うおおおおおおおおおお」

マグナモンはその体に似合わない力で、南洞(デュナスモン)の巨体を持ち上げた。

「南洞!!」

北道が聖弩を構えるが、下手をすれば南洞に当たってしまうことから、そこまでにとどまった。
持ち上げられた北道は、回転を加えられながら投げ飛ばされる。

「おしまいにするよ。『エ・ク・ス・ト・リ・ー・ム……」

マグナモンの必殺技。
空中に浮かび、自身の体を抱きしめるように構える。

「南洞、もう“アレ”しかないぞ!?」

「ちっ、わぁっとるわぁ! 援護頼むで!!」

北道の助言にやむを得ないと判断した南洞は、周囲に白く輝くエネルギーを走らせる。
デュナスモンの必殺技、攻撃力だけで言えば、ロイヤルナイツ随一を誇る。
しかし、周囲への影響も計り知れない。

「ブ・レ・ス・オ・ブ……」

南洞は、マグナモンと同じように、自身を抱きこむようにエネルギーを溜め込む。

「ジ・ハー……っ!?」

マグナモンは必殺技の口上を中断させられる。

「敵は一人じゃないんだぜ? 卑怯だけどな」

北道がスレイプモンの必殺技、灼熱の矢、『ビフロスト』を再び放ったのだ。
それはやはり片手でかき消されてしまったが、時間稼ぎには充分だった。

「ワイバーーーーーーーーーーーン!!!!!」

巨大な龍のオーラが出現し、黄金の騎士に襲い掛かる。
あたりは竜巻のようなエネルギーに満たされ、北道は飛ばされそうになりながらも、なんとかその場に踏みとどまる。
そして爆発のエネルギーが空間を支配する。




「くっ……くそっ。なんで、なんで香蓮は……」

マグナモンはその場に倒れている。
鎧にはヒビが入り、黄金の輝きもくすんでしまっている。

「お前、人間のパートナーがおったんやろ?」

エネルギーを消耗した南洞はフラフラになりながらも、マグナモンの傍に立つ。
マグナモンは答えない。

「気の毒やな。もしかしたら、俺らと一緒に冒険しっとたかもしれんのに……」

南洞は黄金の騎士に背を向け、北道を連れてその場を後にした。




「それにしても、妙だな……あれだけ派手にやったのに」

「あぁ?……ど、どないなっとんのや!?」

2人の周囲は何事もなかったように、相変わらずの濃い霧とD社のビルが静かに2人の目の前に建っていた。
一切の損傷もなく、まるで今までの戦闘が夢幻だったかのように。

「……これは、もしかすると」

「今回のリアライズ、藪川にとって誤算やったんとちゃう?」

2人はしばらく、その場に立ち尽くすしかなかった。






つづく


スレッド記事表示 No.4682 デジタライズ〜あるハッカーの挑戦〜<6>tonakai2016/10/10(月) 23:24