<Font Color="#804000">オリジナルデジモンストーリー掲示板</font><Font Color="#4b87eb">NEXT</font><Br> <Br> http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/ ja 2018-05-22T00:50+09:00 感想ありがとうございます! http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4973&mode2=tree 夏Pさん 人間キャラは雑魚不良のカシマくん、デジモン勢はサイバードラモンや今回のブラックラピッドモンと多種多様なタイプの噛ませが出てくるのはこの作品を書いてて楽しい点の一つです。 ネオヴァンデモンさんのヒントは特に深い意味は無くて「事件のあった日から出てきた血の匂いがするから南東に行ってみ(ドヤァ」って感じです。分かりにくくてすみません。「言いたいことははっきり言えや!」って月光将軍叱ってきます。 パラレルさん マミーモンの弱点はかなり強引な感じがしないでもないですが、設定からは外れてないしセーフでしょ!? ということで… ネオヴァンデモンさんは難産だったキャラだったので、癖の強さを感じてくれるのは嬉しいです! tonakaiさん 初瀬さんは今回本人の知らないところで本人の知らない理由で殺されるところだったということで、まったく災難なものです。マァ、彼女が事件に関係していなければの話ですが。 マミーモンの格好よさを褒めていただけると嬉しくて泣いてしまいます。実は当初は特に推しデジというわけでもなかったんですが、作品を書いてるうちに大好きになっていました。これからも頑張って皆さんもマミーモンファンに変えてやろうと思います。 マダラマゼラン一号 2018-05-22T00:50+09:00 いつの間にか、甘い珈琲は飲めなくなっていました http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4973&mode2=tree 拝見しましたので、(感想ではなく)足跡をば。 同級生のあの娘はなんとなく事件にからんでくるのかな~とは思っていましたが、目の離せない展開になりましたね。 今後の関係の進展が気になります。 と思ったら黒いウサギちゃんがでてくるわ、熱いバトルを元上司にもっていかれるわ。 でもでも、マミーモンの格好良さが際立った感があります! マミーモンを一番格好良く書けるのはマダラマゼランさんしかいないでしょう。 愛を感じます。 元上司はネオヴァンデモンですか。<s>またあなたか!?</s> 失礼を。最近拝見した某方(NEXT内)の作品にも登場していたもので、 なんか黒幕感があって、全部こいつが悪いんじゃないかと。 あ、いやいや、忘れてください。勝手な妄想です。 しっかし早苗は、捕まって命とられるかもしれないのに、平然としていましたねー。 ここに成長を感じました(←絶対違う) 物語も佳境でしょうか。 続きが気になる終わり方も憎いです。 次回投稿はよーーーーーですよ。 tonakai 2018-05-05T17:40+09:00 ガチで殺しに来られると流石に恐怖 http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4985&mode2=tree >性欲が脳の大半を占める男子という生き物  <b><s>男の甲斐性である。</s></b>そんなこと絶対に認めなぁぁぁい。  竜美さん好きっていうか、多分今ストーリーで一番大事なことを言ってくれた気がしますが、本題はクマ先生と委員長だった……イメージ的に絶対入ると思っていましたが、<font color=#FF0000><b>やっぱり名前に“正義”が入っていた</b></font>委員長の勇姿。まるで主人公のようだ……いや、今回段々と表面化してきた<s>ほっとけない!</s>性分からして世莉さんと方向性は似てる気もするからW主人公ってことなのか?  そんなわけで夏P(ナッピー)です。  そういえば教師は今まであまり絡んでこなかったかと思っていましたが、ここで一気に本質に突っ込んでくる先生が出ましたか。俺はてっきり(またか)いい先生と見せかけ裏ではあくどいことやってる外道かと思ってましたが申し訳ございませんでした。というか、いきなり体を求めてくる兄貴と殺しに来る弟って危険すぎるゥ!!  その流れが委員長の過去に一気に繋がっていくのもスッキリ肚落ちした感があります。サイバードラモンから進化したんだジャスティモン……しかし“なんとなくいい人”ではなく確固たる信念を感じたので、応援したいという気持ちが増えました。  あと<s>俺はカプ厨なので</s>世莉さんが委員長に「真っ直ぐ見つめられたら大半の女子は好きになるんだろうな」みたいな感慨を抱いてるのを見ると「ま、まさか!?」とワクワクするのは内緒だ!  それでは次回もおまちしております。 夏P(ナッピー) 2018-05-04T23:26+09:00 古き良き?感想 http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4937&mode2=tree 「古き良き未来」、矛盾したようでなんとなく意味が伝わるタイトルであります。 作中で「君の見ていた古き良き未来は存在しない」とジェームズは断言しましたが、春子が自分の信じる「選ばれし子供」像に従った行動でシーラが救われたように「古き良き未来」は極狭い範囲の中だけでも確かに存在するものなのでしょう。やがてそれは極狭いところだけではなく人から人へ伝わって行くのかもしれない、そう解釈できる結末でした。 自分が感じるこの作品のイメージカラーはモノトーンとかセピア色なんですよね。同人誌版の表紙からして曇り空・寒色で表現されたビル・ベージュのコート・ドーベルモンでくすんだ暖色のない色合いです(このENNEさんのイラストの印象が大きいのかもしれません)。冬の曇り空の印象が強い本作の中で、年老いたジェームズと並ぶもう一人の若い主人公の名前が「春子」という名前なのは、冬が明け春が来ることを新しい世代の誕生と重ね合わせ、またセピア調のイメージを春の芽吹きが運ぶ様々な色彩が一新する、というニュアンスのように感じられます。シックな色使いのドーベルモンが金色のクーレスガルルモンになるのも象徴的ですね。対決する相手も黒いウォーグレイモンですし。 個人的にグッと来た一節は「ウォーグレイモンは再び、その腕を取ってでも助かりたいという衝動に駆られた」の部分です。悪役が絶体絶命の瞬間に達観して罪滅ぼしに自ら死を受け入れるんじゃなくて、希望を見つけて「生きたい!」と感じるシーンにグッときます。この後、散々ウォーグレイモン視点でどんな危機的状況でも表情が変わらないと描写されたジェームズに対して「なんて顔だ」と評するところもグッとポイントですね。 同人誌版で拝読させていただきましたが、読みやすく面白い作品でした。「ゆめのしま」で声をかけて頂いた件も含めて、お礼を申し上げます。ありがとうございました! ut 2018-05-03T19:17+09:00 感想偏心 http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4961&mode2=tree >夏Pさん 感想ありがとうございます。 そう探偵だったのです。今日更新した七話でもそうですが準レギュラー的に世莉さんの関わるきっかけになったりしていきます。 依頼人の知り得る限りのデータのすべてを送ってくるとても誠実なスタイル…… ザミエールモンは学校という狭い舞台で戦ってもらうにもとても向いたデジモンですからね。生身の人間へのダイレクトアタック抜きにはまず勝てない強敵です。 ゆうちゃんはなんかもう……色々やばい子です。 今後もそれなりにジャスティモンやそれに準ずる敵が出てきたり出てこなかったりします。 次回もよろしくお願いします。 >マダラマゼランさん 感想ありがとうございます。 マダラマゼランさんの様なかっこよくておしゃれな雰囲気の話書く人に雰囲気がいいと言われるとなんだかとても照れますね。 蘭さんとエカキモン、愛らしい子達ですよね……色々な意味で…… 真田君は本島に過去いいけど残念な子とそう言った感じを意識しました。きっと、きっと頑張ってくれることでしょう。なんだかんだ周りに女子もいっぱいで少しうらやましい感じでもありますし。女子相手の行動も慣れて……行くといいですね。 亜里沙さんの胃に穴をあけるならそれこそローダーレオモンの削岩機みたいなものを持ってきてくださいという感じの子なので割と大丈夫です。先に胃に穴が開くのは……誰でしょう? 次回もよろしくお願いします。 ぱろっともん 2018-05-02T21:22+09:00 それは悪魔の様に黒く 七話 あとがき http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4985&mode2=tree 聖さんが三話ぐらいで少なくとも三体いるのを確認していたとか言ってますが聖さんの認識している以上に殺してます。 今更ですが委員長、清水 正義っていうんですよ…… そしてまぁ、ツイッターの方でも少し言ったんですが、嘉田さんは結構やばい人です。 証人欲求が強いというか、家族が承認してくれないので承認されたくて、成績も結構よかったりして色々と認めてもらえる機会はあるだろうと考えていたのに、聖とかいたせいで学年五位前後を行ったり来たり、聖を頼ればなんとかなりそうなところとかあるから当然頼られるわけもなく、大分聖さんに対して逆恨みしてます。縁に声かけたりして友達になったのも、自分をちやほやしてくれそうで積極的に誰かに頼れなさそうな弱さがにじみ出ていたからだったり。 次話はチョ・ハッカイモンの死についてネクロマンサーの真骨頂を見せながら真実はいつも一つ迷宮知らずの名探偵します。果たして相棒として選ばれるのは誰なのか……委員長は正直話しかけ難いし聖さんはもっての外、一緒に調べてくれそうな人はいったいどこの世莉さんなんだ……(嘉田さんは真田君がちやほやしてくれないから短期戦力としては最強格だけど付いてきてくれない) ぱろっともん 2018-05-02T19:33+09:00 それは悪魔の様に黒く 七話 下 http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4985&mode2=tree 彼女は上機嫌だった。センター試験も手応えがあって、つい昨日行われた試験も手応えがあった。それに先生にも努力が認められた。 二年の夏休みより前には考えられない成績に少し有頂天にすらなっていたが、ふと踏切に差し掛かってその足取りが重くなった。 実に嫌なことを思い出していた。 彼女には少し前まで不思議な友達がいた。それはデジモンと呼ばれる存在だったがそれを知る機械すらないままに彼女はその存在と別れる事になった。 二年の夏休みの前は髪の色も染めていた、スカートの丈も弄っていたし、授業中は寝ていた。それである夏の日、補習で来た学校でそのデジモンと出会った。 豚の着ぐるみを着たスクール水着の子供みたいなそのデジモンを見て彼女はひどく笑った。笑われているそのデジモンも何故か笑った。名前はチョ・ハッカイモンというらしかった。 気のいい友達の様なチョ・ハッカイモンと家ではひたすら喋ったし、授業中にはスマホの画面を使って文字で喋り、放課後も彼氏を放置する程になっていた。 その彼氏がまさかあんな行動に出るとは彼女は思っていなかった。 最初は普通に放課後に呼び出されただけだった。放置しすぎていた気はしていたし、遊びたいのかなと彼女はそこに顔を出しに行った。なんならまだその時はその彼氏のこともそれなりに好きだったので少し普段より丁寧に化粧したぐらいだった。 そこで彼は彼女を犯そうとした。チョ・ハッカイモンが止めようと姿を表すと彼の方からも黒い獣人の姿のデジモンが現れてチョ・ハッカイモンと戦う事になった。 それを助けてくれたのは同級生の女子だった。 いつもは目立たない女子だった。真面目で堅くて友達も少ない様に見えたし、陰で彼女はその女子を超合金メガネだなんて呼んだりもしていた。 覆い被さる彼氏の腹を蹴り上げたその女子と、その女子の背後から現れた黒い鎧武者のデジモンは彼女をあっという間に助けた。圧倒的だった。 ありがとうと、礼を言って数日後、その女子は死んだ。死因はどうやら電車に轢かれた事のようだった。持病の発作のせいで踏切の内側で立ち止まってしまったのではないかという話だった。 その二日後、彼女は帰り道の踏切で背中を押された。押したのは黒い獣人、そしてそれを助けようとチョ・ハッカイモンは電車に轢かれ、彼女の前に戻ってこなくなった。 もしかしてその女子もそうだったのではと思うと彼女はもうやっていられなくなり、彼からは可能な限り距離を取った。彼はもう彼女にちょっかいを出して来なかった。 噂で聞いたところによると、彼は一年下の男子生徒になにかが殺されたと呟いていたらしく彼女は少しだけ安堵した。ただ、二人とももう戻ってこない、 そもそも自分が付き合ってなかったらと思うととてもやりきれなかった。 その女子の葬式に行ったクラスメイトも少なくて、母親に挨拶したらカウンセラーになって悩む人を助けたいと言っていた事を知った。 酒田に彼女はどうしたらカウンセラーになれるかを聞き、調べ方を教えてもらい、その女子の成績には到底及ばなかったがなんとかカウンセラーになれるかもしれない大学を狙える学力にこぎつけた。 ゴーと目の前を電車が通り過ぎていく。 彼女は家帰ったら英語やらなきゃなと思いながら一歩踏み出そうとして、何かに襟首を掴まれて尻餅をついた。 「にーちゃんがさぁ……あんたにフラれてからメソメソしてめんどいんだわ……」 殺しに行っても失敗して、しかもデジモンそのあとやられちゃうしさぁと、だるそうに話す声はとても聞いた覚えのある声に似ていた。 後ろを振り向くとそこには兄が連れていたのと同じ様な姿の黒い獣人。ただより凶悪に見えた。 右腕にはチェーンソー、左腕も何か機械で固められていて、一息に握りつぶされそうな程だった。 「俺もさぁ、嫌なんだよこんなの。でも隣の部屋からにーちゃんのすすり泣く声が聞こえてきて嫌なんだよ、だから復縁するか死ぬかしてくんない?」 どっちがいい?と聞いてくるその男子に彼女は震えて声すら出ない。犯されそうになった時もそうだった。恐怖は声をなくさせる。 「た、助けて……誰か……」 小さな小さな呟きに、その男子は今どっちって言った?と首を傾げる。 「ねぇ、どっちって?よく聞こえなかったからさぁもう一回言って欲しいんだけど……」 フーッフーッと荒い息をしているそのデジモンの頬をその男子はぺしっと叩いた。 「マッドレオモンがうっせーから聞こえねーんだよ!脳みそ空っぽかよ!」 「だとしたらそれはお前も空っぽって事だな、グフ、グフフッ」 「あ?」 言い争いを始める二人に彼女がどうにか逃げられないかとキョロキョロしだすと、目の前にマッドレオモンが左腕をドンと下ろした。 「で、それが答え?」 なんだよもう一回聞かなきゃよかったと言いながらぽりぽりと頭をかくその男子の前でマッドレオモンがチェーンソーを振り上げた。 そして振り下ろす前にその体がふわりと宙に浮いて地面に叩きつけられた。 銀色の仮面をつけたそのデジモン、ジャスティモンがいつのまにか近寄って投げていた。 「はっ?」 その男子があっけにとられている前でジャスティモンが右腕を捻り上げ、肘を軽く殴る様にするとぼきりと鈍い音がし、さらに肩を力強く踏みつけるとまた鈍い折れた音がした。 淡々とジャスティモンはもう片方の腕と肩も折り、立ち上がれずにいるマッドレオモンの片足さえも踏みつけて破壊した。 その男子がテンパって彼女に手を伸ばすもその手は蝙蝠の群れに阻まれた。 彼女が訳がわからないままそこに座り込んでいると、大丈夫ですかと世莉が隣に座り話しかけた。 「え、あ、まぁ……」 「立てます?」 世莉が肩を貸して彼女を立ち上がらせると少しそこから歩いて離れた。 「……えと、今のはあなたの?」 違う違うと世莉は首を横に振って手で示した先で委員長がヤケクソで向かっていった男子の足を払って投げていた。 「……でもなんで」 「……助けてって聞こえたので」 もう大分人通りのピークを過ぎてしまっていた。それでも街中は後に溢れているが、世莉の耳なら聞き取れた。 事情も概ね聞こえていたし、ジャスティモンが飛び出していくのに躊躇いはなかった。 彼女が安心からか、何か急に足の力が抜けてもう一度座り込もうとするのをレディーデビモンが右手で支える。 「……一旦、どこかで休みましょうか」 静かに頷いた彼女を連れて世莉と委員長が喫茶店に戻ると、その出口付近で竜美と蘭が少し不安げにしていた。 世莉がそれを聞きつけたのは喫茶店から帰ろうという時だった。ある程度宿題をやった後、遅くなる前にと蘭と竜美と一緒に帰ろうと駅に向かって少し歩いていたらそれを聞きつけたのだ。 「あとは私がいるから二人は先に帰ってて」 世莉に言われて蘭は最初帰ろうとしたが、竜美が帰ろうとしないのを見て立ち止まった。 竜美は、やっぱりと思っていた。今さっきも話したばかりだ。話したばかりだがそれでも世莉は行ってしまった。 委員長が行けばそれで大丈夫だろうと竜美は動かなかった。話を聞いて走り出した委員長に続かなかった。 本当ならばもう一度改めて言いたかったが、ここで言うべきではないだろうと竜美は呑み込んで蘭と駅に向かう事にした。 喫茶店のカウンター席に座った彼女に嘉田が水を持ってくると彼女は弱々しくありがとうと呟いた。 「コーヒーはお好きかな?」 「カフェオレとかなら……」 なら甘いのにしようとマスターが入れたコーヒーを飲んで彼女は一息ついた。 ある程度落ち着いてくると今度は怒りが湧き上がってきたらしく、付き合ってた時から云々と彼女は愚痴を始めた。 世莉が話に興味があるのか少しずつ距離を詰めてくる真田を見て見ぬ振りしながら、委員長と一緒に彼女の愚痴を聞いていると、ふと店に入ってきた人に気づいた。 「……酒田先生」 「へ?」 彼女が入り口の方を見ると、その姿に気づいた酒田は髭で覆われた顎を少しさすりながら微笑んだ。 「たまたま姿が見えたからね」 「酒田くんは私の中学の同級生でもあって時々来るんだよ」 マスターの言葉にちらりと真田の方を世莉が見るとそういえば見たかもというような曖昧な表情をした。 「……少し、奥の席で話をしようか。お説教ではないよ、黒木さんにも清水君にも井上さんにもきっと大切なモンスターの話だ」 ボックス席は一つ空いていた。片側にはまだ嘉田と一緒に帰るつもりらしい縁がいたが、もう片方は空だった。 真田君、君もだと酒田に手招きされて真田も一緒に多少窮屈に座ると酒田はゆっくりと話し始めた。 「黒木 藤音という子を井上さんは知ってるね?」 彼女、井上はその名前を聞いて神妙に頷いた。 「私は彼女からデジモンという存在を知らされた。どうすればいいだろうと、どうしたら、それで争う人達を止められるだろうとそう相談された。私は自分の安全を優先しなさいと言ったが彼女は事あるごとに首を突っ込みとにかく手当たり次第遭遇した誰かを助けに行った。彼女がいうにはその耳は誰かの助けを遠くからでも聴きつけられた、小さくても紛れていても聞き分けられた。それで、見捨てて置けなかったんだと」 世莉は少なからず驚いていた。その名前に聞き覚えこそなかったから親戚なんかではないだろうだが同じ名字に近い能力、親近感を覚えずにはいられなかった。 だからか、委員長がひどい顔をしているのに気づいたのは酒田と真田だけだった。 「彼女の両親は優しい子になるようにと優しさという花言葉を持つ藤の花を名前に入れたそうだ、彼女はその通りに優しくなりすぎた。彼女を殺したものの前に彼女に会ったのは私だ。すでに深い傷を受けているようだった。救急車を呼ぼうとしたが携帯は電源が付いても即座に切られてしまうようにウィルスが仕込まれていた。おそらくその時その近くにいた全員がそうだった。彼女は最期に私に何人かの生徒の名前を挙げた。私は半ばパニックになってすぐ近くの開業医のとこまで走って行き、戻るともうそこには誰もおらず、踏切で彼女が事故にあったという話が翌日聞かされた」 言うまでもなく、偽装だよと酒田は今にも誰かを殺しそうな顔をした。それは普段の温厚で生徒思いで優しい先生の顔ではなかった。 「……その時挙げられた複数の生徒というのは……」 真田が遠慮がちにそう聞くと酒田は悲しそうに微笑んだ。 「彼女は優しすぎた。彼女が挙げた名前は今後再度被害に遭うかもしれないという生徒だった。自分と同じように正しいことをしようとしてという後輩の名前も挙げたし、恨まれているという生徒や、井上の様なトラブルでという生徒の名前も挙げた。犯人の名前よりもこっちが優先だと……」 犯人は結局わからなかったと酒田は言った。 「そして先生は、デジモンもいない自分の手には余ると同じように正しいことをしようとして恨まれているという後輩……つまり、僕にその事を話した。僕は、それらが緊急の案件だと思ったから、加害者側の人間についてるデジモンをみんな倒した」 委員長がうつむきながら酒田の言葉を引き継いだ。 「……その通り。そしてそのあと君は多くの上級生に狙われてその悉くを返り討ちにした。君のおかげで今安定しているのは確かだ。でも私は君達には彼女の様になって欲しくはない、人が人を傷つけるのは簡単で、手段を選ばないものも多くいるのだとわかって欲しい」 「わかってます。僕は排除しないだけはしない、排除するべき時は排除します。赦して大丈夫だろうという時だけしか赦しません。先輩は誰にでも情けをかけた、誰にでも情けをかけたから恨みを残したし、最後に誰に狙われたかもわからなくなった……」 「そうじゃない、そうじゃないんだ清水君。そもそもそういうことにあまり頭を突っ込んではいけないと言っているんだ。正直これからどうなるかはわからない……でもいずれ君達の手には負えなくなってくる。それは明日かもしれない。それをわかって欲しい」 世莉は私にはあまり関係ないかなと思った。正義を守ろうとしていたり、正義の味方に憧れていたり、委員長に対して言われるのはわかるが、すでに自分は自分の為だけに動いている。 ただ、利益を取ろうという行動だ。人付き合いのためのやむを得ないもので決して誰かのためなんかじゃない。 委員長、そのあだ名が清水 正義は嫌いだった。それは彼の行動が委員長らしいと言われることに由来するものだからだ。 誰かが誰かを傷つけるのを注意する行動をからかう言葉。誰かが傷つくかもしれないのを見て見ぬ振りしていい程度の事だと軽んじる言葉。それがどれだけ傷つけるかわからない、人の心は外からわからない。 そのあだ名で呼ばれることに抵抗がなくなったのはその先輩に出会ったからだ。 最初に会ったのは、従姉妹が襲われた時だった。 デジモンの存在は知らなかった。従姉妹が携帯で彼に助けを求めたのは最後に電話したのが彼だったから、警察にかけられなかったためだった。 彼が急いで走って行ったその場所にいたのは自分の夏用のベストを従姉妹にかけるその先輩だった。地面に飛び散ったシャツのボタンが何が起きたかを容易にわからせた。 その時に現れたのが彼のジャスティモンとの出会いだった。もっとも当時はサイバードラモンという名前だったのだが。 サイバードラモンは獰猛で手がつけられない悪を許さない獣だった。それを彼は容認した。 彼は赦してはいけないと思った。絶対に赦してはいけないと誓った。 どんな事情であれ誰かを傷つける様ならばいなくなるべきだと、サイバードラモンと倒して回った。再起不可能になるまで破壊してそのデータを食らった。 その中で彼は二つの事を知った。一つはデジモンを食らう事でサイバードラモンが力を増す事。そして、人を喰らったたデジモンを喰らう事で取り込まれた人間を残し、その人間と関わったデジモンの諸々を記憶からなかったことにもできる。 人を食らったらしいデジモンも片っ端から食らった。そうして恨みを買い、袋叩きにされそうになった時にその人はまた現れた。 鬼神の如き強さでもって蹴散らし、彼にも注意をし、それでいて自分はどこにでも首を突っ込んだ。 決して鞘から刀は抜かず、決して殺さない。必ずそこにいる全員を救おうとした。それは嫉妬や悲しみ怒りからの行動で危害を加えていた加害者側も例外ではなく、その姿にかつて自分を勇気付けてくれた子を重ねた。 それ故に、その死はショックだった。どれだけ食べても究極体にまでは辿り着かなかったサイバードラモンが究極体に至るほどに。彼の中に何かを起こした。 故に彼は正義を貫くことに決める。 理屈で考える、常に社会における最大利益を考える。 基準は単純、誰かを社会から失わせる様な行動を取る相手は消す。そこまででないならば一度は注意や殴り倒すだけで済ませる。失わせることは社会に対して必ず不利益になる。でもそうでないならば更生させた方が社会のためだ。 もし、そこに世莉がいなければ今日も一体のデジモンを葬っていただろう。稲荷も嘉田も社会から人を失わせる、ひょっとすると葵もやり過ぎていたならば、委員長が容赦をすることはなかっただろう。 彼はふーと一つ深く息を吐いた。先生にその名前を出されて後悔が胸を占めたが、それはもう終わったことだと、自分を納得させたかった。 黒木 藤音がいなくなった途端やりたい放題始めたやつらによって善良と言えたデジモン達は皆やられてしまった。彼女の気にした被害者リストの全員も含んだ。 結果的に彼はその学年の残り全部を狩った。人死にが彼女の他に出なかったとはいえ怪我人はいくらか出た。心に傷を負った人も出た。今年の三年、つまりはその学年は同じ人数を入学させた彼等の学年と比べて十二人も少ない。引きこもったり入院したりで進学できずに留年したのが四人、学校を辞めたのが二人、関係なく留年したのも一応一人。 彼は犯人だと自称する相手には出会わなかった。犯人が誰だという証拠も見つけられなかった。でもその時他に同じ学年にいた完全体またはそれに準ずるデジモンを連れた人間は白河 聖しかいなかった。彼女が犯人でない限りは他に容疑者はいないはずだった。 ただ、心が晴れないのは疑惑はあるからだ。 潜伏していたかもしれない。じっと誰にも見られずに潜み機を伺って彼女を死に至らしめてまた顔を出す機会を伺っていた誰かがいたかもしれない。 彼が、自警団を作りたいと思ったのはだからだ。 一人の限界を思い知った。それは嘘ではない、一人では気づかなかった誰かがいるかもしれない。殺した犯人が、今もまだ誰かを殺そうと潜んでいるかもしれない。 あと一月、三年生であるなら顔を出すのは卒業の前だろう。そのまま潜伏して卒業していく危険ももちろんある、というかおそらくはそうするだろう。 結局抑えることなどできなかったその気持ちを胸に彼は自分の指をひねって折った。 痛みが頭に響いて怒りや憎しみに染まりそうになった思考を中断させる。 その折った指もズレないように元の位置に置き直せばすぐに繋がる。この回復力が彼の能力だった。 何のために鍛えてきたのか、何のために戦おうと決めたのか、怒りだけではなかったはずだ。 彼は自省し、少しの間目を閉じていた。 ぱろっともん 2018-05-02T18:16+09:00 それは悪魔の様に黒く 七話 上 http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4985&mode2=tree 「白河さんから聞いてきたんですけど……」 世莉はぽりぽりと頭を掻いた。世莉達が昼食を取っているところにその男子生徒はやってきた。 「あー……えと、何か相談事?」 「あ、はい。最初は白河さんに言ったんですけど……黒木さんが適任だって……」 「悪いんだけど、放課後に時間はある?あるならここで話聞くから」 地図アプリを表示して真田達のいる喫茶店を指差すとその男子生徒はでは放課後に伺いますと言った。 竜美の方をちらっと世莉が見るととても一緒に来ないで欲しいと言えた表情ではなかった。蘭もまた、興味を引かれてしまった表情をしていて、説明しないわけにも巻き込まないわけにもいかないのだろうなと諦めて世莉はご飯を一口含んだ。 その後、喫茶店で話を聞くと自分にデジモンが付いてることに気づいてびっくりしてしまっただけらしく、下手なことをしなければ大丈夫なこと、変な能力が目覚める可能性があることなんかを告げて帰した。 「なんだか私だけ置いてけぼりだったみたいでなんかなー……」 「全く、私がいればすぐにでも犯人を特定できたでしょうに……それはそれとしてミイラの探偵が夕暮れの道ですれ違いざまに話しかけてくるシチュは見たかったです!」 机に突っぷす蘭とその横で怒るエカキモンにひとまず謝りつつ、世莉は宿題を広げた。 「一応言っておくと、あくまで私も巻き込まれた形だし、さっきのだってあくまでここに来たのは真田君とかに丸投げする為だから」 「まぁ、探偵としては頼られてこそだから悪い気はしないけど、一杯のコーヒーを飲む暇もなくなってしまうぐらいに来られたら流石に困るかもね」 真田は恥ずかしさ半分嬉しさ半分で顔を赤くしながらコーヒーを啜る。 「……ところで、嘉田さんとかいう人はどちらに?渋いマスター、ミイラの探偵、元凶悪犯のウェイトレスという組み合わせは正直イマジネーションが刺激されまくりなのですが!」 可愛い系かおっとり系だとなお好ましいですねと言う エカキモンに真田はわかると頷いた。 「普段は元凶悪犯感が出てないけど、探偵がヘマしたりした時に颯爽とナイフか何か片手に現れて、しょうがない探偵さんですね。このままだと捕まった私までしょぼく見えるじゃないですかとかエプロン姿で言って欲しい」 「依頼人の誰かを好きになってでもかつて手を血に染めた私では……みたいなこと考えて欲しいですね!」 「彼女を更生させた弱そうで実はタフな常連も欲しい……ん?これは一応いるか?」 「その話詳しく聞かせて頂きましょうか!イマジネーションが刺激される香りがします!」 「香りといえばその子はなんか、あれだ。人の香りが嗅ぎ分けられるとか言ってた様な」 「フゥーッ!あなたは本当は悪い人じゃないって私の鼻が教えてくれるのみたいな感じですね!」 エカキモンと真田の話が盛り上がり、蘭も加わりこそしないが目に見えて興味がそっちに向いていくと、自然と竜美と世莉だけが向き合う形になった。 気まずかった。世莉としては負い目がある。相談せずに危険な目にあったのは確かで、ローダーレオモンが来たことで状況が少し好転したのも確か。昨日も怒られたばかりだ。 助けてくれる亜里沙は今日は居なかった。 「……怒ってる?」 「少しだけね、世莉さんと亜里沙さんのことだから巻き込まない様にってなるのはわかるし……」 竜美はコーヒーにミルクだけほんの少し入れてかき混ぜた。黒いコーヒーに混ざったミルクはほとんどその色を変えられず消えていく。 「でも、二人がどうにかなったら私は悲しいから……」 だからせめて次からは私にもと。ローダーレオモンまでもそれを後押しするかの様に真っ直ぐに世莉を見ていて、世莉はごめんと謝るしかできなかった。 その展開を横目で見ていた真田とエカキモンがいい展開ですね、あとはここで依頼が舞い込んで来ればと目で会話していたが、それに触れられた空気でもなかった。 「……これからは、また、もし白河さんに振られたらやる、つもり?」 「やるつもりはないけど……」 そう言う世莉に竜美は首を横に振った。 「多分世莉さんはやると思う」 嘘吐き。そう聖に言われたのがまた頭に浮かんだ。やはり今も嘘なんて吐いたつもりはない。 「……あー、真田くんは得意な科目何?」 「へ?国語か……世界史とか?」 「あー、そっかーそうかー。今日数学の宿題出たから教えて欲しかったけどそれじゃあ世莉さんか竜美さんに聞くしかないかー」 会話中断サセテゴメンネーと蘭がぎこちなく話しかけると、竜美はふっと笑いローダーレオモンは寝に竜美の頭の中に戻った。 ふと、そういえばレディーデビモンの姿を見てないなと世莉は思ったがそれ以上気にしなかった。昨日の夜も姿こそ見なかったが右手で顔を洗ったりはしてくれたのを世莉は覚えている。 蘭の理解の進んでいなさに世莉達が頭を悩ませていると、喫茶店の扉が開いて嘉田と縁が入ってきた。 嘉田は上機嫌で裏に行きエプロンを受け取って髪を一つ結びにして出てくると、縁に出すコーヒーをニコニコと運んだ。 先日殺そうとしてたとはとても思えないその関係は奇妙に見えた。 「いや、よく殺そうとしてきたやつと一緒に帰れるよな……」 帽子とコートを着て暇そうに英字新聞を電子辞書と真田のスマホとを使って読もうと試みていたマミーモンがそう聞くと、縁の代わりに嘉田がマミーモンの隣に座って答え出した。 「付いてるデジモンを殺しても人間は死なないし、なんならデジモンだって本気で仲間に引き込みたかったし、殺そうとしたのは私ってかザミだから」 「でもそいつの性格ほぼお前だろ?」 まぁ、とマミーモンの前に出されているコーヒーに少し口をつけて嘉田は少し渋い顔をした。 「ザミはちやほやされてない。私はちやほやされている」 この差が大切という嘉田にマミーモンは残されたコーヒーの上で何か指をくるくると回し調べてから恐る恐る口をつけた。 それはつまり、ちやほやしてくれた覚えのない誰かなら殺す事もそれほど躊躇わないという事だろうと。そう思わなくもなかったがまた反論されそうだからやめた。 マミーモン、というよりも真田は知っている。性欲が脳の大半を占める男子という生き物の大半はわりと簡単に人を好きになる。それは五浦もおそらく例外でなかろうとそう思っている。自分の為に誰かに頼み込み、自分の為にその誰かに土下座もしてくれた、何かない限りはこれからも合流していけば順調に好きになってしまうだろう。 好きになった子の隣にいるのが自分を追い詰めようとしてたやつ。これは大変だろうなぁと思いながらマミーモンはコーヒーを飲みきって、仕事に戻れよと嘉田を追い払う様に手を動かした。 「あ、そういえば……今日、昨日あった事について聞かれたんです」 縁がコーヒーをふーふーと冷まして口に含み、そんな事を言うと、真田がするりと世莉達の座っている席から抜け出て縁の隣に行こうとし、しかし女子の隣という事で照れを感じて正面に座った。 「いったい誰から?」 「えと、話したことはないんだけど……三つ子の一人だと思う。その、あの、同じ学年にいる女子三人の三つ子の……」 ふむ、と真田は頷いたがその実三つ子なんていたっけと考えていた。 「け、結構根掘り葉掘り聞かれて……ゆうちゃんのことも、だ、大体はわかってたみたいな口ぶりだったから……」 誰かの知り合いかと思ったんだけどと徐々に小さくなっていく縁に、世莉は隣に座ってその手を軽く握ってさすった。 「それは情報屋だからまぁ話さなくて正解だ。というか悠理がいない時を狙ったなあいつら……」 机の上でそう呟く指サイズのザミエールモンに世莉と真田が視線を向ける。 「かなり珍しい奴らで、確か……一人に三体ずつ色違いで同じデジモンが付いてるんだよ。顔面にブラウン管テレビみたいなのつけたモニタモンってやつ。それぞれが情報を共有する能力があって、普通のネットと違って情報が漏れない」 あれもなぁ、仲間に欲しかったんだけどなぁ身元わかんないやつには情報占いとか言われたんだよなぁとか言いながらザミエールモンはスプーンで縁のコーヒーを少し取って飲んだ。 「情報屋か、探偵的にはやっぱり繋がりが欲しいところだけど……」 知らない女子に話しかけるのはハードルが高いなと考えている真田に俺が話しかければ良いだろとマミーモンが言いかけ、ふと静かにというジェスチャーをした。 「委員長だ。何でかは知らないが委員長が来てる。ジャスティモンも出してやがるな……実体は持たせてないがそれでもかなりやる気に見える」 マミーモンの声を聞き取って、世莉が来たら私が対応すると呟き、聞き取ったマミーモンは真田と縁にシーと人差し指を立てる。 蘭と竜美はヒソヒソと喋ったマミーモンの声は聞き取れなかったらしくそのまま宿題を見ている。 荒い息をした委員長は店内を軽く見渡してすぐに世莉のいる方のボックス席に向かい、見つけると世莉に対して座っても良いかと聞いた。 「どうぞ」 「……昨日あった事についての話を聞いた」 そういの一番に切り出した委員長に、世莉は嘉田を呼び止めて水をもらって委員長の前に出した。 「まずは水でも飲んだら?」 「……ありがとう」 水を一口飲んで委員長は一度深く息を吐いた。 「僕がいればきっと危険に遭わなかった筈だ。葵だって間違いなく協力してくれた」 その言葉に世莉は確かにと頷いた。でも、確かにと頷いただけだった。 「犯人を、委員長ならどうした?」 「犯人の心配よりも僕は黒木さん達の心配をしている」 それは正論だと世莉も思った。犯人の話はまず乗り切ったという結果ありきだ。犯人が嘉田で縁の友達だとわかった後の視点からの話だ。 実際迂闊だったとは思う。格上だとわかっていてでも数がいれば何とかなるんじゃないかと思っていった。実際は何とかはなったが竜美や五浦がいなければ危うかったかもしれないと、世莉は思った。 「戦いの顛末も聞いた。レディーデビモンは敵の大技を受け止めた。そしてその後姿を見せていない。実は結構なダメージを負っているんじゃないのか?同じ様な事を繰り返しているうちに死ぬかもしれない」 委員長の懸念は、世莉からすれば尤もだった。亜里沙が未来を見ていた。いざとなればユノモンがいた。それは世莉にはわからない事だ。 「私は大丈夫。全然平気」 そう言って世莉から出てきたレディーデビモンは委員長の側からは傷などない様に見えた。 一方で、世莉から見たその左腕はボロボロだった。腕の内側がレンガかブロックが崩れたみたいになっていてとても平気と言えた状態ではなかった。 世莉の隣に座っていた蘭もそれが見えたらしく明らかに動揺し、レディーデビモンは戻ろうとしたがその左手を実体化したジャスティモンが掴んで軽く捻った。 何の抵抗もなく捻られた腕は内側のボロボロになった部分を露わにし、それを見て委員長は悲しい顔をした。 「犯人を捕まえることより安全が大事な筈だ。それに捕まえるにしても犯人のアタリがあって別働隊を必要としているなら、僕を頼ってくれれば良かった。そこに守りに行ったら逃したかもしれない。でも、犯人の方が僕とジャスティモンから逃げられたとは思えない。葵とネオデビモンがいればネオデビモンの手で包むことでどれだけ安全を確保できたか……」 それも正しいなと世莉は思った。最終的にアイギオテュースモンは巨大な手を盾にした。それはネオデビモンでもできただろう。ネオデビモンの巨体ならマミーモンが殴り飛ばされた様にはならなかったかもしれない。 レディーデビモンの蝙蝠が包帯を咥えて巻く程度の矢を一回受け止められるかどうかという盾よりもより強固に何重にも包帯を巻いてシェルターにもできたかもしれない。 そうしたらもっとリスクは少なかった。レディーデビモンが攻撃を受け止めざるを得なかったのは世莉達を逃せなかったから。それだって、ネオデビモンのサイズならまとめて動かせる。 「ところで誰から聞いたの?」 顛末を細かく知ってるのはそれこそ世莉達ぐらいだろう。なんなら世莉達も直接見ていない。頭を下げて丸まっていたのだから外から見てはいない。 「……ある程度なら情報を得る手段はあるから」 委員長は少し苦い顔でそう言った。 委員長は三つ子の元締めと繋がっていた。 三つ子は情報屋の調査員であり窓口でもある。潜伏して調べている情報屋がいて、それらが完全に潜伏している元締めのところに集められる。三つ子を通じて元締めに聞きやはり三つ子を通して聞くのが通常の情報屋の利用法。 一方の委員長は情報屋の元締めの側から情報を渡される立場だった。理由は二つ、一つは元締めに宿るデジモンの能力が社会に及ぼす影響が大きい能力で治安が維持されていないと困るから、二つ目は個人的な親交。 委員長も詳しい出どころは知らないが、委員長が必要だと元締めが判断すると委員長に情報が渡される。 だから稲荷の事を委員長は知らなかった。稲荷が委員長はある程度どこかで情報屋とつながっていると考えて三つ子をかなり早い段階で狙ったことで元締めは三つ子を庇う為に委員長に伝えられなくなっていた。 尤も、代わりに人を使って聖に情報を流したりしたので稲荷の行動が正解だったとも言い難いところはあるが。 決してやましい関係であるわけではなかった。出どころも知らないのだからどうやって調べられたかも知らない。でも、おそらくは助けもせずに見ていた誰かの情報なのだろうと思うと委員長は引け目を感じた。 それが世莉でなければ引け目を感じなかっただろうに、世莉だから、委員長は引け目を感じたし、冷静になった。 「……ごめん、つい感情的になって当り散らした。でもこれから何かあったら僕にもちゃんと相談して欲しい。絶対に守るから」 委員長に真っ直ぐ見つめられたらきっと多くの女子は好きになるんだろうなと世莉は思った、思ったが世莉には急いで来たのだろうその気持ちに伴って発生した汗の臭いも強く感じてしまうしときめくにはとても難しかった。 さらに言うならば、隣の席でヒソヒソとマミーモンが委員長の匂いってどんなのだと縁に聞き、草刈り終わった後の汗と草の臭いだなんて言われてるのも聞こえている。 「……じゃあ今一つお願いをしてもいい?」 世莉はそう言って蘭の手からノートを取り上げた。 「教えてと言われたけど私と竜美さんだとこことか説明できなくて……」 あぁ、ここはと委員長が喋り出すとレディーデビモンはスッと姿を消し、ジャスティモンもそれに続いた。世莉の目には委員長の背後に仁王立ちして腕を組む姿は見えていたが視線をやらない様にし、隣の席のマミーモンに向けて小声で話しかける。 「委員長が話聞いた情報屋の話聞き出す?」 「いや、無理はしなくていい。俺達は後で三つ子から当たるから」 「そう」 委員長の説明を受けてなおそのままだとぽとりと落ちそうなほど蘭の首が曲がっている内に世莉は亜里沙の事を考えていた。 もしも、委員長が過去の自分に執着した結果自分のところに来ているならともかく、純粋な親切心からならばきっと亜里沙のところにも行くだろうと。別働隊を動かしたのは亜里沙で世莉は終わるまでその存在を知らなかった。 それとも、どこがどう繋がっていたかはわかっていないのだろうか。世莉が作戦を立案していた、そう思っているなら世莉にとっては都合がいい。亜里沙に委員長が話しかけに言ったとしても多分世莉が無茶しない様に止めて欲しいとなるだろうとそう思った。 「クマちゃん先生!」 三年の女子にそう話しかけられてその先生はん?と振り向いた。 国語教師の酒田 登紀夫は教えている古文とサカタと読める苗字から金太郎を連想させ、同時にその体格の良さからでも金太郎というよりもクマ、と一部生徒からはクマちゃん先生やクマ先生と呼ばれていた。 「今日まで学校来てなかったから言えなかったんだけどセンターの自己採点めっちゃ良かった!国語では過去問で今まで出した最高得点とほぼ同じぐらい取れたんだよ!」 おぉと酒田はその女子が差し出した問題用紙を受け取ってうんうんと頷いた。 元々その女子生徒はとても国語が苦手だった。古文漢文は運任せ、現代文も半分以上は落とす。それが差し出された問題用紙を見ると六割は取れている様だった。運任せの部分も少々残るが、選択肢を一つは潰せる様になっていたこともわかる問題用紙で、特別良いとは言えないが元を考えると大きな進歩だと言えた。 「よく頑張ったね。本命は結果待ちだったかな?」 うん、と頷いてその女子生徒は絶対いい知らせ持ってくるからと笑って返された問題用紙を鞄にしまった。 よかったよかったと思いながら職員室に戻らないとと歩き出した酒田は左手に振動を感じてそこに付けられた端末を覗き込んだ。 アノコハツケラレテイル、タスケテクダサイ、センセイ 表示された文字を見て酒田は表情に出さない様にわかっているさと口の中で呟いた。 酒田にはその女子の後ろを追い回している黒い毛の獣人の姿をしたデジモンは見えていなかったが、持った鞄の二重底の下には明らかに教師には不要な刃渡りの折りたたみナイフが仕込まれていた。 さらにその後ろから少し髪色の明るい快活そうな男子が眉間にひどくしわを寄せているのにも気づきはしなかった。 ぱろっともん 2018-05-02T18:14+09:00 はなわの声が聞こえない http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4981&mode2=tree  フハハハハ、待っていたぞ! やっと来たか第3話! というわけで夏P(ナッピー)です。<s>貧乳って単語今回何回出た?</s> 四男がなかなかいいキャラというか食えないキャラしてる。いつぞやと同じようにコイツもまた敵に回りそうでちょっと楽しみにしている。  何ィ!? <font size=5><b>今回の解説役のイケメンロン毛キャラはアルゴモンではないのか!?</b></font> 俺はてっきりアイツがいずれ人の器を被り、如何にも胡散臭い解説おじさんになるかと思っていました。既になりかけてる気もする。四男とは出会ってまだ日が浅いと言うが、この胡散臭さのコンビネーションはなかなか息がピッタリである。これ絶対また敵に回ってry  というか、アスタモン周りの言葉遊び好きそうですね、主に作者様が。呪術という単語が出てくると「ああ……」と不思議な懐かしさを覚える。デートだ何だと言いつつ、Jに一気に疑念が膨らんできたのは良い。<b>この作者なら絶対そんなことせんだろと思いつつ</b>今あるJは動く屍だったりするのかな。  <s>あと包帯は作者の趣味出すぎやろ。</s>  それでは4話もお待ちしております。 夏P(ナッピー) 2018-05-01T20:27+09:00 聖剣転生Legend-Arms 3-あとがき http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4981&mode2=tree  ……時間たつのはやくない?????????????   ドーモ、読者=サン、<s>そろそろ話し込むだけで一話まるまる使うことに定評のある作者を自称してもいかと思い始めた</s>パラ峰デス。  気が付けば5月ですよ5月、恐ろしいですねーいつの間に全快投稿から3か月も経ってるんでしょうねーおかしいですねー。全快投稿……? 俺はいつの間にか全快していた……フルヒールかフルヒールなのかパンジャモンはどこだミムドホールだよお気の毒ですがパラ峰さんはデジワー2で頭が……。  そんな、なんとかならないんですか!  銀髪ロング翠眼貧乳美少女といちゃいちゃしていれば回復すると思われます。  さて、相変わらず画面映えのしない光景が延々と続いていますが第3話でした。でも趣味だからやめません。ただ今回は<s>ウザい</s>胡散臭いキャラを出し損ねましたね。  胡散臭いロン毛のイケメンがひたすら話すシーンがぼくは大好きです( ゜ ρ ゜ )。  だれか細身で胡散臭くてロン毛のイケメンキャラの供給をもっとくだち! くだち!<Font size="1">今回のあとがき歴代で一番ふざけたまであるな……</Font> パラ峰 2018-05-01T19:01+09:00 聖剣転生Legend-Arms 3-2 ギリシアの宮殿 http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4981&mode2=tree  冬の日差しは、どうにも温かい。紫外線の有害さはむしろ増すだろうが、夏のそれほど熱を持たず、冬の大気ほど肌を刺さない。  授業中、俺は自らの身体が宙に浮かぶのを見た。周囲は教室でもなく、俺以外の生命の影形もない。目の前に渺と聳え立つ、濃密にして不快な暗黒の霧としか表現不能なその障壁の様なものを突破すると、不思議な光を浴びて燦然と輝く星々がまるで意志を持つかのように遍在していた。  柔らかな午睡が魅せる幻覚。  その現と夢の狭間の空間で、俺は見知った男の顔を認めた。俺と定光の距離は隣合うこともあれば定光が遥か前方にいることもある。視認できる距離ではないはずだがその人型を俺が定光だと認識できるのは、ひとえにその茶色い、肩までの髪の毛によるものだった。  濃密な障壁を幾つも突破、あるいは飛翔、あるいは潜行する中で、俺は前方に定光の顔を認めていた。その表情は読み取れないが、これまで目印となっていたブラウンのヘアーカラーが急速にその色彩を失い、ぼんやりとした輪郭を持ったまま俺の視界から消滅した。  この時点で、俺は過去幾度もこの夢界へと誘われていたということを自ら思い出した。そうして定光の姿を見失った時点で、俺では進行不可能な領域がこの茫洋としたエーテルの大海に存在するのだと諦観を抱いていたことを思い出した。  俺の身体の自動的な飛翔は止まらず、普段とは全く異なる、まるで招かれているかのような気安さで、その濃密不快、粘着性のある冷たくて湿っぽい塊と表現すべき最後の障壁を通り抜けた。 「と――やっぱ、来れるようになったか」  最後の霧を突破すれば、広大無限の壮大なる宇宙に、対面するように設えられた、彫刻じみた大理石のギリシャ風のスロノス――背もたれのある椅子が二つ。その片方に、ここまで俺を導いた張本人が座っていた。 「ま、座れよ」  異論はない。摩訶不思議な現状ではあるが、しかしこの機を逃す手もあるまいと思う。幾度となく経験した記憶があり、今日この時になってようやく掴めたこの夢幻だ。目覚めれば塵と消える夢界の出来事であればこそ実感はなかったが、必ず定光が登場する。常同的に見る夢など、何らかの糸口になるに決まっている。また現状、Jとかかわりなく定光と会話できるチャンスと言える。 「お前が呼んでるのか? それともお前も俺も呼ばれてて、俺に資格がなかっただけなのか?」 「両方だ。まあそうカッカするなよ。時間は無限じゃないが、俺はお前に何があったのかは把握してるんだ」  何だと。読心か、記憶を覗かれているのか、はたまた昨日の劇場での一件も含め、知らんふりをしながら俺たちを監視でもしていたのか。まあそのどれであっても驚きはない。デジタル・モンスターの実在を目の当たりにした以上、どんな"ありえない"だって起こり得ることへと成り下がっている。  訝しむ気持ちを抑え込み、視線で話の続きを促した。  すると定光は右手を中空に掲げる。ぬらりと恐怖心を煽るかのような、それでいて吹けば飛ぶ影絵のように捉え所のない存在の出現。  一切の人的感情を解さぬことが否が応にも理解できてしまうそのヒトガタには、両肩と両腿に備わる硬質にして柔軟さを伴ったぬらぬらとした毒々しい紫色の鎧の表面に、蠢く"眼"が計四つ備わっていた。  身体の至る所から伸びる蔦が、各々意志を持った職種であるかのように動き回っている。それはさながら、昨日戦闘したハスターを連想させる。 「そいつは――ッ!」  遥か嘗て、地球に飛来した侵略者。その一味であろうと推察し、黄金のLegend-Armsの柄に手を掛ける。 「待て待て。コイツは俺のパートナーデジモンさ。名を聞けば、お前も一先ず戦闘の意志を収める筈だって」 「名前……?」 「よく見てみろ。『デジタル・モンスター』に詳しいお前なら、きっと分かるぜ」  無数の蔦。赤い角に青白い肌、そして人間の容姿を模していながら、異形の証として兜が瞳を隠している。 「……アルゴモンか」  「ご名答~」定光は茶化すように笑って続ける。 「尤も、既にお前たちに曰く"変質"しているらしいがね。俺はこの状態になってから出会ったから、本当のアルゴモンがどんななのかは知らねえ。が、少なくとも俺たちに害を与えるつもりはないらしい」  Jの使っていた"変質"という言葉。ウェンディモン=ウェンディゴ。デビドラモン≒ビヤーキー。アスタモン→ハスター。  これらの法則を鑑みるに、"変質"とはデジタル・モンスターが、太古よりこの惑星に潜むという外宇宙の存在に変貌する――先のJの言を信ずるならば逆か。外宇宙の神性がデジタル・モンスターと同一化し、その結果更なる異形と化すことだろう。 「アルゴリズムのバグから発生したアルゴモン。眠りを司るそれは、ギシリアの眠りの神ヒュプノスと同一化した。  ヒュプノスは、外宇宙から飛来した"ヤツら"と長きに渡り生存競争を続けていて、"ヤツら"――"旧支配者"とその眷属ども――からは"旧神"と呼ばれている神性の一角に値するらしい」 「待て、お前はあいつら――ハスターやウェンディゴについても知ってるのか」 「応とも。で、なんでお前が戦ったそんな奴らの事まで知ってるのかというと――」 「――君の脳波。それを私が操作できるからだ」  定光の言葉を、アルゴモン・ヒュプノスが引き継いだ。 「安静閉眼時のα波、興奮時のβ波、そして睡眠時のより周波数の低い徐波。これらを自在に組み合わせれば、眠りに堕ちながらにして自己を自覚する明晰夢を維持することは容易だ。今、君の脳波は4~12Hzを行き来している。  そして、REM期の夢という形でその記憶を見せてもらったよ。賞賛を贈らせてくれ。デジタル・モンスター化しているとはいえ、風の神性たる旧支配者を討つなどそうそうできることではない」 「そうかい。お褒めに預かり光栄だよ」  夢を覗ける。他者を眠らせられる。この上なく情報収集に向いた能力だ。しかし、だとすれば同じ教室にいるJの内心もコイツらには調べがついているんじゃないだろうか。  さて、そうなるとJを同席させずに用意したこの会合の意味も変わってくる。彼女の目的、それと定光、アルゴモンの目的が一致していない――同じ軸線状に存在しない可能性が高い。  何故なら同じ目標に向かってひた走るならば、その過程に人的被害や物的被害、手段の許容範囲の差などはあれど互いにすり合わせぐらいはして然るべきだ……コイツらとJが、共に俺を謀っている可能性もあるが、それは考えたとしてもどうしようもないので思考の片隅に追いやる。  無論この想定は推論に推論が重なった状態だ。アルゴモン・ヒュプノスに読心能力が備わっていれば確定的だが、そうでなかったとしても"旧神"がハスター達と敵対しているならば、基本的にはJと目的を同じくするはずだ。 「おっと、そう険しい顔すんなって。流石に黒歴史まで拝んじゃいねえよ。ここ数日、Jサンがやってきた前後からの記憶だけさ」 「我らとしては、"旧支配者"を打倒し得る君と敵対するつもりはない。口約束でしかないのは重々承知だが、その証左として受け取って貰えまいか」  この言動からは、目の前の二人もまた、外宇宙より飛来した"彼ら"を討ち滅ぼすために動いていると考えるべきか。 「じゃあ、その点について問い質さない代わり、いくつか質問に答えてくれよ」  鷹揚に首肯するアルゴモンに、何を問うべきか。  先に定光に言われた"見せたいもの"とは、アルゴモンのことで間違いないだろう。ここから導かれる会話を考えろ――そこに関する質問、例えば彼らの目的などについては、わざわざこの機に問う内容でもない。  まず、俺にここまで譲歩する理由は何か。一つはJとのパイプが最も太いからだろう。無論彼らから見て、俺がひょっとすればJの傀儡と化しているという想定もあるだろうが。他に考えられるとすれば、俺を――Legend-Armsを戦力として取り込みたいのか。  そこまで考えて、通学路での定光の台詞がフラッシュバックする。  ――利用はさせてもらったさ。ああ、何かの足しにはなるかと思って、ウェンディゴの話を持って行ったし、カルト教団から買収した魔導書だって見せに行った。  『何かの足しになるかと思って』だ。つまり、彼らは彼らで旧支配者と討つに足る手段がある。十中八九が"<rb>旧神</rb><rt>アルゴモン・ヒュプノス</rt>"の存在か。 「――ん、あぁ。案ずることはない。読心など、全知全能の称号もなければ不可能だよ」   思索にふける中、思わず仮面の上の瞳に向けた視線に何を感じたか。  だが戦力自体があるのなら、こうして俺と会話をする理由など一つだろう。  俺は意を決し、問いを固める。 「……Jに関して、お前たちの所見を教えろ」 「……いいだろう」 ●  彼女については、一言で述べるなら「何故ここにいる」。そこに尽きる。  と言うのも、だ。私がアルゴモン・ヒュプノスとなって以降――君もハスター化したアスタモンに理性が失われているのを見たように、そこに最早アルゴモンの意志はないのだが――私は真っ先に"アルゴモン"のデータを解析・閲覧した。そして驚愕に慄いた。  それは強固なプロテクトだった。己がデジタル・モンスターという存在になったことは理解していたからこの表現をしよう。尤も"ヒュプノス"が知らぬ間に、この惑星に表裏一体の裏世界が生まれているなど思いも寄らなかったがね。  私の困惑はさておき、自らの素体となったアルゴモンの記憶を読み解き、せめても依り代の使命や望みを代わりに果たしてやろうと考えていた私は、記憶領域からはアクセスできないように厳重にプロテクトを掛けられたブラックボックスに遭遇した。  それは見慣れない術式だったが、同時に見慣れた系統のモノだった――ああつまり、惑星外を跋扈する異形共の御業だった。  だから解除も容易だった。プロテクト・ウォールを掻い潜り、そこで見たのは歴史書の数冊では及ばぬほどの激動の時代だ。その全てが、一切、整合性に不備を持たず「なかったこと」にされていた。  有り得ん、有り得ん話なのだ。その後、多くの人間の記憶も覗いてみた――その全てが、全く同じように、リアルワールドすら激震させた幾つもの事変を記憶より隠されていた。  そして、その中心にいたのが、あの銀髪の女――Jと名乗る一人の人間だ。彼女は共に引き連れた金色のパートナーデジモンと共に、あらゆる争乱を沈めて見せた。だが、零落した熾天のなれの果ての怪物に挑んだところで、どの記憶も終わっている。  なんにせよ、二つの世界を巻き込んだ災禍の中心人物だ。その末路――行く末を誰も知らぬとはいえ、タダで済んだということもないだろう。  それが何故、この場この時に現れる。定光という"アルゴモン"本来のパートナーを見つけ出し、いざ"J"の代役として――そして"ヒュプノス"としての使命を果たすため、"旧支配者"と戦っている最中に、だ。 ● 「"アルゴモン"や幾人もの人間の記憶を追体験したに過ぎぬ身なれど、<rb>私</rb><rt>アルゴモン・ヒュプノス</rt>は銀髪のJと名乗る女が救世に一役買ったことを知っている、君の他におそらく唯一の存在だ。  その立場から言わせてもらえば、両世界を脅かした傲慢の魔王型デジタル・モンスターとの決闘に何らかの決着を着け、彼女もまた"旧支配者"との戦いに身を投じた――と、好意的に考えられなくもない」  アルゴモン・ヒュプノスは躊躇いがちに言い切った。  ただし、それはあくまでもJが、"二代目J"本人であるという前提に基づく。 「傲慢の魔王に立ち向かい、そして銀髪の"二代目J"はどうなったのか。ともすれば、彼女は砕け散り、今この蛙噛市に現れた彼女は、邪神共の象った甘い罠なのではないか。そうなれば彼女自身の証言に信は置けず、私は疑心を抱かずにいられない」 「なるほど……聞かせてくれてありがとう。感謝する。記憶のブラックボックス化については、俺がJ本人から聞いた情報がある。役に立つかはわからないけど、後で提供――ああいや、俺とJの会話自体は知っているんだよな。じゃあ端折ろう。まあその前に……」  スロノスに深く腰掛け足を組んだまま、にやけ面で俺の表情の変化を楽しんでいるかのような宮里定光。彼に視線を向け、その内心を窺った。 「お前の意見も聞きたいね、宮里家の四男」 「あえてヒトの気に食わない呼び方をする反骨心は嫌いじゃないぜ……そうだな、美少女だと思う」  飄々とした調子だが、渋面を隠そうともしない。これに関してはいつも通りのやり取りだ。俺も彼も、互いのウィークポイントを把握してそれをつっついてコミュニケーションを取っている。 「んで、ほかに質問は?」 「答える気はない……と」 「オイオイ、おっかねえな。別に思うところはない……ってのが本音さ。お前に春が来たね、おめでとう……ってぐらい? 別段俺とアルゴモンに敵対する様子はなさそうだし? 有羽クンがパイプとしてその行動を教えてくれるなら、このまま二陣営、別方向から攻めてってもいいんじゃないかと思ってる」 「よく言うよ。教えてくれも何も、そちらにアルゴモンが付いている以上、俺とJの会話は筒抜けってことだろ?」 「まぁな」  悪びれもせずに。結局のところ、俺は後手に回らざるを得ない。 「他の質問はいい。情報交換はこんなとこだろ。今後の話を始めてくれ」  ゆえに、後手は後手なりに、場当たりで対処するほかない。高度な柔軟性を維持し臨機応変に――という訳だ。何がという訳なのか俺自身説明できないが、という訳なのだ。 「承知した。我らはかねてより――とは言っても、さほど長い付き合いではないのだが――この市に根付いたダゴン秘密教団の一派を炙り出そうと動いてきた。旧支配者の数だけ、カルトも存在するのでね。君たちが昨日対処した、ハスターを擁する黄の印の兄弟団に接触していたのもその一環だ。  "ダゴン"とは、古くはパレスチナにおいてペリシテ人が信奉していた神格だが、遥かな昔にゾス星系より飛来し、ムー大陸を支配したクルウルウに敗北した後、その奉仕種族と化している水の神格だ。  クルウルウ自身は星辰の配置により、大陸ルルイエごと海底に沈み、今に至るまで封印されている。  この地のダゴン教団員がクルウルウ復活を目指しているのか、それとも読んで字のごとくダゴンに信仰を捧げているだけなのかは分からないが、どちらにしろ神性クルウルウと風の神性ハスターは敵対関係にあった」 「だから? 黄の印の教団員を吸収して降臨したハスターが討滅された今、ダゴン秘密教団の動きを阻害するものはいないっつースンポーよ」  定光のニヒルな笑みに少々イラっときた。 「で、だ。俺らはヒュプノスの能力で、街に起こった出来事を鋭敏に察知できる。ダゴン秘密教団と思しき動きがあれば、いい感じに偶然を装ってお前らに伝える。あとは場当たりだ。お前ら二人と共に行動するほど信は置けないが、ハスターを討った手腕については信用させてもらう」 「ああ、わかったよ」  そう、色々なことが分かった。ウェンディゴ症候群、黄の印の兄弟団、ダゴン秘密教団。この分には、もっと多くのカルト教団が蠢いていることだろう。  それらの事象がこれほど蛙噛市に集中しているのは、先に聞いていた通りJの狙い通りなのだ。  他にも、"旧支配者"の存在に"旧神"の存在。そして震えるJの口から聞いた、世界全体のテクスチャを張り替え得る超越的存在の実在も、アルゴモン・ヒュプノスとの会話で確証が取れた。  ――ふと、引っ掛かりを覚えた。 「そう言えば、抜け目のないお前のことだ。『デジタル・モンスター』についてはどうせもう二人とも呼んでるんだろ?」 「? ん、あぁ、読んだぜ」  先程、ヒュプノスはアルゴモンの記憶の中から、黄金のパートナーデジモンの存在を話題に挙げた。  J著『デジタル・モンスター』の中でも、Jの相棒の名は巧妙に隠されたままだった。だが、あの動乱を目の当たりにしたデジタル・モンスターの記憶の中ならば、その名がはっきりする可能性がある。 「そのデジタル・モンスターの名前、アルゴモンの記憶の中にはなかったか? ひょっとすると、この――」  黄金の剣、Legend-Armsと何かかかわりがあるかもしれない。Jが俺に執心しているのも、ひょっとしたら……。そう言いかけつつズバイガーモンを彼らの前に提示しようとして――。 『……君。…三君、十三君!』  俺の意識は、眠りの神が齎す夢の中から急速に引き戻された。 ●  潜行時にはいたく苦労した幾層ものエーテル壁を瞬時に飛び越えて、俺の意識は覚醒した。いきはこわいがかえりはよいよい、と言わんばかりの急速浮上。  薄明りに瞼を開けば、目の前には黒セーラー服に身を包んだレイラ・ロウの薄い胴と、俺の机にかけられた白く繊細な指先が。  頭を少し上に向ける。 「おはよう、十三君。ふふ、よーく眠ってた」  イタリア男を一瞬で求婚に持って行かせそうな微笑みで、Jが周囲の視線やひそひそ声を意に介さぬまま待っていた。 「……ぉう」  細心の注意を払い、寝起きの不機嫌な声を演出しつつ定光の方を盗み見る。小さく舌打ちしたのを見逃さない。  このタイミングで俺を目覚めさせたのが、意図的なものであると確信できる。そもそもイグドラシルの端末であると言え、神の御業による脳波の調律を、こうまで乱せるものなのか。ともすれば、"二代目J"は魔王戦役の後に没しており、彼女は本当に――イグドラシルの端末を名乗っているだけの、邪神の触覚なのではないか。 「この前約束した通り、今からデートに行きましょう?」  疑心暗鬼は加速する。 パラ峰 2018-05-01T18:45+09:00 聖剣転生Legend-Arms 3-1 ASTAROT http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4981&mode2=tree 「キング・イン・イェロゥ……!」  キング・イン・イェロゥ――黄衣の王。なるほど目の前の超常存在に相応しい名だろう。しかし。 「進化やモードチェンジでは、ない……?」  アスタモンはデジタル・モンスターだ。ならば姿の変化として最も考えうる可能性は進化。次点でモードチェンジ、あるいは退化でもいい。あの呪文がそうした効果を持っている可能性も、デジタル・モンスターが都市伝説として顕現している以上、オカルトも効果を持つだろうしあり得るだろう。 「そうとも――彼の者の名は、Hastur」  希望的観測は覆される。 「ツェーン、私は先日、和弘少年の部屋の前でこの名を口にしたことと思う」  過去回想は必要ない。あの時の気味悪さと共に、未だ鮮明に覚えている。だが、ウェンディゴとは違い、ハスターなんて俺は聞いたこともない! 「ハスターはね、太古の昔、この地球に飛来した神性のひとつ――とされている。イグドラシルの最奥に眠っていた、遥か昔のログによれば、四代元素の内、風を司る神性存在だと。そして、眷属にウェンディゴ、ロイガーとツァールなる謎の神性、バイアクヘーなる異形の怪物を従える」  無貌の仮面でこちらを見つめる王を前に、武器を構えながらJは講釈を開始した。 「奴らは――太古よりこの惑星に潜む外宇宙の存在は、深く深く我々の人類史に食い込んでいる」  その表情に、昨晩の様な錯乱した様子はない。となれば、これは大いなる理の一端ではないのだろうか。 「その結果、奴らの幾ばくかはデジタル・モンスター化している。その最たる例がウェンディモン」  途端に、黄衣の王がその衣をこちらへ伸ばした。その動きから確信する。これは衣ではない、王の臓器・器官――肉体の延長だ。触腕を回避し、王の背後の悲鳴に視線を移す。  黄色いローブの<rb>人間</rb><rt>cultist</rt>どもが、貪り食われている。一目には、黄色い布に包まれただけ。しかし苦悶の舞踏を踊るそのシルエットが、明らかに「食われている」のだと直感させる。 「本来ならば、カルティスト共の誓願ごときで、ハスターは招来しない筈だ。だが――」  仮面より伸びてきた触手をスパイラルマスカレードで細切れにした。 「――ハスターは怒っている。何故なら自らの眷属であるウェンディモンを滅した我々が目の前にいるからだ」  黄金の剣は、相手が理解の外側の存在でも容赦しない。黄衣の王の奇妙な踊り、その魅了効果を無条件にレジストし、こちらを圧殺しうる極太の触手を両断する。 「それは分かった。だが、どうしてアスタモンがこうなる!」  ウェンディゴはともかく、アスタロトとハスターなる神性に、いささかの関係もないはずだ。 「おや、まだわからないのかい」 「勿体付けるな」  黄衣の王が両腕を大きく広げた。一拍遅れて、無数のデビドラモン――いやさビヤーキーか――が召喚される。その間も触手の猛攻は続いていて、間隙を縫って攻撃するなど不可能だった。 「こちらに来たまえ――何故、私がチャットで横文字をスペルのまま発言していたと思う、この時の為さ」  にやりと笑うJの手には聖盾ニフルヘイム。言葉通りにその背後に陣取れば、極寒世界の名に相応しいブリザードが、殺到するビヤーキーを凍結させた。 「フランス語には、有音のh、無音のhという概念がある」  語るJの表情は、これ以上ない絶好の舞台であると言わんばかりに喜悦に満ちていた。ここで黄衣の王を仕留めるのがシナリオ通りであると、雄弁に語っていた。 「――そうか」  ここまで言われれば理解できる。  アスタロトはASTAROT。ならばアスタモンはASTAMONであろう。そしてハスター――HUSTARがデジタル・モンスター化するならば、強いて言うならばHUSTAMONだ。  もしもASTAMONの頭に、無音のHが着いていたとしたら。  歴史を伝播する上で、HASTAROTがASTAROTになっていたとしたら。あるいは、そういう後付けの歴史がひょんなことから一説でも生まれていたとしたら。  AとUの差異なんて、音遊びをする上では些末なものだ。  ハスター召喚の儀に合わせ、HASTAMONがHUSTAMONに変貌したとて、何の不思議があるというのか。 「ハスターは、未だデジタル・モンスター化していなかった。奴らに通常の攻撃は通用しないが、デジタル・モンスター化してしまえば、我々でも傷付けることができる。  だから私は、アスタモンがその依り代となることを期待していた――まさか、ここまでうまくいくとはね。アルマデル奥義書を見た時、興奮を抑えるのが大変だったよ」  Jが照準を定める。  ガルルキャノンの連射。一発一発が究極体を滅殺して余りある大砲が、推定・ハスタモンの触腕を凍らせる。しかし相手もさるもの、ナイツ最強の遠距離攻撃による凍結が、瞬時に解除される――だが! 「『デジタル・モンスター』は、奴らがこの街に介入・接触したときに、デジタル・モンスター化させるためのトラップでもあったのさ――今だ、ツェーン!」 「任せろォ!」  一瞬あれば事足りる。  アスタモンの時とは逆だ。その懐へ潜り込む。 「トゥエニストよ――斬り裂けぇッッ!!」  あらゆるものを断ち切る斬撃が、黄衣の王をも引き裂いた。 ●  ビヤーキーの残骸も、ハスターの残骸も全て朽ち果てた。既にデジタル・モンスター化していたためか、そのまま粒子となって消えていく。 「礼を言いつつ、君に非礼を詫びよう。私は意図的に、敵の存在を伏せていた」 「いや……」  帽子を手に取り、優雅に一礼するJ。その仕草を眺めつつ、敵手たる存在に思いを馳せる。  カルト教団がアスタロトを召喚し、その上で呼び水としてモノリス――きっと、アスタモン自身も呼び水だろう――を設置し、祝詞でもってハスターを招来させた。  それは、アスタロトが召喚されたのは、決して偶然ではないだろう。なにせアスタロトもアスタモンも、そんな逸話は持っていない。天使の存在理由と、その堕天についてを納めた、40の悪魔の軍団を率いる強壮なる大公爵。悪魔デジモンの軍団を率いるダークエリアの貴公子。  となれば必然、誰かがその絵図を描いたことになる。『同一性のあるものは呪術的には同じものである』のだから、名前の相似性でもってハスターを召喚しようと画策したものがいる。  そしてその最大の容疑者は、Jだ。 「……?」  まじまじと彼女の翠瞳を見つめ、その深謀遠慮の一端に迫らねばと確信する。どこまでが真実で、どこまでが虚偽なのか。ともすれば、真に迫った昨晩の混乱さえも、あるいはJとしてサロン・ド・パラディで接触して以来の全てが演技なのではないか。無論、不可思議に向けられる俺への好意とて、残念ながら疑わざるを得ない。 「ツェーン、どうした? どこか痛めたかい……?」  とは言え、真っ向聞いたところで素直に返ってくるような容易い相手でもなし、か。  しかし、心細げに揺れている上目遣いを見ていると、全てが真実の様な気にもさせられる。Jを否定したり、疑ったりする気持ちが自然、掻き消えていく。  胸の裡には、猜疑の火が燻るだけだ。 「なんでもないさ。これで、今回の目標は達成でいいか?」 「ああ、君のおかげだ。これで奴らの一角を打ち砕くことができた」 「奴ら……?」  言っていることは分かる。戦闘中に口にした、"太古よりこの惑星に潜む外宇宙の存在"という言葉。"奴ら"とはきっと、その生き物たちを指すのだろう。  だが、それらは結局、何なのか。Jはどこまで知っているのか。少なくとも、そうした秘された情報についてだけでも問いたださねばなるまい。 「J、それは――」  意を決し、目の前の女の深淵に踏み込もうとした時、その決意はけたたましい携帯の着信音に遮られた。定光だ。 『オイオイオイオイ、オタクらなんかした? 目の前で"黄の印の兄弟団"のフィクサー、悶え苦しんで消えやがったぜ? 跡形も残らねえ』  電話口から聞こえる定光の声は、しかし文面や出来事ほど驚いたようには聞こえなかった。こちらが驚かされるほど冷静におちゃらけている。  フィクサーということは、黄色いローブのカルティスト達の、裏の顔役と言ったところか。その人物もまた、ここで黄衣の王に食われた彼らと同じ末路を辿ったのだろう。 「それは――」  なんと説明したものか。逡巡していると、耳を寄せてきていたJが俺の口元で話し出した。 「――さて、噂のデジタル・モンスターの仕業かもしれないよ? それはともかく、ありがとう宮里君。おかげでツェーンと廃墟探索デートと洒落込めたよ」 『おう、そいつぁ重畳。俺は先に帰らせてもらうが、気ぃ付けて帰れよ?』  電話はそれだけで終わった。  いくら怪奇現象に慣れているとはいえ、流石にあっけらかんと受け入れるには限度があるだろう。  この男もまた、今回の事件に、何らかの形で一枚&#22169;んでいる。でなければこうも都合よく、ウェンディモンとアスタモンに関与する切っ掛けを持って来れるものか。  「さて、それじゃあ帰ろうか」 「ああ……」  Jに手を引かれ、釈然としない思いを抱えつつ帰路に就いた。  コンサートホールを出て振り返る。九本目のモノリスは、影も形も存在しなかった。 ●  黄衣の王との戦闘からおよそ半日。昨夜のJは「防犯グッズ物色デート」の約束をマジに取り付け、何事もなく通学路に出た。  家の前でウェンディモンが暴れた跡は残っていない。昨日のモノリスが消失していたように、デジタル・モンスターの暴れた痕跡は一切残っていない。『デジタル・モンスター』の設定とは異なる状況だ。  俺の知っている常識が、そのまま通用する訳ではないようだ。 「よっ、やけに疲れた顔してるな」  背後から肩を叩かれる。昨夜俺の混乱を助長してくれた宮里定光がそこにいた。 「まあな。ミステリアス美女に振り回されるのは疲れるのさ」 「死ね」 「お前が死ね」  暫しガンを飛ばし合い、どちらともなく視線を外す。 「で、まあこの際お前でもいいや、何をどこまで知ってるんだ」  睨みを利かせてやれば、帰ってきたのはキザな動きだ。 「いいや、何も?」  唇で息を噴き上げ、前髪を浮かせて。  あくまでも柳に風と言わんばかりに、定光は笑って見せる。 「少なくとも俺だって、この街にデジタル・モンスターが介入するなんて想定しちゃいねぇーよ。逆に聞くが、お前たちこそ何なんだ」  そのバサバサの前髪の下で、眼は一切笑っていなかった。 「利用はさせてもらったさ。ああ、何かの足しにはなるかと思って、ウェンディゴの話を持って行ったし、カルト教団から買収した魔導書だって見せに行った」  やはり、コイツから攻めるのは間違っていなかった――少しばかり気圧されながら確信する。この男、古い付き合いということもあり、Jを相手にしたとき程、全てが霧の中にあるような感覚は覚えない。 「俺だって暗中模索だっつの。正直お前の正体もわからねえし……。いやまあ、今の発言からある程度立ち位置について予想はついたけどよ」 「おうよ。正直に言って、お前たちとは今の所、行動"だけ"見れば協力できるとは思ってる」 「けれどそれは、信頼じゃなくて信用だろう?」 「当たり前田のクラッカー。お前のことは多少なりとも信じられるが、あの貧乳はまーだ怪しいな。お前が心酔してるってんなら、悪いこと言うとは思うけどよ」  外宇宙の怪異を打倒する立ち位置。成程Jの言葉を真に受けるのなら、俺や彼女と、定光は敵対しない。  そしてその戦力として、使える札としてならともかく、こちらを当てにするつもりは一切ないということか。無論それを悪いと言うつもりはないし、むしろJに対し不信感を抱く者がいることは、あるいは光明になり得るだろう。  とは言え不安や猜疑は残る。俺たちがウェンディゴやハスターを討滅しなければ、定光は彼自身、奴らをどうにかする算段を有していたということになる。それはそれで、率先して怪異存在に殴りかかっていた彼らしいと言えなくもないが……。 「んでんで、お前今日フリーで動けるかよ。ちとウチ来いや、この件に関して、あの女のいないところで見せたいものが――」  俺の肩に腕を載せ、耳元で囁く定光。話はこう転がるか。しくじった、既に俺は時間の大半をJに裂くと宣言してしまっているし、昨夜は勢いに負けて防犯グッズを買い漁る愚挙に出ると約束してしまった。 「いや、今日は――?」  ズバイガーモンが、何かを訴えるように震えた気がした。このパートナーデジモンを、俺は物理的に持ち歩いているわけではない。言葉一つ発さぬLegend-Armsたる彼が、この世界の裏面たるデジタル空間から俺に何かを訴えるなど、一体どうしたというのだろうか。 「――おはよう二人とも、朝から男の子二人で、何をひそひそ話しているの?」  俺の疑問符に一拍遅れて、底抜けに明るい魔性の声音が背後からかけられた。 「ッ――ちぇっ、恋人のお出ましか。なァに、かわいい彼女がいる男は羨ましいねって話さ」  驚愕を押し殺した自分と定光を表彰してやりたい。なにせ、その接近に一切気付かなかったのだ。振り向いた視線の先で弓形の翠眼を覆う、眼窩に嵌めた片眼鏡が怪しく光っているような気さえした。   ●  「お邪魔虫はさっさと退場しますかね」などと嘯き、定光は通学路を駆けて行った。 「酷いじゃないかツェーン、私が迎えに行った時、家の中はもぬけの殻だったぞ」 「朝っぱらからお前の好き好きコールに応えるのは荷が勝ちすぎる」 「Hmmm、そんなものか。照れが残っているのか、それとも私の魅力が足りていないのか……」  リアルでJと出会ってから、まだ日は浅い。それでも、これは平時と変わらぬやり取りだ。彼女を心より信じ切れず、しかしそんな下らぬ会話に、どこか安心感を覚える俺もいた。  下らぬ会話を続けること暫く、校舎に近付くにつれ葬列じみた学生の黒服が増えていく。俺たちがデジタル・モンスターとの戦いを忘れているかのように、チャットと同様のコントのような会話をしていると。 「――あ、あの、ロウ、さん……」  その内の一人が、J――転校生レイラ・ロウにおずおずと近寄ってきた。 「あぁ、おはよう、宗宮さん」 「ッ――お、はよう」  自分から話しかけておいて、随分と委縮した様子だ。その視線は、気まずそうに俺とJを左右していた。  そして間もなく、ここ二日間学校で態度の豹変したJと、急にJに接近した俺に不可解な目線を向けてきた内の一人だと気付く。背後の方には、顛末を見届けようとこちらを遠巻きに見つめる女学生のグループがいる。ご苦労なことだ。 「ぁ、そ、の……だいじょう、ぶ?」 「ん? 何がかな?」  白々しさマックス。宗宮なる女学生の視線の先に気付いているだろうに、Jは恍けたフリをしたままだ。  黒セーラーの袖口から覗く細い手首に、包帯が巻かれている。そう言えば、昨日は体育もあったから、着替えるレイラ・ロウの素肌に巻かれた包帯にでも気付いたのだろう。 「別に、俺は何もしちゃいないさ。事故だよ、事故」  その下手人が隣にいる男だと邪推するのも無理はない。信じるかどうかは知らないが、一応の弁明はしておいた。 「十三君の言っていることは本当よ、あなたたちが心配することじゃないわ」  しかしその上で、怯えた様子一つなく優し気な声色で名前呼びなどするから、あーほら宗宮某、石化しちゃったじゃん。かわいそうに……。 パラ峰 2018-05-01T18:44+09:00 他の誰のものでもない彼らだけの推理物 http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4973&mode2=tree  遂に明かされたマミーモンの弱点と過去。よくよく思い出すと確かに死霊術師的な側面は見ていませんでしたがそもそもできなかったと。それを暴くのが隠密できないブラックラピッドモンというのも、固有の特性が使えない弱点ということでいい感じに奇妙なものを感じます。  それ以上に驚いたのが過去。というか上司のネオヴァンデモンらビッグデスターズがまさか世界の安定を頼まれる立ち位置とは。ただ正義感に燃えて真面目にというのとは明らかに違う癖の強さがありますね。  そんな強大な存在を前に堂々と啖呵を切って見せた春川君。一度仲違いしながらもマスターのアシストで大事なことに気づく王道の展開もありかなりアツい感じに。宣言通り彼らが探偵として謎を明かす事件と言っても過言ではないでしょう。 物語は一気に進んでクライマックスに。そう思いきや最後に波乱の気配が。 パラレル 2018-04-29T18:55+09:00 おっさんが死んだ! ←この人でなし! http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4967&mode2=tree  「何で人と違う怪物が人の言葉話すんだよ」という質問に対する一番ベターな回答で答えた結果がこの様。食人とか言いつつ人の身体ではなく、脳とかを犯して情報を捕食するイメージですね。食人前後のオオクワモンの変化は見直しの際に追加したものですがその判断は間違っていなかったようでよかったです。 X抗体縛りは……したかったなぁ。Twitterのタグかなんかのお題で答えたあたりからもう面倒くさくなって取っ払いました。明示的なX抗体があるデジモンは基本的に原種として考えてもらってよいかと。  将吾は完全にロ……蓮のポジションで作りました。裏切るかどうかはまた後々の話ですが。というかわりとライダーに影響受けた奴多そうですね。鈴音はだいぶマイルドな戦極みたいな感じですし、渡は映司……いや、753かも。  デジモンアニメは初代からわりと家族がらみのネタが多いですね。予想された通り鈴音もわりと抱えてるものはありますし、渡も割り切っているようですがその割り切り方はどうなのかというか…… パラレル 2018-04-29T18:07+09:00 月に飽きるまでって新月の日とかヤバそう http://digimonwebnext.webspace.ne.jp/bbs/?pid=digimonwebnext&mode=pr&parent_id=4973&mode2=tree  四話お待ちしておりました。なんかデジタルワールドに関するまともな言及が初めて来た気がしますが、ロイヤルナイツの次ぐらいに世界の管理を任されるとはなかなかやるなビックデスターズ。どうも夏P(ナッピー)です。  しかし木乃伊の上司がネオヴァンデモンとは思わなかった。  敢えて探偵ごっこという単語を何度も出してくる辺り、春川君自身も否定しつつ心のどこかで自覚していたのでしょうか。そう言われると警察もなんか怪しいと思いつつ、実際には飽く迄も子供を諭してくれていただけだという見方もできるかもしれない。でも今回で覚悟を決めたっぽいので、ここからは視点も変わっていくのでしょう。  あと探偵が狙われるのはやはり王道。しかし部屋が滅茶苦茶にされた上、写真にナイフとは空寒い。<b>……愛する者?</b> やっぱりそうだったんかい!  おお、ブラックラピッドモン! <b>むしろその体色しながら隠れるの苦手なのかよ</b>とツッコミを入れつつ、ウサギのようでいて実際には犬だからかなかなか鼻が利く。マミーモンの隠していた秘密をあっさり言い当てるとは、とんだ名探偵が近くにいたものである。雑魚扱いしてキレる天元突破な噛ませ犬ぶりも素敵。<font color=#FF0000><b>弱ェと言われて取り乱す奴ァ、自分で弱ェと認めてる証拠だ。</b></font>  ネオヴァンデモンのヒントが全く何のヒントになるのかわかってないのは内緒だ!  それでは、一気に話が進んできた気がしますが、次回もお待ちしております。 夏P(ナッピー) 2018-04-25T23:28+09:00